電車でGO!! はしろう山手線

【でんしゃでごー はしろうやまのてせん】

ジャンル 電車運転シミュレーションゲーム


対応機種 プレイステーション4
Nintendo Switch
メディア PS4 ブルーレイディスク
Switch ゲームカード16GB
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 タイトー
発売日 PS4 2020年12月3日
Switch 2021年3月18日
定価(税10%込) PS4 8,580円
Switch 6,380円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
対応周辺機器 PS4 PlayStation VR
Switch 専用コントローラー
2021年8月5日発売/瑞起製
判定 スルメゲー
ポイント アーケード版のアレンジ移植
全体的な難易度低下
凝り過ぎて見づらくなったGUI
おまけ同然な並走路線
電車でGO!シリーズ



運転士はキミだ!



概要

アーケードゲーム『電車でGO!!』から山手線のみを主軸としたうえで全区間収録したアレンジ移植で、『新幹線EX』以来の本編家庭用シリーズタイトルでもある。基本的な部分はUI以外アーケード版に準拠しており、同様にミドルゲームエンジンも「Unreal Engine」が使用されている。

久々のコンシューマ機での新作に加えて、さながら映画的なリアリティを誇る圧巻のグラフィックという素人目で見てもわかるレベルの特長、そして発売前からの公式サイトでの大々的な宣伝やTwitterでの広報活動を功を奏したのか、シリーズファンからはもちろんのこと、普段からシリーズ作どころかゲームをプレーしない層であろう鉄道ファンをはじめとした一般層の間でも話題となった。

同時発表されながらも年を跨いだ約3ヶ月後の2021年3月18日にSwitch版が後発ながらも無事に発売されたが、携帯/テーブルモードでは視認性が悪くなってしまうため、TVモードでのプレーが推奨される。
そのため、Liteの付いていない通常のNintendo Switchを用意しておくことが望ましい


特徴

アーケード版と共通する点が多いため、基本的なゲームシステムについてはアーケード版の基本内容の項に詳細を譲る。
本作は大まかに分けて以下の構成となっている。

  • おうちでGO!モード
    • 家庭用オリジナル要素で構成されたモード。ちなみにタイトルとは異なり感嘆符は1つである。
  • アーケードモード
    • アーケード版のルールそのままでゲームプレーしていく従来通りのモード。こちらはあくまでおまけであり、隠し路線を解放することができない。
  • チュートリアル
    • 1区間の簡単なミッションを通じて操作方法を体得するモード。
  • オプション
    • 各種設定を変更する。説明書代わりの操作説明も同項目内の「サポート」から見ることができる。
  • 乗務終了
    • タイトル画面に戻る。他のセーブデータで進める際に一旦タイトル画面に戻って選択し直すときに使う。

モード説明

おうちでGO!モード

  • 家庭用オリジナル要素で構成されたモード。
    • 運転士の道
      • 本作のメインコンテンツであり、最終目標である「免許皆伝運転士」への昇進達成と隠し路線のアンロックのために攻略するモード。
    • デイリールーレット
      • 毎日リセットされるルーレットを回してその日プレーするミッションを引き、それに挑戦していくモード。
    • フリー走行
      • 運転士の道の「シークレットミッション」を攻略してアンロックした路線を自由に走行できるモード。最初は「山手線」の「E235系」「E231系」のみ選択可能である。このモードでは 総武線を運転することができない 点に注意。
+ モード詳細

運転士の道

  • 本作のメインモードであり、全7チャプター構成となっている。公式サイトやゲーム内でも「運転士の道」という表記揺れが見られるが、以後モード選択で表示される表記に倣う。
    • 難易度が分かれており、セレクト画面で「イージー→ノーマル→ハード→ベリーハード」をトグル調整で選択できる。難易度で変化する箇所は「ミッションクリア目標」「ミッションゲージの増減内容」だけであり、到着時刻をはじめ、制限速度や定速ポイントの位置などの根本的なミッション内容自体は一切変化しない。
  • ゲームの進行度に応じて称号が変わるシステムがあり、最初は「新人運転士」から始まるが、チャプター最後のトリを務める「昇格試験」をクリアーすると、一つ上の段位へ昇格することができ、新たなチャプターを選択することができるようになる。
+ 選べる難易度の詳細

イージー

  • シリーズ未経験者向けの難易度。ミッションクリア目標は基本操作を遂行するだけのものが中心で、チュートリアルに等しいレベルの最低限のものとなっている。加点対象も幅広く、ミスをした時のリカバリーも容易である。到着時刻や停止位置の誤差も、設定されていた場合「30秒以内」「5m以内」と広い。唯一最終駅でのミッションクリア目標が設定されていないため、頑張ればクリアーこそできる難易度となっている。

ノーマル

  • 中間難易度。ミッションクリア条件はこれ以降4つが原則となり、組み合わせ自体もこの難易度が基準となる。到着時刻や停止位置の誤差も「20秒以内」「3m以内」に狭まっている。最終駅でのミッションクリア目標が設定されていることに加えて、ミッションゲージの残量もイージー比で半減しており、全体的な難易度はかなり上がっている。

ハード

  • ノーマルより更に難易度が上がっており、到着時刻や停止位置の誤差も「10秒以内」「1m以内」とより狭まっている。当然ミッションゲージもノーマル比で半減しており、ゲージ回復も「定速帯⭐︎3評価」「0秒定刻」「停止位置誤差30cm以内」「ニアゼロ以上の停車評価」のみとなるためリカバリーも厳しい。

ベリーハード

  • シリーズ恒例の最高難易度。ミッションがアーケード版に匹敵するレベルの厳しいものとなり、ミッションゲージで攻略するミッションの場合だと少ない状態から開始される。
+ エンディング後の隠し要素

難易度「レジェンド」

  • エンディングを迎えた後に選択可能となる、最高難易度「ベリーハード」を越えた本当の最高難易度。全てのミッションでミッションゲージが1秒の状態で開始されるタイプとなり、回復もニアゼロ以上の停車評価を獲得した時のみとなる。また「ベリーハード」の減点項目に抵触する行為を一度でも行ってしまえばその瞬間に「全ロスト(原文では全ロスト)」として残量関係なくミッションゲージが一発で空になり、次駅停車・通過時にそのままクリア失敗になるというミスが一切許されない設計となっているため、最後まで気が抜けない難易度となっている。
    • 注意点として この難易度ではスコアを保存できない 。ハイスコア欄にはクリアーした時のみ「CLEAR」表記がなされるだけで、ランクが記載される欄には代わりに星マークが付与される。エンディングまでにシークレットミッションを攻略していないなどでいきなりレジェンドで初めてミッションクリアーした場合は、そのままクリアー扱いとなり、隠し路線が解放されるミッションならば獲得することができる。

ミッション「山手線どこまでも」

  • 難易度レジェンドアンロックと同時に選択可能。E235系乗務、天気晴れで乗車率の少ない30区間ミッション。山手線を一周するのみならず、到着時刻までの時間が非常に短くなっているため、最後まで気の抜けないプレイングが求められる。

称号「鉄路の覇者」

  • 「免許皆伝運転士」を越えた真の最終目標である。上記「山手線どこまでも」を含めた全ての「運転士の道」のミッションをクリアーした暁に昇格する。
    • 難易度は不問であるため、難易度イージーで全てのミッションを達成しても問題なく昇格可能。

デイリールーレット

  • アーケード版のデイリーミッションをアレンジしたモードとなっている。最初は1つしか枠がないものの、昇格試験に合格したときの報酬として設定されているものもあり、最終的には枠が5つに増える。一番右下は全路線からランダムで抽選される項目である。
    • 空のスロットを選択してプレーしたい路線を選ぶと、スロットがまわりだすため、ボタンを押してリールを止めるとそれに乗務可能となる。
    • 翌日0時を過ぎるとリセットされるものの、お気に入りとして固定する機能もあり、その場合固定されたミッションはリセットされずにそのまま残る。
+ 専用ルール

今作では「ミッションゲージの増減要素」「スコアの増減要素」「ハートポイントの増減要素」の3つに分けられている。

  • ハートポイント
    • 運転士の道における、昇格試験やシークレットミッションをプレーするために必要な証である。一定以上貯めないと事実上先に進めなくなるものの、ミッション失敗した場合でも獲得することができるため、苦手なプレイヤーは得意なミッションで稼ぐことが望ましい。消費制ではないため、貯めた分は以後もそのまま貯まっていく。
  • ミッションゲージ
    • 従来の持ち時間・『FINAL』でのライフと同じ役割を果たす要素で、黄色の範囲が到着・通過時刻までの残り時間を指し、緑色の範囲が遅れても良い持ち時間となる。所定の条件を満たせば少し回復し、ニアゼロ・ゼロピタでそれなりに回復、ダブルゼロで大きく回復する。逆に大きく停止位置や所定の時刻からズレた場合や、速度制限超過や非常ブレーキなどの減点項目に引っ掛かるとその都度に応じた分減り、空になった時点で次駅到着・通過時にミッション失敗として強制終了となる。
    • 前作「FINAL』では、ミッションゲージに相当するライフは、エンジョイモードで回復救急箱を使用したときを除いて、回復しなかったが、今作では回復するようになったため、初心者にとって優しいシステムであろう。
  • ミッションクリア目標
    • 「運転士の道」で採用されるクリアータイプ。所定の条件を最終駅までに全て達成することが条件となる。逆にそれまでに全て達成させた場合はその後に大幅な遅延やオーバーランなどを繰り返してもミッション達成とはなる。
    • 上記ミッションゲージと併用されるミッションも用意されており、その場合は双方共ルールを遵守しなければならない。

アーケードモード

  • メニュー画面やリザルトのUIを含めてアーケード版を移植したモードであり、その中から厳選された人気のミッションを攻略していくモード。最初から全ての難易度を選択することが可能である。 総武線はこのモードのみでプレー可能
    • UIやルール自体はアーケード版の「いつでもGOモード」に準拠しており、ランクごとのクリアボーダーという概念は一切無く、ランクに応じた演出が導入される。警笛対象やルールはアーケード版に準ずるため、おうちでGO!モードでは警笛対象になっていない鉄橋も対象になっている箇所が存在する。
+ 選べるミッション
区間数 ミッション名 運転区間 時間 天気 乗車率 運転車両
山手線
2区間 降り積もる雪と電車。夢の競演。 五反田→品川 09:18 降雪 普通 E231系500番台
雨の休日でもE235系は力走中。 原宿→恵比寿 16:34 普通 E235系
家路急ぐ乗客で賑わうオフィス街。 目黒→大崎 16:32 晴れ 普通 E231系500番台
平日雨の夕方。魅せるE235系。 恵比寿→五反田 17:01 普通 E235系
E235系で挑む。難関目黒の勾配。 渋谷→目黒 16:45 晴れ 普通 E235系
晴れの日にE235系で恵比寿まで。 原宿→恵比寿 13:02 晴れ 少ない E235系
3区間 晴れた日の昼下がり。 原宿→目黒 12:28 晴れ 少ない E231系500番台
E235系で挑む。難関目黒の勾配。 目黒→品川 11:54 普通 E235系
休日の朝。繁華街を駆け抜けるE235系。 原宿→目黒 08:40 晴れ 普通 E235系
雪の朝いつも通りが運転士の誇り。 目黒→品川 08:28 降雪 多い E231系500番台
雨の休日混み合う夕方。 原宿→目黒 17:34 多い E231系500番台
にぎやかな休日の朝。 目黒→品川 08:48 晴れ 普通 E231系500番台
晴れた日のお昼前。 目黒→品川 11:16 晴れ 少ない E231系500番台
もうすぐ帰宅ラッシュ。 原宿→目黒 16:31 晴れ 普通 E231系500番台
6区間 平日の正午過ぎ。 原宿→品川 12:16 晴れ 少ない E231系500番台
E235系で駆ける昼下がりの街。 13:25 晴れ 少ない E235系
平日雨の満員電車。 08:41 多い E231系500番台
夜はこれから。 17:46 晴れ 普通 E231系500番台
総武線
2区間 市ヶ谷発。暖かな日差しの街並み。 市ヶ谷→水道橋 12:30 晴れ 少ない E231系500番台
混雑の回復走行。 飯田橋→御茶ノ水 12:55 晴れ 多い
夕立注意報。 水道橋→秋葉原 17:12 夕立 変動
晴れた早朝の景色。 市ヶ谷→水道橋 04:45 晴れ 僅少
水道橋発。混み始めた夕暮れ。 水道橋→秋葉原 17:34 晴れ 普通
3区間 市ヶ谷発。日の差し込む明け方。 市ヶ谷→御茶ノ水 08:20 晴れ 少ない
夕立の晴れるまで。 飯田橋→秋葉原 16:40 夕立 変動
曇り空には夕立の気配。 市ヶ谷→御茶ノ水 16:26 夕立 変動
飯田橋発。朝モヤの街を駆ける。 飯田橋→秋葉原 04:47 晴れ 僅少
飯田橋発。雨天の混雑予想。 飯田橋→秋葉原 08:40 多い
市ヶ谷発。人混みに降り出した雨。 市ヶ谷→御茶ノ水 13:13 普通
飯田橋発。秋葉原へ向かう人の波。 飯田橋→秋葉原 12:05 晴れ 多い
4区間 晴天の街並みを爽快に駆ける。 市ヶ谷→秋葉原 13:25 晴れ 少ない
降り止まぬ雨に立ち向かう。 17:16 普通
朝の外堀。混雑状況を読む。 08:53 晴れ 普通

VRモード(PS4版のみ)

  • PlayStation VRに対応した専用のモードで、アーケード版のデザインそのままにVR化。最初から全ての難易度を選択できる点、クリアボーダーが無い点はアーケードモードと同じだが、車両はE235系のみ、天気も晴れ固定。
+ 選べるミッション
区間数 ミッション名 運転区間 時間 乗車率
2区間 家路急ぐ乗客で賑わうオフィス街。 目黒→大崎 16:32 普通
E235系で挑む。難関目黒の勾配。 渋谷→目黒 16:45 普通
晴れの日にE235系で恵比寿まで。 原宿→恵比寿 13:02 少ない
3区間 晴れた日の昼下がり。 原宿→目黒 12:28 少ない
休日の朝。繁華街を駆け抜けるE235系。 原宿→目黒 08:40 普通
にぎやかな休日の朝。 目黒→品川 08:48 普通
晴れた日のお昼前。 目黒→品川 11:16 少ない
6区間 平日の正午過ぎ。 原宿→品川 12:16 少ない
E235系で駆ける昼下がりの街。 13:25 少ない
夜はこれから。 17:46 普通

収録路線と車種

収録路線は基本的には山手線だけであるが、シークレットミッションを攻略していくたびに、車両や並走路線を走行する車両をアンロックすることができる。
通過運転のある路線での区間数は、停車駅のみでカウントされており、通過駅分は一切含まれていない。

+ 収録路線

山手線 30区間 東京→上野→池袋→新宿→渋谷→品川→東京 内回り
運転可能車両「E235系」「E231系500番台」「205系」「103系」

  • タイトル通りの本作メイン路線であり、運転士の道ではこの路線のミッションが主体となる。運行業務上の起点駅は大崎であるが、本作では東京駅が起点として扱われている。
  • 各駅停車のみ運行されている系統のため、快速運転は一切行われない。

埼京線 4区間 池袋→大崎 上り
運転可能車両「E233系7000番台」

  • 山手貨物線を走行する区間のみ収録されており、基本的には未収録区間の東京臨海高速鉄道りんかい線を経由して新木場駅まで向かう系統に乗務する。
    • シークレットミッションが2枠分設けられており、1枠目をクリアーしても新宿を始発する系統と通常走行しかアンロックできない。
  • 停車駅は「池袋→新宿→渋谷→恵比寿→大崎」。

上野東京ライン 3区間 品川→上野 北行
運転可能車両「E233系3000番台」

  • 背景としての登場に限ってもシリーズ初収録区間であり、最高時速も110km/hに迫るなど、高速運転を楽しむことができる。基本的には未収録区間の高崎線を経由して高崎駅まで向かう系統に乗務する。
  • 停車駅は「品川→新橋→東京→上野」。

京浜東北線・各駅停車 14区間 品川→田端 北行
京浜東北線・快速 9区間 品川→田端 北行
運転可能車両「E233系1000番台」

  • 京浜東北線としては『プロフェッショナル仕様』以来の登場だが、E233系が収録されるのはシリーズ初である。 各駅停車と快速の両方が運転可能で、フリー走行モードでの選択画面などではそれぞれ別車両扱いされている。のちにアーケード版にも全区間逆移植された。
  • 唯一、速達列車として駅を通過する。*1
    • シークレットミッションが2枠ずつの計4枠分設けられており、それぞれ先方の2枠をクリアーしても上野までしか乗務できず通常走行しかアンロックできない。
  • 快速の停車駅は「品川→高輪ゲートウェイ→田町→浜松町→東京→神田→秋葉原→上野→田端」。

成田エクスプレス 3区間 池袋→品川 下り
運転可能車両「E259系」

  • 本作唯一の特急列車。E259系かつ山手貨物線を走行する成田エクスプレスに乗務できるのはシリーズ初である。池袋駅始発系統が運転可能であり、ミッションごとに違った具体的な号数がアナウンスされる。
    • なお成田エクスプレスは列車の愛称であって路線名ではないが、実際にも運転系統として案内されることが多く、ゲーム内では路線名と同じ扱いを受けているため、当記事内ではそちらに合わせて記載している。
    • シークレットミッションが2枠設けられており、1枠目をクリアーしても新宿を始発する系統と通常走行しかアンロックできない。
  • 停車駅は「池袋→新宿→渋谷→品川」。

総武線 4区間 市ヶ谷→秋葉原 東行
運転可能車両「E231系500番台」

  • 唯一アーケード版からのベタ移植で運転可能車両もそちらに準ずる。いわゆる「中央・総武緩行線」と呼称される区間であるが、ゲーム内ではあくまで「総武線」表記であるため、記事内もそちらに則る。
    • 注意点として、「アーケードモード」専用路線であるため、 「おうちでGO!モード」でプレーすることはできない
  • 各駅停車のみ運行されている系統のため、快速運転は一切行われない。

評価点

当項ではコンシューマ移植にあたって追加・変更された点について記述する。
アーケード版と重複する点は、アーケード版の評価点の項に譲る。


新規追加区間のグラフィック

  • 細かな再現ミスも依然として多いものの、ぱっと見ではアーケード譲りの業界最高水準のグラフィックのクオリティであることは依然として変わりないグラフィックの秀逸さ。制作にあたり、15,000枚にものぼる取材写真が活かされてることがアピールされており、そうした意味でも破格のグラフィックを再現しようとする意気込みは他の追従を許さない。
    • 車両グラフィックも秀逸であり、特に目立つのは205系の車体の艶だろう。ステンレスの質感を強調した反射は他の車両と比べても明白であり、あたかもデビュー当初の姿が蘇ったかのよう。うぐいす色の103系もどことなく鈍重で、実写に近い印象を与えること間違いなし。
    • 細かい点では、今作では運転士のボイスを3種類から選ぶことができる。これによって運転士のグラフィックが変化するという小ネタも。

右手の操作系統

  • 移植に際して一連の動作が簡略化されることとなったが、画面から目を離さずにボタンワンタッチで指差喚呼を行えるようになった。簡略化されていながらも、アクションを取ったということが実感しやすいものとなっており、面白さは損なわれていない。
    • 戸閉灯や速度制限の指差喚呼は、指差喚呼を押せば自動的に行われるというものであり、場所を取り違えてうっかりミス、ということも軽減されているため、難易度バランスとしても丁度良い塩梅。ワイパー操作や減光、警笛も右手だけで完結するため、操作に慣れたら各種操作の楽しさを実感しやすい。減光や警笛対象がスコアの加算対象外になっていることもあり、本来のポテンシャルを発揮しているのは確かである。
    • Switch版であれば携帯/テーブルモードで実際に該当箇所を画面タッチで操作することも可能。(画面が小さいことを除けば)自由度が増している。

一部で改善された演出

  • 警笛対象をはじめ対向車や並走列車といった要素が完全にランダムとなったため、演出としての違和感はかなり減少した。ただし減光操作判定における相変わらずのシビアな仕様ゆえに煩雑になるデメリットがあるものの、今作ではハートポイントを獲得することができる以上のメリットはないため、ゲームプレイに支障が生じるほどではない。

難易度による棲み分け

  • 「運転士の道」限定ではあるものの、4段階の難易度を選択することが可能であり、それぞれの難易度で差別化されている。隠し要素を全てアンロックするだけならば難易度は不問となり、自分に合った難易度で攻略可能となった。後述のバランス面の問題は依然とし気にはなるが、少なくともクリアーするだけならばアーケード版よりはまともになった。
    • イージーならば、ミッションクリアの条件もかなり緩くなっており、比較的操作に慣れた初級者でもクリアーまでならできる程度の難易度に抑えられている。ノーマル以上からだと全体的に厳しめの条件になるため相応の難易度も相まって歯応え抜群である。
      • ある条件を満たすと、もう一つ上の難易度を選択することが可能となり、それが上級者も唸らすルールとなっている。内容自体は上記の特徴項の通りであるため、興味があれば是非とも自分の目(と上記特徴項)で確かめてみてほしい。あくまでおまけ扱いであるため、この難易度で全ミッションを達成しても特に隠し要素なとがアンロックされるわけではないので、そういった意味でもやり込み要素として棲み分けが図られている。スコア自体は保存されず、クリアーしたことを証明するマークが付与されるだけであるため、減点項目にさえ触れなければお咎めなしである。よって、Gセンサに抵触するブレーキングで攻めるもよし、駅構内再加速で到着時刻と停止位置を調整してもよしと、まさに自分だけのプレイングで攻略することも可能である。

賛否両論点

一般層には厳しい難易度バランス

  • 難易度選択以外にも全体的にアーケード版から易化された調整となっている。もっともわかりやすいのが、「込め直し無し停車」「対向車に減光」といった一部の必須動作が「成功すれば最大3つのハートを獲得できる」という形で、スコアやミッションゲージに関わらなくなった点である。これによって初心者は不用意な操作で減点されることが減り、上級者はスコアアタックに集中しやすくなった。このハートはゲームを進めるために一定量の累計獲得数は必要であるため、そういった形でバランス調整は図られている。
    • またスコアも加減点対象が減ったうえ、Sランクの下限がアーケード版よりも低めに設定されている点も見逃せない点だろう。そのため、単にクリアーしたり所定のランクに到達させるだけならば、全体的な難易度は低下しているといえる。
  • ただし依然として難易度的に厳しい点が散見されており、中にはゲームクリアーの障壁となっているものも。特に途中駅でミッション失敗になっても コンティニューは一切できず 、最終駅でミッション失敗になった場合、たとえその時点でSランク分のスコアを獲得しても クリアーしたことにはならない 点は、シリーズ過去作より難しくなっているポイントといえる。
    • しかもアーケード版の「GOバッジ」のようなアシスト機能やブレーキタイミングを可視化する機能が採用されなかった上、チュートリアルでも停車駅へのブレーキについては一切のノーヒントを貫いているため、減速のコツを学習することが依然として難しいままである。加えてどの難易度でも制限速度や定速ポイントの場所、到着時刻までの残り時間に関してはほとんど変わらないため、特に後半のミッションで多用される「ブレーキを掛けながら定速ポイントを通過しないとまず間に合わない制限速度に引っ掛かって減点」というコンボに巻き込まれやすいのは相変わらずである。上級者からすれば大きく緩和されているのは確かだが、依然として一般層にはまだまだ厳しいバランス調整である。

収録路線の是非

  • そもそも山手線自体シリーズの中でも特に収録頻度が高い作品で、過去には『特別編』といった山手線だけを重点的に収録したタイトルも存在しているため、各駅停車しか運行されていない路線であることも合わせてシリーズファンからの反応は芳しくない。
    • ただ、1つ前の『特別編』から数えても10年ぶりの家庭用新作であり、新駅である高輪ゲートウェイ駅など当時と状況が違っている部分はかなり多く、新規層からはさほど問題視されていない。

アーケードモード

  • メニューやリザルト画面のGUIのみならず、ミッション内容までもがアーケード版そのままとなっているため、それぞれの練習として最適という意味では重宝する内容となっている。本格的な山手線雪ミッションから回復運転など、アーケード版でクリアーできなかった雪辱を晴らすのにも研究用途として活用することがいつでも可能となっている。アーケード版の「いつでもGOモード」に準拠しておりクリアボーダーという概念もないため、お試し感覚でプレーしてどういった内容なのかを把握することも安全に行える。
    • 反面、難易度を下げることができる設定等は一切ないため、全体的なハードルが高いことに変わりはない。そういった意味でも良くも悪くもベタ移植である。

VRモード

  • VR専用機器を繋ぐことでアーケードモード以上の臨場感を体験出来る上、デフォルメされた運転台、路地等の細部まで再現された風景といった出来栄えそのものは良好。
    • ただし山手線の原宿~品川のみ、天候晴れ固定、車両はE235系のみと、ボリュームはおまけ程度である。アーケードモードではE231系500番台だったミッションがE235系で運転できるという利点もあるが、どうしても短すぎる感覚は否めない。

十字ボタンでのマスコン操作

  • 従来の電車でGO!は十字ボタン上下でマスコンの操作ができたのだがPS4版では当初左スティックでしか操作できなかった。
    • 後発のSwitch版では初めから十字ボタンも使用可能になっている。21年7月のアップデートでようやくPS4版にも対応した。

問題点

アーケード版や『FINAL』といった前例から、ゲーム内容自体が水増し的な内容になってしまうことが発売前から一部で懸念されていたが、結果としてその前例すらも超える上げ底っぷりが露呈してしまった。似たり寄ったりなミッションをやり続ける必要があることをはじめ、全体的に人を選び過ぎるゲーム内容となっており、並走路線をアンロックするだけでも途方も無い作業になってしまった。


ダレやすい運転士の道

  • 収録路線の都合を抜きにしても全体的に似たり寄ったりの区間と同じ車両ばかりを操作することになるため、非常にダレやすい内容となってしまっている。
    • 各チャプター毎に運転区間が集中する傾向にあり、チャプターを開放しても広がった区間「だけ」をやらせるミッションが多数を占めている。その中身も速度制限や時間帯等を微妙に変えただけであり、代わり映えしないミッションを何度も繰り返しやる必要がある。
      • ミッションの数と名前だけは多彩であり、地元ネタや歴史を交えたフレーバーテキストは無駄に凝っているが、肝心のゲーム内容とはほぼリンクしておらず、ボリュームの少なさをごまかしているものとして受け止められてしまった。
  • シークレットミッションも水増しとなっており、直前に3つほどのミッションをクリアしてようやく隠し要素をアンロックできるミッションに挑めるというものとなっている。更に「埼京線」「成田エクスプレス」はそれが2セット、「京浜東北線」に至っては種別ごとの計4セットとなっており、アンロック作業だけでも途方もない労力を費やす内容となっている。
  • まあ本物の運転士は同じ車両で同じ区間を数え切れぬほど運転するのが仕事のため、それを忠実に再現していると言えなくはないが、それをゲームとして楽しめるかどうかは別問題である。

水増しも過ぎるデイリールーレット

  • 専用ミッションを日替わりでプレーできるという触れ込みだったが、予め用意されたミッションをくじ引きよろしくスロットで引かせるだけである。どれも「運転士の道」でそのまま採用しても良いレベルのミッションであるが、無理して分割することも難しい区間であり、逆方向の運転ができないなどの仕様ゆえに、制約の煽りを受けてしまっていることが窺えるモードとなってしまっている。
    • ゲーム的に見ても、達成率100%の最大の障害と言っても過言ではなく、ダブりが続いていつまで経っても埋まらない…というジレンマに陥りやすい。

おまけ同然な並走路線

  • 山手線が各駅停車しか運行されていない路線ということを懸念してか、並走する「埼京線」「京浜東北線」「上野東京ライン」「E259系成田エクスプレス」も「(パッケージや広告で堂々と宣伝していながらも)隠し要素として」収録されているが、これも隠し要素であるせいかおまけ同然の扱いに留まってしまっている。
    • 各並走路線で運転できる車両も成田エクスプレス以外はE233系しかなく、種別も京浜東北線を除いて1種類しか無いと冷遇されたものとなっている。山手線では運用離脱した車両を含めた4車種も運転可能であるだけに、余計に不公平感を生み出しているのは確かである。
    • アーケード版同様に並走・対向列車が多数登場するもののそのほとんどが相変わらず運転不可能な点も、ボリューム不足感を増長させている問題点である。「踊り子(池袋→渋谷、品川→東京)」「ひたち・ときわ(品川→上野・日暮里)」などをはじめ、区間的にも収録できそうな列車はまだあるのだが。
  • また収録区間自体も山手線との並走区間に合わせているため、どうにも中途半端な印象を抱かせる。

音声関係の不備

  • 成田エクスプレスではJR東日本の特急車両でお馴染みのミュージックホーンがカットされてただの電笛となっており、走行音もE233系の流用である。
    • ミュージックホーン(と発車メロディ)についてはJASRACの著作権保護対象であることが分かっており、権利代を支払うことを避けたと考えられる。この問題は、当wiki執筆対象外タイトルの『PLUG & PLAY』から続いてしまっており、一種の悩みの種案件となっている。
  • ブレーキのエアの音が全車両で共通であり、205系や103系でもJR車両と同じ音が鳴る。アーケード版の201系はちゃんと国鉄型らしいエア音になっていたのだが。
    • 更に205系や103系でも自動放送が流れる(一応設定で音量を0にすることはできるが)上、警笛やドアの音も当時の山手線車両とは全く別物となっており、折角の秀逸なグラフィックで再現された国鉄電車も雰囲気が台無しとなっている。

冷遇された総武線

  • 総武線のみアーケード版からのベタ移植止まりと冷遇されている。しかも「アーケードモード」でしかプレーできないため、フリー走行ができない唯一の収録路線となってしまっている。
    • 代々木-市ヶ谷を収録していれば山手線内全ての駅の収録となり、さらに新宿-御茶ノ水収録で快速運転も楽しめただろうに残念である。

意匠尊重が裏目に出た視認性劣悪なUI

  • 運転時のUIは各車両の運転台をモチーフにしているが、デザインを優先しすぎて視認性は劣悪になっている。特に「205系」「103系」はメーター類だけで画面の1/3程度が埋まっており、前方の視認性の低下が凄まじい。デジタルメーターが小さ過ぎたり、残距離や到着時刻までの時間も意匠尊重ゆえに視認性が悪化している。
    • また山手線・総武線以外では通過駅があるが、「停止位置まで・到着時刻まで」が「通過位置まで・通過時刻まで」に変わるだけと視覚的な変化が殆どなく、誤通過や誤停車を招きやすい。過去作は通過駅と停車駅とで字幕の色が変わったり運転士の喚呼音声等で停車と通過が分かりやすくなっていたのだが。
    • 21年7月のアップデートで通過時に矢印(⇒)アイコンが表示される仕様に変更された。
      • これだけならせいぜい賛否両論で済むが、アーケード版と同じものや簡易的なUIに変更することは一切できず、このUIの使用を強制されている点は痛い問題となっている。

アーケード版の問題は概ね据置

  • 重複する内容であるため、詳細はアーケード版の問題点の項に譲るが、上記ゲームシステムの都合で改修された変更点を除き、一切の修正や変更が見受けられない。
    • 指摘の多い「支離滅裂な速度制限」「パンタグラフの無い電車」「国鉄特急車にボルスタレス台車」「ホームドアと合わない停止位置」といった問題点は解消されずじまいということであるうえ、大人の事情で結局採用されなかった「夜間ダイヤ」、さらに過去の家庭用で実現していた「外回りが運転できない」「アーケード版で削除された各駅の発車メロディが結局収録されない」の2点に至っては余程だったのかスクエニ公式サポートセンターの「よくある質問」にも記載されている。上記水増しや未収録要素も合わせ、批判の声が強くなる結果となった。

総評

アーケード版の移植のみならず、発売当時開業してまだ日の浅い新駅・高輪ゲートウェイ駅を含めた山手線がハイクオリティに再現されたことで、シリーズに初めて触る鉄道ファンなどの非ゲーマー層からは期待されていた。
しかしタイトルに偽りなく山手線内回りエリアだけの並走路線と言ったボリューム不足感、なによりそれに起因したであろう作業ゲーぶりが鼻につくため、基本的には「山手線の運転シミュレーターの雰囲気をそれっぽく堪能したい」「長年のシリーズ経験者」層に特化した完成度となっている。結果、本来のターゲットであろう非ゲーマー層を突き放したかのような全体的なハードルの高さもあり、総じて人を選ぶ完成度に落ち着いたとも言える。

一応、今まで眺めるだけだった並走路線がプレーできる点だけは快挙と言えなくはないため、そうした意味ではプレースタイルを変えて楽しむ嗜好と忍耐を持っているのならば、制約付きながらもフリー走行やデイリールーレットを楽しめるかもしれない。単体として見ればそれほど酷い出来ではないのも救い。


余談

ゲームに関する事柄

  • 本作PS4版の発売に合わせ、初代『電車でGO!』の山手線3区間がブラウザゲームとして配信されている。 本家以上に車両の性能が低下しているので注意。
    • それがこちら。スマートフォンでしか遊べないのでPCでこの記事を読んでいる方は注意。
  • 京浜東北線快速のアンロックミッションに「有楽町で寄り道」があるが、京浜東北線の快速は有楽町は通過するため、ミッション内容に合っていない。

周辺機器

  • 本作自体の問題点ではないが、PS4版は専用コントローラーが発売されなかったために操作の直感性は失われている。
    • 据置機で専用コンが用意されなかったのはPS4版の本作のみである。シリーズ作が1本しかなかったドリームキャストやセガサターン、NINTENDO64、Wiiでさえもコントローラーが存在していたため、かなりのレアケースといえる。
    • 汽車でGO!』も見方によっては存在しないととれるが、PS版のツーハンドル・ワンハンドルコントローラーが使用できるため、やはり一切の周辺機器が発売されていないのはPS4版のみといえるだろう。
      • PS4版のコントローラーが未発売に終わった理由には諸説あるが、一説によると既に旧来の専用コントローラーはタイトーがスクエニに吸収され、CS機での展開が休止されていた間に金型が廃棄されてしまい、改めて開発するには膨大な時間と予算が必要という採算・コスト面での問題によるものと思われる。
  • Switch版のコントローラーは2021年3月18日に瑞起*2より開発中の発表があり、同年8月5日に発売された。正式名称は『電車でGO!!専用ワンハンドルコントローラー for Nintendo Switch』。
    • 開発発表の段階では対応機種が発表されていなかったが、6月25日の発表でSwitch版のみ対応であることが発表された。
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最終更新:2023年11月25日 16:34

*1 成田エクスプレスはホームのある恵比寿駅を通過するが、湘南新宿ラインは普通電車でも通過するため、普通電車の通過する駅を通過するのは京浜東北線のみとなる

*2 近年では「メガドライブミニ」や「PCエンジンミニ」などのレトロミニゲーム機に使われているSoCの開発を手掛けていることでも知られている企業