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エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~ - (2017/11/30 (木) 20:38:09) の編集履歴(バックアップ)



エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~

【えりーのあとりえ ざーるぶるぐのれんきんじゅつしつー】

ジャンル 新感覚RPG
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ガスト
発売日 1998年12月17日
定価 5,800円
廉価版 PlayStation the Best:1999年12月16日/2,800円
配信 ゲームアーカイブス:2008年3月21日/600円
判定 良作
アトリエシリーズリンク


あらすじ

シリーズ1作目『マリーのアトリエ』の後の話。
流行病に倒れた少女エルフィール・トラウム(エリー)は、ザールブルグのアカデミーを卒業し旅に出た錬金術師のマルローネ(マリー)に命を救われる。
ゲームは、マリーに憧れたエリーが錬金術士になるためにザールブルグを訪れ、アカデミーに入学するところから始まる。
入試の成績が悪かったエリーは寮に入ることができず、自力で生活することを余儀なくされる。
エリーはイングリド先生から工房(アトリエ)を与えられ、錬金術の仕事をしながら卒業を目指す。

前作からの改善点

ゲームのボリュームアップ

  • 錬金術で作れるアイテム、調合の方法、アイテムの採取先、キャラクターや敵の数、イベントやエンディングの数、一枚絵やキャラクターボイスなどが増えた。
    • 前作と物語の舞台を共有していることもあり、前作登場キャラクターも数多く出演している。
    • 前作では留年後の話ということもあり、エンディングまでのゲーム内時間は5年間確定だったが、本作では普通に卒業(4年)、1年留年(5年)、マイスターランク(6年)、5年留年(9年)など、プレイ内容によって卒業までのゲーム内時間が変動する。*1
      • 当然、エンディングまでのゲーム内時間の変動によってエンディングの内容も変わる。
  • 自由度の高さも健在。やり込み要素も多く、寝る事でゲーム内時間を飛ばせるので周回プレイも快適。

戦闘関連

  • 前作では主人公のマリーは戦闘のみならず錬金術でもレベルが上がるのに加え、最強の専用武器が容易に入手できていた。そのため序盤こそ足手纏いになるものの最終的には簡単に強くなってしまい、マリー無双となる事が常であった。
  • また、敵にとどめをさせないと経験値がほとんど得られないシステムのため、低レベルキャラの育成が非常に困難であった。
  • それに対し本作では主人公エリーのレベルが錬金術レベル(錬金術によって上がる)と冒険レベル(戦闘によって上がる)に分離されている。そのため、普通のRPGと同じように戦闘で周りに付いていきたければ戦闘でレベルを上げないといけなくなった。最強専用武器の入手方法も前作よりは難しくなったため、容易にエリー無双は行えなくなった。
    • それでもドーピングアイテムの調合や武器の改造、『ローレライの鱗』などの戦闘バランス崩壊アイテムを使えばエリー無双は不可能ではない。
    • また強くなれずとも、MPの高さを利用してアイテム係となったり*2、条件を満たす事で楽器系アイテムで味方を支援する『えんそう』コマンドを覚えたりと、支援に徹する事で活躍が見込めるようにもなっている。
  • 低レベルキャラの育成にしても、本作ではパーティ全員が経験値を平等に得られるため前作ほど難しくはなくなった。

疲労関連

  • 本シリーズでは調合を続けると疲労値が溜まり、調合の成功率が下がるようになっている。
    • 疲労値は休息やアイテムによって下がるのだが、前作ではその中でも市販品『祝福のワイン』のコストパフォーマンスが非常に優秀だったため、休息や他の疲労回復アイテムの存在意義が薄かった。
  • その対策として本作では『酔い』の状態異常が登場。下戸であるエリーは酒系アイテムを複数回使用すると酔っ払ってしまい調合の成功率が-40%と大幅に下がるようになった。*3
    • 酔いは『酔い止めの薬』を使うか数日が経過しないと回復しないため、おいそれとワインに頼る事は出来なくなった。
    • なお、市販品の疲労回復アイテムにはワインの他に『にんにく』がある。ワインに比べると割高だがこちらは何個食べても問題ない。救済措置の意味合いもあるのだろう。

新要素

ブレンド調合・オリジナル調合

  • 本作では従来のレシピ通りの調合を続けていくと、新たにブレンド調合・オリジナル調合が出来るようになる。
    • ブレンド調合では材料の配分を変える事で、『品質』と『効能』というパラメータを上下させる事が出来る。*4
      • 品質はアイテムの価値を決める。同じアイテムでも高品質の方が高く買い取られ、調合の依頼主も報酬に色をつけてくれる(逆もまた然り)。また一部アイテムはブレンドを前提としているのか、レシピ通りに作るだけでは品質が低くなるよう設定されている。
      • 効能はアイテムの効果に関わる。効能が高いほどアイテムの効果も強くなるがデメリット(消費MPが増える、等)も強くなるので注意。
    • 品質と効能の両方が高くなる配合も存在するが、この配合はセーブデータ毎に変化するという特徴がある。
      • ただしごく一部を除けば大雑把に配合を変えるだけでも十分効果が出るためあまり神経質にならなくてもよいかもしれない。
    • なお、ブレンド調合をした後には新旧どちらの配合を残すかを選ぶ。もう一方はその場で売却または廃棄されるため、異なる配合を持つ同一アイテムが混在することはない。
    • オリジナル調合は材料と道具さえ揃っていればレシピがなくともアイテムを作成できてしまうという、本作はおろかシリーズ全体で見ても極めて強力な調合法である。
      • プレイヤーがレシピを知ってさえいればいいので、周回プレイなどでレシピ入手イベントをスキップ出来るのが魅力。また本作にはレシピが入手できないアイテムも存在する。これらはオリジナル調合によってのみ作成できるようになっている。

調合中の訪問

  • 本作では調合の最中に、交友度の高い冒険者たちが工房を訪ねてくるイベントが発生する。この時応対することで依頼を受けることができる。
    • この時の依頼は必ず一種類だけでそれを受注するかどうか選択する。冒険者ごとに欲しいアイテムの傾向は決まっている。
    • 依頼を成功させれば報酬を得るだけでなく、依頼した冒険者との交友度も上がる。これにより冒険者との交友度を上げやすくなった。
    • ただし、依頼の成否にかかわらず応対するごとに調合の成功率が10%下がる。場合によっては無視するのも手。
      • 長い時間がかかるアイテムの調合中に何度も応対に出ると、その都度成功率は下がっていく。
  • この「調合中のイベント」要素は後のシリーズ作品でも取り入れられた。

酒場関連

  • 前作と同様に酒場主のディオに依頼されたアイテムを納品するほか、前作の冒険者の一人クーゲルからも依頼を受注できる。これにより攻略の幅が広がった。
    • クーゲルの依頼は「滋養強壮の薬」「絵のモチーフ」「爆弾」といった大まかなカテゴリーで指定され、該当する複数のアイテムの中から自分で選んで渡す。
    • 例えば、「滋養強壮の薬」なら『ほうれんそう』『シャリオミルク』『アルテナの水』…等から選択する。ストックがあればその場で渡してもよい。
    • また、選択できるアイテムから何を渡しても依頼は成功になり、提示された報酬を全額受け取れるが*5、渡すアイテムによってクーゲルの評価が異なり、*6納品した際の人気度が大きく変動する。簡単に用意できるからと評価の低いアイテムばかり渡しているとみるみるうちに人気が下がっていくため、ストックや銀貨・ストーリー進行への影響を考えながら渡すアイテムを選ぶ必要があり、より手ごたえのあるシステムになった。
    • 街の有力者からの依頼という都合上報酬も高いため、ゲーム終盤はこちらの依頼がほぼ中心となる。

武器屋関連

  • 本作から新たに装備の改造が可能になった。条件を満たせば銀貨を払って強化することができる。
    • 数値の増加、属性の追加、特殊能力の付加といったことが可能で、強化する度合いにより必要な銀貨の額が変わる。
  • ストーリーが進むと『グラセン鉱石』の買い取りが開始する。一度でも売ることで新しい装備が販売されるようになった。

妖精さん関連

  • 今作では雇った妖精さんに調合をさせて経験値をためさせ、上位の妖精へとレベルアップさせる事ができる。しかも雇用費はレベルアップ前のままという親切仕様。
    • 特に雇用費が最高の代わりに調合速度も最速(エリーと等速)の紺妖精をレベルアップさせると、"エリーの1.5倍"という驚異的な速さで調合を行える虹妖精になる。
  • 一方で妖精さんはブレンド調合・オリジナル調合が出来ず、レシピ調合でも未作成のアイテムは作れないという欠点がある。
    • よって未作成アイテムの調合やブレンド・オリジナル調合はエリーに、採取・作成・ブレンド済みアイテムの大量生産は妖精さんに割り振る分担作業が必要となってくる。

恋愛イベント関連

  • 本作では一定回数のフラグを立てることで、3人の男性キャラの内1人とエリーとの間に恋愛イベントが発生する。
  • ただしシリーズでは初の試みな上にエンディングに影響を及ぼさないようになっているため内容はどれもややあっさりとしている。
  • また恋愛イベント成就のためのフラグとベストエンドを迎えるためのフラグは二者択一であることが多いのでベストエンド達成の難易度が高くなる。
    • 一応、恋愛イベント発生とベストエンド達成の両立も可能であるが、その場合はスケジュールが非常にタイトになるので注意。

アカデミーコンテスト

  • 本作では最初の4年間は年度末である8月にアカデミーコンテストという試験が行われる。この試験によって学年内の順位が決定する。好成績を収めれば名声や人気度が上昇する他、キャラクターの意外な一面を見る事もできる。
    • 試験科目は『調合』『基礎知識』『基礎魔術』の3つ。
    • 調合試験では指定されたアイテムを実際に作成する。レシピ通り作ってもよいし(ブレンド調合済みならその配分が基準)、その場で配分を変えてブレンド調合してもよい。一方でレシピを入手してないアイテムの場合は材料がランダムに選ばれてしまうので注意。
    • 基礎知識試験ではアイテムの名前や材料、作成に必要な器具を答える三択クイズが5問出題される。プレイヤー側の知識を必要とする上に時間制限もあるので予習は必須。
    • 基礎魔術試験では攻撃をしてこない『たる』を中身を傷つけずに攻撃系のアイテム*7で壊す。中身まで壊してしまえば当然減点、たまにイングリド先生の私物が中に入っておりそれを壊したら更なる減点を喰らう。
  • 調合と基礎知識は事前に出題範囲が掲示される。現実世界の定期試験と同様、見落としの無いように。

新たなる舞台

  • 一定のフラグを立てると西の港町カスターニェ地方へ行けるようになる。工房はないのでアイテム作成は出来ないが、イベントや新キャラが多くここからしか行けない採取地も多い。
    • またカスターニェのBGM『飛べないカモメの物語』はカスターニェの開放的な雰囲気も相まって非常に人気が高い。

賛否両論点

前作前提の一部シナリオ

  • 後続作なので当然と言えば当然だが、前作をプレイしていないと理解できない内輪ネタのようなものが多い。
    • 今作の主人公のエリーは、前作キャラとは初対面なので、エリー自身がそういった前作でのネタを理解できないため補足説明も少ない。
    • 前作既プレイ者には好評なのだが…
  • マリーとエリーの繋がりは付属のドラマCDという形で収録されているのだが、普通はドラマCDを聞く前にゲームを始めるため、ライターが想定した情報をユーザーが共有できていないことも。

相変わらず初心者殺しのヴィラント山

  • 前作と同様、材料採取地の一つ『ヴィラント山』は道中含め強敵が出没するにも拘らず序盤から行けてしまう。
    • 早い段階でヴィラント山で『カノーネ岩』というアイテムを入手しなければ赤系の調合が殆どできず、コンテストで苦労するという問題もある。
    • 一度全滅覚悟でヴィラント山へ行って以降は妖精に採取を任せる、騎士団によるモンスター討伐イベント*8を待つ、他に『カノーネ岩』が採れる『エルフィン洞窟』へ行く、など前作と同様の救済措置は存在する。

前作の一部の採取先やイベントの削除

  • 『ストルデル滝』や『メディアの森』に行けなくなった他、のみの市イベントも実質なくなってしまった。
    • その代わり、別の採取先やイベントが大幅に増えているためプレイの上で支障はない。採取先やイベントの削除についてもゲーム中ではちゃんと環境の変化などの理由が説明される。

問題点

シナリオ面

  • 『マリー』でのキャラが一部リストラされている(例えば『マリー』のアカデミー売店の店員アウラ・キュールや、冒険者のキルエリッヒ・ファグナーなど)。
    • 前作から引き続き登場するキャラの中にも、モブキャラのようになってしまったキャラも多い。
    • ただし、それ以上に新規のキャラが大幅に増えている。
  • 『マリー』同様、効率的にプレイをしていると終盤のイベントもマンネリ化し、やることがなくなる。特に、調合に失敗したらリセットするというプレイスタイルだと、最良エンディングですら終盤はずっと寝ていることになりがち。
  • 新たなる地方、カスターニェ地方へ行けるようになったのだが、攻略本や攻略サイトを見ないと、カスターニェ地方へ行ける条件を見つけるのが難しい。
    • フラグを立てた上で踊り子のロマージュに何度も話しかけないといけないのだが、ロマージュは5の倍数の日にしか飛翔亭に来ないため、運が悪いとイベントの存在そのものに気付かないままエンディングを迎えてしまう。
      • 良いエンディングを見るためには必ずカスターニェ地方へ行かなければならない。

システム面

  • 『マリー』で登場した一部のアイテムを調合するのに必要な材料が変わった。『マリー』で覚えた知識が役に立たないことも多く、『マリー』をやりこんだ人ほど戸惑う部分もある。
  • 『マリー』であったミニゲームがなくなった。
    • ミニゲームは面白いものが多かったので、なくなってしまったのは不評だった。「ミニゲームなんて面倒くさい」という人には好評かもしれないが……。
  • 『マリー』よりは改善されたとはいえ、戦闘のバランスは悪い。
    • 特に、エリーに「ローレライの鱗」を装備させると、多くの敵が魅了状態(行動不能)になり、一方的に攻撃できてしまう。
  • オリジナル調合に関するゲーム内でのヒントが少なく、攻略本や攻略サイトを見ないとあまり活用できない。

総評

『マリー』での良い部分を残しつつ、正統派の進化を遂げた良作。
魅力的な新キャラも多く、現在でも人気が高い。
この作品自体の移植やリメイクも何度もなされている。