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ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者 - (2021/08/16 (月) 07:51:54) の編集履歴(バックアップ)


本項では、ファミリーコンピュータ ディスクシステム『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者 前編/後編』のNintendo Switchにおけるリメイク版について解説する。
リメイク元については当該記事を参照。


ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者

【ふぁみこんたんていくらぶ きえたこうけいしゃ】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
発売元 任天堂
開発元 任天堂
トーセ
MAGES.
発売日 2021年5月14日
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
プレイ人数 1人
定価 単品ダウンロード:4,378円
コレクターズエディション:10,978円
判定 良作
ポイント 33年の時を経てリメイクされた待望の初作
良質なストーリーをさらに盛り上げる新演出の数々
台詞がフルボイスとなり、まさにドラマ感覚
FC版での進行上の難点もバッチリ改善
懐かしいネタも満載
割高感は否めず
ファミコン探偵倶楽部シリーズ



僕は……。誰だ……。 *1



概要

1988年にディスクシステムで前後編ディスクとして発売された『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のリメイク版。
続編である『うしろに立つ少女』がSFC版向けにリメイクされたのに対し、本作ではファミコン版の発売以降、リメイクの動きが一切なかったため、本作が待望の初リメイクとなる。
ストーリー及びゲーム全体の特徴は上記のリンク先を参照。
本稿ではFC版からの変更点を中心に記載する。

続編の『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』と同時発売となった*2
単品としてはダウンロード版のみで、パッケージ版は2作を1枚に収録したゲームカードと、設定資料集、サントラCD、復刻版チラシの同梱した限定版「コレクターズエディション」のみ。


FC版からの変更点

『うしろに立つ少女』と共通する部分

  • すべての台詞がフルボイスとなった。
    • その他大勢に該当するような人物でも、各々別々にキャスティングが充てられている。
    • 基本的にテキストはリメイク元を踏襲しているが、三人称視点のナレーション(いわゆる地の文)が大幅に削られ、対象となった箇所の大部分が主人公視点での独白に変更・もしくは誰か他の人がいる場合、その人がそれに合わせたような形で話す。
      • 例・取れないものを取ろうとすると・・・
        FC版では とれません → 本作では 主人公「(これは取れそうもない)」 主人公「(やめておいた方がよさそうだ)」 等
  • オプション画面にて、プレイヤーの望んだスタイルに合わせて幅広くカスタマイズすることが可能。
    • 上記の台詞の声の有無が切り替え可能で、また「レトロ」にする事でファミコン時代のようなピコピコな文字表示音も可能。
      • 声優陣キャスティングが気に入らず、やっぱり自分の理想の声を想像の中で充てたい人やファミコン時代のようなピコピコ音で文字表示されるのが好きな人にも配慮した仕様。
    • BGMも旧作のものと切り替えが自由に可能。
      • 声やBGMなど、それぞれボリューム調節でき、自分の好みのバランスでプレイできる。
  • 「聞く」などのコマンドは元々項目が絞られていたが、FC版よりも更に絞り込まれているので選び間違えによるムダな二度聞き等の手間が発生しにくい。
  • 文字の表示を「遅い」「普通」「速い」「一括*3」と調整可能。
    • 「一括」以外の場合、文字送り中にボタンを押すことで、その回の台詞が一括表示される。
    • 更に台詞送りのオート機能まで搭載。
  • バックログ機能で台詞が記録されており前に戻って確認できる。
    • うっかり意図せず見切る前にボタンで送ってしまった場合や、もう一度確認したい場合などに便利。
    • ボタンで声も再度再生できる。
  • 主人公の名前に漢字が使えるようになった。
    • 『うしろに立つ少女』の方を既にプレイしている場合、データを参照しその名前を使うか確認してくれるので、入力の手間を省くことも可能。
  • 回想シーンや移動時などに新しいグラフィック描写が追加された。
    • 他に持ち物のグラフィックも全てに用意されている。
  • LRトリガーボタンで台詞を高速スキップできるようになった。
    • ただ、これに関しては位置的な問題点もあり。
  • 「調べる」「取る」をカーソルで調べると、特定の箇所を選ぶと、その名称が表示されるようになり、何度も何度もハズレたメッセージを聞く手間が軽減された。
    • 当たりポイントでも、主人公の観点でそれが何だかわからない場合、名称は「???」と表示される。
    • ただし、死体調べに関しては、そのカーソルの当りが表示されない中で判断して調べなければならない。
  • セーブデータは3枠ある。
    • これとは別口に章をクリアした時にその最初からできるオートセーブ枠が1つある。

本作のみの部分

  • FC版と違って、二度被って聞いた場合は、簡略化されるようになった。
    • 特に長い内容になる場合は再度聞こうとすると「もう一度聞きたいか?」等と聞かれ、キャンセルできるようになった*4
  • ストーリーの上で不透明だった部分や不足な部分に新しい台詞が補填され、ストーリーの中身がよりわかりやすくなった。
    • FC版では時間の流れが解りづらかったが、本作ではイベントの進行に伴い昼間から夕方・夜へと変わるようになった。
  • 必須ではないが進め方次第で分岐するイベントが追加された。
  • 『うしろに立つ少女』のSFC版同様全11章に分けられ、各々にサブタイトルが挿入されるようになった。
  • 『うしろに立つ少女』のSFC版同様に、プレイアビリティが大幅に改善された。
    • 重要事項はメモされるようになり、その説明が入った後は任意で手軽に確認可能。
    • 選択肢が増えたコマンドは文字が黄色っぽく表示されるので、それを認知しやすくなった。
    • セーブは「調査やめる」コマンドのみだが、ロードはいつでもできるようになった。
      • また「オートセーブ」という形で、その時点でプレイしていた章の最初からできる機能もある。
  • 村人など、顔の出なかったキャラに全員立ち絵が与えられた。
    • 同時に熊田医院の看護婦にも若い女性の姿が与えられ、出番もグッと増えた。
  • 電話での入力桁数が旧作では市外局番を含めた10桁だったが『うしろに立つ少女』と同じ7桁になった。
    • 元々市外局番まで使うような用はなかったので、あまり気にならない部分ではあるが、ファミコン当時は本作に限らずこのようなゲームの電話で自分の家にかけて遊ぶが特に低年齢層では恒例だったので、それができなくなっている。

評価点

『うしろに立つ少女』と共通する部分

  • 「調査やめる」が進行に関与する場合、他のコマンドを全部(「調査やめる」の同列単位で)試すとコマンドの「調査やめる」が黄色っぽくなり促してくれる。
    • FC版経験者なら特に迷わないが、初プレイだった場合、それなりにいくらか試した後に促されるのでなかなかリアルなやり取りになる。
  • いろいろ細かい部分が補填されている。更に同じ場所でも場面場面で異なるアングルでのグラフィックが与えられるなど細かい所まで凝っている。
    • 本作の場合なら綾城家の門の前や玄関をこまめに介する様になった。
      • 留守の家の中にいきなり入っていたり、後編ではいつものっけから居間に入る*5といった不自然さが緩和された。
      • 他、天地の部屋は、玄関先から呼び鈴を押して入るようになり、熊田医院も、入り口からドアを開けて入る描写が追加されている。
        また、完全に閉まった状態での病院前というシチュエーションまで追加されている。
  • 回想シーンなどにもイベントスチルによる描写が大量に取り入れられた。
    • FC版では、そのすべてがテキストによるものだったので、より状況が解りやすくかつ、ストーリーに入り込みやすくなった。

本作のみの部分

  • カーソルの当りポイントが示されるようになったので、進行がだいぶスムーズになった。
    • FC版ではカーソルで調べて進むポイントで、その当りの部分が数ドットしかないほどシビア*6なポイントが何ヶ所もあった。
  • FC版では、かなり離れたアングルで死体自体が非常に遠目なものがあったが、本作では殺人現場ではすべて死体にグッと近づいたアングルが用いられるようになった。
    • よりグロさが強くなり元々FC版でもインパクト抜群だった恐怖の殺人現場の場面が更に強化された。
    • 死体の調べる時に、目視でも怪しげなポイントを見定めやすくなった。
  • 駅周辺、山の中といった自然の風景の再限度が非常に高い。
    • セミの鳴き声といった環境音も本物に非常に近いなど抜かりが無い。
  • ラスト直前の部分の演出が一層ドラマチックになった。
+ クライマックスのネタバレ注意
  • FC版で熊田医院での茜の告白のシーンは、通常の「聞き込み(調査中)」の曲がずっと流れていたが、より気分を盛り上げる形になった。
    • FC版では熊田医院に着くと同時に「聞き込み(調査中)」に切り替わっていたが、本作では「深まる謎」が継続し、茜が涙ながらすべてを打ち明けるシーンでは悲しげなメロディーの「想い出」、そして善蔵とともに屋敷へ帰ると、まるで暗い闇が晴れたかのようにいつもの「聞き込み(調査中)」になる。
      • その場面での空気を非常にドラマチックに演出している。
  • FC版では、クリアまでの最後の行動した後、画面が切り替わるとすぐ犯人らしき黒い人影が後ろに立っているのが見えていたが、それが迫ってくる直前になるまで見えなくなった。
    • また今回も今回で、人影こそないが同じ場面で主人公が中央にいないため、その空間に何かが襲ってくるものを感じられるので、新しい恐怖になった。
  • ドラマチック演出とは関係ないが、土蔵内の3D迷路は引き継がれている*7が、操作性が大幅に改善されスムーズに進めるようになった。
    • 具体的には、メニューを出していない状態では自由に移動し、メニューを出すと移動が止まってコマンドを選択できる。

賛否両論点

  • ビジュアル面が大幅に強化されフルボイス仕様となった一方で、画風の変化などに伴い恐怖感が薄れたり、キャラに抱いていたイメージと違うという声もそれなりに見受けられている。

問題点

『うしろに立つ少女』と共通する部分

  • ジョイコンのトリガーがスキップボタンになっており、持ち方によってはうっかり触れてしまって意図せずスキップを誤作動させてしまいがちになる。
    • もちろんバックログ機能で読みなおしは可能だが、やはりリアルタイムで見るのと黒バックに文字だけというのは印象がまるで違う。
  • SFC版や今回同時発売の『うしろに立つ少女』同様、FC版前編終了後に後編開始冒頭に挿入される前編のあらましのナレーションがそのままであるため、若干不自然になっている。
  • 余計なものが調べられてしまう。
+ 詳細(ネタバレ注意)
  • 本作の場合、主人公の過去が明らかになる場面で「見る・調べる」のコマンドがあり、電機やガスのメーターや隣の家の洗濯機などが調べられてしまうのは雰囲気を壊すので余計なものでしかない。
    • 勿論意図的にやらない限りまずやる事はない。または「今は見る必要はない。」みたいな台詞にする等にした方が雰囲気も壊さなかったはず。

本作のみの部分

  • テキスト面での加筆が行われているとはいえ、全体的なボリュームもオリジナルであるファミコン版準拠であり、豪華フルリメイク仕様とはいえ現代のゲームとしては割高感は否めない。
+ ネタバレ注意
  • サブタイトルが追加されたのはいいが、1つだけ早期に先バレしてしまうものがある。
    • 実際にそれが発生するのは、少し後なので章開始時にモロにサブタイトルで告知してしまうと、突然発生するインパクトが薄れてしまう。
      • またその殺人現場で、後述の脱線ネタであるディスクシステムやファミコン本体の箱が置かれているので、緊迫した雰囲気を壊しかねない。
  • クリア後の解放要素がBGM鑑賞機能の「音楽鑑賞」のみであり少々寂しい。
    • SFC版をベースとした『うしろに立つ少女』には性格判断と相性診断があったが、本作にはそれも無し。あゆみちゃんとはもういい仲だから相性を診断する必要は無いという事なのだろうか

総評

33年もの長い時を経てのリメイクということで、一気に現代のレベルまで昇華され、更に洗練されたBGMやグラフィックのクオリティはファン必見。
FC版では文字のみだった部分の回想シーンもふんだんに新規のグラフィックやアニメーションが取り入れられ、当時の感動や恐怖はより鮮明なものになった。
ストーリーに関しても、FC版では不足していた部分に新たにアレンジが加えられ、より一層物語の完成度を高めつつも、元々の良い部分はしっかりと生かしているという理想的な形になっている。
また、当時のウリだった「グロさが強烈でインパクト抜群の殺人現場」は、画質の上昇だけでなく死体に寄ったアングルがすべてで使われるようになり、その印象をより強めるものになっている。

ファミコンのままのチープなBGM、グラフィックをものともせずバーチャルコンソールのような移植版から新規プレイした層までも感動させたストーリーの良質な部分は何一つ殺すことなく、現代のクオリティに進化させたと言い切っていい。
またシステム面でも、まるで痒い所に手が届くように、声やBGM、表示の仕方などを自分好みに調整でき、幅広い人が望むプレイスタイルに対応してカスタマイズできる点もあり、ほとんど文句のつけようがない。
多くのファンが長年待ちに待った期待にそれ以上の形で応えたと言えるだろう。


主なキャスティング

+ 詳細

主人公(緒方恵美)

橘 あゆみ(皆口裕子)

天地(杉田智和)

駅員(千葉繁)

田辺 善蔵(樋浦勉)

綾城 キク(宮沢きよこ)

綾城 完治(木下浩之)

春日 あずさ(田中敦子)

綾城 二郎(堀内賢雄)

山崎 茜(石飛恵里花)

熊田医師(岩崎ひろし)

熊田医院の看護婦(佐藤舞)

玄信住職(塾一久)

平吉(魚建)

綾城 香(寺依沙織)

藤宮 由紀子(小清水亜美)

綾城 和人(川田紳司)

石野 麗子(山本彩乃)

大西 克子(森なな子)

駄菓子屋の老婆(片貝薫)

明神山の村人(小島英樹)

山本 元子(沢田泉)

綾城 ユリ(潘めぐみ)

サンボラのマスター加藤(志賀麻登佳)*8


余談

  • 2019年9月5日に公開されたニンテンドーダイレクトでは2020年発売予定となっていたが、結果的には延期となった。
    • この時に本作の開発中画面が公開された。それは最初の殺人現場に出くわす直前の場面が先行して紹介され「7/30(SAT)」という表記があった。
      • 1988年7月30日は本当に土曜日なのは勿論のこと、その殺人が行われたのは前日の29日であるわけだが*91988年7月29日は本当に満月だった。
        つまり相当細かいところまで、拘っているのが垣間見える。
        あゆみは探偵助手をしているものの、同時に現役の高校3年生でもあるのだが、作中の事件の調査をフルタイムで行えているのも夏休みの期間だからと言えるだろう*10
  • 本作が発売されたのは、奇しくもFC版の前編がディスクライターで書換え開始された日と同じ5月14日となった*11
  • オリジナルでは110番のみだったが、SFC版『うしろに立つ少女』同様に119、117、104なども有効になった。
    • また『うしろに立つ少女』のサンボラにもかけられるようになった(当然ファミコン版ではその存在自体なかった)。
      • 元々市外局番まで使うような用はなかったので、これのために7桁に変更したものと思われる。
  • FC版にはなかった小ネタも盛り込まれている。いずれも懐かしさを感じられるものばかり。
    • 綾城二郎の生年月日が昭和24年4月27日になっており、この4月27日とはFC版の前編パッケージ版が発売された日である。
      • もちろん正しい発売日は昭和63(1988)年4月27日で、昭和24年というのは、作中の昭和63年に対して二郎の年齢39歳で逆算したもの。
      • 上述の二郎の免許証が「昭和65年の誕生日まで有効*12」。更に種別表示が一列構成*13
      • 当時は「昭和が終わる」という想定などしていなかった時代で、昭和が60年以上続いていたこともあって昭和○○年表記*14が大多数(西暦表記すら稀)だった*15
    • 八束町に「コスモス自販機*16」を模したものがある(名前は「コロモス」と変名されており、本物は赤っぽい色だが作中では緑になっている)。
    • 土蔵の中に、ファミコン本体やディスクシステムの箱が置いてあり、ちゃんと調べると特別な反応がある(もちろん上記の通り緊迫したはずの現場には不釣り合いだが)。
      • しれっと「1日1時間ならやってもいいだろう」という懐かしいネタも…*17
        片やディスクシステムの箱は「ある意味骨董品だ」と自虐的且つメタ発言もある*18
    • 昭和を代表するコメディアン「ザ・ドリフターズ*19」の名前が隠れており空木探偵事務所のあるビルの1階(事務所は2階)に「志村不動産*20」、明神駅の掲示板の張り紙に「荒井商店」と「有限会社高木金属加工*21」、八束町の駄菓子屋が「仲本商店」隣に「仲本パン」、とある回想シーンの片隅に見える喫茶店が「カトー」、八束町アパートの部屋の1つの表札が「碇矢*22もちろんドリフターズの面々がいきなり出てきたりはしない(当たり前)
      また1977年からフジテレビ系で放送された『ドリフ大爆笑』も人気が高く、本作のファミコン版発売当時に任天堂はこのスポンサーになっていたため、そのCMも番組の間で流されていた。
      当初発売予定だった2020年は年始から新型コロナウイルスの大流行となり(1年以上状経過した発売当時も収まる兆しすらなかった)、メンバーの1人である志村けんも感染し10日程度という短期間で死去するに至った(享年70)*23*24ことで、志村自身やドリフターズも再び注目されることになった影響も少なからずあると思われる*25
  • FC版同様にテレビCMも行われた。
    • ゲーム本編のイメージを実写化し、ミステリアスに演出していたFC版と違い、際立った特徴のない無難な形に収まったものになっている。
      • 時代が時代なので仕方ないが、これに関してはFC版の方が良かったという意見が多い。
+ CM(『うしろに立つ少女』含む)