ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング

【なびつき つくってわかる はじめてげーむぷろぐらみんぐ】

ジャンル プログラミング
対応機種 Nintendo Switch
メディア ゲームカード 1枚 / ダウンロード販売
発売・開発元 任天堂
発売日 2021年6月11日
定価 パッケージ版:3,480円
ダウンロード版:2,980円
レーティング CERO:教育・データベース
備考 パッケージ版にはノードンふりかえりカード(単品販売価格500円)が付属
判定 良作
ポイント 直感的に理解出来るプログラミングゲーム
丁寧なナビに従えば無理なくプログラミング技術の習得が可能
制約はあるがゲーム作成の自由度はかなり高い


概要

「任天堂の開発室から生まれたプログラミングソフト」という触れ込みで商品化されたプログラミングソフト。公式の略称は『はじプロ』。
プログラミングコードを書くことはなく、スティックの入力や、キャラクターの動作、オブジェクトの表示などを司る「ノードン」同士を繋ぐことでプログラミングを行ういわゆるビジュアルプログラミングに相当する。

開発経緯

  • 本作の開発の切っ掛けは『Nintendo Switch Labo Toy-Con 04:VR Kit』のToy-ConガレージVRを切り出して商品化できないか、という考えからである。
    • Toy-Conガレージでは「ソフト」であるオリジナルゲームの開発はあくまで一部のプレイヤーがそこまでたどり着けることを想定していたものであるが、本作では「作り方の説明」を解決し、多くの人にゲーム作りを体験してもらうというコンセプトになっている。

内容

  • タイトルにもある通り、「ナビつきレッスン」モードが存在し、ここでは特徴の異なる7種類のゲームをキャラクターである「ボブ」のナビを受けながら完成させていくことになる。
    • 各レッスンの合間にはチェックポイントという確認問題が用意されており、チェックポイントを全てクリアすることで次のレッスンへと進むことが出来るようになっている。
    • レッスンを進めることで各ノードンの補足解説(ノードンガイド)が見られるようになり、これを見て復習することも可能。ノードンガイドのナビ役はボブと同じ円型のポインターである「アリス」。*1
  • 自由にプログラミングが出来る「フリープログラミング」モードももちろん存在する。こちらは「ナビつきレッスン」のレッスン1をクリアすると解放される。
  • 「フリープログラミング」で作成したゲームはローカル通信やインターネットを介して他のプレイヤーに遊んでもらうことも可能(インターネットを使ったアップロード、ダウンロードは『Nintendo Switch Online』への加入が必須)。
    • 公開されているゲームはIDを入力することでダウンロード可能。

特徴

「ノードン」と呼ばれるSwitchのゲームの裏側にいる(という設定の)存在を用いてプログラミングを行っていく。
ノードン毎に役割が決められており、ノードン同士をワイヤーで繋ぐことで様々な動作を実現することが出来る。

  • 例えばゲームの画面にヒトを登場させる「ヒトノードン」と、スティックの入力を受け取る「スティックノードン」をワイヤーで繋ぐことでゲーム内のヒトをスティックで操作することが出来るようになる。
    • 具体的に説明すると、「ヒトノードン」には左右移動、上下移動、アクションの入力ポートがあり、左右移動の入力に数値が入力されることで左右に移動する(負の値を入力すると左に移動する)。アクションについてはパンチなどのアクションを1種類選ぶことで入力があった時に当該アクションを行うようになる。
      左右、上下の移動については入力された値の大小によって移動量が異なってくる。「スティックノードン」は左右方向または上下方向の傾きを出力するというノードンである。従って「スティックノードン」と「ヒトノードン」を接続することで、スティックの傾きに応じてヒトを移動させるというシステムが出来上がることになる。
      • そのまま「スティックノードン」と「ヒトノードン」を繋げば、スティックの傾きに応じて移動する設定になるが、「ボタンノードン」と「ヒトノードン」を繋げば、ボタンを押している間だけ定速で移動するようになる。
    • ノードンの接続は連鎖させることも可能である。例えば「スティックを一定量倒すと、動き出す(=スティックを少しだけ倒しても移動しない)」という設定にしたい場合は「スティックノードン」の出力を「絶対値ノードン」につなぎ、その出力と「定数ノードン」(あらかじめどれだけ倒したら移動するかを定数の値で指定する)の出力をそれぞれ「くらべるノードン」の入力ポート1,2に接続する。そして、「くらべるノードン」で「絶対値ノードン」の出力が「定数ノードン」の出力以上であれば、1を出力するようにし、この出力と前の「スティックノードン」の出力を、「けいさんノードン」の入力ポート1,2に繋ぐ。その上で、乗算を行った結果を「ヒトノードン」の入力ポートに繋げば実現できる。もちろん、これはあくまで一例であるため、他のやり方が全くないわけではない。
      • この説明にもあるとおり、同じノードンから複数の入力ポートに出力することができる。
  • プログラミングを行う上では全く無関係であるがノードン毎に、性格が決められており「ナビつきレッスン」では初登場時や、その後のレッスン毎にその性格に応じた話をしてくれる。親しみやすさに一役買っているといえよう。
  • ノードンは細かい設定を行うことも出来、その挙動を制御することが出来る。
    • 中間タイプのノードン(「けいさんノードン」や「くらべるノードン」」など)であれば、その出力値の制限など、モノタイプのノードン(「ヒトノードン」や「モノノードン」など)であれば、挙動や大きさなどを設定できる。
      • モノタイプのノードンは連結させることで、主となるノードンの動きに連動して動くようになる。「モノノードン」や「おしゃれモノノードン」はそれ単体では動かないため、動かしたい場合は、「うごかせるモノノードン」などと連結して動かすのが基本となる。
  • ノードンの中にはゲームの挙動には影響を及ぼさない「自分メモノードン」も存在する。プログラミングでいうところの「コメント」に相当し、処理には何の影響も及ぼさない。
  • 「ナビつきレッスン」では全部で7つのゲームをその名のとおりナビに従って作っていくモード。
    • 作っていくゲームも2人対戦の鬼ごっこゲーム、Switch本体を傾けて遊ぶボール転がし(『コロコロカービィ』のように傾きに応じてボールが転がる)、シューティングゲーム、2Dアクションゲーム、3Dの謎解きゲーム(いわゆる脱出ゲーム)、CPUとの対戦型のレーシングゲーム、3Dアクションゲームとそれぞれジャンルが異なったものであり、プログラミングのやり方を学べる他、こんなゲームが作れるという目安にもなっている。
    • 後半のレッスンほど時間が掛かる傾向にあるが、1レッスン辺りは40~90分程度となっており、1レッスンが8つ程度のステップに分かれている。その為、ぶっ通しで作り続ける必要もなく自分のペースで進めていける。
    • 各レッスンの最後にはゲームの一部を自分好みにアレンジすることが出来るが、こちらも最初は「色を変える」「音楽を変える」といった簡単なことしかアレンジできないが、最後のレッスンでは何もかも自由に変更できるようになる
      • なお、いずれのレッスンもクリア後には作ったゲームを元にアレンジをすることは可能であるため、それを元に自分なりにアレンジすることでステップアップも図れる。
    • 各レッスンの間にはチェックポイントが設けられており、直前のレッスンで習ったテクニックを復習することが出来る。
  • 「フリープログラミング」では自由にゲームプログラミングを行うことが出来る。
    • 上述の通り、既にクリア済みのレッスンのゲームを元にプログラミングも出来るので一から作るのはちょっと、というプレイヤーも安心である。
    • Nintendo Switch Onlineに加入していればインターネットに投稿することも出来る。
      • 投稿IDが分かれば他のプレイヤーのゲームをダウンロードして遊ぶことが可能である。
    • 「テクスチャノードン」を使うと自由に絵を描いて、その絵をゲーム内に登場させることも可能である。『スーパーマリオメーカー 2』の録音音声と異なり、テクスチャノードンを用いた作品も問題なくインターネットで投稿可能。

評価点

かなり親切なナビつきレッスン

  • 本作のタイトルにもあるナビについてはかなり丁寧であり、プログラミング初心者であっても無理なく理解出来る。
    • 最初は丁寧すぎるといって良いほどに細かく説明され、出来る度にナビ担当のボブやノードンが大袈裟なまでに褒めてくれるため、モチベーションの維持がしやすくなっている。
    • 序盤は一つの操作を丁寧に説明してくれるが、レッスンが進むにつれ、説明も徐々にシンプルになっていくなど、プレイヤーの成長度を意識したレッスン構成となっている。
    • レッスン中もプログラミングとは全く無関係なノードンやボブの小話が挟まったり、その都度ゲーム画面で内容を確認したりと言った具合にプレイヤーを飽きさせない工夫がされている。
    • レッスンによってはプログラミングの確認のために、「一時的にスタート地点を変更する」「スタートからワープ出来るようにする」「クリア条件を変更する」など、実際のゲーム制作で役立つテクニックも紹介されている。
      • その他、クリア条件を一時的に緩和する、といったものもある。
  • レッスンとレッスンの合間には、チェックポイントという問題があり、前のレッスンでの主要なポイントの復習が出来るようになっており、理解を深めることが出来る。

ゲーム制作の楽しいところだけを簡単に体験できる

  • 本作はノードンを利用してプログラミングを行うわけだが、複雑な計算などはノードンという形で簡素化しているため小難しいことはほとんど考える必要がない。
    • 重力についてはモノタイプのノードンの設定で重力の影響を受けるかどうか決定できたり、「ワールドノードン」で設定したりできるし、加速度等もノードンを使えば簡単にコントロールできるなど他のプログラミング作品だと自分で計算したり、組み合わせたりする必要がある部分もノードンで簡単に実現できるようになっているものが多い。
    • 結果として、プレイヤーにとってはキャラクターを動かしたり、オブジェクトをどのように置いたりするかといったゲーム制作の楽しい部分の体験をしやすくなっている。
  • また、「ナビつきレッスン」でもJoy-Conのおすそわけ機能を用いたゲームや本体を傾けるゲームを作ることができるが、「フリープログラミング」モードであればコントローラーの動きを利用したゲーム、画面をタッチするゲーム、Joy-ConのIRモーションセンサーを利用したゲームも作ることが出来る。
    • これらの機能を利用するにしてもいずれも入力タイプのノードンで簡単に数値化してくれるため、プレイヤーとしては難しいことを考える必要はない。例えば、画面をタッチした場所を取得したければ、「タッチ位置ノードン」を使うだけで、どの場所をタッチしたかが分かる。
  • ゲームを制作できるソフトウェアは色々あるが、Switchの機能を使ったゲームを作れるのは本作ならではの魅力といえよう。

様々なジャンルの作品を作れる

  • レッスンで作成できるゲームが多彩であることからも分かるとおり、本作を使って作れるゲームは多種多様に及ぶ。
    • 後述するとおり、ノードンの数やワイヤーの数には制限があるため、RPGなどの大作には向いていないが、小規模な作品であれば様々なジャンルのソフトが作成できる。

他の人の作品も遊べる

  • Nintendo Switch Onlineに加入していることが前提となるが、インターネットでIDを入力することで他の人の作品をダウンロードして遊ぶことが出来る。
    • もっとも、『スーパーマリオメーカー』シリーズ等と異なり、ゲーム内で作品を検索する機能はないため、IDを何かしらの方法で知る必要はある(この点は問題点で記述)。

賛否両論点

レッスンが一本道である

  • レッスンモードがかなり親切だが、レッスンの最終ステップを除けば、指示を無視することが一切出来ないためプレイヤーにとってはやらされてる感が強くなってしまう。
  • レッスンは好きな順番にプレイ出来るわけではなく、順番に進めていくしかない。しっかりとしたアクションゲームを作りたいとか、レースゲームを作りたい、となるとレッスンとしては結構後になってしまう。
    • ただし、後半になると複雑なノードン配置がされたり、視点を変えながら配置したりする必要があるため、レッスン内の説明のボリュームを抜きにしても慣れていないと難しいのは事実である。途中で躓かないようにすることを優先した結果この順番になっていると思えば致し方ない一面もある。
  • レッスン中も指示通りに作るしかなく、ここはこうした方が良いのではないか、と思ったとしてもプレイヤーの自由は一切なく、指示されたこと以外は出来なくなっている。
    • 例外的にレッスン毎の最終ステップでは多少好きにやらせてくれるが、最終レッスンを除けばあくまで「壁の色を変える」「音楽を好きなものにする」というアレンジだけであるため、作りたいものを作る、ということはレッスンでは一切出来ない、といってしまって良い。
  • チェックポイントも同様であり、頭を使ったパズルではなく、用意された答えを見つけ出すだけとなってくる。(用意された答えと)無関係のノードンは触れないため、こんな解き方も出来るのでは、といった発想は基本的に許容されない。
    • ただ、あくまでレッスンモードであり、基礎的な事柄を段階的に理解・習得させていくための措置として考えれば必ずしもマイナス要素とは言えない。
      • なお、レッスン中に作ったゲームはクリア後、自由にアレンジ出来るため、レッスンでこうしたかった、という願望を叶えることは可能である。

大作は作りにくい

  • 一つのゲームにつき、使えるノードンは512個、ワイヤー(連結等の個数)は1024個となっており、地形もノードンを使って作らなければいけないことを考えると大規模な作品を作るのには向いていない。
    • ただ、大作を意識し過ぎて作業量の多さやプログラムの複雑さに嫌気がさして完成を放棄・・・というのがゲーム制作初心者にありがちな流れである。こうした状況を避ける意味でも程よい規模に抑えて作品づくりをするということは初心者が基礎を学ぶ上でも理にかなっている。
      • 実際のところ、(ノードンを組み合わせれば出来なくはないが)変数やフラグの保持をいくつも考えようとすると管理が難しくなるので初心者向けを謳う本作であればこの規模で十分とも言える。
    • ちなみに、「ゲーム切り替えノードン」が存在するため、クリアしたら次のゲームに切り替えるシステムにすることで多少長めの作品を作ることは可能である。

お絵かきはドットペンしか使えない

  • ドットじゃないペンを使いたかった人の声も。

問題点

作品を検索できない

  • IDを入力することで他の人が投稿したゲームを遊ぶことが出来るのだが、本作ではゲーム内に作品の検索機能が全くない。
    • 「テクスチャーノードン」で自由に絵が描けるためかもしれない(不適切な絵が描かれた作品が検索結果に表示される可能性がある)が、普通に色々なゲームをしたいというプレイヤーにとっては不便である。
    • 発売後まもなく非公式のID共有サイトも登場しており、全く検索手段が無いわけではなくなったものの、ゲーム内で完結しないので不便という意見は多い。

最初からフリープログラミングモードが遊べない

  • 概要でも述べたとおり、フリープログラミングモードは最初はロックされており、ナビつきレッスンモードのレッスン1をクリアしなければ解放されない。
    • レッスン1は30分程度の時間でクリア出来るため、他のレッスンよりは短いのだが、それでもすぐに自由に作りたいという人にとっては煩わしくなってしまっている。
      • すぐにプログラミング出来る程度にプログラミングが得意な人にとってレッスン1は丁寧すぎて退屈というのも不満点として挙げられやすい。
  • もっとも、フリープログラミングモードが解放されさえすれば、ノードンは最初から全て利用できるため、それ程アンロックに長時間かかるというほどのものではないのだが。

総評

丁寧な説明をコンセプトに作られ、タイトルにもある「ナビつきレッスン」については人によっては過剰と言われるほどに丁寧である。
やらされているという感じは否めないものの、小学校低学年のプレイヤーであっても十分プログラミングを理解出来る構成なのは流石といって良いだろう。
自由度のないレッスンモードに対し、フリープログラミングモードでは自由にプログラミングを行うことが出来る。
大規模な作品は難しいが、小規模な作品であればSwitchの機能をふんだんに利用した作品でさえ簡単に作ることが出来る。
発想力さえあれば様々な作品を作ることが出来、プログラミングの初学者にも打って付けの作品といえるだろう。


余談

  • 「よゐこの○○で○○生活」で本作が取り上げられた。
    • 1回目放送でよゐこがレッスン1を行い、レッスン1で作成したゲームをアレンジする形でよゐこらしい作品を作り上げた。
      • 本放送において、よゐこに遊んで欲しいゲームとして本作を使って作ったゲームが募集された。
    • 2,3回目放送では遊ぶ編として1回目の放送で募集したゲームをよゐこがそれぞれプレイし、有野賞、濱口賞を決めるという趣旨でプレイされた。
    • 遊ぶ編については第2回も放送が決定している。
  • パッケージ版のみに付属している「ノードン振り返りカード」は本作のノードン全84種類のイラストと役割が書かれているカードである。
    • ダウンロード版を購入した人向けに、マイニンテンドーストアで500円(税込)で購入可能。
  • 数少ないCERO:教育・データベースに該当するソフトである。
    • 本作と同じCERO区分かつ同ハードのソフトとしてはスマイルブーム社製の『プチコン4 SmileBASIC』があるが、あちらは実在のプログラミング言語「BASIC」を拡張した言語を扱う「自由度が遥かに高いが開発環境も現実に近い経験者向け」のソフトであるのに対し、こちらは「ノードンやワイヤーの数といった制約はあるもののインターフェイスや導入部分がわかりやすい初心者向け」のソフトという大きな違いがある。
  • 日本ゲーム大賞2022「U18部門」にて、『ツクールシリーズ』、『プチコン4 SmileBASIC』と共に本作の作品の賞が新設された。
  • 子供向け職業体験型テーマパーク「キッザニア東京」「キッザニア甲子園」の「ゲーム会社」パビリオンのアクティビティが、2022年3月24日から本作を使ったものにリニューアルされた。

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最終更新:2022年10月09日 11:34

*1 二者間の通信について説明する際の仮想当事者A・Bをそれぞれアリス・ボブと呼ぶ慣例が由来と思われる。