NAM
【なむ】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS Windows(Steam)
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発売元
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GT Interactive Software 【Steam】Ziggurat
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開発元
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TNT team Nightdive studio(移植)
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発売日
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1998年7月31日
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定価
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【Steam】698円
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配信
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Steamにてダウンロード販売中
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判定
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クソゲー
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ポイント
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ベトナム戦争がテーマのFPS 史実通りの過酷なゲームバランス メッセージ性は皆無
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概要
ベトナム戦争を題材にしたBuild engine製の2.5DFPS。
開発を担当したのは元『Duke Nukem 3D』のトータルコンバージョンMODを製作していたTNT teamで、MODチーム時代の作品である『Platoon TC』をベースとしている。
基本的に『NAM』と呼ばれることが多いが、そのド直球すぎる名前からアメリカの大手スーパーであるウォルマートのみ『NAPALM(ナパーム)』に改題されて販売された。
ゲームシステム
操作方法
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アローキーで前後旋回、</>キーで左右移動、Ctrlで発砲、Shiftでダッシュ、Altでストレイフ切替。Aキーでジャンプを行い、Zキーでしゃがむ。
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[/]キーでアイテムを選択し、Enterキーで使用。一部アイテムにはファンクションキーが設定されており、Nキーでナイトビジョン、Mキーでメディキットを使用するなどの動作が可能。
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Tabキー1回で線形マップを表示し、その状態でもう一度Tabを押すことでテクスチャ付き俯瞰マップを表示する。
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Uキーでマウスエイムをオンにし、Iキーでクロスヘアを表示。
武器
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ナイフ、M16アサルトライフル、ショットガン、M60機関銃、LAW、手榴弾、グレネードランチャー、スナイパーライフル、クレイモア、火炎放射器の計10個。
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スコープやアイアンサイトの概念はなく、デフォルトではオートエイムが働く。
アイテム
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メディキット、ナイトビジョン、地雷探知機の三つのアイテムが登場し、状況に応じて使い分けることになる。
ゲーム進行
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『Duke Nukem 3D』と同じくステージ方式であり、ゴール地点のヘリコプターや装甲車、配置された無線機を使用するなどでステージクリアとなる。一部ミッションでは「エリア内の全ての爆弾を解除する」などの特殊な目標が設定されている。
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ステージ各所には地雷が敷設されており、地雷探知機で探せるほか凸型のグラフィックでギリギリ目視可能。上に乗るとスイッチ音が鳴り、その状態で足を放すと爆発する。
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上に乗ってしまってもその場でSpaceキーを押すことで解除を試みることができるのだが、一定確率で解除に失敗し爆死する。
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また、踏むと毒ガスが放出されるケミカルマインや木々の間に糸の張られたブービートラップといった特殊なトラップも存在する。
問題点
理不尽・雑なマップ構造
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敵配置はどのマップもいやらしく、初見の場合予想外の方角からの射撃で頻繁に死亡する。また、ほぼすべての屋外マップで理不尽なまでの爆撃に常時晒されるようになっており、気付いたら頭上からの爆撃で爆発四散していた、なんて死因はザラ。
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敵は無限湧きではないため限度はあるものの、一定位置に達するごとに頻繁に背後に敵が再配置されることが多い。掃討したはずの後ろの道から出てきたベトコンに背中を撃たれることが非常に多く、ストレスが溜まりやすい。
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敵の量も非常に多く、章の終盤ともなるとその数は100体を超える。まともに戦闘に参加してくれる味方NPCは登場しないため、たった一人で敵だらけのジャングルを攻略しなければならない。
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ステージによっては実際のトンネルを再現したのか、正規ルートのはずのベトコン用地下トンネルの入り口が草木で巧妙に隠されていたりもする。マップ形状的に不自然な行き止まりにはなっているのだが、俯瞰視点マップを観ずに入口を見つけるのは難しい。
強すぎる・マヌケすぎる敵AI
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本作の敵であるベトコンは視認から発砲までに若干の猶予はあるものの、一度発砲を始めるとほぼ即死級の銃弾を確実に当ててくる鬼畜仕様。大抵の場面で回復するヒマもなく即死する。
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通常のベトコンであっても一発25ダメージ以上削り取ってくるため、原作のような豪快なゲームプレイは不可能。
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敵枠として戦車が登場するのだが、高速で移動してロケット(グラフィック流用)を連射してくる凶悪な性能を誇っている。しかし砲弾に爆風ダメージがあるのにもかかわらず自分と壁との距離を認識できないため、頻繁に自分の砲弾を目の前の壁に当てて自爆大破する。
間抜けすぎる味方AI
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味方キャラクターはほぼ登場せず、登場するとしてもほぼ戦闘に貢献してくれない一般兵か全く攻撃しない衛生兵の二種類しかいない。他の味方キャラもいるにはいるが、背景扱いであり看板状の画像一枚で表現されている。
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一般兵や衛生兵は指示を出してついてこさせるかその場で待機させるかを選べるのだが、プレイヤーとの直線距離しか認識できないため間にオブジェクトがあると挟まって動けなくなる。また、ジャンプもできないため川に落ちると岸に上ることができない。
ショボすぎるグラフィック
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1996年の2DエンジンであるBuild engineは流石に時代遅れ感が否めず、リアルさの欠片もないチープなグラフィックも合わさって酷評された。
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1998年といえば『Half-Life』『Unreal』『Thief: The Dark Project』『SiN』『Shogo』といったフルポリゴンのFPS作品が相次いで発売された年。他のBuild engine製タイトルもグラフィックの描き込みによって2Dの欠点を補っていたが、本作のグラフィックはそれらと比較しても到底及ばない。
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また、『Duke Nukem 3D』から一部アセットをそのまま使用している部分もあり、ヤシの木や赤いスイッチ、転送装置、カーチェイスするO・J・シンプソンが映ったテレビ画面といったグラフィックがそのまま使われている。SFチックなスイッチや転送装置が唐突に出没するため非常に浮いている。
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2Dグラフィックのためモーションの概念がなく、敵兵士は待機中微動だにしない。このため狙撃兵などの動かない敵の場合、発砲を開始するまで非常に見えにくい。
台詞のズレ
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爆風ダメージ時や腐った食糧の摂取時などにプレイヤーが喋るのだが、この際本作向けに撮った音声と『Duke Nukem 3D』からそのままぶっこ抜いて使われた音声の二種類が混在している。
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John st. john氏の声質と本作のアクターの声質は大幅に異なっており、違和感が大きい。
ストーリー性皆無
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ベトナム戦争を題材にした作品といえば反戦がテーマにされやすいが、本作にそういったメッセージ性を含んだ展開は一切ない。
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やることといえば大量のベトコンを片っ端から虐殺していくだけで、MOD時代に参考にされていたはずの『プラトーン』のようなストーリー性は本編中に一切含まれない。
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バージョンによっては遺伝子改造を受けた強化兵士となり、血清の有効性を実証するために意図的に少数メンバーで死地に送られるというキャプテン・ア〇リカ的な後付けストーリーも存在するのだが、これまた本編中にそういった要素は一切登場しない
チープなBGM
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どのステージもMIDI音源1曲のみで構成されており、お世辞にも出来がいいとは言えない。現地音楽風のものも流れはするのだが、そもそも部隊が戦場なので雰囲気に合っているかというと微妙なところ。
無駄に鳴り続ける効果音
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Duke Nukem 3Dでも搭載されていた環境音システムが取り入れられているが、音量が無駄に大きくプレイの邪魔になることが多い。銃撃音や断末魔、航空機のエンジン音がランダムなタイミングで至近距離と変わらない音量で流れるため、しばしば奇襲や爆撃かと勘違いしてしまう。
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escキーでメニュー画面を開いた際にもランダムでゲーム内効果音が流れるという謎の要素があり、途中セーブしようと思った矢先に狙撃銃やマシンガンの銃声、爆撃音が流れるなど勘違いを引き起こしがち。
古臭い操作系
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デフォルトではWASD操作やマウスエイム、クロスヘアが有効ではなく、『DOOM』と同じアローキーによる前後旋回を要求される。一応Steam版はキーコンフィグが別に搭載されているため、これを利用して現代標準の操作体系に編集しなおすことは可能。
狭すぎる描画範囲
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エンジン限界からか、マップの描画範囲が異様に狭い。ほかのBuild engine製タイトルよりも交戦距離が全体的に広いのもあり、余計に不便さを感じることが多くなっている。
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暗いのではなく距離に比例してテクスチャの明度を落としているため、目を凝らそうが敵が発砲しないかぎり視認不可能。キルカメラで敵のおおよその方角を覚えるまでは、何度も暗闇からの狙撃や機銃掃射で死ぬことになる。
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敵の視界は暗さに影響しないため、たとえプレイヤーが視認できない距離であろうと敵はこちらを見つけ出して発砲してくる。
無駄なランダム要素
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弾薬箱と補給物資は取得するごとにランダムに中身が変わるようになる謎のシステムが実装されている。
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弾薬箱の場合は当たりはそれぞれの弾薬が供給されるが、ハズレは空っぽ。補給物資の場合も同様に当たりを引けば回復するが、ハズレは食料品が腐っていて回復できない。
任意で行えないリロード
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残弾数の概念は存在しているわりに手動リロードが不可能。更には今銃に何発入っているかすらもHUDに表示されないため、残弾が分からないまま気がついたら弾切れでリロードになった、という事故が非常に多い。
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Duke Nukem 3DやShadow Warriorと同じで、所持弾薬がある倍数(M16なら20の倍数)になったら自動的にリロードするという仕様なので、所持弾薬の数から銃に入っている残弾の数を確認することはできる。切りのいい数とはいえ、手間であることには変わらないが。
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このゲームの発売当時、キー操作によるリロードが実装されているゲームはすでに存在している。ゲームエンジンの使用上実装は不可能だとしても、そういったゲームが存在する以上見劣りする点ではある。幸いメインウェポンであるM60はリロードの概念がないため、M16使用時のみなのが救い。
敵の無敵化
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「こちらを視認していない敵は常時無敵」というFPSにあるまじき仕様が搭載されており、遠距離狙撃や角ギリギリからのはみ出た部位を狙った銃撃といった手段がことごとく無効化されるようになっている。爆発武器のみ殺害が可能。
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プレイヤーが敵に攻撃を与えたい場合、最初に姿を晒して敵を攻撃態勢に移らせなければならない。そもそも気付いた時には撃たれているのであまり関係はない部分ではあるのだが。
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一部マップでは死んだふりをするベトコンも登場するが、彼らも伏せている間は無敵となっており爆発物以外で倒すことができない。
使えない火炎放射器
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エピソード終盤の特定地点では火炎放射器を入手可能。連続で火炎を発射でき、見た目は有用そうなのだが、敵兵には火だるまどころか延焼ダメージの概念すらないため実質的に低威力・低射程のロケットランチャーを連射しているだけの状態となっている。
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マウスエイムを有効にしようが水平発射しかできないため、「地上に火炎を発生させて触れた敵にダメージを与える」といった戦法も不可能。接近戦では倒す前に反撃を食らう上に壁に当たると連射による爆風ダメージでプレイヤーが即死するなど、非常に使いにくい。
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火炎ピストルで敵を火だるまにできる『Blood』という前例もあるため、エンジンの仕様上は不可能ではないはずである。火だるまの死亡モーションすらも実装されておらず、火炎放射器で炙った敵はなぜか爆発四散する。
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また、火炎放射器の他にも弾がまっすぐに飛ぶグレネードランチャー、スコープ式にもかかわらず画面がズームしない狙撃銃、『Duke3D』のレーザー爆弾を流用した結果壁に貼り付けるとトリップワイヤー(レーザー)がどこまでも伸びるクレイモアなどへんてこな仕様の武器が多い。
エンディングが簡素
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最終面をクリアしても、どこかの田んぼの写真とゲームクリアを伝える簡素なメッセージが表示された後リザルト画面が表示されそのままタイトルスクリーンに戻される。
敵の種類が少ない
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敵はベトコン、自爆ベトコン、狙撃ベトコン、機関銃ベトコン、ロケットランチャーベトコン、戦車の6体しかおらず、ゲームプレイの大半は通常ベトコンとの戦闘が占める。グラフィックのチープさも相まって、同じ兵士が延々出現してくるジャングルパートなどは特に違和感が大きい。
あからさますぎる無許可パロディ
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Tour of Duty IIの中盤ステージにおいて、映画『プレデター』をそのままパクったステージが存在する。皮を剥がされた死体や蛍光色の血液、決闘の行われた丸太、川へのダイブ、爆発で焼け野原と化したジャングルなど無駄に再現度が高い。
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しかし、そこまで再現しておきながら肝心のプレデターやそれに準ずる存在は一切登場しない。ラストは焼け野原を飛ぶヘリコプターに同乗して離脱と、なんとも中途半端な終わり方。
評価点
リアル要素
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地雷を踏むとスイッチ音が鳴り、その状態で離れると初めて爆発する、ブービートラップや爆撃で頻繁に死ぬ、銃撃や爆発などで頻繁に即死する、リロードシステム搭載など、スポーツ系FPSをベースとしつつもベトナム戦争らしさを意識したであろう要素が多数盛り込まれている。
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もっとも、それらは全く面白さには繋がっていないのだが。
高速な任意セーブ&ロード
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当時のFPSの例に漏れずオートセーブは存在しないが、任意セーブ&ロードは高速で行えるためそれらを駆使することでクリア自体の敷居は比較的低くなる。
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死亡時にプレイヤーを殺害したキャラクターにカメラが向くため、わざと死亡することによる索敵が戦略として有効。見えない狙撃兵の位置を割り出すために一回死んでみるなど、戦略的に遊ぶこともできる。
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もっとも、ひたすらロードを繰り返す作業がこのタイプのFPSとして正しいかといえば疑問符が残る。ほぼ同一のシステムを採用した『Duke Nukem 3D』なども別にゲームバランスの崩壊は起こっていない。
敵が柔らかい
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全体的に敵の体力は低めに設定されており、マシンガンの機銃掃射で簡単に薙ぎ倒せる。このため集団を一気に薙ぎ倒すなどの爽快感はある。
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メインとなる銃がM60機関銃のため、爽快感は高い。
無限回復が可能
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やたら死ぬゲームバランスの本作だが、救済措置として衛生兵に隣接すると無限に回復することが可能。そもそも殆どのマップに登場しないが、登場するステージだけは簡単に進めていくことができる。
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とはいえ気が付いたら爆撃の巻き添えで消し飛んでいたりもするのだが。
総評
爆撃、ブービートラップ、ゲリラ戦、地雷などなど、死亡率に関してだけはベトナム戦争を忠実に再現したFPS。
それ以外の要素は当時の水準をはるかに下回っており、到底1998年のFPSとは呼べない出来となっている。
その出来からビルドエンジン四天王のようなカルト的評価を得ることもなく、1998年の「ワースト・ゲーム・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされるなど批評家からも酷評された。
余談
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本作の開発には、かつて『DOOM』の米国海兵隊向け訓練用WAD『Marine DOOM』の作成に関わったダン・スナイダー軍曹が参加している。
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『DOOM 64』『System Shock』『SiN』など数多くのオールドスクールFPSを復刻したNightdive studiosによって復刻され、現在ではSteam上で配信されている。しかしその出来から評価は低い。
最終更新:2022年01月16日 13:13