スーパードッグワールド
【すーぱーどっぐわーるど】
ジャンル
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SLG
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対応機種
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PC-9801UV以降
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メディア
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【PC98】5インチフロッピーディスク 【PC98】3.5インチフロッピーディスク
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発売元
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光栄(現・コーエーテクモゲームス)
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発売日
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1994年3月25日
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価格
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9,800円(税抜)
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判定
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良作
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バカゲー
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ポイント
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知る人ぞ知る隠れた名作
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概要
信長の野望シリーズや三國志シリーズといったお堅い歴史ゲームのイメージで通っていた光栄がついにやらかしたはっちゃけたイメージで出した渾身の一作。
パッケージ画像なんか、どう見ても顔だけ犬にすげ替えた人間である。ちなみにシブサワ・コウ監修。
見た目からして中身もクソゲーのイメージを持たれがちであるが、そこは数字を弄らせたら右に出るものはないと(当時)言われた光栄、中身もバランスもしっかりと作り込まれている。
ジャンルは育成SLGであるが、よくある飼い主となってペットの犬を育成するものではなく、プレイヤー自らが犬になって犬社会で生きながら自己を強化していくゲームである。
自己育成ゲームとしては既に『太閤立志伝』が発売されており、同年末に出た『信長の野望 天翔記』もまた成長要素を重要視した作品であった。
ストーリー
1992年、イギリス・ロンドンにおいて犬の祭典「バウワウカップ」が開催されることになった。
日本では忠犬ハチ公の子孫であるハチ兵衛が日本家庭犬スポーツ協会(Jananese Dog Sports Association)を設立し、選手団を率いてロンドンに乗り込んだ。
しかし、世界の壁は厚かった。日本は1個のメダルも取れず、団体総合でも最下位に終わる。
総合優勝したアメリカからは、計3種目で金メダルを獲得したアフガンハウンドのルイスが初代キング・オブ・ドッグに選ばれた。
世界各国は既に、4年後のアトランタで開催される第2回バウワウカップでの打倒アメリカ・打倒ルイスに向け動き出している。
そしてここ日本からも、ロンドンでの雪辱を果たす為、期待の新犬が2頭、JDSAに登録された――。
バカゲー要素
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登場人物ほぼ全員が犬である。前述のハチ兵衛やルイスももちろん犬。
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競技場や病院といった施設はどう見ても人間用だが、監督もコーチも院長も当然のように犬である。
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遠征は駅から電車に乗って行く。犬なのに。
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電車賃やアイテム購入などにお金が必要。単位は円。犬なのに。
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お金は毎月初めに監督からもらえるほか、バイトで稼ぐことも可能。犬なのに。
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お金を出して美女と遊ぶなど、光栄のPCゲームにはつきもののお色気要素もあったりする。犬だけど。
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ビデオを購入してライバルや優秀なコーチの情報を得たりする。犬なのに。
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超大型テレビの前にチョコンと鎮座して画面に食い入るプレイヤー(犬)がなんともシュール。
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他の犬との会話では、素直な返事をするか生意気な返事をするか選ぶ方式。
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生意気な返事には「悪いが犬とはつるみたくない」なんてのもある。お前も犬だろうが!
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メイン画面右側に掲示板が設置されているが、よく貼り替えられる通知の内容が笑える。
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ゲーム進行のヒントだったり、バイト募集の広告だったり、犬向けの標語だったり、ドーピングを揶揄したものだったり…
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現実のオリンピックで活躍した選手をモデルにした名前の犬が多い。
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陸上のルイス(カール・ルイス)、体操のメアリー(メアリー・ルー・レットン)、水泳の恭子(岩崎恭子)など。
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ショップの店員として、同社『ウイニングポスト』の秘書の有馬桜子がゲスト出演している。当然このゲームでは犬だが。
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ロシアのクドラフカ(宇宙犬)、ドイツのアドルフ(!)といったネタもあったり。
評価点
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各競技はミニゲーム形式になっており、手動か自動かを設定できる。
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目標としない競技や苦手なミニゲームは自動にしておくことで手早く終わり、またそれなりの結果を出してくれる。
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ただし強力なライバルとの対戦などでは自動では勝てない。最終的にはプレイヤー自身の腕も問われる作りになっている。
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犬なので、人間には不可能なレベルの記録が出る。
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例として最強犬ルイスの記録は100M走6秒台、走り幅跳び15M超えである。
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疲労度がたまっていると病気になることがあるが、病気になっている事に自分では気付けない。病気のまま競技を行うと大失敗してしまい失格となる。
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めんどくさがって他の犬とのコミュニケーションを取らないと、ずっと病気のままである。犬社会での孤立は死を意味するのだ。
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病院に行っても治るまでには日数がかかるので、大会前などの重要な時期は自分の健康管理も大切である。
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実技を行うことで各競技の熟練度が上がる。熟練度が高いと、競技で多少失敗してもフォローが効き、好成績を残しやすくなる。
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最初に選ぶ犬種に応じて各能力の限界値が決まっているが、限界に達したあとイベントをこなすことで限界が取り払われる。
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その犬種に不向きな能力でも、限界突破してしっかり鍛えれば能力はカンストする。逆に言うと、限界突破しない限り金メダルは到底無理。
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限界突破しておかないと、バイトを断られるなど不利な状況も発生する。
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軒並み限界値が低いよわよわな犬もいたりするが、早めに限界突破イベントに取りかかることができるということが長所になるのである。
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自由度が高い。
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毎週日曜日には練習試合が行われるが、すっぽかしてトレーニングやイベント探しをすることも可能。
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黙々とトレーニングをする、優秀なコーチのいる地域に遠征する、公園でゴロゴロする、異性とデートする等、何をするのもプレイヤーの自由。
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最終目標も特に設定されていない。得意種目に専念して金メダルを取る、キング・オブ・ドッグ賞を取る、仲間と力を合わせて日本を総合優勝させる、やりこんで全種目金メダルを取る、などプレイヤーの力量に応じて遊び方を選ぶことが可能。
問題点
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スタート時に選べる犬種が8種類と少ない。
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日本以外の犬も含めると数十種類もの犬種があるのだが、それらを選んで遊ぶことはできない。
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好成績を残すには能力値を上げる行為を繰り返さなければならず、少々単調なプレイになってしまう。
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練習試合で自分の実力を試したり、他の犬と遊んだりといった息抜きをする暇がない。
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高ランクで争われる競技の難易度がかなりシビア。
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ジャンプ競技で角度が1度ずれたり、瞬発力競技で0.01秒反応が遅れただけで大幅に記録が悪くなったりする。
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技術系競技なら、イベントでウルトラD(ドッグ)技を習得し、確実に成功させなければならない。
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頭脳系競技は、簡単な問題が出るかどうかの運にかなり左右される。
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たとえ練習で世界記録を出せたとしても、本番でそれができなければ意味がないのである。言い方を変えれば、アスリートにかかる重圧というものを実体験できるのだが。
総評
光栄ゲーでも指折りのマイナーさと根強い人気を誇る、隠れた名作。
見た目はバカゲーなのに真剣なゲーム性、そしてやけにリアルな犬の顔グラが融合し、この上なくシュールさを際立たせている。
どうせならもっと可愛い・ゆるい絵柄にしておけば若年層や女性ファンを取り込めたかもしれないが、当時の光栄にはこれが限界だったのだろう。
他作品のお堅いイメージと相まって、光栄作品の中でも最高傑作だという意見もある。
それだけにリメイクの動きが全くないのが悲しいところである。
余談
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PC98以外に移植されておらず、かなりマイナー。
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コーエー25周年記念パックや、ポータルサイトの過去PCゲームダウンロードでも提供されなかった。
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権利関係で出せないのか、そもそも存在を忘れられているのかすら不明。
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今でもオリンピックイヤーになると「無双はもういいから東京2020スーパードッグワールドを出せ」などといった声がひっそりと上がる。
最終更新:2020年03月12日 21:15