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バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子 - (2015/01/28 (水) 15:59:29) の編集履歴(バックアップ)


バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子

【ばてん・かいとすつー はじまりのつばさとかみがみのしし】

ジャンル RPG

対応機種 ニンテンドーゲームキューブ
発売元 任天堂
開発元 モノリスソフト、トライクレッシェンド
発売日 2006年2月23日
定価 6800円
判定 良作


概要

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』の続編。
前作の20年前を舞台にしており、前作に登場したキャラクターも大勢登場する。
GC末期の作品であり、一月後にFF12の発売を控えていたためかあまり注目されず売り上げは芳しくなかった。
また開発環境も悪かったのか前作のマップの使いまわしやバグも目立つ。
グラフィックは相変わらず美しいのだがムービーは前作より地味になってしまった。
特にバグは致命的で、ものによってはセーブロードが不可になったり、イベントがループしたりするなどバグゲーと言われても仕方がない。
これだけ聞くとまさにガッカリゲーである。

しかし、この作品には間違いなくそれらの欠点を踏まえても名作といえる素養がある。
理由はRPGというゲームジャンルの大半を占める戦闘、そしてシナリオがすばらしい出来栄えになっているからである。
これらの要素は前作でも高評価を得ていたが、今作では特に戦闘システムはそれをしのぐ出来となっている。

ストーリー

主人公サギは『精霊憑き』の少年である。この世界では精霊に憑かれている者は計り知れない功績を上げるものだと信じられている。
彼は皇帝への復讐のため、帝国アルファルドの暗黒部隊に所属し機を伺っていた。
ある日のこと暗黒部隊に任務が下された。その内容は皇帝オーガンの暗殺。
彼はこのチャンスを逃さず任務に参加し、皇帝の館へ潜入、しかし皇帝は既に謎の男の手で殺害されていた。
しかもそこに駆けつけた暗黒部隊の別部隊がサギたちを皇帝を殺害した反逆者として追撃する。全ては嵌められたのだ。

・・・逃亡の最中、サギは巨大な化け物に襲われる。何とか化け物を撃退するがその後サギは意識を失ってしまう。
気がつくとどこかの山岳の中、周りに見知らぬ男たちがいた。彼らはサギのことをマーノと呼び、近くの村へと急がせる。
その村では人々が肉体を失い精神だけの姿になって彷徨っていた。
するとサギは意識を取り戻し、再び暗黒部隊の追っ手から逃げることとなる。

何故サギは嵌められたのか? 暗黒部隊の目的とは? 皇帝を殺した謎の男は誰なのか?
逃亡の最中に遭遇した化け物の正体、そしてその後に見た夢とは何なのか? 多くの謎を残しつつも彼は帝国からの脱出を図った。

シナリオの特徴

  • プレイヤーは主人公サギに憑いた精霊の視点で物語に参加していく。
    • このシステムは前作と同じで、要所要所で主人公から問いかけられる選択肢を選ぶことでシナリオが進んでいく。
  • シナリオは現在と主人公の見る夢のパートが交代、並行して進んでいくシナリオとなっている。
    • このような二層構成にすることで、夢はいったい何なのか?現在の危機をどう乗り越えるのか? とプレイヤーをゲームの世界へ二重へ引き込んでいき、気づけばどんどんストーリーを進めたくなってくる。
  • キャッチコピーは「綺麗な嘘と汚れた真実。それでも、僕たちは生きていく。」 それをそのまま体現したかのような二転三転するシナリオ。
  • 現在と過去、精神主義(精霊、魔法など)と物質主義(機械や肉体など)、帝国内においての機械化政策推進派と反対派など二極対立のキーワードが豊富。これらを骨組みにしてストーリーを展開していく。
    • 対立構造を多用するゆえに細かい部分こそ複雑ながらも大筋は何と何が対立しているか理解しやすいようになっている。
    • 主人公は精霊憑きであるため『精神主義』に属し、敵である暗黒部隊は機械化された軍隊であるため『物質主義』に属する、といった具合。
      • まさに綺麗な嘘がどんどん暴かれていき、汚れた真実がどんどん明らかになっていく。時には鬱々とした描写がされる重いシーンもある。
  • そして後半において、主人公の夢の謎、彼はどうして精霊憑きになりえたのか、という疑問が解決されるのだが・・・この展開が主人公とパートナーである精霊の存在に関わるもので特に衝撃的。
    • 前作でもシナリオ後半にどんでん返しがあり、その衝撃展開に高評価を得たが、今作のどんでん返しも別の方向性でプレイヤーをびっくりさせてくれる。
    • 主人公たちは自らの秘密を知って現実に苦悩し、葛藤し、最後には押しつぶされそうになる。だが全てが暴かれた後に彼らは悟り、自分が何をなすべきかを理解し行動していく。
      • 主人公だけでなくヒロインのミリィ、仲間のギロにも隠された正体があり、やはりそれらも捻りが加えられた意外性のあるもの。
      • 彼らがイベントで葛藤に打ち勝ったり、自身の正体を知ることで今まで倒せなかった敵を倒せるようになるなど戦闘面においても強くなる。
  • めまぐるしく変化する展開、隠された衝撃の事実の数々、と全体的に急展開で奇をてらったシナリオであるが伏線を要所にしっかりと張っている。
    • 伏線を張るタイミング、消化するタイミングも計算されている。それゆえに突飛な状況に放り込まれることも多々あるが最後には納得できる形になっており完成度はすばらしく高い。
  • おまけに続き物の作品でよくある設定破綻もまったく見当たらない。むしろ前作を尊重した作りとなっており、前作で明らかにされていなかった謎も無理のない形で明らかにされている。
    • 前作の仲間ギバリが騎士をやめた理由、同じく前作の仲間リュードの父母のなれそめ、前作の敵であるゲルドブレイムが皇帝に上り詰めた経緯などが明らかになっている。
    • 特に後半に明らかにされる前作のラスボス、マルペルシュロが生まれた理由は前作をプレイした人は驚くこと間違いなし。(前作未プレイでも衝撃内容だが。)
    • 特徴的な専用戦闘曲が好評を博した前作のボス、ジャコモが本作でも敵として出てくるのだが、同じノリの専用戦闘曲を本作にも出すなど個々のキャラクター性も尊重している。
    • なお、この作品は前作とは話が独立しているので前作をやっていなくてもメインシナリオは楽しめる。
      • ただ前作をやっているとあちこちに散りばめられたちょっとした描写でニヤリとできたりする。
  • エンディングも高評価。20年後の前作への布石もうっており、この作品をクリアしてから前作をプレイすると実にスムーズに話がつながっている。
    • ただし前作をやっていない人には意味がわからない描写もあるが、それほど気にするほどでもない。
    • 任意で戦えるライバル的位置づけのボスを倒すか否か、倒した後とどめを刺すか否かによって最後の演出が変化する。

完成された戦闘システム

  • 前作のマグナスバトルの欠点を改善しさらに発展させた形。見た感じ前作とそう変わらないが操作感覚は大幅に忙しく、やり応えのあるものに変わっている。
  • 数十個の装備欄に収集した装備用マグナス(攻撃や魔法、アイテムなどのコマンドの役割をするカード)を装備し、戦闘中はそれがランダムに手札に表示されてそれを選びつつ行動する戦闘などは同じ。
  • しかしいくつかの点が改善されている。
    • マグナスの装備欄がパーティー共用になった。
      • 前作は6人の仲間に個別に装備欄があったため装備変更がかなり手間がかかるものだった。この作品では大幅に装備変更のハードルが下がった。
      • その代わり、キャラ専用のコマンドが手札に表示されると別のキャラではそれを選択できず気づけば選択できないコマンドばかりということが起こるようになった。しかしそれは問題点ではなく戦略性を高める要素になっている。
    • 手札を捨てることが重要になった。
      • 前作では選択できる山札から手札を全て引いてしまうと山札を作るために1手番無駄に消費され、その隙に大打撃を受けると立て直しに苦労した。
      • しかしこの作品では使用したマグナスはすぐに山札に補充される。ゆえに装備欄を全部埋めなくても最低限の装備さえ揃っていれば不利になることはなく、むしろ使用頻度の高い有利な手札をすぐに補充できる確率が上がる。手札をたくさん用意して行動の幅を増やすか、手札を厳選して行動の質を上げるか、というデッキ構成の戦略が増大。
      • そのため使えない手札はどんどん捨てて新しく有利な手札を引くまで粘ることが気軽にできるようになった。というか捨てないとまず話にならない。
      • この作品ではFFのATBのようにリアルタイムに戦闘が進行するので手札を捨てるのには余計な時間がかかる。(捨てる時間自体はそれほどかからない)そのため有利な手札が出るまで粘るかすぐにできる別の行動をするかなどといった戦術性が向上。
    • コンボ中はコンボがつなげる手札、ピンチ時には回復アイテムの手札が出やすくなる仕様がある。このため一般的なカードゲームにありがちな必要な手札がなかなか出ずにストレスが溜まることがほとんどない。
      • この仕様のため、デッキ構成をしっかり練ってさえいれば10コンボくらい繋ぐことなら簡単にできる。(とはいえ極限までコンボを突き詰めようとするとかなり難度が高い)
      • またピンチになっても一気に全滅することが少ないため、ピンチからの大逆転勝利という爽快感ある展開に発展しやすい。ただしその分敵の火力は高めに設定されている。
    • コンボ性能が進化し、更に重要・強力になった。
      • コンボは手札に書かれた数字が小さいものから順につないでいける。例:1→2→3 1→3  同じ数字や前の数字よりも低い数字の手札にはつなげられない。
      • 必殺技などの強力な手札はコンボをつなぐことで溜まるゲージを消費しないと使えない。必殺技にもランクがあり強いものほどゲージを多く消費し、使用できる順番も上がる。
      • そして一人のコンボが終わったあと、次の味方の手札に1の数字のカードがあれば複数人数でコンボがつなげられる。この点が前作のコンボと決定的に違う点。
      • コンボの中には特定の手札の順につなげることで発生するEXコンボがあり、通常のコンボよりも威力・性能が強くなる。
      • コンボが複数人数でつなげられるようになったことで威力、爽快感、戦術性、テクニック性が大幅強化。
      • あえてすぐに行動せずに他の味方がコンボ可能になるまで待機する、余計な手札を捨ててより強いコンボにできるような並びに調整するなどの駆け引きが熱い。
    • 戦闘テンポがハイスピード化、雑魚戦がすぐに終わるようになった。
      • 前作の戦闘の最大の欠点であったテンポの悪さが改善、どころか軽自動車がスポーツカーになったくらいのハイスピードテンポに。
      • 敵も味方もガンガン行動するようになったのでおそらくプレイヤーが最も戸惑う箇所。このテンポに慣れるまではかなりきついように感じるがルールをしっかり踏まえて予測を立てて行動すれば問題ない程度までにはすぐ慣れる。
      • このテンポの速さはそのままテクニック性と緊迫感を増大させた。味方が一方的に押している展開でも判断ミスによっては数十秒で逆転されかねないスリリングな戦闘になった。
      • 逆に味方がピンチに陥っても、手札を捨てまくって回復アイテムが出るまで粘ることができるため立て直しは比較的容易。
    • パーティーバランスの調整
      • 前作では仲間の数は6人いたが、今作では半分の3人に減っている。しかし単純な劣化ではなくキャラクターごとの強さのバランスがよりとれている。
      • 安定した性能の主人公サギ、必殺技が強力だが耐久性が低いギロ、攻撃力は低めだがコンボ数を増やす性能に長けたミリィの3人。
      • 前作のリュードのように他の仲間に比べて明らかに使いづらい性能のキャラがいないためキャラごとのバランスはより洗練されたといえる。
    • 全体攻撃を取り入れた。
      • 前作では全体攻撃がなかったため雑魚の大群を一掃することができなかったが、この作品では一部の必殺技が全体攻撃ができ、コンボの組み合わせによっては雑魚の一掃も可能になった。
  • 前作に引き続き派手な戦闘エフェクト。
    • 戦闘テンポに合わせるために一つ一つのモーションやエフェクトは短いが、これらがコンボになって積み重なるとやり過ぎなくらい派手に攻撃が繰り広げられる。
  • 実際やってみないと操作感覚がつかみづらいが戦術性、テクニック性、デッキ構成の重要性、運の要素などカードゲームの利点とRPGのリアルタイム戦闘の利点をハイレベルに組み合わせたこの戦闘システムはいったんはまってしまうと非常に中毒性がある。
    • いつの間にか延々闘技場で戦い続けている、なんてことはざら。テンポが非常にいいため慣れてしまえば経験値稼ぎが全く苦にならない。
    • 欠点は慣れが必要な戦闘システムにもかかわらず、チュートリアルが短く、また開始してすぐに3人パーティーになるため操作感の忙しさが激増してしまうこと。
    • また全体的にボスが強いシビアなバランス。だからこそやり甲斐のある戦闘システムになっているのだが、本当に厄介なボスの時ほど出るタイミングがまずかったりする。
      • 特にプレイヤーがまだルールに慣れていない頃、3人パーティーになって間もなく戦うジャコモと、DISC2に入った直後の経験値稼ぎができないタイミングで戦うことになるホロホロ鳥は屈指の強敵。

その他の評価点

  • ロードがほぼ皆無。戦闘のスピーディーさ、シナリオのテンポの良さを後押ししている。
  • 音楽がすばらしい。
    • 作曲者の桜庭統氏自らが前作の続編を望んでいたことだけあって、相変わらず盛り上がる出来。
    • 戦闘曲はどれも高評価。戦闘のスピーディーさに合致したハイテンポなリズムがプレイヤーの脳汁を出し尽くす。
    • 前作同様一度聞いた曲はメニュー画面でサウンドテストが出来る。
  • マグナス(物事の本質を封じ込めたカード)を利用した謎解きは前作よりも強化された。
    • 作品世界にあるさまざまなものはカードの中に封じ込めて持ち運ぶことができ、それを使ってダンジョンの謎解きに使ったり、NPCに物を届けたりする。
    • 前作でもあった要素だが、持ち運べるマグナスの数やマグナスの種類が大幅に増えており前作に輪をかけてバラエティに富むものになった。
    • また、前作のグラフィックを使いまわしている部分が目立つがそれは町などが大半であり、ダンジョンはほぼ全て新規マップ。ゆえに前作をプレイした人でも新鮮にダンジョンに挑むことができる。
  • サブイベント、寄り道が豊富。
    • 戦闘が面白いゲームなので闘技場があるのはうれしい。延々と戦ってポイントを景品と交換してもらったり隠しボスがいたりと好評。
    • ひとつの町だけで数種類のサブイベントやお使いイベントが転がっている。全てあわせればメインシナリオに匹敵するほどのボリュームがある。
  • マグナスの収集が奥深い。
    • 複数種類のマグナスを合成して別のマグナスに変えるマグナミクスを取り入れたことで前作の時点でさえ熱かったマグナスの収集がさらに奥深くなった。
    • また全てのマグナスをパックマン(のマグナス)に食べさせる、というやりこみもある。
      • 一周したくらいでは不可能と達成には非常に手間がかかるが、全て食べさせると全ての攻撃がクリティカルするようになるというとんでもないご褒美が。

総評

  • 販売状況や製作環境が不遇に見舞われ、売り上げはいまいちで、ゲームとしてもバグという致命的な欠点があるため100点満点とは決していえない作品。
  • しかしそれ以外の完成度は間違いなく一級品。特に戦闘システムとシナリオは同年発売のRPGの中でも屈指のもの。
  • バグさえなければ、人によってはバグがあってもこのゲームをGC最高のRPGに推すプレイヤーは少なくない。
  • 王道的なシナリオや戦闘システムに飽きた方に是非お勧めしたい傑作である。
  • ただしバグはものによっては本当にひどいため、これからプレイする方はこちらを参照して十分に注意されたし。どれも気をつければ十分回避できる。
  • バグがどうしても気になるという人は、任天堂に修正版との交換を依頼しよう。多少の手間はかかるが、無償で交換できる。