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*DS文学全集 【でぃーえすぶんがくぜんしゅう】 |ジャンル|読書|#amazon(B000VQOKBS)| |対応機種|ニンテンドーDS|~| |メディア|256MbitDSカード|~| |発売元|任天堂|~| |開発元|ジニアス・ソノリティ|~| |発売日|2007年10月18日|~| |定価|2,800円(税込)|~| |レーティング|CERO:教育・データベース|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|名作文学100冊&br()本らしさを追求した造り|~| |>|>|CENTER:''[[Touch! Generationsシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 タイトルが本作の全てと言ってもいい作品。近代日本の名作文学100編を電子書籍化したものである。~ 著作権が失効した文学作品を保管し、誰でも無料で閲覧できるウェブサイト[[青空文庫>https://www.aozora.gr.jp/]]の協力のもと、その所蔵作品から100編を収録している。((一部の作品では任天堂が本作のために1からデータ化作業を行い、青空文庫に提供されたものも存在する。))~ [[DS電撃文庫シリーズ]]などとは異なり、ゲーム機であることを活かしたイラスト表示やサウンドエフェクトなどは無い。基本的には活字を読むだけのソフトであり、随所に文庫本を意識させる演出が盛り込まれている。 ---- **特徴・評価点 ''100編の文学作品を収録'' -収録作品数100編で税込2,800円。1冊当たり28円と考えると非常にお値打ちなソフトである。 --新美南吉『手袋を買いに』、芥川龍之介『羅生門』などの短編も合わせての数なので、実際の文庫本100冊分の分量はない。しかし、夏目漱石『こころ』、尾崎紅葉『金色夜叉』、下村湖人『次郎物語』などの長編もしっかりあるので、簡単に読み切れるほどでもない。 -「文学作品」と言われて即座に思い浮かぶような純文学小説だけでなく、童話(新美南吉『ごん狐』など)、冒険小説(押川春浪『海底軍艦』など)、ミステリ小説(夢野久作『少女地獄』など)、随筆・評論(福沢諭吉『学問のすすめ』など)も収録されているので、幅広い収録ジャンルの中から好みや気分に合わせて選べる。 --後述の追加ダウンロードでは、詩集・歌集・句集(石川啄木『一握の砂』など)や、現代作家による新作も加わる。 ''本の追加ダウンロード'' -Wi-Fi通信を通じて、作品の追加ダウンロードが無料で可能。 --最大保存数は約20冊(本の長さによる)。ダウンロードしたデータはDS本体ではなく本ソフトのROM内に保存される。 --ダウンロードした本を、DSワイヤレス通信で他のソフトに渡すこともできる。 --ちなみに岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズがやたら充実している。 --6人の現代作家が、自分の思い入れのある文学作品をモチーフに書き下ろした新作短編小説をダウンロードすることもできた(期間限定)。 --&color(red){''2014年5月20日にニンテンドーWi-Fiコネクションが終了したので、現在は利用不可能。''} ''優れた操作性'' -細かい所まで気の配られたシステムにより、実際の本を読み進める感覚で読める。 --DSを縦に持つスタイルで、2つの画面を書籍の見開きページに見立てて表示している。 --ページめくりはタッチペンとボタン操作のどちらでも可能。標準ではDS右辺が下になるように持つが、左辺が下になる持ち方も可能で、その際は十字ボタンがページめくりに割り当てられる。 --しおり機能がある。1冊当たり3枚までしおりを挟み、その位置が保存される。お気に入りのところを記録するなら十分すぎる数。しおりを使わなくても、中断からの再開時はそこからになる。 --スライドバー式のページジャンプが可能。操作性は悪くなく、一気にページをめくれる。 --文字の大きさは2段階から選択可能で、細かい文字が苦手なお年寄りにも読みやすい。またフォントが高品質で文字のジャギが少ないという評価もある。 ''あらすじ機能'' --『あらすじで読む日本の名著』の著者である小川義男の監修によるあらすじが、すべての作品に付属している(ダウンロード作品にはついていない)。 --あらすじと本編には互いに対応するタグ(マーク)が複数の箇所に設定されている。あらすじから本編の該当箇所にジャンプしたり、逆に本編からあらすじに飛ぶことも可能。 --あらすじだけを読んでとりあえず話の内容を把握したり、導入部はあらすじで読み飛ばして面白そうな部分だけ本文を読んだり、登場人物がわからなくなった時にあらすじを読み返して確認するなど、活用の幅は広い。 --あらすじとは別に、作者紹介と作品の背景を解説する文章も添えられている。 ''Wi-Fiによる感想ランキング機能'' -読み終わった本に対して、10段階の総合評価と、10種類の感想キーワードから当てはまるものを選択して、Wi-Fi通信で投票できた。 --感想は「感動的」「泣ける」「切ない」「心温まる」「悲しい」「怖い」「痛快」「衝撃的」「感慨深い」「不思議」の10種類で、その作品が該当すると思ったものにチェックを入れて送信する。 -こうして集積された多数のユーザーの感想をもとに、総合評価のランキングや特定感想ごとのランキングを表示。これを頼りに本を選べる。 --例えば「感動的」に当てはまると思われた票を最も多く集めたのは菊池寛『恩讐の彼方に』、「不思議」の票が最も多いのは芥川龍之介『河童』、といった具合である(2013年7月現在)。 ''本の案内機能'' -「本の案内」という機能があり、5つの質問に答えていくと、その日の気分に合わせて本を選んでくれる。心理テストのような大雑把なものだが、迷ったときの手がかりぐらいにはなる。 ''環境音重視のBGM'' -読書中のBGMは「クラシック喫茶」「ジャズ喫茶」「ビーチ」「渓流」「森林」「公園」「夏の縁側」「秋の縁側」「寝台列車」「名曲クラシック」のうちから選択できる。~ このうち音楽と呼べるのは最初の2つと最後の1つのみで、いろいろな曲がメドレー形式で流れる。それ以外は環境音である。 --音楽よりも環境音が充実している点がユニーク。音楽を聞きたいのなら自分で好きな曲を用意すれば良いのだから、納得できる仕様ではある。 ''本を意識した演出'' -「本を選ぶ」画面は、本棚に文庫本の背表紙が並んだ様子を再現している。背表紙の厚みは数段階あり、本文の長さに対応している。 -読みたい本の背表紙をタッチすると表紙が表示される。実在の書籍を再現したものではないが、それらしいイラストとデザインが配されている。 --表紙には帯までついており、その本にふさわしいキャッチコピーが記されている ---例えば宮沢賢治『銀河鉄道の夜』なら「幻想的で美しい でもホロリと切ない 最高峰のファンタジー」といった具合である。 -ページめくり操作を実行すると、実際にページをめくるアニメーションが挿入され、表紙の裏(専門用語で「表2」)と中表紙が現れる。さらにめくると本文が始まる。 -このように、徹頭徹尾「本であること」を意識した演出により、実際の読書に近い感覚を味わえる。 ''新字体・新仮名遣い'' -収録されている作品はすべて新字体・新仮名遣いで表記されており、現代人にも読みやすくなっている。 --たとえば梶井基次郎『檸檬』の一節を例に取ると、《そして私は活動寫眞の看板畫が奇體な趣きで街を彩つてゐる京極を下つて行つた。》ではなく《そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った。》と書かれている。 ---- **問題点 -ダウンロード配信は保存数に限度がある。そのため読んでは消し、またダウンロードして……を繰り返すことになる。 -実際に開いてみるまで、本の長さがわからない。 --背表紙の厚みである程度は推察できるのだが、大雑把に数段階に分かれているだけである。「寝る前の短い時間に短編を一つ読みたい」といった時には不便。「本の長さ順に並び替え」などの機能が欲しかった。 ---- **総評 本棚の大半を占拠するほどの分量がDSカード一枚に収まるようになったのは、時代を感じるところである。~ 通勤・通学の合間に、寝る前のちょっとした時間に、腰を据えてじっくりと…DSを開けば100冊の文学の世界に誘われる。 現在はスマートフォンが普及しており、青空文庫閲覧アプリもたくさん存在する。それらを用いて青空文庫のすべてを無料で読めることを考えると、本作の存在意義は発売当時にくらべて減少していると言えるかもしれない。~ しかしあらすじ機能や感想機能、本らしさを追求した演出、そしてDSの2画面を開いた本の左右のページに見立てるアイデアなど、本作独自の数々の要素は今も魅力を失ってはいない。スマートフォンを持っていない、あるいは上手く使いこなせない学生や年輩者にもぜひ勧めたいソフトである。~ そして、スマートフォンや読書専用端末が普及していなかった2007年の時点で、ここまで完成度の高い電子書籍環境を安価で実現したこと自体、記録に留められるべきだろう。 ---- ---- **余談 -任天堂の歴史において初めて「CEROレーティング:教育・データベース」に区分されたソフトである。 -本作以前に発売されていたDS用読書ソフトとしては、『一度は読んでおきたい 日本の文学全集100選』(スパイク、2007年7月26日、3,990円)と『図書館DS 世界名作&推理小説&怪談&文豪 』(ドラス、2007年8月2日、3,990円)がある。いずれも基本的な操作法やDS本体を縦に持つアイデアなどが本作と共通・類似している。 -ニンテンドーDSに対応する「ニンテンドーWi-Fiコネクション」のサービスが2014年5月20日に終了。これに伴い、本作の追加ダウンロードサービスと感想ランキング機能も終了した。 -期間限定で配信された新作短編小説は『&amazon(4840131465,text=文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー)』に再録されたため現在でも読む事は可能。 ---- **続編 -『ちょっとDS文学全集 世界の文学20』2009年2月25日発売(DSiウェア) --海外の文学作品20編と日本の文学作品5編を収録した作品。DSiウェアとしての軽量化のため、あらすじ機能やWi-Fi通信を用いたすべての機能が省かれている。なお、収録された5編の日本作品はいずれも『DS文学全集』にも収録されている作品である。 -『大人の恋愛小説 DSハーレクインセレクション』2010年2月25日発売 --恋愛小説で有名な出版社であるハーレクインから刊行されている33作品(うち5作品は初翻訳)の海外恋愛小説を収録した読書ソフト。どちらかと言うと女性向けのソフトである。 --本作独自の機能として、人物相関図、人名や地名など固有名詞への注釈、各作品に関係したコラムなどが追加されている。またカセットROMのため、『DS文学全集』と同様のあらすじ機能、おすすめ本診断、Wi-Fiによる評価ランキングや感想機能が存続している。さらに、他のDS本体所有者に体験版(短編3本収録)をワイヤレス通信で渡す機能もあった。ただし追加書籍のダウンロードサービスは行われていない。
*DS文学全集 【でぃーえすぶんがくぜんしゅう】 |ジャンル|読書|#amazon(B000VQOKBS)| |対応機種|ニンテンドーDS|~| |メディア|256MbitDSカード|~| |発売元|任天堂|~| |開発元|ジニアス・ソノリティ|~| |発売日|2007年10月18日|~| |定価|2,800円(税込)|~| |レーティング|CERO:教育・データベース|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|名作文学100冊&br()本らしさを追求した造り|~| |>|>|CENTER:''[[Touch! Generationsシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 タイトルが本作の全てと言ってもいい作品。近代日本の名作文学100編を電子書籍化したものである。~ 著作権が失効した文学作品を保管し、誰でも無料で閲覧できるウェブサイト[[青空文庫>https://www.aozora.gr.jp/]]の協力のもと、その所蔵作品から100編を収録している。((一部の作品では任天堂が本作のために1からデータ化作業を行い、青空文庫に提供されたものも存在する。))~ [[DS電撃文庫シリーズ]]などとは異なり、ゲーム機であることを活かしたイラスト表示やサウンドエフェクトなどは無い。基本的には活字を読むだけのソフトであり、随所に文庫本を意識させる演出が盛り込まれている。 ---- **特徴・評価点 ''100編の文学作品を収録'' -収録作品数100編で税込2,800円。1冊当たり28円と考えると非常にお値打ちなソフトである。 --新美南吉『手袋を買いに』、芥川龍之介『羅生門』などの短編も合わせての数なので、実際の文庫本100冊分の分量はない。しかし、夏目漱石『こころ』、尾崎紅葉『金色夜叉』、下村湖人『次郎物語』などの長編もしっかりあるので、簡単に読み切れるほどでもない。 -「文学作品」と言われて即座に思い浮かぶような純文学小説だけでなく、童話(新美南吉『ごん狐』など)、冒険小説(押川春浪『海底軍艦』など)、ミステリ小説(夢野久作『少女地獄』など)、随筆・評論(福沢諭吉『学問のすすめ』など)も収録されているので、幅広い収録ジャンルの中から好みや気分に合わせて選べる。 --後述の追加ダウンロードでは、詩集・歌集・句集(石川啄木『一握の砂』など)や、現代作家による新作も加わる。 ''本の追加ダウンロード'' -Wi-Fi通信を通じて、作品の追加ダウンロードが無料で可能。 --最大保存数は約20冊(本の長さによる)。ダウンロードしたデータはDS本体ではなく本ソフトのROM内に保存される。 --ダウンロードした本を、DSワイヤレス通信で他のソフトに渡すこともできる。 --ちなみに岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズがやたら充実している。 --6人の現代作家が、自分の思い入れのある文学作品をモチーフに書き下ろした新作短編小説をダウンロードすることもできた(期間限定)。 --&color(red){''2014年5月20日にニンテンドーWi-Fiコネクションが終了したので、現在は利用不可能。''} ''優れた操作性'' -細かい所まで気の配られたシステムにより、実際の本を読み進める感覚で読める。 --DSを縦に持つスタイルで、2つの画面を書籍の見開きページに見立てて表示している。 --ページめくりはタッチペンとボタン操作のどちらでも可能。標準ではDS右辺が下になるように持つが、左辺が下になる持ち方も可能で、その際は十字ボタンがページめくりに割り当てられる。 --しおり機能がある。1冊当たり3枚までしおりを挟み、その位置が保存される。お気に入りのところを記録するなら十分すぎる数。しおりを使わなくても、中断からの再開時はそこからになる。 --スライドバー式のページジャンプが可能。操作性は悪くなく、一気にページをめくれる。 --文字の大きさは2段階から選択可能で、細かい文字が苦手なお年寄りにも読みやすい。またフォントが高品質で文字のジャギが少ないという評価もある。 ''あらすじ機能'' --『あらすじで読む日本の名著』の著者である小川義男の監修によるあらすじが、すべての作品に付属している(ダウンロード作品にはついていない)。 --あらすじと本編には互いに対応するタグ(マーク)が複数の箇所に設定されている。あらすじから本編の該当箇所にジャンプしたり、逆に本編からあらすじに飛ぶことも可能。 --あらすじだけを読んでとりあえず話の内容を把握したり、導入部はあらすじで読み飛ばして面白そうな部分だけ本文を読んだり、登場人物がわからなくなった時にあらすじを読み返して確認するなど、活用の幅は広い。 --あらすじとは別に、作者紹介と作品の背景を解説する文章も添えられている。 ''Wi-Fiによる感想ランキング機能'' -読み終わった本に対して、10段階の総合評価と、10種類の感想キーワードから当てはまるものを選択して、Wi-Fi通信で投票できた。 --感想は「感動的」「泣ける」「切ない」「心温まる」「悲しい」「怖い」「痛快」「衝撃的」「感慨深い」「不思議」の10種類で、その作品が該当すると思ったものにチェックを入れて送信する。 -こうして集積された多数のユーザーの感想をもとに、総合評価のランキングや特定感想ごとのランキングを表示。これを頼りに本を選べる。 --例えば「感動的」に当てはまると思われた票を最も多く集めたのは菊池寛『恩讐の彼方に』、「不思議」の票が最も多いのは芥川龍之介『河童』、といった具合である(2013年7月現在)。 ''本の案内機能'' -「本の案内」という機能があり、5つの質問に答えていくと、その日の気分に合わせて本を選んでくれる。心理テストのような大雑把なものだが、迷ったときの手がかりぐらいにはなる。 ''環境音重視のBGM'' -読書中のBGMは「クラシック喫茶」「ジャズ喫茶」「ビーチ」「渓流」「森林」「公園」「夏の縁側」「秋の縁側」「寝台列車」「名曲クラシック」のうちから選択できる。~ このうち音楽と呼べるのは最初の2つと最後の1つのみで、いろいろな曲がメドレー形式で流れる。それ以外は環境音である。 --音楽よりも環境音が充実している点がユニーク。音楽を聞きたいのなら自分で好きな曲を用意すれば良いのだから、納得できる仕様ではある。 ''本を意識した演出'' -「本を選ぶ」画面は、本棚に文庫本の背表紙が並んだ様子を再現している。背表紙の厚みは数段階あり、本文の長さに対応している。 -読みたい本の背表紙をタッチすると表紙が表示される。実在の書籍を再現したものではないが、それらしいイラストとデザインが配されている。 --表紙には帯までついており、その本にふさわしいキャッチコピーが記されている ---例えば宮沢賢治『銀河鉄道の夜』なら「幻想的で美しい でもホロリと切ない 最高峰のファンタジー」といった具合である。 -ページめくり操作を実行すると、実際にページをめくるアニメーションが挿入され、表紙の裏(専門用語で「表2」)と中表紙が現れる。さらにめくると本文が始まる。 -このように、徹頭徹尾「本であること」を意識した演出により、実際の読書に近い感覚を味わえる。 ''新字体・新仮名遣い'' -収録されている作品はすべて新字体・新仮名遣いで表記されており、現代人にも読みやすくなっている。 --たとえば梶井基次郎『檸檬』の一節を例に取ると、《そして私は活動寫眞の看板畫が奇體な趣きで街を彩つてゐる京極を下つて行つた。》ではなく《そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った。》と書かれている。 ---- **問題点 -ダウンロード配信は保存数に限度がある。そのため読んでは消し、またダウンロードして……を繰り返すことになる。 -実際に開いてみるまで、本の長さがわからない。 --背表紙の厚みである程度は推察できるのだが、大雑把に数段階に分かれているだけである。「寝る前の短い時間に短編を一つ読みたい」といった時には不便。「本の長さ順に並び替え」などの機能が欲しかった。 ---- **総評 本棚の大半を占拠するほどの分量がDSカード一枚に収まるようになったのは、時代を感じるところである。~ 通勤・通学の合間に、寝る前のちょっとした時間に、腰を据えてじっくりと…DSを開けば100冊の文学の世界に誘われる。 現在はスマートフォンが普及しており、青空文庫閲覧アプリもたくさん存在する。それらを用いて青空文庫のすべてを無料で読めることを考えると、本作の存在意義は発売当時にくらべて減少していると言えるかもしれない。~ しかしあらすじ機能や感想機能、本らしさを追求した演出、そしてDSの2画面を開いた本の左右のページに見立てるアイデアなど、本作独自の数々の要素は今も魅力を失ってはいない。スマートフォンを持っていない、あるいは上手く使いこなせない学生や年輩者にもぜひ勧めたいソフトである。~ そして、スマートフォンや読書専用端末が普及していなかった2007年の時点で、ここまで完成度の高い電子書籍環境を安価で実現したこと自体、記録に留められるべきだろう。 ---- ---- **余談 -任天堂の歴史において初めて「CEROレーティング:教育・データベース」に区分されたソフトである。 -本作以前に発売されていたDS用読書ソフトとしては、『一度は読んでおきたい 日本の文学全集100選』(スパイク、2007年7月26日、3,990円)と『図書館DS 世界名作&推理小説&怪談&文豪 』(ドラス、2007年8月2日、3,990円)がある。いずれも基本的な操作法やDS本体を縦に持つアイデアなどが本作と共通・類似している。 -ニンテンドーDSに対応する「ニンテンドーWi-Fiコネクション」のサービスが2014年5月20日に終了。これに伴い、本作の追加ダウンロードサービスと感想ランキング機能も終了した。 -期間限定で配信された新作短編小説は『&amazon(4840131465,text=文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー)』に再録されたため現在でも読む事は可能。 ---- **続編 -『ちょっとDS文学全集 世界の文学20』2009年2月25日発売(DSiウェア) --海外の文学作品20編と日本の文学作品5編を収録した作品。DSiウェアとしての軽量化のため、あらすじ機能やWi-Fi通信を用いたすべての機能が省かれている。なお、収録された5編の日本作品はいずれも『DS文学全集』にも収録されている作品である。 -『大人の恋愛小説 DSハーレクインセレクション』2010年2月25日発売 --恋愛小説で有名な出版社であるハーレクインから刊行されている33作品(うち5作品は初翻訳)の海外恋愛小説を収録した読書ソフト。どちらかと言うと女性向けのソフトである。 --本作独自の機能として、人物相関図、人名や地名など固有名詞への注釈、各作品に関係したコラムなどが追加されている。またカセットROMのため、『DS文学全集』と同様のあらすじ機能、おすすめ本診断、Wi-Fiによる評価ランキングや感想機能が存続している。さらに、他のDS本体所有者に体験版(短編3本収録)をワイヤレス通信で渡す機能もあった。ただし追加書籍のダウンロードサービスは行われていない。

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