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*ディザスター デイ オブ クライシス
【でぃざすたー でい おぶ くらいしす】
|ジャンル|サバイバルアクションゲーム|CENTER:&amazon(B0017KJZOO)|
|対応機種|Wii|~|
|発売元|任天堂|~|
|開発元|モノリスソフト|~|
|発売日|2008年9月25日|~|
|定価|6,476円(税別)|~|
|レーティング|CERO:C(15歳以上対象)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|プレイする映画&br()完成度の高いアクションシーンの数々|~|
#contents(fromhere)
----
**概要
任天堂発売、『[[ゼノシリーズ]]』や『[[バテン・カイトス>バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海]]』でおなじみのモノリスソフト製のアクションゲーム。~
そのためか「みんなのゲーム会社」のイメージの強い任天堂としては異色とも言えるほどハードで緊迫感ある内容になっている。~
キャッチコピーは「ついに始まってしまった…最悪の一日が。」「Wiiで映画俳優」「主人公はあなた」。
----
**ストーリー
災害現場で救助活動を行うレスキュー隊員だった主人公のレイモンド。通称・レイ。~
火山での人命救助中に噴火に巻き込まれ、レスキュー隊員の相棒でもあった親友を失ってしまう。~
~
それから1年経ったある日、レスキュー隊員を辞めて市の職員として働くレイの耳にさらなる最悪の事態が告げられた。~
壊滅したはずの武装集団による誘拐事件。~
そこで彼らに人質としてさらわれたのが、亡き親友の妹だった…。~
~
救助に向かうレイの前に立ちはだかる地震や津波、噴火、洪水、そしてハリケーン…。~
~
彼はこの”最悪の1日”を無事に乗り越えることができるのだろうか?~
([[公式サイト>http://www.nintendo.co.jp/wii/rdzj/story/index.html]]より引用)
----
**システム
-災害をテーマとしたサバイバルアクションだが『[[絶体絶命都市]]』のように災害から生き延びる事が主題なのではなく、次々と災害が襲い来る中、屈強な主人公がピンチを豪快に突破し、立ちはだかる敵を倒して先に進むダイナミックなアクションゲームになっている。
-3D視点のアクションゲームだが、レイの行動の内全編通して共通するのは移動とダッシュ、ジャンプ程度。後は状況に応じて様々なアクションが要求されるのが本作の特徴になっている。
--武装集団「STORM」との戦いである銃撃戦は、ほとんどのパートで必要になってくる主要なアクションになる。
---システムは一般的なガンシューティング。移動などの概念はなく、基本的にはリモコンを画面に向けての銃撃と隠れるアクションのみ。銃撃戦クリアでBP(バトルポイント)が手に入る。
---Cボタンを押すとその間ズームができる。ズーム中は敵に与えるダメージも敵から食らうダメージも倍になり、「コンセントレーションゲージ」というゲージを消費する。
--ステージ内には随所に助けを求めている人がいる((災害の被災者は勿論、テロリストとの戦いで負傷した特殊部隊員などもいる。))。レイは元レスキュー隊員なだけあって彼等を救助する事が可能であり、助けるとSP(サバイバルポイント)が手に入る。助ける手段は相手により様々。
--レイには体力とは別にスタミナが設定されており、時間経過や走りすぎてバーストすることで減少しゼロになると体力が減り出す。スタミナは随所に落ちている食料を食べる事で回復する。これら食料は災害ゲーらしい非常食などではなく、何故か''異様にでかいハンバーガー''や、''わざわざ切ってあるスイカ''等と、妙にユーモラスなものばかりである。
---これらにかぶりついて瞬く間に完食し、「Delicious」と呟くレイの姿は何とも言えない愛嬌を醸し出している。
-各ステージクリア後は「インターミッション」という場面になり、獲得したSPとBPを消費してレイの強化ができる。
--SPはレイ本人の能力強化に用いる。隠れる速度やリロード速度を高める「銃さばき」やアイテムの所持限界を高める「所持数」といったパラメーターがある。体力はここでは強化出来ず、特定の救助者を助けると初回救助時のみ向上する。
--BPは武器の強化に用いる。新しい武器を購入したり、入手済みの武器の威力や装填数を強化出来る。
---ゲームを進めると、「射撃場」という場所でBPを稼ぐことができるようになる。最初にBPを一定量消費し、次々現れるターゲットを倒すことでBPを手に入れられる。特定のステージで会える「エリック」という人物からは、特殊な射撃場のチケットがもらえ、この射撃場を条件を満たしてクリアすると新しい武器が解禁される。
----
**評価点
-緊迫感溢れる演出と、盛り上がるシナリオ。
--まるでハリウッドアクション映画のような数々の演出が本作の特徴である。まさしく「プレイする映画」というにふさわしい。画質もWiiの中ではかなり上質。
---カメラワークは映画のごとく視点切り替えを多用し、字幕の雰囲気や台詞回しも非常にそれらしく作られている。例えば、「火災の中車で脱出する際、車のエンジンがなかなかかからず焦る」という映画としてはよくある光景だが、ゲームとなると省略されやすいシーンもキチンと描かれている。
--OPは本編のハイライトを切り取った内容と、最後にバンとタイトルを打ち出す演出により、完璧なまでに映画予告編のオマージュになっている。
--基本のシナリオは「悪の組織にさらわれたヒロインをヒーローが助ける」という超王道なものだが、息をつかせぬテンポで次々襲いかかる災害と、それを次々と突破するレイの姿が非常に爽快。「災害をメインテーマにしたアクションゲーム」というのは比較的珍しいこともあり、インパクトは強い。
---登場する災害は地震、ハリケーン、噴火、洪水などもあるが、火炎竜巻((広範囲の火事に伴い発生する炎の竜巻。なお、ゲーム中ではこの表記だが、実際の災害用語としては「火災旋風」の方が一般的。))、ラハール((火山噴火後に、火山灰に雨が降ることで起きる濁流。))などのやや珍しい災害も取り扱っており、バリエーション豊か。災害ごとに要求されるアクションも異なるので、先に進むとまた新鮮な気持ちでプレイできる。クリア後のボーナスステージではなんと''隕石に立ち向かう羽目に''。
-Wiiの特性を活かした操作性。
--両手をリモコンに見立てて全力疾走、リモコンを押し込んで心臓マッサージ、リモコンをハンドルとしてカーアクション…と「リモコンを使わせること」に違和感を感じさせない操作性の数々は見事。実際に自分がその場にいるかのような臨場感がある。
--基本の移動はスティックとボタンであり、リモコン操作が要求される場面はここぞ、というシーンに限られる。手に負担がかからないよう配慮されている。
-戦闘パートの完成度も高い。
--ズーム+ヘッドショットで多くの敵をほぼ一撃で倒せることもあり、爽快感は抜群。一方で油断すると平気で死にかける程度には難易度は高く、各種武器の特性を知りつつ、敵の隙を上手く突いて倒していく必要がある。
--使用できる武器はハンドガン、ショットガン、アサルトライフルなどの基本武器の他、その辺に落ちている「がらくた」、異様な装填数と極端に低い命中率の「ガトリングガン」、リモコンを振って弾を操る「パルスガン」など妙な武器も多い。
-豊富なやりこみ要素。
--特定の条件で獲得できる全100種類の称号。普通にプレイしていれば埋まる物から、的確に狙わないと困難なものまで種類は豊富。
--クリア済みステージに配置された看板を収集していく「スタミナスキャンペーン」。集めるとSPにボーナスが入る。
--他にも、ボス敵を特殊な条件を満たして倒すことで手に入る特殊武器、レイの外見を変えるコスチュームなど探索要素は多い。
-ステージ中に多数のチェックポイントが配置されており、ゲームオーバーになっても好きなチェックポイントから再開できる。
--回復アイテムを使い果たしてしまった状態で戦闘に入りどうしようもなくなっても、先の戦闘に巻き戻って回復アイテムを節約した上で再挑戦といったことが容易である。
-多数の種類のある災害ファイル。
--現実の災害に即し、ゲーム中に発生したあらゆる災害について解説してくれる。ゲームなのでそこまで本格的ではないが、心臓マッサージや津波発生時の対策など実際に参考になる部分も多い。
-重厚感あるBGM。スタッフロールに楽器担当が記されていることからも分かるとおり、生演奏での収録だと思われる。
--あまりゲーム音楽らしくないと良く言われるが、それもそのはず。BGM担当は『相棒』『家政婦のミタ』『探偵はBARにいる』で有名な池頼広氏。映画であることを重視した人選だろう。
----
**賛否両論点
-王道過ぎてチープな展開。
--全体的に展開がありきたりで、先が読みやすい。良く言えば王道。悪く言えばありがちである。
---とは言え、アクションゲームなのでそこまで大きな問題ではなく、次々迫る災害でプレイ中はさほど気になる物ではないが。
---どちらかというと敢えてこういった方向性にしている節もある。キャッチコピーにあるように、プレイヤーが映画の主役を演じるという感覚を出すべく、判りやすいコテコテのハリウッド映画風のストーリーにした模様。寧ろ、典型的なハリウッド映画のオマージュと言うべき内容である。
---核爆弾が出てくるのはハリウッドにおいてお約束中のお約束であるし、その核爆弾の解体に''赤と青のコード''などとお約束過ぎる展開もある。「どう見ても俺この先裏切るぜ?」という戦闘狂系の敵キャラがキッチリ裏切ってくれるのも予想通り。
---ラストの展開も多少尻切れトンボ気味。ただ、ラスボスがあっさり死ぬのも、最後に主人公とヒロインだけが生き残り墓参りに行くのも使い古された手法なので、これも狙った物なのかもしれない。
--レイの行動に多少ツッコミどころがないでもない。これもアクション映画の主人公なら、珍しい事でもないが。
---大地震が発生しているというのに、わざわざ地下鉄という密閉空間に突っ込む。しかも2回も。1回目はSTORMから逃げているところだったので仕方がない面もあるが、2回目は完全にSTORMを振り切り、しかも津波が起こっているという更にヤバい状態だったのにわざわざ地下に逃げる。
---目前に津波が迫っているの悠長に銃撃戦。確かに核爆弾の奪取という重大な目標はあったが、後にこの核爆弾は''津波に巻き込まれて使い物にならなくなった''という拍子抜けの事実が判明し、ほぼ骨折り損になっている。
----
**問題点
-難易度の高いカーアクションパート。
--全体的に制限時間がシビア、かつ道も複雑なところが多く、他のところはあっさりクリアできてもここで詰まるという人も少なくない。戦闘と異なり、レイを強化してゴリ押しという手が通用しないため、実力一本勝負。
---ここだけ図抜けて難しい、というほどでもなく何度も再挑戦して道を覚えればクリアは可能な範疇である。普通のブレーキとサイドブレーキの2種のブレーキを使い分けるのが鍵になるだろう。
--これは余談だが、ゲーム中レイが乗ることになる車は''最後の一台以外全て廃車と化している''。走っている場所が場所なので仕方がないが、すさまじい使いつぶしである。
-カメラワーク。
--やや微妙なところ。自由に操作可能ではあるのだが、狭いところに入ったりすると多少不自由を感じる。方向転換も少し遅め。
-多少テンポの悪い場所がある。
--ムービーはスキップできるが、リアルタイムイベントは不可。そこまで長いものはないが、難易度の高いボス戦となれば必ずボスの台詞があるため、再挑戦のテンポが削がれる。
--ロード時間が少し長い。頻度は少ないものの、リトライ時は必ずロードが挟まれるのでやはり再挑戦時のテンポが悪い。
---ロード中は、人物や場所の解説が挟まれたり攻略のヒントを教えてくれる(ボス戦ではそのボスの弱点も)など、ストレスを軽減する配慮はある。
-クリア後のムービー閲覧モードで見られるおまけムービーが紛らわしい。
--本編終了後のシーンなのだが、最悪の日を乗り越えた事を誇らしげに語る大統領に「''地球に隕石が迫っている''」事が告げられるというもの。そして大統領の唖然とした顔が映って終わる。
--実際は「射撃場」のエクストラステージである隕石破壊ミッションの冒頭で流れるムービーなのだが、そのミッションをプレイせずただこのムービーだけを見た場合、「せっかくハッピーエンドを迎えたのにその後ですぐに人類は滅亡した」という非常に後味の悪いオチだったと思えてしまう。しかも「もうひとつのエンディング」という紛らわしいタイトルが付けられているので誤解を招きやすい。
----
**総評
「プレイする映画」というコンセプトを重視した作風であり、ハリウッド系のアクション映画を完璧にオマージュした完成度の高いアクションゲーム。~
世間一般での知名度はやや低めだが、プレイした人からの評価は高く、珍しいジャンルの「災害アクション」の傑作と言える一本である。
----
**余談
-続編やリメイクを希望する意見も多いのだが、''マグニチュード9.0の巨大地震と大津波''、(バッドエンドとは言え)''原子爆弾が爆発するシーン''という近年の日本で扱うには厳しいネタが含まれているので、実現するかは不明。
--2011年の東日本大震災後の日本ではこのような表現は世間の風当たり云々より、自主規制で控える傾向が強い。災害アクションの代表作『[[絶体絶命都市]]』シリーズもそれによって新作が開発中止になったばかりか、シリーズ作品全てを販売終了・廃盤とするなど、徹底した自粛が行われた(後に復活)。
--一方、『[[ルートダブル -Before Crime * After Days-]]』((ストーリー中に原子炉事故や放射能汚染が発生する))のようにこう言った題材を扱う作品ながらも、被災者を貶めるものではないと判断されて発売に至ったケースもある。内容の度合いにもよるが、発売できるか否かはメーカー次第と言う事だろう。
--震災から時が流れた現在では当時ほど風当たりは強くはなく、このような題材を扱う作品も登場してきている。
*DISASTER DAY OF CRISIS
【でぃざすたー でい おぶ くらいしす】
|ジャンル|サバイバルアクションゲーム|CENTER:&amazon(B0017KJZOO)|
|対応機種|Wii|~|
|発売元|任天堂|~|
|開発元|モノリスソフト|~|
|発売日|2008年9月25日|~|
|定価|6,476円(税別)|~|
|レーティング|CERO:C(15歳以上対象)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|プレイする映画&br()完成度の高いアクションシーンの数々|~|
#contents(fromhere)
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**概要
任天堂発売、『[[ゼノシリーズ]]』や『[[バテン・カイトス>バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海]]』でおなじみのモノリスソフト製のアクションゲーム。~
そのためか「みんなのゲーム会社」のイメージの強い任天堂としては異色とも言えるほどハードで緊迫感ある内容になっている。~
キャッチコピーは「ついに始まってしまった…最悪の一日が。」「Wiiで映画俳優」「主人公はあなた」。
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**ストーリー
災害現場で救助活動を行うレスキュー隊員だった主人公のレイモンド。通称・レイ。~
火山での人命救助中に噴火に巻き込まれ、レスキュー隊員の相棒でもあった親友を失ってしまう。~
~
それから1年経ったある日、レスキュー隊員を辞めて市の職員として働くレイの耳にさらなる最悪の事態が告げられた。~
壊滅したはずの武装集団による誘拐事件。~
そこで彼らに人質としてさらわれたのが、亡き親友の妹だった…。~
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救助に向かうレイの前に立ちはだかる地震や津波、噴火、洪水、そしてハリケーン…。~
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彼はこの”最悪の1日”を無事に乗り越えることができるのだろうか?~
([[公式サイト>http://www.nintendo.co.jp/wii/rdzj/story/index.html]]より引用)
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**システム
-災害をテーマとしたサバイバルアクションだが『[[絶体絶命都市]]』のように災害から生き延びる事が主題なのではなく、次々と災害が襲い来る中、屈強な主人公がピンチを豪快に突破し、立ちはだかる敵を倒して先に進むダイナミックなアクションゲームになっている。
-3D視点のアクションゲームだが、レイの行動の内全編通して共通するのは移動とダッシュ、ジャンプ程度。後は状況に応じて様々なアクションが要求されるのが本作の特徴になっている。
--武装集団「STORM」との戦いである銃撃戦は、ほとんどのパートで必要になってくる主要なアクションになる。
---システムは一般的なガンシューティング。移動などの概念はなく、基本的にはリモコンを画面に向けての銃撃と隠れるアクションのみ。銃撃戦クリアでBP(バトルポイント)が手に入る。
---Cボタンを押すとその間ズームができる。ズーム中は敵に与えるダメージも敵から食らうダメージも倍になり、「コンセントレーションゲージ」というゲージを消費する。
--ステージ内には随所に助けを求めている人がいる((災害の被災者は勿論、テロリストとの戦いで負傷した特殊部隊員などもいる。))。レイは元レスキュー隊員なだけあって彼等を救助する事が可能であり、助けるとSP(サバイバルポイント)が手に入る。助ける手段は相手により様々。
--レイには体力とは別にスタミナが設定されており、時間経過や走りすぎてバーストすることで減少しゼロになると体力が減り出す。スタミナは随所に落ちている食料を食べる事で回復する。これら食料は災害ゲーらしい非常食などではなく、何故か''異様にでかいハンバーガー''や、''わざわざ切ってあるスイカ''等と、妙にユーモラスなものばかりである。
---これらにかぶりついて瞬く間に完食し、「Delicious」と呟くレイの姿は何とも言えない愛嬌を醸し出している。
-各ステージクリア後は「インターミッション」という場面になり、獲得したSPとBPを消費してレイの強化ができる。
--SPはレイ本人の能力強化に用いる。隠れる速度やリロード速度を高める「銃さばき」やアイテムの所持限界を高める「所持数」といったパラメーターがある。体力はここでは強化出来ず、特定の救助者を助けると初回救助時のみ向上する。
--BPは武器の強化に用いる。新しい武器を購入したり、入手済みの武器の威力や装填数を強化出来る。
---ゲームを進めると、「射撃場」という場所でBPを稼ぐことができるようになる。最初にBPを一定量消費し、次々現れるターゲットを倒すことでBPを手に入れられる。特定のステージで会える「エリック」という人物からは、特殊な射撃場のチケットがもらえ、この射撃場を条件を満たしてクリアすると新しい武器が解禁される。
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**評価点
-緊迫感溢れる演出と、盛り上がるシナリオ。
--まるでハリウッドアクション映画のような数々の演出が本作の特徴である。まさしく「プレイする映画」というにふさわしい。画質もWiiの中ではかなり上質。
---カメラワークは映画のごとく視点切り替えを多用し、字幕の雰囲気や台詞回しも非常にそれらしく作られている。例えば、「火災の中車で脱出する際、車のエンジンがなかなかかからず焦る」という映画としてはよくある光景だが、ゲームとなると省略されやすいシーンもキチンと描かれている。
--OPは本編のハイライトを切り取った内容と、最後にバンとタイトルを打ち出す演出により、完璧なまでに映画予告編のオマージュになっている。
--基本のシナリオは「悪の組織にさらわれたヒロインをヒーローが助ける」という超王道なものだが、息をつかせぬテンポで次々襲いかかる災害と、それを次々と突破するレイの姿が非常に爽快。「災害をメインテーマにしたアクションゲーム」というのは比較的珍しいこともあり、インパクトは強い。
---登場する災害は地震、ハリケーン、噴火、洪水などもあるが、火炎竜巻((広範囲の火事に伴い発生する炎の竜巻。なお、ゲーム中ではこの表記だが、実際の災害用語としては「火災旋風」の方が一般的。))、ラハール((火山噴火後に、火山灰に雨が降ることで起きる濁流。))などのやや珍しい災害も取り扱っており、バリエーション豊か。災害ごとに要求されるアクションも異なるので、先に進むとまた新鮮な気持ちでプレイできる。クリア後のボーナスステージではなんと''隕石に立ち向かう羽目に''。
-Wiiの特性を活かした操作性。
--両手をリモコンに見立てて全力疾走、リモコンを押し込んで心臓マッサージ、リモコンをハンドルとしてカーアクション…と「リモコンを使わせること」に違和感を感じさせない操作性の数々は見事。実際に自分がその場にいるかのような臨場感がある。
--基本の移動はスティックとボタンであり、リモコン操作が要求される場面はここぞ、というシーンに限られる。手に負担がかからないよう配慮されている。
-戦闘パートの完成度も高い。
--ズーム+ヘッドショットで多くの敵をほぼ一撃で倒せることもあり、爽快感は抜群。一方で油断すると平気で死にかける程度には難易度は高く、各種武器の特性を知りつつ、敵の隙を上手く突いて倒していく必要がある。
--使用できる武器はハンドガン、ショットガン、アサルトライフルなどの基本武器の他、その辺に落ちている「がらくた」、異様な装填数と極端に低い命中率の「ガトリングガン」、リモコンを振って弾を操る「パルスガン」など妙な武器も多い。
-豊富なやりこみ要素。
--特定の条件で獲得できる全100種類の称号。普通にプレイしていれば埋まる物から、的確に狙わないと困難なものまで種類は豊富。
--クリア済みステージに配置された看板を収集していく「スタミナスキャンペーン」。集めるとSPにボーナスが入る。
--他にも、ボス敵を特殊な条件を満たして倒すことで手に入る特殊武器、レイの外見を変えるコスチュームなど探索要素は多い。
-ステージ中に多数のチェックポイントが配置されており、ゲームオーバーになっても好きなチェックポイントから再開できる。
--回復アイテムを使い果たしてしまった状態で戦闘に入りどうしようもなくなっても、先の戦闘に巻き戻って回復アイテムを節約した上で再挑戦といったことが容易である。
-多数の種類のある災害ファイル。
--現実の災害に即し、ゲーム中に発生したあらゆる災害について解説してくれる。ゲームなのでそこまで本格的ではないが、心臓マッサージや津波発生時の対策など実際に参考になる部分も多い。
-重厚感あるBGM。スタッフロールに楽器担当が記されていることからも分かるとおり、生演奏での収録だと思われる。
--あまりゲーム音楽らしくないと良く言われるが、それもそのはず。BGM担当は『相棒』『家政婦のミタ』『探偵はBARにいる』で有名な池頼広氏。映画であることを重視した人選だろう。
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**賛否両論点
-王道過ぎてチープな展開。
--全体的に展開がありきたりで、先が読みやすい。良く言えば王道。悪く言えばありがちである。
---とは言え、アクションゲームなのでそこまで大きな問題ではなく、次々迫る災害でプレイ中はさほど気になる物ではないが。
---どちらかというと敢えてこういった方向性にしている節もある。キャッチコピーにあるように、プレイヤーが映画の主役を演じるという感覚を出すべく、判りやすいコテコテのハリウッド映画風のストーリーにした模様。寧ろ、典型的なハリウッド映画のオマージュと言うべき内容である。
---核爆弾が出てくるのはハリウッドにおいてお約束中のお約束であるし、その核爆弾の解体に''赤と青のコード''などとお約束過ぎる展開もある。「どう見ても俺この先裏切るぜ?」という戦闘狂系の敵キャラがキッチリ裏切ってくれるのも予想通り。
---ラストの展開も多少尻切れトンボ気味。ただ、ラスボスがあっさり死ぬのも、最後に主人公とヒロインだけが生き残り墓参りに行くのも使い古された手法なので、これも狙った物なのかもしれない。
--レイの行動に多少ツッコミどころがないでもない。これもアクション映画の主人公なら、珍しい事でもないが。
---大地震が発生しているというのに、わざわざ地下鉄という密閉空間に突っ込む。しかも2回も。1回目はSTORMから逃げているところだったので仕方がない面もあるが、2回目は完全にSTORMを振り切り、しかも津波が起こっているという更にヤバい状態だったのにわざわざ地下に逃げる。
---目前に津波が迫っているの悠長に銃撃戦。確かに核爆弾の奪取という重大な目標はあったが、後にこの核爆弾は''津波に巻き込まれて使い物にならなくなった''という拍子抜けの事実が判明し、ほぼ骨折り損になっている。
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**問題点
-難易度の高いカーアクションパート。
--全体的に制限時間がシビア、かつ道も複雑なところが多く、他のところはあっさりクリアできてもここで詰まるという人も少なくない。戦闘と異なり、レイを強化してゴリ押しという手が通用しないため、実力一本勝負。
---ここだけ図抜けて難しい、というほどでもなく何度も再挑戦して道を覚えればクリアは可能な範疇である。普通のブレーキとサイドブレーキの2種のブレーキを使い分けるのが鍵になるだろう。
--これは余談だが、ゲーム中レイが乗ることになる車は''最後の一台以外全て廃車と化している''。走っている場所が場所なので仕方がないが、すさまじい使いつぶしである。
-カメラワーク。
--やや微妙なところ。自由に操作可能ではあるのだが、狭いところに入ったりすると多少不自由を感じる。方向転換も少し遅め。
-多少テンポの悪い場所がある。
--ムービーはスキップできるが、リアルタイムイベントは不可。そこまで長いものはないが、難易度の高いボス戦となれば必ずボスの台詞があるため、再挑戦のテンポが削がれる。
--ロード時間が少し長い。頻度は少ないものの、リトライ時は必ずロードが挟まれるのでやはり再挑戦時のテンポが悪い。
---ロード中は、人物や場所の解説が挟まれたり攻略のヒントを教えてくれる(ボス戦ではそのボスの弱点も)など、ストレスを軽減する配慮はある。
-クリア後のムービー閲覧モードで見られるおまけムービーが紛らわしい。
--本編終了後のシーンなのだが、最悪の日を乗り越えた事を誇らしげに語る大統領に「''地球に隕石が迫っている''」事が告げられるというもの。そして大統領の唖然とした顔が映って終わる。
--実際は「射撃場」のエクストラステージである隕石破壊ミッションの冒頭で流れるムービーなのだが、そのミッションをプレイせずただこのムービーだけを見た場合、「せっかくハッピーエンドを迎えたのにその後ですぐに人類は滅亡した」という非常に後味の悪いオチだったと思えてしまう。しかも「もうひとつのエンディング」という紛らわしいタイトルが付けられているので誤解を招きやすい。
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**総評
「プレイする映画」というコンセプトを重視した作風であり、ハリウッド系のアクション映画を完璧にオマージュした完成度の高いアクションゲーム。~
世間一般での知名度はやや低めだが、プレイした人からの評価は高く、珍しいジャンルの「災害アクション」の傑作と言える一本である。
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**余談
-続編やリメイクを希望する意見も多いのだが、''マグニチュード9.0の巨大地震と大津波''、(バッドエンドとは言え)''原子爆弾が爆発するシーン''という近年の日本で扱うには厳しいネタが含まれているので、実現するかは不明。
--2011年の東日本大震災後の日本ではこのような表現は世間の風当たり云々より、自主規制で控える傾向が強い。災害アクションの代表作『[[絶体絶命都市]]』シリーズもそれによって新作が開発中止になったばかりか、シリーズ作品全てを販売終了・廃盤とするなど、徹底した自粛が行われた(後に復活)。
--一方、『[[ルートダブル -Before Crime * After Days-]]』((ストーリー中に原子炉事故や放射能汚染が発生する))のようにこう言った題材を扱う作品ながらも、被災者を貶めるものではないと判断されて発売に至ったケースもある。内容の度合いにもよるが、発売できるか否かはメーカー次第と言う事だろう。
--震災から時が流れた現在では当時ほど風当たりは強くはなく、このような題材を扱う作品も登場してきている。