Medal of Honor: Rising Sun

【めだるおぶおなー らいじんぐさん】

ジャンル FPS

対応機種 プレイステーション2
ニンテンドーゲームキューブ
発売元 EA games
開発元 EA Los Angeles
発売日 2003年11月11日
プレイ人数 1~2人
レーティング CERO:15歳以上対象
備考 国内版には表現の修正あり
判定 良作
ポイント 太平洋戦争が舞台に
良好な操作性
娯楽的なストーリー展開
日本軍描写には難あり
メダルオブオナーシリーズ


概要

第二次世界大戦を題材としたFPSシリーズ『メダルオブオナー』シリーズの5作目。日本のCS機で発売された順番としては2作目に当たる作品。
FPSではあまり題材にされない「太平洋戦争」に焦点を当てており、アメリカ軍の誇る優秀な兵士「ジョゼフ・D・グリフィン」となって真珠湾攻撃から末期日本軍・ドイツ軍・ソ連軍の陰謀までを戦い抜く。

日本語版では旭日旗や日本兵の台詞部分などに修正が入っているが、そのほかの内容はオリジナル版と同一となっている。


ストーリー

1941年12月7日、日曜。いつものように静かな朝だった。パールハーバーに駐屯するアメリカ軍将校のほとんどは、自分たちに危険が迫っているなどとは考えもしなかった。

しかし、轟音とともに数百機の日本軍機が飛来したとき、港湾とその周辺にいたアメリカ兵たちの甘い考えは打ち砕かれた。

思いもよらない日本軍の空襲。彼らの目標はただ一つ。アメリカ軍太平洋艦隊の殲滅にあった―――

アメリカ海兵隊に所属するジョゼフ・グリフィンは、艦船の就寝室で爆音とともに目覚める。炎上し沈みかけた船から間一髪で脱出したグリフィンを待ち受けたのは、空を覆う日本軍機の姿だった。

応戦虚しく破壊される艦隊。グリフィンも爆風で放り出されるが小型船に拾われ機銃で反撃し、多くの船が沈むなかなんとか撃退に成功。この真珠湾攻撃により、日本軍との戦争が幕を開ける。

南洋諸島に配属され、フィリピンやガダルカナルの戦いに参加、そこで優秀な戦果を上げたグリフィンは、その腕を見込まれてアメリカ軍戦略情報機関OSSにスカウトされる。調査のターゲットは日本軍が南洋諸島で密かに集めている黄金、通称「山本財宝」。

形勢を逆転しかねない極秘計画を阻止すべく、グリフィンは仲間のエージェントと共にシンガポールへと向かう。



ゲームシステム

  • 基本的なゲームシステムはシリーズ前作と同様。
    • 真珠湾から日本軍空母までの全9ステージとなっており、それぞれのステージで達成すべき目標が随時更新される。目標内容を把握しそれを順に達成していくのが大まかな流れ。
    • ステージクリアごとに史実の解説が流れる。娯楽的な本編内容とは裏腹にこちらは真面目。
    • このほか戦績による勲章授与や故郷の家族からの手紙といった、当時の兵士になりきれる要素もある。
  • 体力はオーソドックスなライフ方式でアーマーの概念はない。道中の医療キットを取ることで回復が可能。ライフバーの横には方角と被弾方向を示すコンパスが存在し、プレイヤーはこれを見ることで敵の大まかな方角を特定することもできる。
  • 銃弾は全て随所に配置してある弾薬箱を取得することで補給する。日本軍の兵士を倒しても武器弾薬の鹵獲は不可能。

評価点

臨場感溢れるド派手なスクリプト演出

  • 冒頭の真珠湾攻撃から演出が派手。目の前で仲間が倒れ部屋が燃える中を、グリフィンは必死に駈けずり回ることになる。
    • 戦車に乗り込んでの奮闘、迫撃砲を使用した追っ手の殲滅、スパイ映画の如き極秘潜入、鉄橋の爆破など終始巧妙かつ派手な演出に富んでおり、一本道のマップながらプレイヤーを飽きさせない。

良好な操作性

  • PS1時代からのシリーズだけあって操作性は家庭用機として申し分ない出来栄え。機動力もそこそこあり、操作性がストレス要因となることは殆どない。

グラフィック

  • 2003年の家庭用機向けFPSとして考えると良質な部類。煙の渦巻く真珠湾や木々が鬱蒼と生い茂るジャングルの表現は悪くない。

頼りになるNPC

  • ストーリー上で重要な役割を果たすNPCは無敵属性となっており、致死量のダメージを食らっても一瞬苦しむだけで直ぐに攻撃を再開する。これによりNPCを守って戦わなければいけない場面はなく、ストレス要因になりにくい。
    • 特にミャンマー寺院で同行する味方NPCのタナカは機関銃を所持した無敵属性持ちであり、時間は掛かるもののプレイヤーが隠れて放置しているだけで勝手に敵を殲滅してくれるなど非常に頼もしい性能。

娯楽的な展開

  • 往年の対ナチス戦争映画・スパイ映画的なノリでストーリーが進むため、気軽に楽しむことが出来る。ストーリー間の出来事や戦線の行方もドキュメンタリー形式のムービーで補完されるため、太平洋戦争に対する深い知識が要求されない。

豊富なロケーション

  • 1941年の真珠湾攻撃からフィリピンの市街地、ガダルカナルのジャングル、シンガポールの路地裏、ミャンマーの寺院など主要な激戦区を渡り歩く。太平洋戦争中の主要なロケーションは網羅しており、風景や任務も合わさり単調さはほとんど感じられない。

問題点

日本軍の扱い

  • 典型的な巨悪として描かれており、かなりステレオタイプ。やたら日の丸の鉢巻をしていたり、モグラのように潜伏していたり、いかにもな感じの秘密会議をしていたり、日本刀を愛用していたり*1ミャンマーの寺院奥地に枯山水庭園を造営して座禅を組んでいたり、食料兵がスシを作っていたり
    • 肝心の山本財宝の正体についても「ミャンマー寺院の仏像の表面に塗られていた金箔を剥がして金塊を作る」というもの。なにか他に良いアイデアはなかったのだろうか。
  • 後半の悪役であるシマ中佐もどこかステレオタイプな悪役感が丸出し。展開もいわゆる秘密結社オデッサの日本軍バージョンであり、「舞台を太平洋に、ナチスを日本軍に置き換えた第二次大戦FPS」感が拭えない。
    • 米国産ゲームの米国視点からの(やや娯楽にかじを切った)太平洋戦争モノと考えるとやや仕方ない部分はあるかもしれない。
      ただドキュメンタリー形式で大真面目に史実を解説するムービーと比べると、ゲーム中の「ステレオタイプすぎる悪の日帝軍」の落差が大きすぎて何とも微妙な気分になること請け合いである。

武器の偏りが激しい

  • パッケージ裏には「日本軍・米英連合軍などが使用した当時の武器・兵器20種類以上を再現」とある。一見豊富な武器数を謳っているように見えるが、実際に作中に登場する銃器は19種類*2。プレイヤーが携行可能な銃器に至っては全ステージ合計でも10種類
    • その上日本軍銃器の扱いが酷く、固定武器である九二式歩兵砲と爆発物である97式手榴弾を除くプレイヤーが携行可能な日本軍の銃は十一年式軽機関銃と九九式軽機関銃だけ。十一年式軽機関銃は隠し武器として配置されており、九九式軽機関銃は通常ルートで入手可能なものの手に入るのは最終ステージのみ。
    • もちろん敵キャラの日本兵は三八式歩兵銃や十四年式拳銃、軍刀などそれらしいものをきちんと所持している。助けた捕虜が14年式を鹵獲使用する場面もあり、太平洋戦争なのだから日本軍の銃も拾いたい!というプレイヤーにとっては不満点となり得る。
  • 武器種はオンライン対戦でも共通となっている。そのため日本側チームでプレイしてもアメリカ軍の兵器しか使えずやはり違和感が拭えない。

恒例の変なスクリプト湧き

  • 同時期のMoHシリーズの他作品と同じく、本作では随所に任意で使用可能な固定機関銃が用意されている。移動はできないが、オーバーヒートにさえ気を付ければ好き勝手撃ちまくれるという便利なもの。
    • しかし、こちらも他作品と同じく「機関銃を握った時に敵が大量出現する」という変なスクリプト湧きが設定されている。機関銃を使わずにその場を通り過ぎれば敵は出現しないため、一見便利そうだが使わない方が攻略がラクという本末転倒な要素になってしまっている。

ストーリーが中途半端

  • ネタバレになってしまうが、主人公グリフィンは日本軍の陰謀を阻止して生還するも、仲間を殺されシマ中佐は取り逃してしまう。そしてグリフィンの兄がどこかで日本軍に捕虜にされているらしい情報が流れて本作のキャンペーンモードは終了する。
    つまるところ、あからさまに続編を匂わせる中途半端な終わり方。実際続編の予定があったのらしいのだが…(余談へ)。

総評

ややナチス的・バカゲー的な「分かりやすい巨悪」としてのトンデモ日本軍描写が目立つが、それ以外の側面で見れば良好な操作性やド派手なスプリプト演出、そこそこのボリューム、頼りになるNPC、豊富なロケーションなどゲーム全体としての出来は良い。
ストーリー展開もスパイ・アクション映画的であり、当時の太平洋戦争を題材に娯楽的でプレイしていて楽しい作品を作り上げようとする試みは成功していると言える。
どこかズレた日本軍描写を是として楽しめるのであれば、本作をプレイするのも悪くはないと言えるだろう。


余談

  • 作中のフィリピン攻防戦で捕虜となったグリフィンの兄を主人公にした続編「ライジングサン2」が企画されていたが、本作の売り上げが予想を下回ったため「太平洋戦争モノは売れない」と判断され中止、シリーズ続編『ヨーロッパ強襲』では再びヨーロッパの舞台へと舞い戻った。
    • 一応、翌2004年には『Medal of Honor:Pacific Assault』(Win)が発売されている。こちらも同じく真珠湾や南洋諸島を舞台としているが、その後のシリーズは第二次大戦を経て現代戦へと移行、太平洋戦争を描いた作品は本作と『パシフィックアサルト』の2本のみに終わった。
  • 日本軍唯一のサブマシンガンである一〇〇式機関短銃も当初実装が検討されており、発売前のXBOXデモプレイでは実際に使用されていた。
    • 史実的な都合もあってか*3残念ながらその後本編からはカットされてしまい、似たような武器としてSTEN Mk-IIサブマシンガンが登場している。
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  • タグ:
  • FPS
  • EA
  • メダルオブオナー

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最終更新:2024年04月27日 19:27

*1 こちらが銃を構えているのに軍刀を振りかぶって突っ込んでくる日本兵もいる。

*2 イベント戦で使用可能な滞空機関銃や八九式重擲弾筒、戦車用機銃を考慮すれば一応20種類以上とは言える。また「兵器」に乗り物もカウントすればゼロ戦やチハ、対空砲なども登場してはいることになる。

*3 本作の舞台や年代では一〇〇式はほぼ使われていない