本ページではADV『Still Life』およびその続編の『Still Life 2』について記述しています。判定はともに"なし"です。



Still Life

【すてぃる らいふ】

ジャンル ポイント&クリックADV
対応機種 Windows XP/Vista/7*1
開発・発売元 MC2-Microïds
発売日 2005年4月15日*2
定価 $ 29.99(発売当時)
プレイ人数 1人
セーブスロット 4個
レーティング PEGI:18+
配信 Steam: 798 円*3
GOG: $ 7.99*4
判定 なし
ポイント 日本語なし
エロとグロの背徳的猟奇連続殺人
報われない苛烈な鬱展開

概要

  • FPVのADV『Post Mortem』の続編。
    • 本作はFPVではなく、ポイント&クリック形式のADVとなっている。
    • 『Post Mortem』発売時は"Microïds"名義だったが、その後にMC2と経営統合し、本作リリース時は"MC2-Microïds"名義に変わっている。
      • なお、本作発売後に"MC2"へ社名変更し、さらに2009年にはAnuman Interactive傘下になった。そして、2019年にAnuman Interactiveが Microïds へ社名変更している。
  • 2005年6月6日にはXbox版が発売されている。
    • リージョン制限により日本国内向けXboxでは起動しない。
    • 前作がFPVであったため、とある欧米のCSゲーム誌から「コントローラーでポイント&クリックADVさせるなんてふざけているのか!?(意訳)」と酷評された。

ストーリー

FBI捜査官のビクトリア・マクファーソンはニューオーリンズ署で「手続違反」を起こし、生まれ故郷のシカゴへ飛ばされた。
シカゴで彼女を待ち受けていたのは猟奇連続殺人事件であった。

  • 連続殺人事件のうち4件が既に起こった後の、5件目の殺人事件の現場からゲームは始まる。*5
    • 先の4件についてはデータファイルにテキストの捜査資料があるため、5件目に着手する前に目を通す必要がある。
  • 『Post Mortem』の主人公 Gustave MacPhersonと、その孫であるVictoria MacPhersonが本作の主人公となっている。
    • 奇数章がVictoriaによるシカゴの事件の捜査であり、偶数章がGustaveによるプラハの事件の捜査となっている。全7章。
      • なお『Post Mortem』の舞台はパリであった。
      • 奇数章にて、シカゴ大の犯罪心理学の講師が「プラハの猟奇連続殺人犯の真犯人はGustave MacPhersonである」という論文を書きかけている。

システム

  • ポイント&クリック方式であり、マウスでクリックした場所に主人公が移動して、何らかの行動を行う。
    • 道具を使う場合は、先に道具を使う場所をクリックした後に使う道具を持ち物から選ぶことになる。
      • 持ち物は持ち物画面にて"目のアイコン"を選択することで、アイテムを回転させて、いろんな角度から眺めることができる。
      • 持ち物画面にて、持ち物同士を組み合わせることができる。例えば、カメラにフィルムを組み合わせなければ写真は撮れない。
    • オプションにてキーボード操作に切り替えられる。
      • 移動は矢印キーとなる。この場合、いわゆるラジコン操作となり、キャラクターの向きを考えて移動させる必要があり、想像以上に使いにくいものとなっている。
      • マウス操作ではマウスオーバーにてヒントを得られるが、キーボード操作の場合はその場に進むまでインタラクト可能かどうかが分からない。この点も不便である。

評価点

  • 表現に力が入れられている。
    • 画質は高くないがカット割りなどが凝っているプリレンダリングのイベントムービーがいくつか用意されている。ただし、中には死体もあるので、グロ耐性がないと厳しいものもある。
    • 本編で見たムービーはメインメニューの「Cinematic」から見返すことができる。
    • ただの一枚絵で済ませられるような何気ない背後の風景にも力が入っており、背景の遠くの煙突から煙が出るアニメーションがあったり、波で揺られている船があったりする。
  • 練られたストーリー構成
    • プラハの猟奇連続殺人事件の捜査を行った私立探偵の孫娘が、FBI捜査官としてそのプラハの連続殺人事件の模倣犯を追うという時間を越えた壮大な構成となっている。
      • 祖父の無念を孫娘は晴らせるのか!?という激熱な展開。 しかし鬱展開となる…。

賛否両論点

  • 死体画像が多数出てくる
    • 猟奇殺人を扱った本作では死体画像が多く出てくる。しかも、検死や解剖まで行う場面もあるため、死体がアップになることもある。さらに、本作は映像に力が入っているため、時代が時代だけに凄くリアルな画像という訳ではないが、それなりのグロさがある。
      • 逆に、アートとして楽しめたという人もいる。
    • 死体はすべて全裸の女性であり、その点に嫌悪感を覚える人もいる。
    • 時代が時代だけに凄くリアルな映像という訳ではないため、そこまで気にならないという人もいる。
  • 強烈な鬱展開
    • ゲーム開始時点で5人も死んでいるのに、更に続々と人が死ぬ。
      • 1章にて「Gustave MacPhersonは後の結婚相手とプラハで出会ったのに、プラハの話はしたがらなかった」と言われているが、そりゃそうだろうと思わざるを得ない悲劇が待っている。
    • 結局、シカゴ編の犯人もプラハ編の犯人も捕まってはいない。
      • シカゴ編に至っては、犯人が誰だったのかすら明かされない。なお、シカゴ編の犯人は『2』で明かされるが、本作内でちゃんと伏線が張られているので大方の予想通りであっただろう。
    • 本作は『Still Life(静かな生活)』というタイトルであるが、商品ロゴは『Sti ll l ife』と表記されており、静かな生活が 切り裂かれた と受け止めるべきである。
      • 「Still Life」には静物画という意味もあるが、本作には多数の絵画が出てくるものの、ほぼ人物画で残りも抽象画である。

問題点

  • 主人公が地形に引っ掛かりやすい
    • ポイント&クリックタイプのADVでは、クリックした場所に主人公がちゃんと地形を回り込んで移動するものが多いが、本作では一部の場面で主人公が地形に引っかかって延々と足踏みをする場面がある。
      • なお、オプション設定によりキーボードの矢印キーでも移動可能だが、ギャラリーの貸しアトリエのリフト前など、矢印キー移動でも引っ掛かってしまって移動しにくい箇所がある。
  • やや理不尽な謎解きがある
    • 使用するアイテムが分かりにくい場所に落ちている場合がある。
      • 某所でチェーンを切断するのに使う器具は背景に紛れていて、そこにあることが目視で確認しにくい。
      • 釘で板が打ち付けられた非常口を開けるための道具も、見た目がバールの様なものではないため、バールの様なものだと思いこんで探して回ると見つからない。そのアイテムはそもそも背景に馴染んでいて、ヒントなしでは拾えるアイテムであると気づくのが難しい。
    • 最終盤に、絵を見ることで得られたキーワードから次の犯行現場を予測する必要があるのだが、他のキーワードは絵画を見るだけで自動で得られるのに対し、本当に必要なキーワードの一つだけが絵の中に描かれたある物をクリックしないと得られない。他のキーワードが自動で得られるため、クリックが必要であると気づきにくく、詰まりやすい。
  • 章ごとに交互に主人公が入れ替わるのが煩雑である
    • どちらも連続殺人であり、このため被害者が多い。このため登場人物が多くなっており、死体でしか登場していない人物の名前や交友関係も複雑である。このため、2人の登場人物のストーリーが章ごとに分断されて進むことにより、登場人物の情報が混乱しやすくなっている。
      • Gustave MacPherson自身が被害者とその友人の名前が似ていて混乱しやすいと言っている。

総評

ホラーではなく推理ADVなのだが、猟奇殺人事件を扱っており、多数の死体が出てくることからグロ耐性がないとプレイするのは厳しい。
ではあるものの、映像に対する労力はこの時代のADVにしてはかなり手間をかけている印象があり、同社の『Syberia』よりも本作を推す人がいるのも頷ける。
伝統的なポイント&クリックADVであるが、主人公の移動がスムーズではない箇所があり、操作にストレスを覚える場面が多々ある。この点について『Syberia』より劣化していることに首を傾けたくなる。


Still Life 2

【すてぃる らいふ つー】

ジャンル ポイント&クリックADV
対応機種 Windows XP/Vista/7*6
発売元 MC2
開発元 GameCO Studios
発売日 2009年4月3日(ドイツ国内版)
定価 $ 19.99(北米版。発売当時)
プレイ人数 1人
レーティング PEGI:18
配信 Steam: 798 円*7
GOG: $ 7.99*8
判定 なし
ポイント 日本語なし
脱出ゲー + 鑑識課ゲー
ストーリーは薄くなったが鬱展開はそのまま

概要(2)

  • ADV『Still Life』の続編。
    • 前作を開発したMicroïdsカナダスタジオがUBIへ売却され、前作の犯人を明かさないままシリーズ終了という懸念が強まったが、開発をGameCO Studiosへ外注してなんとか本作が製作された。
      • Gameco Studiosは2003年に設立されたフランスの会社である。本作より先にADV『Mozart: The Conspirators of Prague』の製作に着手したが、同作の発売は本作よりも後となった。
    • 前作の概要欄で記述した通り、本作リリース前に MC2-Microïds は MC2 へ社名変更している。ただし、本作は "Microïds レーベル"作品としてリリースされている。
    • フランスの会社の製品なのにドイツ国内版がEU版より1ヶ月以上早くリリースされている*9
      • 英語への翻訳およびC.Vの録音が難航したためとのこと。
    • Mac版も同日に発売されている。こちらは現在は販売が終了している。
    • パブリッシャーが販売地域ごとに異なっており、北米版はEncore、UK及びオランダはIceberg Interactiveから発売された。

ストーリー(2)

Victoria MacPhersonは前作にてまたもや大々的に「手続違反」をやらかして「辞めてやる」と言ってFBIを退職。L.A.へ一人旅立った。
しかし数年後、Victoria MacPhersonはFBIに再就職し、メイン州で新たな事件に取り組んでいた。メイン州で彼女は「東海岸の殺人者」と呼ばれる連続殺人犯を追っていたが、捜査は3年も行き詰まっていた。
そんなさなか、同じく「東海岸の殺人者」を追っていたジャーナリストのPaloma Hernandezが「東海岸の殺人者」に誘拐された。

システム変更点

  • またもや章ごとに操作する主人公が変わるシステムとなっており、本作ではVictoria MacPhersonと、Paloma Hernandezを交互に操作することになる。
  • 所持できるアイテムのサイズが最大16単位と定められた。
    • アイテムごとにサイズが決まっていて、例えばベットマットはサイズが16となっている。このため、他のモノを持っているとベットマットは持てないことになる。
  • キーボードの矢印キーによる主人公の移動は廃止されている。

評価点(2)

  • 本作もイベントムービーは多い
    • 本作のイベントムービーは脱出系パズルで活路が見いだせた時や、重要な証拠を見つけて何かをひらめいた時が大半である。
      このため、猟奇殺人が続々と起こった前作に比べると、各ムービーのインパクトが劣っている感は否めない。
  • パズルの難易度が上がっている
    • 制限時間のあるパズルが登場している
      • ただし、単に死に覚えじゃないかと思われる箇所もある。
        例えば、解毒剤を選ぶシーンで、試薬を入れるとハズレとアタリで異なる色となるが、どっちがアタリなのかという説明は一切ないので、結局、イチかバチかで飲んでみる死に覚えと化している。
    • 持ち歩けるアイテムの(かさ)が制限されたため、アイテム管理が面倒になっている。

賛否両論点(2)

  • ストーリーは1本になった。
    • 前作ではシカゴの事件と過去のプラハの事件のエピソードが交互に進むためストーリーの理解に難があったものの、実質2本分のストーリーを楽しめた。
      しかし本作では同じ「東海岸の殺人者」を追い詰めるストーリーだけ(もちろん、前作の残りのエピソードが挟まるが)に焦点が当たっており、前作に比べて物足りなさがある。
      • Paloma Hernandezのパートは脱出ゲームが主体となっており、ストーリー進行は停滞気味となってしまっている。
      • Victoria MacPhersonのパートも鑑識課ゲーと化しているが、得られた手がかりの解析は早く、そこそこの進展を見せる。
  • なお、前作も本作も即死系バッドエンドはあるもののストーリー分岐はない一本道である。

問題点(2)

  • 操作性がさらに悪くなっている
    • 前作は2Dクォータービュー的であったのだが、本作は3D描写となっている。しかしポイント&クリックインターフェースであり、プレイヤーがカメラをコントロールできないため、辺りを見渡すことが出来ずに探索にストレスが掛かる。
      • 特に、カメラ切り替わり地点が画面端ギリギリに設定されている場所があり、カメラを切り替えるためにわざわざ画面の端から端まで主人公を移動させる必要がある場面が何箇所もある。
    • アイテムの使用方法が、前作ではインタラクトする箇所を選んでからアイテムを選ぶ手順であったのが、本作ではアイテムを選んでからアイテムを使用する場所を選ぶ方式になり、1手順増えている。
      本作は鑑識課ゲーと化しているため、化学薬品を掛ける → 綿棒で血液痕を採取する とか、銀粉を掛ける → 指紋を採取する という手順を何度も行うため、たった1手順でも少なくなれば多少は楽になるのだが。
      • 従来: インタラクトする箇所を選ぶ → インベントリーを開く → アイテムを選ぶ …インベントリーを閉じる手順は不要
      • 本作: インベントリーを開く → アイテムを選ぶ → インベントリーを閉じる → インタラクトする箇所を選ぶ
    • バックログ機能がなくなってしまっている。
  • 理不尽な謎解きがある
    • 前作においても攻略に必要なアイテムが背景に紛れていて、「Hidden Objects Gameか!」と言いたくなる場面もあったが、本作では更に上を行き、一見何もない壁から犯人の残したものかもしれない衣服の繊維を見つけなければならないという無理目な証拠探しがある。
      • なお、苦労して集めたこの証拠は捜査の進展に役立たない。しかし、採取しないとストーリーは進まない。
    • 一部の探索では進行に応じて、それまでは探索しても拾えなかったアイテムが使用可能に変わることがあり、同じ場所を何度も探す手間が掛かるだけでなく、「そこは探した」という思い込みによる見落としが発生して詰まりやすい。
      • なお前作においても、問題点に挙げた「非常口を開けるアイテム」は階段が壊れるまでは拾うことが出来なかったアイテムであった。
  • 前作とグラフィックの方向性が変わっている
    • グラフィックのリアル化に伴って、前作にあったおどろおどろしさが薄れており、前作ファンからはグロいだけで魅力のない絵になってしまったという失望の声が大きい。
      • 前作の犯罪者らは「殺人はアートだ」と思っているため、美術面にこだわりがあったという背景もあるのであろうが。

総評(2)

前作は主人公の一方が私立探偵である聞き込み主体の推理ミステリーだったが、本作ではFBI捜査官は据え置きだがもう一方の主人公は被害者となり、そちらのパートは脱出ゲーム主体となっている。
一方のVictoria MacPhersonのパートも、Hidden Objects Gameさながらにひたすら怪しい箇所を探して証拠集めをする鑑識課ゲーと化している。こちらのパートも終盤は脱出ゲーとなる。
本作のストーリー自体は意外性はあるものの前作ほど重厚ではなく、脱出や鑑識の作業量に対して割りに合わないが、ストーリーに期待せずに脱出系のパズルゲームとしてプレイした人々からは良作に近い満足感が得られたという意見も散見される。

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最終更新:2021年08月19日 17:51

*1 初稿投稿者はWindows 10でプレイしクリア済みだが、SteamにおいてはWindows 10では起動しないというコメントが散見される。

*2 SteamではなぜかXbox版の発売日である2005年6月6日をWin版の発売日と取り違えて記載している。

*3 2015年時点での定価

*4 2021年時点での定価

*5 正確には、4件目の犯行はオープニングムービー内にある。

*6 初稿投稿者はWindows 10でプレイしクリア済みだが、SteamにおいてはWindows 10では起動しないというコメントが散見される。

*7 2015年時点での定価

*8 2021年時点での定価

*9 ドイツとフランスはMC2から委託される形でドイツのパブリッシャーであるcdv Software Entertainmentが販売を行っている。