Chinese Parents

【ちゃいにーず ぺあれんつ】

ジャンル シミュレーション
対応機種 Nintendo Switch
Windows(Steam)
開発元 墨鱼玩游戏(Moyuwan games)
発売元 PLAYSM
発売日 2018年9月29日(Windows版)
2020年8月20日(Switch版)
定価 1280円(Switch)
980円(Win)
判定 良作


概要

中国人の、中国人による、万人のための中国人生シミュレーションゲーム。中国の普通の家庭に生まれた子どもが、人生の岐路である大学入試まで時に楽しみながら時に苦しみながら自分らしく生きていくための選択をし続けます。

  • 中国に生まれた子供として、能力を上げよりよい職業に就くことを目指す人生シミュレーションゲーム。
  • ターンごとに種々のミニゲームと育成コマンドの選択により主人公の能力を育成していく。

能力値

  • 主人公に設定されている様々のステータス。
  • 特技
    • 主人公がマスターした技能を表現するもの。このゲームにおいて最重要の評価項目。
    • 基本的にこのゲームで評価されるのは特技の有無。該当の特技を取得していなければ能力値がいくら高くてもテストの点数や将来の職業には影響しない。
  • 能力値
    • IQ、魅力など、本人のいわばポテンシャルを表現するもの。
      • 「両親の期待」の成否判定やコマンド取得時の消費発想力に影響する。
    • IQ、EQ、体力、記憶力、想像力、魅力の6種類+メンツ。*1
  • ストレス
    • ストレス値。基本的に勉強・訓練で上昇し*2娯楽やおもちゃの購入で減少。
      • ストレス値を適度に保つことで有利な「性格」が取得できる。
      • ストレスが高すぎるとイベントが発生して「トラウマ」が上昇し、トラウマが一定値に達すると精神崩壊を起こしてゲームオーバーとなる。このゲーム唯一のゲームオーバー要素。
  • 両親満足度
    • 両親の満足度。勉強、手伝い系のバイトで上がり趣味で下がる他、メンツバトルやお年玉バトルの結果でも変化する。
      • 下がるとバッドイベント、上がると有利イベントが発生するため上げておくに越したことはない。

コマンド・ミニゲーム

  • 毎ターン行えるもの
  • マインドマップ
    • メインのミニゲーム。マス目に配置されたジェムを取得し、能力値を上げたり発想力を稼いだりする。
    • ジェムは初期解放のもの以外は封印されており、取得したジェムの周囲8つが次々解放されていく形式。
    • 能力値を直接取得するものの他、次階層進行ブロック、全封印解放ブロック、同色全回収ブロックなど特殊なものもある。
    • ジェム取得には「行動力」を消費するため、マインドマップにかまけると社交やバイトができなくなる。
  • バイト
    • 小遣いを稼ぐコマンド。ランダムで上昇・下降するやる気ゲージで出来が変わり、報酬や両親満足度の上下が変化する。
  • 社交
    • 中学生時代以降解放。いわゆる恋愛コマンド。男女で内容が異なる。
    • 男子の場合、アプローチする女子を選び会話の選択肢を選ぶことで好感度が上下する。
    • 女子も同様だが、選択肢に好感度の上下が明記される他、「一緒に帰宅」「遊び友達」などの枠にキャラを入れることで毎ターン好感度を稼ぐシステムが追加される。
  • 次のコマンドは行動力を消費しないシステム的なもの
  • 売店
    • アイテムショップ。駄菓子類でストレス値を下げられるほか、おもちゃや問題集などは特定の特技・職業へのルート解放アイテムになる。
    • 小遣いの入手手段は毎ターンの補充(親の職業で決定)とバイト。
    • 宝くじもあり、4つの数字をランダムで排出し翌日以降抽選ができる。
  • 習得
    • 「発想力」を消費して上位・新規の育成コマンドを取得する。
    • 「発想力」はマインドマップで取得する他、「テスト」で大量に入手できる。
  • 期待
    • 「両親の期待」の達成度確認・報酬受け取り。
    • 「両親の期待」は成長に応じて発生し、期限までに一定の能力値や育成コマンドの取得を要求するもの。
  • 各ターンの終わりには育成コマンドの消化を行う。
    • 6つのスケジュール枠に授業や娯楽をセットし、ターンの終わりに順番に消化していく。能力値のアップや特技の習得はここがメインになる。
      • 授業や娯楽は「習得」や「売店」で習得。
      • 授業や娯楽をこなすことで「特技」を習得する。*3
      • 実際に発生するイベントは10枠あり、年齢層に合わせたランダムイベントが毎ターン4つ発生する。
  • 時期により自動で発生するもの
  • メンツバトル
    • メンツをかけて子供自慢で対決するバトルゲーム。戦うのは母親。
      • 取得特技をカードとして扱うカードゲーム形式。所持特技の中からランダムで9つ*4が選ばれデッキになる。
        3枚の手札から特技を選ぶと、レアリティに応じて相手にダメージが入り、使った特技の枠に新しい特技が補充される。
      • 同レアリティならダメージは同じ。
    • 時期で発生するものと自分で挑めるものがある。
      • 時期で発生するものは相手のHPと与ダメ以外に要素はない。
      • 任意で挑戦するものは相手の与ダメも高いが、「耐性特技」の要素がある。例えばサッカー選手の親への体育系特技、モデルの親への美貌系特技の与ダメが非常に低くなる。
      • 任意のメンツバトルに勝利するとSSR特技が取得でき、次戦が楽になる。
  • お年玉バトル
    • 遠慮しながら断りきらず、親戚からお年玉を受け取るゲーム。
    • プレイヤーと親戚を挟んだバーの中央付近に成功エリアがあり、自分側に押し込まれてくるマーカーをクリックで親戚側に打ち返す。一定時間経過後にマーカーが成功エリアにあれば成功。
      • 報酬は当然小遣い。失敗すると両親満足度とメンツが下がる。
      • おじさんとおばさんで2回戦ある。1回目は割と簡単だが、2回目は1クリックでの移動量が成功エリアの幅より大きいため時間ギリギリで打ち過ぎて失敗することも多い。
  • テスト
    • パズルゲーム。一列に並んでいる図形から不要なものを消していき、指定された図形の配列を作ると発想力がもらえる。
      • 図形には数字が指定されており、同じ数字の同じ図形を3つ並べると合体して数字が増えた1つの図形になる。①①①→②□▲といった具合。
      • 不要な図形を消すのには行動力を消費する。そのターンの行動力は全てテストに費やさなければならない。

世代システム

  • このゲームでは、主人公の大学入試までをプレイした後、その子供を主人公に次の世代がスタートする。
    • 主人公の就いた職業によって「一族能力値」に加点が入り、毎ターンの能力値の固定上昇値が大きくなる。
      • 一族能力値は更新ではなく加算のため、世代を重ねるごとに能力値の上がり方は大きくなる。
    • 他、前世代の影響として、小遣いの額と性格の引継ぎ*5がある。

評価点

  • とにかく中国風の演出が強烈
    • 「メンツバトル」「お年玉バトル」といったミニゲームは中国独特の習慣をゲーム化しており象徴的。
    • ランダム枠のイベントでは「赤ん坊に筆・そろばん・漫画を選ばせる占いをした」「小学校で赤いスカーフをもらった*6」「そのスカーフをなくして叱られた」などの中国特有のものも多い。
    • スポーツ系の進路ではバスケ選手*7になったり、音楽系ではラッパーになったり、e-sportプレイヤールートがあるなど若者文化も反映している。
  • あるある系のランダムイベントも充実
    • 両親がくだらないことで喧嘩したの、女子のクラスメイトに生理が来たの、仲間に無視されたのという非常に渋いところを突いてくる。
    • 「昼寝の時に先生が『寝ている子は手を挙げて』と言った。初めて罠にはめられるということを知った」などは共感せずともクスリと来てしまうところだろう。
      • 「こういう経験があるよね? 〇 ×」「xxxx人があなたと同じ経験をしている」という謎のシェア要素も完備。
  • サブキャラもキャラが立っており魅力的。
    • スポーツ、料理、弁論といった手に職の特技を取得し始めると、先輩や友人にあたるキャラとの小芝居がイベントとして挿入される。
    • どのキャラもそれぞれの分野にふさわしいキャラやストーリーで魅力がある。
      • 弁論系で出てくるキャラはいちいち主人公の言うことを遮って言いくるめようとする、商業系のキャラは中学生から既に投資信託を語り始める、スポーツ系のルートではコネ、ケガ、海外との差といったスポーツ界の闇を語るなどよくできている。
  • イベントイラストの雰囲気が良い
    • イベント内容を端的に示しつつ、墨絵風の線でポップなイラストを描き下ろしており、中国的かつほほえましい雰囲気を保っている。
      • 教師に賄賂を贈る、学友との家柄差を見せつけられるなどのシビアなイベントも多いため、変に上手なイラストではげんなりしてしまうだろう。
  • テキスト類もユーモアたっぷりでいちいち面白い。
    • 特技名だけでも「膀胱破裂まで我慢」「こどもセンター王」などの極端なもの、「けち」「元気になる」などの身も蓋もないもの、「浪裡白跳*8」「最高指導者の言葉*9」といった中国風味の強いものなどネタ成分たっぷり。
    • メンツバトル時の自慢セリフは特に凝っており、「ウチの子はプールで3泊した」だの「軍から弾道計算を依頼される」だの荒唐無稽な自慢を打ち合うことになる。
  • 選べる職業が非常に多い
    • 一般的な会社員、芸能人、学者……といったものから、同人漫画家*10、トレーダー、料理人などの手に職系、忍者まで存在。
    • 男女別職業もあり、同じ芸能系ルートに進んでも男は映画監督、女は女優、といった別職業になる。

賛否両論点

  • イラストのクオリティや画風が全く安定しない
    • イベントイラストは、前述の墨絵イラストが大半だが、一部ミーム由来のコラージュっぽいもの、やたらチカチカしてみたりアニメーションだったり変なものが混じっている。
    • キャラ絵は、基本的に女子はいわゆるアニメ絵で高クオリティで安定しているが、男子はかなり不安定。
      • 大きく分けて「ミームっぽい低クオリティ絵」「デッサンがややおかしく塗りや線が曖昧な絵」「女子と同じ画風」があり、前者の2つは他と比べるとかなりクオリティが低い。
      • 高収入の親、プロポーズに成功しての配偶者などは高クオリティの立ち絵のため、低クオリティのものは開発初期に使用していたイラストを差し替えずそのまま使用しているものと思われる。
    • 背景イラストは安定して高クオリティ。

問題点

  • エンディングが地味
    • 各職業に応じた職場っぽい背景にテキストボックスでちょっと近況報告して終わり。しかも大抵愚痴っぽい。非常に寂しい。
      • キャラ立ち絵が無い。18年間付き合ったキャラの制服姿くらい見たいもの。
      • クリア後のキャラの姿としては次世代の親役として絵違いが多数用意されているが、やはりエンディングとして見たいものではないか。
  • 効率的な攻略法が理不尽
    • 勉強・訓練系のスキルを習得するには多数回の訓練をこなす必要があり、ストレスとの兼ね合いが難しくなる。
      • この問題への正攻法は、「売店でストレス解消アイテムを限界まで買い、全枠に当該コマンドをセットしてゴリ押しする」という非常に不健康なライフスタイルになる。
    • 育成コマンド取得に必要な理解力は該当能力値が高いほど少なくなるのだが、この要求する能力値が理不尽なほど高い
      • 世代を重ねるたびに固定上昇値が上がっていくとはいえ、期待できる能力値は最終ターンまで全振りして2万程度、通常は数千*11。それに対して、上位のコマンドは最低額までの軽減に数万から数十万の能力値を要求してくるため、最大値である999理解力での解放を余儀なくされる。
      • すると、重要なのは能力値ではなく理解力であり、後半のマインドマップはひたすら理解力ジェムを探すだけの非常に単調なゲームになる。
  • 優劣のおかしいものがある
    • 例えば、文筆家の職業ランクは脚本家<文学愛好家<作家~となっている。さすがに愛好家よりプロの脚本家が上位ではないだろうか。*12
      • 商業系は特におかしく、小売人から始まるのに投資家になり、会計士が挟まり、その上位に投資の神があり、その上は公認会計士。商業、金融、会計がごちゃごちゃにランク化されている。
    • 育成スキルでも、数学系で四則演算→線形代数→確率→~と進行するなどおかしなものが散見される。
  • 全体にミニゲームが冗長でテンポが良くない。
    • 行動力を10以下にしないとターンを終われないため、終盤重要性が落ちるマインドマップをダラダラこなさなければならない。
      • もともとゲーム性があまり高くないのもあるが、ジェムを一つ消すごとに操作を受け付けない時間が発生するため連打で次々消すことができないのが大きい。
      • 他の行動力消費源も、毎ターン180~200程度の行動力に対して「社交」が25の消費を3回まで、「バイト」も20~50の消費に対して30秒程度の待機時間が出るなどサクサク消化できるものは無い。
    • お年玉バトルも、最後にマーカーがどこにあるかを争うだけにもかかわらずゲーム時間は15秒あり、非常に長く感じる。
      • メンツバトルは顔写真とHPバー、単純なダメージエフェクトだけと単調だが、子供自慢のセリフがユーモアにあふれており楽しく戦える。
  • UIの完成度が低い
    • 「学習」「期待」は右側のウインドウの表示項目を操作するボタン、「取引」「売店」「社交」は別画面に移行するボタンだが、同列に配置されている。
      • 両親へのおねだりとバイトが同じ「取引」ボタンの下部なのも不自然。
    • マインドマップでは、緑の三角がIQのジェム、赤の丸がEQのジェム、青のしずく型が体力のジェム、固定上昇値強化ジェムは通常ジェムにドクロを配置して表現するなど、見た目と効果に脈絡が無くわかりにくい。
    • 学習の進行度、特技リストなどの配置場所も下部コマンドになっておりわかりにくい。ヘルプやデータなどの名前でボタンを作るべきだったのでは。
    • PCの場合、ホイールでのスクロールが遅く使いにくい。ドラッグのほうが安定するが、誤クリックの恐れがある。
  • 男子の「社交」の難易度が異常に高い
    • 3つの選択肢から選んで会話をし、その結果に応じて好感度が上下するのだが、成功・失敗・維持が1つずつしかなく、その判定の基準も不可解。結婚確実まで好感度を上げることは非常に難しい。
      • 流行・ゴシップ系の話題、ラップ披露、プレゼントなどのコマンドがランダムで出るが、ラップ系で一度好感度が上がったキャラでも似たようなコマンドでは好感度が下がるなど判定の基準が分からない。
      • 好感度は上がりにくいのも困難だが、0スタートで下限が無くマイナスまで当然のように下がっていくのも難しい要因。

総評

人生・学生シミュレーションものとしては標準的な発想ながら、メンツバトル・お年玉バトルをはじめとした中国風味がとにかく濃い。
インディーらしく、UI周辺に「アセット使ってる感」が非常に強いものの、サブキャラ、職業、またそれぞれのイラストやテキストも非常に細かいところまでネタがめぐらされており、開発陣のやりたいことは十分に実現されていると感じられる。
数々のイベントとユーモアあふれるテキストに、青春と異国情緒を濃厚に感じながら楽しむことができるだろう。

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最終更新:2022年03月30日 13:14

*1 メンツは特技等の取得に影響しないが数値によりイベントが発生する。

*2 一部勉強枠でもストレス値が下がるものがある

*3 数をこなせば習得できるのか、一定数こなした上でランダムなのかなどの細かい仕様は不明。

*4 基本的には高レアのものから順に選んでくれるが、数が多すぎると高レアを押しのけ低レアのものも混じってくる。

*5 「性格」はターンごとにマインドマップでの獲得能力値に補正が入るシステム。ストレス値の変動に応じて自動で手に入る。

*6 「中国少年先鋒隊」という共産党系の青年組織のシンボルらしい

*7 中国ではNBAで活躍した姚明の人気から近年バスケットボールの人気が非常に高い

*8 水滸伝の登場人物で、水泳の名手張順の仇名

*9 「歴史入門」の特技

*10 ちなみに「同人漫画家」と「商業漫画家」は別ルート

*11 実際、各能力値9999達成で実績が解放される。

*12 本作の職業ランクは、次世代の小遣い額に繫がるので、上位ほど高給取りということになる。薄給の脚本家よりは、インテリの文学愛好家の方が金持ち、という解釈をしていると思われる。