ロイヤルブラッド
【ろいやるぶらっど】
ジャンル
|
SLG
|
|
対応機種
|
ファミリーコンピュータ
|
メディア
|
4MbitROMカートリッジ
|
発売・開発元
|
コーエー
|
発売日
|
1991年8月29日
|
定価
|
10,080円(税抜)
|
プレイ人数
|
1~2人
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
家庭用ユーザー向けに単純なシステムを採用したSLG
|
概要
コーエーおなじみの歴史…ではなく架空の世界をモチーフにした国取りSLG。
舞台はケルト神話時代がモチーフで、魔術師やモンスターなどが混在する世界。
コーエーには珍しくファミコン版が初出であり、後にPCやメガドライブ、スーパーファミコンに移植された。
「コーエー25周年記念パックVol.2」にPC-98版が収録されているほか、「コーエー定番シリーズ」で単品でも発売されている。
ストーリー
はるか遠い昔――。イシュメリアは、自然に恵まれ、妖精と人間とモンスターが平和に暮らす島国でした。
しかし、あるとき、邪悪な魔法使いザミエルが現れ、ドラゴンを魔術で呼び寄せると、その炎ですべてを焼き尽くそうとしたのです。
イシュメリアの神は、水竜パスハをつかわしました。パスハは、6人の魔術師たちと力をあわせてついにザミエルを倒します。
そして、ドラゴンを6人の魔術師とともに王の冠に封印しました。
7つの宝石がちりばめられたこの王冠は、ロイヤルブラッドと呼ばれ、王の命でのみ、その力を発揮しました。
歴代の王はその力によってイシュメリアを正しく統治したのです。平和は、しかし、永遠には続きません。
時の王エセルレッドが、王冠の巨大な力を使って、家臣の財産や美しい娘たちを奪い、叛逆者を処刑し、欲望のおもむくまま悪逆のかぎりを尽くしたのです。
王冠を放ってはおけぬ――見かねたイシュメリアの神は、父の暴政に心を痛める王女アヴェールのもとを訪れました。
苦しみにあえぐ民の声に美しい王女の胸は張り裂け、枕が涙で濡れぬ夜はありませんでした。
王が留守の明晩、王冠を盗みだして宝石を外しなさい、と神は命じました。
「赤い宝石はそのまま冠ごと持っていなさい。後でわたしが処分してしまうから……」
翌夜、王の寝室に忍び込んだアヴェールは、1つ、2つと王冠の宝石を外していきました。
外れた宝石は窓から飛び出し、闇の中に消えてゆきます。そして最後に赤い宝石だけが残ったとき……。
「何をしている、アヴェール!」振り返ると、そこには父エセルレッドが、恐ろしい顔をして立っていたのです。アヴェールは城の高い塔に閉じこめられてしまいました。
一方、6つの宝石たちは魔術師の姿にかえり、イシュメリア各地の貴族6人を訪れ、ある神託を告げました――
自分たち宝石魔術師を王冠をひとつにまとめ、この島を制覇する者こそ、新しい王となり、とらわれの王女を救うことができる、と。
こうして6人の貴族が、王冠をめざして立ち上がったのです。
システム
-
自国の領土には領主を配置して統治させる。領主は「交代」コマンドでいつでも交代可能。
-
領主を配置せず当主が直轄で治めることもできるが、能力値が約半分として扱われるため、人材不足でもない限り領主を配置したほうが良い。
-
能力値は「政治力」「軍事力」「魅力」の3つしかなく非常に単純。女性の領主は魅力が高めで軍事力が低いことが多い。
-
年齢が低いと1月になると能力値が上昇する事がある。
-
各領地では3カ月に一度、ラッキーモンスターやイーヴルモンスターが出ることがある。
-
民政(輸送と取引除く)を行った回数が多いほど上位のラッキーモンスターが出やすくなり、逆に軍事行動が多いとイーヴルモンスターが出る。
-
民政(内政)コマンドは「開発」「施し」「輸送」「取引」がある。
-
「開発」には開墾と防災があり、実行には金10必要。このゲームは災害が起きやすいので防災は重要。
-
季節の変わり目にはほぼ毎回疫病が発生し、地方と季節によって地震、水害、大火事、大雪も発生する。さらに1月になると領地の土地パラメーターが6%下がる。
-
「施し」は民の統治度を上げるコマンドで、戦争が起きた国は統治度が下がる。これが低いと得られる収入が下がる。上げるには領主の魅力が必要。
-
「輸送」は隣接国だけでなく自国領のどこへでも輸送可能。また、他国に送るだけでなく他国から輸送を受けることもできる。
-
「取引」は作物の売買を行うコマンドで、ターンを消費しない。物価は「やすい」「ふつう」「たかい」の3種類しかない。
-
いわゆる米転がしであり、作物の相場はそれぞれ「0.5」「1.0」「2.0」となる。かなり豪快な変動だが、数か月おきにしか変動しない。
-
軍事コマンドは「戦争」「雇用」「移動」「特別」がある。
-
「戦争」は隣接国に攻め入るコマンド。兵数差が大きいと相手が戦わずに逃げて行くことがある。
-
攻撃側・守備側どちらにも本陣があり、敵部隊に侵入されると負け。退却や全滅しても負け。
-
攻め込んだ側が勝利すると、領主が攻め取った国に移動する。元の国は当主直轄領となる。
-
退却する場合は隣接地域に引き上げるか、兵士も作物も捨てて本拠地へ逃げ帰るかのどちらかを選べる。
-
「雇用」はいわゆる徴兵で、兵1につき金2で雇う事ができる。
-
「移動」は隣接国に兵士と第5部隊を移動させる。物資も移動可能。移動先に別の第5部隊がいる場合は移動できないことがある。
-
空白地への移動もこれで行う。兵0の移動でも占領が可能。
領主は移動しない。
-
「特別」は傭兵やモンスターを雇ったり解約するコマンド。地域によって契約できる相手は変わる。辺境でも意外に強い相手と契約できたりもする。
-
対外コマンドは「同盟」「交渉」「計略」「調達」がある。
-
「同盟」が行えるのは最大1勢力まで。他家と同盟する場合、元の同盟は破棄される。
-
「交渉」は他国家臣の引き抜きや降伏勧告を行うコマンド。領主の引き抜きに成功すると、その地方ごと自分の領地になる。魅力が極端に低い領主もいて、わりと成功しやすい。
-
当主の血縁者は絶対に引き抜けない。所属当主が変わった場合は血縁者フラグが消えて引き抜けるようになる。
-
引き抜ける条件は交渉を仕掛ける領主の魅力の方が高く、当主の能力の合計値が相手当主より高い事。
-
王家は他貴族よりも身分が上のため降伏勧告に応じず、同盟も組まない。
-
「計略」を行うと敵国の領地を荒らすことができる。
-
「調達」は他国から物資を奪ってくるコマンド。これをやると名声が下がる。よほど貧乏な国でない限り使う事はないだろう。
-
その他のコマンドとして「情報」「交代」「委任」「探索」がある。
-
「情報」は国の情報を見るコマンド。他国の第5部隊の情報を見ることはできない。
-
他のSLGでは忍者を送るなどの手間が必要だったが、本作では遠く離れた敵国であろうといつでも情報を把握することができる。
-
「交代」は自国の領地の一部を誰が統治するか決めるコマンド。本国でなければ実行不可で、当主自ら本国以外を直接治めると行動終了。
-
他国を攻め取る度に直轄地が出来、また、直轄地でのコマンドは当主の能力の半分の効果しかない。その為、家臣にも統治させるのが効率的だが、前述のラッキーモンスターによる当主の能力を重点的に上げるのにも使える。
-
「探索」は他の領地の第5部隊を見るコマンド。やる意味はあまりないが、たまにアイテムを発見して能力値が上がることがある。
-
相談役が存在。老人(シドー)、中年男性(ライアス)、女性(フィラ)、道化師(アンガス)の4人いて、ゲームスタート時に選ぶ。
-
自国のコマンド入力時にいつでも相談でき、アドバイスをしてくれる。
-
当然だが言うとおりにした方が良い結果になるとは限らない。
-
戦争では動員する兵士を第1部隊~第4部隊に分割する。割り切れなかった分は第1部隊になる。
-
第1部隊は騎馬兵で移動力が高い。
-
第2、第4部隊は歩兵で移動力は低いが、「柵」を作ることができる。作れるのは平地のみで、橋や本陣の上には作れない。
-
本陣を守るのに使ったり、敵の進撃を止めたりできる。ただし柵を飛び越えられるモンスターもいる。
-
第3部隊は弓兵で、2マス離れた位置から被害を受けることなく攻撃が可能。隣接されると弱い。
-
敵部隊との間に他の部隊や障害物があっても攻撃が可能。斜め方向には撃てない。
-
戦争終了後、敗北側の領主が捕らえられることがある。
-
身代金が支払われると釈放される。支払われない場合は、家臣にする、逃がす、追放のどれかを選べる。
-
逃がした場合は元の当主のところには戻らず、他の当主の家臣になるか、行方不明になる。
-
領土が全てなくなった場合は、敗北側の宝石魔術師が勝利側のものとなり、敗北側の家臣全員の処遇を決める。
-
他のゲームのように当主が強制斬首されるようなことはなく、捕らえて家臣にできたり、逃げて他国の家臣になったりする。
-
家臣はともかく宝石魔術師が増えるのは大きい。宝石魔術師が2個以上になったCPU勢力はかなりの強敵となる。
評価点
-
「第5部隊」の存在。普通のSLGでは兵力が多い方が有利だが、第5部隊は兵力差をひっくり返すほど影響力が大きい。
-
戦争時は兵力が分割される第1~第4部隊とは別に運用する独立した部隊である。
-
強力な第5部隊に攻めさせれば、味方兵力にあまり損害を出さずに勝利することも可能になる。
-
「宝石魔術師(王家の王冠ドラゴンも含む)」は各当主が所持している。強力だが、一度使うと3カ月の休養が必要となる。
-
これはCPU当主も同じであり、宝石魔術師が使えなくなる3ヶ月間はこちらから攻め込むチャンスである。
-
「傭兵」と「モンスター」は金で雇うことができる。
-
傭兵は季節の変わり目に再度契約金を払わされ、払えないと離反してしまう。
-
モンスターは離反することはないが、勝手に国を荒らすことがある。身の丈に合ったものを選ぶことが必要。
-
水竜「パスハ」はラッキーモンスターとして出現することがある。1回しか使えないが、王冠ドラゴンに匹敵する強さを持つ。ただし遠距離攻撃はできない。
-
既にパスハがいる地域には出ないが、移動させて重複させることは可能。それぞれは兄弟という設定。
-
『太閤立志伝』に先駆けて、戦争時の部隊に向きの概念を取り入れている。
-
横や後ろから攻撃すると与えるダメージが大きく、反撃で受けるダメージが少なくてすむ。
-
攻撃や柵を作ると自動的にその方向を向くが、「その場で向きを変える」という行動はできず、狭い地形に追い込められるとかなり不利。
-
このため柵コマンドで向きを調整するのは重要な要素である。
-
前述の相談役の存在。
-
『信長の野望』シリーズお馴染みの軍師にあたる存在だが、既存の武将が務めるのではなく、常駐している為、どの勢力でもコマンド選びに迷わずにすむ。
-
SLGに初めて触れるFCユーザーをはじめ、初心者には非常にありがたい。
-
BGMが秀逸。作曲者は新田真澄(現:伊藤真澄)氏。
-
ファミコン音源は同時に出せる音が限られるため、ずいぶん苦労したらしい。サウンドウェア版では音源に合わせたアレンジがなされ、彼女の歌声も入っている。
-
戦略時BGMは当主ごとではなく季節ごとに変わる。季節の変わり目には死神(疫病)とか災害とか色々と起こるので特に印象に残る。
-
戦争時BGMは季節や第5部隊によって変わり、全6種類もある。ドラゴンは敵側だけあって恐ろしげな曲、パスハは癒し系。
賛否両論点
-
全体的な難易度が低めで、難易度設定もない。
-
ファミコンユーザーはPCユーザーよりも年齢層が低いため、低めの難易度にしたのは当然ともいえる。
-
しかしPC版もほとんど仕様を変えずに移植されたため、コアなPCユーザーからは「簡単すぎる」という評価を受けてしまった。
-
難易度設定がない代わりに勢力による難易度分けがなされている。
-
戦争マップが従来のHEXからスクエアになっており、また、平地・橋以外の地形が飛行可能第5部隊以外進入不可になっている。
-
マップがスクエアなのはFCユーザーへの配慮から妥当であるとして、戦闘の有利不利が相手の向きに依存しており、これもFCユーザーへの配慮の一つと言える。
-
その一方でコアなPCユーザーからは「HEXの方が良かった」という意見も。
-
パスハは水竜のくせに水地形への移動ができない。
-
2人プレイが可能。
-
どのシナリオも主役級の勢力としてブランシェ家とライル家の2つが存在する。両家を選んで協力し合うことで、強大な王家と渡り合うことが容易になる。
-
同盟もできるが両勢力だけが残っても全土統一にならず、相手の降伏勧告をあえて受け入れることもできないため、最終的には全面対決せざるを得なくなってしまう。
-
仕様の隙を突くと簡単になるテクニックがある。
-
一度使った宝石魔術師が3ヶ月間再使用できない事を利用し、わずかな兵力で攻め込んで魔術師を出させてすぐに退却し、再び攻め込むと敵は魔術師を使えない。
-
ファミコン版では兵士1で攻め込んでも敵が宝石魔術師を使ってくれた。さすがに簡単すぎたのか、別ハード版では修正が入っている。
-
敵領地に隣接する地方に兵士が多く居る(自分の領地ではなく第三勢力でも可)と、その敵領地からは攻めて来ない。
-
この仕様により隣接地の兵士がゼロでも攻められないようにできる。逆に言うと、敵の兵力が多ければ無意味で、それを分散させるのも難しい。
-
特定のシナリオではスタート直後に魅力の低い人物が領主として配置されており、最初の月でいきなり寝返らせることが可能。
-
弱小当主を選んだ場合はこのテクニックを使うとだいぶ楽になる。
-
戦争時に柵を作ったり壊したりできる確率は兵士数に依存し、100以上なら確実に成功する。
-
各部隊の兵士数が100となる兵士数400を目途に徴兵・出兵すると効率的。
-
CPU勢力と同盟を結ぶと攻めて来なくなるが、同盟勢力以外に攻め込める国がなくなった途端に同盟破棄してくる。
-
どれほど戦力差がついていようともお構いなし。こちらから破棄する手間が省けるというものだが、逆にどこへも攻め込めない状態のまま押さえつけておくことができない。
-
自然災害が起こる地域は決まっている(説明書に記載)。起きない地域もあり、そこは防災度を上げる必要がない。
問題点
-
世界や人物関係に非常に細かい設定があるのだが、その描写がゲーム中でほとんどなされない。
-
特に当主との血縁関係は引き抜きに応じるか応じないかの重要な要素なのだが、名前を見ただけでは血縁者かどうかの判別ができない。個人のステータス画面を見れば確認する事はできるが面倒。
-
移植版ではゲームスタート時などに会話が入り、ある程度人物関係や世界の情勢がわかるようになった。
-
より深く世界観に入り込みたいなら、別売りのハンドブックを購入する必要がある。俗に言うコーエーの「完全版商法」の走りとも言えるか。
-
ハンドブックはゲームの出荷本数に比べて非常に少なく入手困難で、現在でもプレミアがついている。
-
エンディングが1種類しかない。
-
せっかくシナリオ4つ、選べる当主10種類という豪華さなのに、どれでプレイしても全て同じである。
-
そもそも王家に捕らわれている王女を助け出すのが目的なのに、なぜか王家を滅ぼしてもクリアにならない。ゲーム的な都合と言ってしまえばそれまでだが…。
-
王家を滅ぼした後、捕らわれの王女を放置したまま他の勢力を滅ぼしに行き、全土統一してようやく王女を助け出しに行く。
-
宝石を持たない勢力だけを残して他を滅亡させるとロイヤルブラッドが完成するが、それでもやはりクリアにならず全土統一までやらなければならない。
総評
本作発売までにコーエーの国取りSLGとしては『三國志』『蒼き狼と白き牝鹿』『信長の野望』『ランペルール』が出ていたが、どれもPC版の複雑なシステムと高い難易度をほぼそのまま引き継いでおり、ファミコンユーザーには敷居の高いゲームであった。
どちらかというとファミコンでは『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といったファンタジー世界が有名であり、それに慣れていたファミコンユーザーに本作はすんなり受け入れられた。
単純で理解しやすいシステムも相まって、ファミコンユーザーに国盗りSLGというジャンルを浸透させた良作なのは間違いないだろう。
その後の展開
この作品は「イマジネーションゲーム」というシリーズの1作目として発売された。
純粋なSLGでは2作目に「ケルトの聖戦」、3作目に「ロイヤルブラッドII ~ディナール王国年代記~」が出ている。
どちらも世界観が似ているだけでストーリーのつながりは一切なく、システムも全然違うので正式な続編と言えるかどうかは微妙。
何よりどちらもPC版しか出ていない(しかも現行PCでの動作は保障されていない)ためマイナーゲームの域を出ず、シリーズのSLG作品は今のところこの3作しか出ていない。
RPGとしては『Zill O'll』や『オプーナ』といった作品が出てある意味で有名になったシリーズなのだが…。
最終更新:2023年12月31日 23:03