Catacomb 3-D

【かたこんべ すりーでぃー】

ジャンル FPS
対応機種 MS-DOS
Windows
macOS
発売元 Softdisk
開発元 id Software
発売日 1991年11月
定価 $5.99(GOG.com)
配信 GOG.comにてオンライン販売中
判定 なし
ポイント 『3D』シリーズ第二作
武器・鍵の概念が登場
始めて「手」が描写された


ストーリー

テレポーテーションを得意とする熟練魔術師グレーミナーが、その能力を奪おうとした骸骨姿のネクロマンサー、ネメシスによって誘拐されてしまった。

魔術師ペトン・エヴァーハイルは友人グレーミナーを救うため、モンスターの巣食う地下墓地(Catacomb)の奥深くへと足を踏み入れる。


概要

戦車を駆ってカラフルな3D迷路を進み、主砲でモンスターを倒していく『Hover Tank 3D』のエンジンを更に強化し、レンガなどのテクスチャのある壁を実現した一人称視点ファンタジーSTG。
そのエンジンは後に3作目『Wolfenstein 3D』に受け継がれ大成したが、幾つかの革新的要素は本作のものをベースとしている。


基本システム

  • 矢印キーで前後移動と旋回を行い、ALTキーを押すことで旋回が平行移動(ストレイフ)に切り替わる。CTRLキーでマジックミサイル発砲。扉の開放は体当たりで行う。
    • 体力表示は右上の顔、チャージ率は右中央のキノコ雲、方角は右下のコンパスで確認する。下画面は上からステージ番号とステージ名、『ボルト』『ニューク』『キュアポーション』の残り数、鍵・書物・獲得スコア数が表示される。
  • 武器は威力は弱いが無限発射でき、長押しでチャージショットを放てる『マジックミサイル』、Bキーで放つ、希少だが高い威力を発揮する『ボルト』、Nキーで放つ、全方向にチャージショットと同等の魔法をばらまく『ニューク』の三種類。後の作品のように状況に合わせて武器を切り替えるというよりは、基本的にはマジックミサイルの連射で進み、危なくなったら緊急回避的な役目で発動するという形式が近い。
    • キュアポーションを取得した場合、Hキーを押すことで任意で回復が可能。後の作品とは違い携帯することができる。
  • 全20ステージ。ステージはダンジョンRPGのようなグリッド単位の迷路となっており、プレイヤーはその中を一人称視点で探索・戦闘を行う。
    • 道中では鍵を取得して行動範囲を広げたり、書物を拾って攻略のヒントを知ったり、壁を破壊して隠し部屋を見つけたりといった行動が可能。マップの奥にある青いワープゲートに到達するとステージクリアとなる。
  • 現在のFPSとは異なり、スコアの概念が存在する。道中に存在するトレジャーチェストを入手することでスコアが上がり、ステージクリア時に得点が集計される方式。

評価点

武器選択の概念が登場

  • 3種のみと簡易的であり、また状況に応じて使い分けるというよりかは弾幕STGにおけるボムのような扱いとなっている。しかし武器選択という概念が実装されたことには変わりなく、『Hovertank 3D』と比較するとより戦略性が向上している。
    • 本作の武器選択を経た3作目『Wolfenstein 3D』ではルガーP08、MP40、チェーンガンといったさまざまな武器が登場し、より戦略性の高いFPSへと昇華した。

テクスチャマッピング

  • 壁面のみテクスチャが実装され、カラフルな壁だった前作と比較してより世界観が豊かになった。石材や苔むしたレンガなどバリエーションは豊富であり、グラフィックはやや粗いながらも雰囲気はしっかりとしている。

敵の耐久力システム

  • どんな悪魔も主砲でブチ抜くワンショット・ワンキル方式だった『Hovertank 3D』から進化し、敵の耐久力が個別に設定されるようになった。これにより強い敵がより強敵となり、戦略性に幅が生まれるようになった。

ダークファンタジーアクションRPG要素

  • 持ち運べる回復薬や探索中に拾う書物テキストなど、RPGを意識した要素がいくつか見られる。後の『Heretic』などのFPSに見られた要素を原始的ながら実装しており、ファンタジー作品として前作以上に深みが生まれている。

手の表示

  • 放つのは手からの魔法だが、放っている間だけ手が画面手前側から表示されるようになっている。「魔法を放っている感」がより強調されるこの仕様は革新的であり、以後『Wolfenstein 3D』を経てほぼ全てのFPSゲームが模倣するようになった。

豊富なシークレット

  • マップ上の至る所にトレジャーチェストが隠されており、アイテムの隠された隠し部屋も多く存在する。これらを探すのもプレイ中の楽しみの一つとなり、ただ戦闘を繰り広げるだけでなく探索して財宝を探すというゲーム内容の拡張に成功している。

難点

敵が少ない

  • オーク、トロール、コウモリ、メイジ、デーモン、そしてラスボスのネメシスの合計6体のみ。ほかに破壊不能な地形トラップとして火球が登場するが、それを含めてもゲーム全体としてはやや寂しい数。
    • 反面、物量はすさまじいため種類の少なさはやや感じにくいところもある。このためゲームスタイルや年代を考慮すると一概に駄目な点とも言えない。

原始的な操作性

  • 前述の通り本作は一人称戦車STGをベースとしているため、「基本的に左右キーは旋回、状況に応じてALTキーでストレイフ(機銃掃射)」という操作法となっている。左右平行移動がデフォルトの現在からすると違和感が強い。
    • ストレイフキーが左右平行移動キーとして独立するようになったのは、続編である『DOOM』からであり、本作は「縦横無尽に動ける、撃ちまくりのスポーツFPS」とはならず、マジックミサイル連打によるごり押し戦法が基本となっている。地形構造や耐久力の問題もあってカバーアクションも通用しにくい。

グリッド単位で生成されたマップ

  • 全ての壁やドアが同じ比率の四角形で構成されているため、古のダンジョンRPGのような古臭さは否めない。一応テクスチャを変更して差別化は図られているもののいまいち不自然。

基本的にマジックミサイルの連射頼り

  • 上述の通り主力武器はマジックミサイルしかなく、プレイヤーはこれをひたすら連射して進んでいくことになる。FPSジャンルとしてはやや原始的と言わざるを得ない。
    • 続編『Wolfenstein 3D』では個別武器の登場によって解消され、それを以って「FPS」ジャンルが完成した。

総評

FPSとしての外観は完成したものの、まだ内部システム的な単純さの否めない作品。
しかしシリーズ第一作である『Hovertank 3D』からの順当な進化は遂げており、本作で得た新技術や反省点はシリーズ第三作『Wolfenstein 3D』で更に磨き上げられることとなる。


本作を改良した『Wolfenstein 3D』とそれに追従した各種「Wolf 3D clone」、そして同社による更なる革命的作品『DOOM』を以って、FPSというジャンルの方向性は完全に定まることとなった。
FPSタイトルとしては未完成ながら、そういった意味では同ジャンルの祖先の1つにあたる作品である。


シリーズ

  • 好評を受けて1992年にCatacomb:ABYSSとCatacomb: Armageddonが発売され、1993年にはCatacomb: Apocalypseが発売された。現在ではカタコンベ・アドベンチャーシリーズとしてまとめられている。
  • 当時id Softwareはすでに『Wolfenstein 3D』や『DOOM』に取り掛かっていたため、開発はオリジナルメンバーとは異なりSoftdisk内部のメンバーが担当している。新規要素も多いが、すでに『DOOM』などのFPSが出た後ということもあってあまり注目されなかった。
    • 現在ではGOG.comでこれらをまとめて購入することが可能。古めの作品だが、入手手段自体はさほど難しくない。

余談

  • 本作が単色の壁だった『Hovertank 3D』から強化して壁面へのテクスチャレンダリングを実装したのには、しばしばオーパーツと称される1992年の傑作『Ultima Underworld the Stygian Abyss』(UW1)が関わっている。1990年に公開されたデモを見たカーマックたちはその完成度に強い衝撃を受け、本作にその要素をいち早く実行することにしたのだという。しかしその作りこみからUW1の発売は延び、結局はシンプルな構成の本作のほうが先に発売された。
    • 簡易的ながらも回復薬システムや装備システムが導入されているのもUW1の影響が大きい。しかし、その後の『Wolfenstein 3D』や『DOOM』といった作品にはこれらのRPG要素は受け継がれなかった。
  • 本作に登場するデーモンは第一作『Hovertank 3D』に登場した放射能変異生物と同じビジュアルを有している。カタコンベ・アドベンチャーシリーズでは頭が増えたりサイボーグ化し、その後『Wolfenstein: Spear of Distiny』ではラスボス「Angel of Death」に出世して魔法を撃てるようになり、その後遠い未来の地獄を舞台にした『DOOM』にて、魔法と振り下ろし攻撃を得意とする赤いデーモン「Baron of Hell」として蘇ることとなった。

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最終更新:2020年08月25日 06:20