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戦場のフーガ

【せんじょうのふーが】

ジャンル シミュレーションRPG
高解像度で見る
対応機種 Nintendo Switch
Xbox Series X/S
Xbox One
Windows 7~10(Steam / Epic Games Store / Microsoft Store)
プレイステーション5
プレイステーション4
メディア ダウンロード専売
発売・開発元 サイバーコネクトツー
発売日 【Switch/XSX/One/Win】2021年7月29日
【PS5/PS4】2021年8月10日
定価(税抜) 通常版: 4,180円
デラックスエディション アップグレードパック: 2,200円
デラックスエディション: 6,380円
アルティメットエディション :7200円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 スルメゲー
ポイント 過去作から大幅にゲームバランスを改善
とにかく人を選ぶ作風だが、システムさえ掴めばハマる内容
悪魔の兵器ソウルキャノン
大量の削ぎ落としを受け入れるか否かで評価が変わる
リトルテイルブロンクスシリーズ
テイルコンチェルト / Solatorobo / リトルテイルストーリー
戦場のフーガシリーズ
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あらすじ

「イヌヒト」と「ネコヒト」という2種類の種族が暮らす、大小様々な浮島からなる世界――浮遊大陸。
ある日突然、北東の国「ベルマン帝国」から村が襲撃され、一夜にして戦火に焼け落ちる。
大人たちはマルトや子どもたちを逃がし、敵軍に連れ去られてしまった。
山の洞窟へ逃げたマルトたちは、そこで謎の巨大戦車「タラニス」を見つける。
村のみんなを救うため、マルトたちは「タラニス」に乗り込み進撃を開始する―
(公式サイトより引用)


概要

リトルテイルブロンクスシリーズ3作目(家庭用以外の作品を含めると4作目)。
前作『Solatorobo それからCODAへ』から11年の歳月を経て発売された続編であり、シリーズ初のHDタイトルかつ自社パブリッシングプロジェクト「C5」のタイトル「復讐三部作」の第1弾でもある。
これにより20年以上シリーズに密接に携わってきたバンダイナムコエンターテインメントが非関与となり、権利自体もサイバーコネクトツーが独占している為、続編であっても権利が異なるので本家の流れを汲む別シリーズである。
制作総指揮はサイバーコネクトツーの代表取締役でありシリーズ全てに携わってきた『ぴろし社長』こと松山洋氏が担当し*1、キャラクターデザインは前作とは異なり『死神メサイア』や『アスラズラース』のキャラクターデザインを担当した同社とも深い関係をもつ時津祐介氏が担当する事となった。

2010年にサイバーコネクトツー15周年プロジェクトとして『ストレルカストーリーズ』のストーリーボードが公開され、以降も関係者からの続編を匂わせる発言は度々あったが、前作の商業的失敗により望まれていた続編の展開が打ち切られ(『ストレルカストーリーズ』についても2019年にプロジェクト凍結が正式決定)、さらに2014年から配信開始したシリーズの流れを汲む『リトルテイルストーリー』も全く売り上げが振るわずに僅か半年でサービスが打ち切られた末にシリーズの展開が途絶えてしまい、開発元であるサイバーコネクトツーの自社販売でグッズが売り出される程度に留まった。
2018年にサイバーコネクトツーの公式サイト上で「自社パブリッシングによる続編を開発中」と公表され、翌年2019年にYouTubeの生放送でゲーム画面が初公開された後にぱったりと音沙汰が途絶えてしまいファンをやきもきさせたものの、2021年6月14日に突如公式サイトがオープンし、同年7月29日にダウンロード専売で世界同発で無事リリースの運びとなった。
その為、パブリッシャーを経由して全国の量販店でパッケージ販売された前2作とは異なり、「全プラットフォームDL配信のみ」というインディーズゲーム枠としての販売となる。


ゲームシステムの特徴

前2作とは全く異なるゲームシステム

  • 戦車同士が戦う戦闘パート
    • ジャンルが変更され、 アクション要素が全面的に廃止された 。ゲームデザインの根幹にあった獣人がロボに乗る進行も廃止され、本作では 意思を持った巨大な戦車タラニスを進行ルート上で移動させ、乗組員である獣人の子どもたちを行く先々で収容し、彼らに砲撃のスキルを教えながら敵軍を撃破して行く という、倫理観真っ青なシステムが最大の特徴である。過去作以上にメカに寄ったシステムであり、一部を除いたゲームの進行の8割はこのゲームの主人公とも言うべき戦車が担当する事となる。
    • 戦車には3つの砲台が搭載されていて、そこに威力が低いが命中率が高く、空中の敵に対してクリティカルを発生させやすい「マシンガン」、命中率と威力でバランスが取れている「グレネード」、装填に時間が掛かる上に命中率が低いが命中すれば絶大な威力を誇る「キャノン」のいずれかをセットできる。
      • 各武装にはそれぞれ担当となる子供達が存在し、例えばマルトならキャノン、ハンナならグレネードといった具合に、子供達のステータスと担当する砲台の攻撃力によって最終的なタラニス全体のステータスが決定される。
      • 砲台にセットできる武装に制約はなく、状況に応じてキャノン×3といった構成にすることも可能。
      • 砲台にはサポートとなる子供を1人配置する事が可能であり、戦術モードの編成画面で3つの砲台につき2組ずつ子供を配置する事が可能である。組み合わせによって様々なステータス上昇のメリットがあり、戦況が有利になる。
      • 子供達にはSPを消費して発動する「スキル」が備わっており、攻撃スキルや回復スキルなどを戦略的に発動させる事によって戦いを有利に進める事ができる。また、煙幕や炎上といったバッドステータスの付与も可能。
    • 戦闘で砲手とサポートにキャラ同士は戦闘後にお互いの親愛度が上昇し、一定レベルまで上げる事で必殺技が使用可能になる。
      • 必殺技は使用可能な組み合わせで戦闘を重ねていくと必殺技ゲージが溜まっていき、最大まで上がれば使用できる。使用後は再度ゲージを溜める必要があるが、章をクリアするまでキープする事も可能なので、ボス戦に向けて色々なメンツで組ませてチャージしておくのも手。必殺技ゲージを上昇させるスキルを持つメンバーもいるため有効に活用しよう。
      • 必殺技は主に全体攻撃であり、HPやSPが回復、敵に状態異常を付与、純粋に高威力などなど、組み合わせによって様々な副次効果がついている。
    • 後述する連絡ノートのお願いを達成するとそのキャラは絶好調状態となり、戦闘を繰り返してテンションゲージが最大まで溜まった状態になると、次のインターミッションまでの間、強力なパッシブが5ターン発動する「ヒーローモード」となる。
      • メンバーごとに効果は異なり、通常攻撃に状態異常を確定付与したり、スキルを使った場合再行動できる(=最大6回行動)など、必殺技とは別ベクトルで強力。
      • 砲手の状態でなければ発動ターンは消費されないので、サポートや控えに回しておけば温存可能。エリートバトルなどの強敵戦に備えておくのも手である。
    • 戦闘では、敵であるベルマン帝国の様々な戦闘車両が襲撃してくる。各車両には弱点(ウィークポイント)が存在しており、弱点である武装を表示されているアイコン分だけ当てると行動を遅延させる事ができる。
      • とんでもない火力をチャージ後に放ってくる敵やHPを回復する敵など、バリエーションは様々。弱点と特性に応じた柔軟な対応が求められる。
      • 撃破するとタラニスを強化するためのパーツを落とす。
      • 戦闘で消耗したHPやSPは戦闘中にアイテムを使用するほか、道中の回復ポイントを通過することで回復できる。
  • インターンミッションパート
    • 各章に3回ずつインターンミッションパートと呼ばれる戦車の中で行われる運営パートが存在し、行動力(AP)を消費して様々な強化が行える。 このパートこそが従来のRPGで言うタウンに相当するもの であり、本作の道中で入手できる素材を消費して砲台の攻撃力を上げたり、ステータス上昇を促す子供達同士の親愛度を上げる絆イベントや、食材を消費してバフ効果を得る料理システム等、やれることは多岐にわたり非常に飽きさせないものとなっている。
    • 少し進めると連絡ノートが用意され、各キャラのお願い事が書かれる。
      • お願いの種類は誰かとの会話や特定の施設を利用・成功させるといったもので、達成に成功するとそのキャラは絶好調になる。上記の通り、恩恵はかなりのものなので、APと相談してできれば達成したいところ。
    • 戦闘などで得たパーツで、装備や施設を強化できる。レベルが上がるごとに必要なパーツのランクが上がり成功率も下がるが、失敗してもロストはしない(APは消耗する)。
  • 探索パート
    • インターンミッションパートの他にも、3章からは子供達が戦車タラニスから降りて遺跡のモンスターと戦闘・トラップを回避しながら宝箱を回収する探索パートが解禁される。このパートのみ過去作のアクション部分を引き継いでおり、鍵を入手して目標となる宝箱の中身を入手すれば探索成功となる。戦闘や障害物の破壊を行う際には蒸気銃を使う必要があるが、使える弾は遺跡内に落ちている規定数分だけであり、アイテム全回収+鍵入手のためには弾をどの順番で用いるか考える必要があるなど、ロジック要素も含まれている。
  • 著名イラストレーターによるエンドカード
    • 最終章以外の各章の終わりに1枚づつエンドカードが挿入され、『ゼルダの伝説シリーズ』の漫画執筆で有名な姫川明氏やサイバーコネクトツーと関わりの深い村山竜大氏等が参加している豪華な人選となっている。
    • そのエンドカードも各章の重く苦しい雰囲気を上手く緩和する日常の一場面を切り取った様なイラストが殆どで、テレビアニメを見ているかのような没入感がある。

評価点

大幅に改善されたゲームバランス

  • 本作ではシリーズが慢性的に抱えていたアクションの要素を全面的に廃止し、プレイヤー自身がパズルの様に戦略を考えて敵を撃破するという偶発性を含まないアナログゲームに近いシステムとなった。
    • インターンミッションパートで限られたAPを消費しながら必要最低限の強化する手段を選び出し、準備が整ったら次の戦闘を行う為に進路を進め、習得したスキルで戦略を考えながら敵軍を撃破していく……と言ったゲームの進行は制限されていながらも昨今のゲームにはあまり無かった本作にしか無い独自の要素である。
    • インターンミッションパートの目玉要素である絆イベントは戦車タラニスの乗組員である獣人の子供達の交流を楽しむ事が可能であり、会話の内容は日常的な会話、悲観的な会話、明るい会話、中には前作『Solatorobo』に繋がる重要な会話まで多種多様にわたり、艦内で操作する獣人の子供を変更すれば全く別の交流が楽しめるという膨大な作り込みであり、回収しがいのあるボリュームとなっている。
    • 1周あたりの平均クリア時間は20時間という国産インディーズゲームにしては丁度良い位の長さで、ステータスを引き継いでの周回プレイや、ゲーム中のとある特典を解禁する為に必要な実績解除等、国産インディーズゲームにしては十分過ぎる位のボリュームである。
    • 前作ではオマケ要素でしか無かったライブラリもボリュームを増やした上で続投され、ゲームを進める度に様々な項目が解禁される仕様となった。言わば、過去に販売された設定資料集が丸々ゲームに収録されている様な物で、本編で明かされなかった事実もそこで明かされるので、ゲームのやり込み要素の一つとして貢献していると言える。
      • 本作の収集要素のひとつとして、 マンガ新聞『シューカの冒険』 が実装されている。本作のシリアスな雰囲気から一転して『テイルコンチェルト』に近い冒険活劇が描かれており、 この漫画自体に続編の伏線が張られている と言う徹底ぶりである。
  • バトルのゲームバランスも厳しめながらスキルや防御コマンド、弱点攻撃を駆使することで突破口が見えるようになっている。
    • 各章のボス戦は思わず後述するソウルキャノンに頼りたくなるような強敵が待ち構えているが、上記の基本を守れば必ず勝ち目はある。

理念無き戦争の悪意を軸にした重く、先の読めないストーリー

  • 村で平和な日常を送っていた獣人の子供達が戦争に巻き込まれ、謎のラジオの声に導かれ偶然にも古代戦車タラニスの乗組員となって家族を誘拐した敵国ベルマン軍との戦争に身を投じる事となる序盤の展開は非常に秀逸である。
    • 過去2作に登場する多くの敵のほとんどは私利私欲の為に動く、いわゆる「憎めない小悪党」だったが、戦争モノである本作では「軍務を全うするべく挑んでくる軍人達」や「戦争の中で己の欲望・野望を叶えようとする腐敗した軍人達」といったように現実味のあるシリアス路線へと変更された。その為、登場する敵の一部には何らかの心理的な外傷・トラウマを抱えており、使命を果たす為に無慈悲な戦争を仕掛けるので敵にも重く苦しいドラマ性が増した。とある序盤の展開がきっかけで、戦車タラニスの乗組員である子供達を執拗に憎む女軍人、フラム・キッシュの救われない末路は本作をプレイした多くのユーザーに衝撃を与えた。
  • 子供達を導き、戦車に収容させた「ラジオの女」と序盤から度々艦内に登場する「謎の少女」の存在は物語の展開に多くの謎を生み出し、敵国のベルマン帝国の本当の目的や意思を持った戦車の明かされない目的等が物語が進むにつれ明かされていくなど、序盤から先の読めない展開で多くのプレイヤーを引き込ませる演出は見事である。序盤は前作との繋がりを感じないが、終盤になるにつれ明かされていく前作との意外な接点や、重く救われなかった展開を一気に吹き飛ばす感動必至のエンディング等、シリーズを踏襲した部分も幾つか見られて過去作をプレイしたユーザーからも高い評価を得ている。
    • 上記の通り過去作よりも重く苦しい世界観となっているが、絆イベントの会話文等は非常に見ていて微笑ましいものとなっており、子供達12人が団結して戦争終結へと動き出す姿は前作同様に手に汗握る熱い展開となっている。
    • 敵対するベルマン帝国の軍人達も出番こそ少ないものの、絶対悪と言える様な人物は誰一人としておらず、主役を勤める子供達同様に『戦争の被害者』としての側面が強い影響で救いの無い故の儚さが十分に出ており、帝国側に共感したプレイヤーも少なくはない。

大幅に一新された獣人達のキャラクターデザイン

  • 従来のシリーズの登場キャラクターはいわゆるアニメ作画であり、キャラクターによっては動物的なパーツが目立たなかったが、本作では色彩がリアル調に一新され、獣らしさが増している。
    • 12人の獣人の子供達のデザインも一人一人特徴的な描き分けがなされ、年少組は愛らしく、年長組は可愛らしさを残しつつ年相応の背伸びした感じが出ている等、作画に工夫が見られる。敵国であるベルマン帝国の獣人達も文字通り人間と動物のどちらもある、おどろおどろしい「獣人」らしさが十分に出ていると言える。

プレイヤーの良心が試される悪魔の兵器ソウルキャノン

  • 本作の肝といえる要素がタラニスに搭載されている最終兵器ソウルキャノンである。ボス戦においてピンチに陥った際に使用可能となるが、タラニスの乗組員である子供達の内の1人の命を犠牲にして、敵を一瞬で撃破するという鬼畜システムであり、 犠牲になった子供は戦死扱いとなる。
    • 字で書くと大したことないシステムに思えるが、実際に発動させるとゲームの進行関係なしに強制的に戦闘を終わらせてしまい、後のインターンミッションパートにも響いてくるので戦力ダウンになりかねない。つまり、 可愛らしい獣人の子供達が戦車タラニスの意思(プレイヤーの選択)によって無残にも殺される というSAN値がゴリゴリ削られるシステムであり、ご丁寧にイベント上で挿入される挿絵でも犠牲になった子供が 落書きや墨塗り教科書の様に上から線で描き消される という罪悪感増々かつ軽くホラー要素な展開を迎える事になる。
      • 絶対に使わないと心に決めていても、 ゲーム序盤のチュートリアルで必ず1回は発動させないといけない という強制イベントがあるので、序盤のチュートリアルで鬱になったプレイヤーも多いだろう。発動画面のキャラ選択では死ぬ覚悟を決めた子供達の台詞が見れたり、発動後は形見を遺していくなど一層後味の悪さが強調されている。一応チュートリアルなのでタイムリープにより発動前の時間に巻き戻されるが、その経緯も 仲間を喪ったショックから立ち直れないまま敵部隊の攻撃でタラニスと運命を共にする (とはいえゲーム中では戦車が戦闘不能になっただけで子供達の顛末までは詳しく描写されていない)という徹底した鬱展開を迎えることになる。
    • ソウルキャノンを使った所でシナリオの変化は乏しく、多くは上述の通り線でかき消される、会話シーンの除外またはナレーションが代行、一部会話内容の変化程度に留まっており、無条件で戦闘に勝てる以外のメリットは実質的に皆無。あるとすれば全滅エンド(僅かとはいえしっかり差分も用意されてる)の視聴に必要な犠牲、RTAに必要な時間の短縮ぐらいである。
      • 使用後のシナリオの変化こそ乏しいものの、細かな演出は所々に追加されている。ソウルキャノンを使用すれば、直後に関係の深いキャラクター(マルトを選択した場合はメイ)が落ち込み状態に陥り、インターミッションでは普段何も無いソウルキャノンのチャンバー前に 形見が落ちている (拾う事で経験値取得)。他にも大抵の会話シーンが除外される一方で、ごく一部のシーンに逆に台詞が追加される事もある*2
  • ソウルキャノンを使いさえしなければトゥルーエンドに辿りつけると思われがちだが、実際にはとあるキャラクターが条件次第で永久離脱してしまうためそれだけでは足りない。1周目でトゥルーエンドを目指すも、この予想外の理由で失敗したというプレイヤーも少なくない。

国籍を越えた友情展開

  • 物語の中盤で戦車タラニスの乗組員として最後に加入するブリッツは他の11人の子供達と違ってゲーム開発中には公表されず、公式サイトオープンと共に初公開された12人目の子供である(余談の項も参照)。加えて ベルマン帝国の少年兵 と言う斜め上のポジションであり、経歴自体も「 父親が軍に離反した罪で処刑され、それにより迫害を受けた母と妹はガスコに逃亡して一家離散し、罪を償う為に二等兵として軍に忠誠を誓った 」と言う非常に重い過去を持つ。だが忠誠を誓った二等兵と言っても収容所を警備する雑用に近く、良心故に秘密裏にガスコの捕虜を逃がしたりしていた。タラニスの乗組員であるシーナも元は収容所の捕虜であり、逃走出来たのも彼の手腕によるもので、軍の人間でありながら帝国の侵略行為に反感を持つと同時に行方不明になった母と妹を探し出す為にマルト達と目的が合致する事になる。その経歴故にインターンミッションパートでの他の子供達との交流も当初は非常に空気の悪いものとなっているが、本来の性格は争いを好まない理性的な性格であり、交流を繰り返す事で次第に信頼関係を結んでいくようになる。なお軍属でありながら 9歳 と言うハイスペックっぷりである。
    + ゲーム終盤のネタバレ
    • しかし、物語の終盤において、とある命令で帝国トップであるハクスからの帰還命令が下され、唐突にタラニスの乗組員から離脱する事になる。彼に下された指令とは「 行方不明になった母と妹の所在が判明し処刑が決まった為、タラニスの破壊を遂行すれば取り消しとなる 」と言うもの。命令を受けたブリッツは 自らが戦車に乗り、自責の念に駆られながらタラニスと戦う事になると言う衝撃展開を迎える事になる 。そしてブリッツはタラニスとの敗北後に 自分自身の存在意義を無くし、小型爆弾で自決する と言う凄惨な最後を迎える事になる。…というのが通常エンディングルートである。しかし、インターンミッションパートで絆イベントを一定数以上発生させている場合、タラニスの乗組員の子供達がブリッツの母と妹の容姿を事前に知り、収容所で解放した大人達の中に彼女らが含まれているのを発見するというイベントが離脱イベント前に挿入される。その結果、ブリッツが戦闘後にハクスの指令が嘘だった事を知り、子供達の励ましを受けタラニスに復帰、ハクスの野望阻止のため子供達と共に尽力する展開を迎える。
      • このようにベストエンディングを迎えるために必要なルート分岐が事前情報無しだと非常に分かり辛いものとなっているので、一周目で彼を救えずに後悔したプレイヤーは数知れず存在する。インターンミッションパートで親愛度上げよりも連絡ノート埋めや探索などを優先しているプレイヤーほど陥りやすい部分である。救済措置としてノーマルエンド後にトゥルーエンド達成のための条件としてヒントが提示される他、その後のアップデートにより、ブリッツが加入する第7章から引継ぎプレイができるリトライモードが実装された。
  • その特殊な立ち位置からゲーム中では唯一「 最終盤までソウルキャノンで犠牲に出来ない 」と言う固定キャラである。
  • 敵国の人間というだけで敵視されがちな立ち位置にあるキャラクターではあるが、だからこそ彼と本当の友情を結んだ上で迎えるエンディングは格別である。

向上した音響効果

  • HD化に伴い前作に比べて飛躍的に音響面が向上した。場面の進行に合わせて朗読劇の様にナレーションが流れると言う『テイルコンチェルト』以来のフルボイスが採用され、一方でキャラクターボイスは台詞の一部分だけ読み上げると言う前作を引き継いだ仕様になっているが、現役の声優による日本語とフランス語の音声を同時に収録していると言うワールドワイドで販売する事を視野に入れた仕様となっている。
    • 前作では聞き取り辛かった日本人の声優によるフランス語音声も演技力が大幅に向上し、村瀬歩氏や國立幸氏など近年の人気声優を起用した豪華な収録となっている。
    • 本作と前作『Solatorobo』にフランス語のパートボイスが採用されている理由として松山氏は世界観設定としての理由以外にもメタ的な理由として『フランス語音声の作品を作ると、文化拡散に貢献した功績としてフランス政府から助成金が支払われるから』とYouTubeの生放送で発言しており(参照動画)、本職の日本人声優によるフランス語の音声収録も現地人からの事前アンケートの結果により実装される事となった。
  • BGMも牧歌的な空気感と戦争の凄惨さを上手く融合させた良曲揃いであり、容量拡大により挿入歌も多く収録される事となった。サイバーコネクトツーの作品でお馴染みのLieN(リアン)氏による本作の世界観を象徴した『轍に咲く花』や 福岡ダンスオブミュージックの専門学生達による恐怖の合唱歌『風伝哀歌』 等は YouTubeでミュージックビデオとして視聴可能となっている。

対応機種の幅広さ、実況配信・動画投稿の自由さ

  • 本作はニンテンドースイッチやプレイステーション、Xbox等のコンシューマーゲーム以外にも、SteamなどPC上でもプレイが可能と、様々なプレイ環境に対応している。さらに公式側もゲーム全編の実況配信及び動画投稿を許可しているため、プレイ動画や実況動画の製作にも優しい内容となっている。

ダウンロード専売に特化した独自の販売形態

  • パッケージの生産数が少なく、発売から一定期間過ぎると新品での入手が出来なかった前2作と異なり、ネット接続する環境さえあれば常時定価で購入する事が可能となった。
    • これにより、『ゲームソフトの存在を後から知った為に、泣く泣く高額で転売されたソフトを購入するしか無かった』と言うシリーズが抱えてた問題が全面的に改善され、転売防止にも繋がっている。

賛否両論点

置いてけぼりな数々の超展開

  • 以下、ストーリーの核心に迫るネタバレを含むためregionとする。
+ ストーリー上の粗について
  • 物語が進むにつれ、 意思を持った戦車タラニスの正体が旧人類が生み出した兵器だと明かされる 。子供達にタラニスで戦う様に命じてきたラジオの女と艦内に度々出現するホログラムの少女はどちらも戦車タラニスのAI『ジャンヌ』であり、旧世界の戦争が起きた時の事故で二つの人格に分裂してしまったと言うもの。
    • 彼女達の目的は『 旧世界の戦争で完全破壊にまで至らなかった旧世界の人造兵器ヴァナルガンドをもう一度破壊する 』と言うもので、ホログラム側は『 戦闘行為を拒絶し乗組員の安全を何としてでも保証する 』が、ラジオ側は『 目的(復讐)の達成の為なら謀略は当たり前。敵も味方も利用できるものは徹底的に利用する 』と言う過激っぷりである。
      • しかし、物語の終盤に差し掛かると 何の説明も無くラジオの方のジャンヌがホログラムの方のジャンヌに吸収されてしまい、ラジオの方のジャンヌは消滅してしまう と言う超展開を迎える事になる。完全体となったジャンヌは急に饒舌になり、旧世界の事をペラペラ喋り出すのは悪い意味で前作の超展開を思わせる。
  • 対峙するタラスクスはベルマン帝国が誇るタラニスを模倣して造り出された最終兵器*3であり、ガスコの地下に封印されている人造兵器ヴァナルガンドを目覚めさせ、タラスクスと融合させる事で人造兵器の力を意のままに掌握しようとするのがベルマン軍側の黒幕であるハクスの目的である。
    • (他の集落も含む)プチ・モナ村の住人を誘拐し、捕虜として収容所に連行させたのも 「ヴァナルガンドを目覚めさせるのに必要なコアを発掘する為」 と言う事実が後にハクスの口から明かされるが、その実は 「『村民の救出』を建前に、子供達の乗るタラニスをコア*4を搭載したタラスクスのある収容所まで誘導し、強大な力を持つ双方の接触により発生する共鳴反応によってコアを完全稼働させるため」 というラジオの女の思惑と手引きによるものだった。
      • 子供達の目的も『収容所に捕えられているガスコの人々を解放させる』と言う一貫したものだったが、目的を達成するや否や急展開が生じ、戦車タラニスの本来の目的である『ヴァナルガンド及びタラスクスの破壊』に借り出されるという行き当たりばったりな展開を迎える事になる。つまり、 まんまと騙されてしまったわけである 。本作の悲劇要素である誘拐ではあるものの、特に犠牲者もなくあっさりと救出が成功するため、拍子抜けも禁じ得ないだろう。
      • タラスクスと融合しコアを得て復活したヴァナルガンドはガスコ全土を破壊し始めるが、戦車タラニスと子供達は強引に体内に侵入し、心臓部と化したタラスクスと戦闘する事になるが、跡形もなく破壊するには 再びソウルキャノンを撃つしかないと ジャンヌから告げられる。しかし特定条件を満たしていれば真のエンディングに突入し、 子供達から突如発せられた謎のエネルギー+本作では未回収となる謎の人物のエネルギー で犠牲無しにヴァナルガンドをソウルキャノンで撃つと言う、陰鬱だった展開を一気に吹き飛ばす展開を迎える。
      • 真エンドの条件を達成するとエンディングに突入し、ヴァナルガンドを内側から破壊した戦車タラニスは子供達全員と共に生還するが、役目を果たしたジャンヌは消滅し、戦車タラニスも機能停止する事になる。主力兵器を失ったベルマン帝国は 唐突にガスコとの間に停戦協定を結ぶことになり、戦争は一時収束となる *5。自国や世界を救った英雄達としてマルト達12人の子供達は称えられるが、 彼らは只の子供へと戻って行き、それぞれが普通の日常を満喫すると言う一見すると感動的に見えるが、殺人に加担した事などは全て有耶無耶にされてしまっているので投げっ放し感を禁じ得ない 。そんな平穏に暮らしていたらいつ暗殺などされても不自然ではないと突っ込み所を感じるが、彼らも戦車タラニスに収容されていた哀れな捕虜でしかなく、罪は無かったと言う事なのだろうか……。
+ ベルマン帝国の女軍人フラム・キッシュの顛末について
  • 物語の中盤まで幾度となくタラニスの前に立ち塞がるベルマン帝国の女軍人フラム・キッシュは恩師であり養父(つまり育ての親とも言える)プレッツェルの娘であり、1章の戦闘でタラニスに敗れ戦死した養父への復讐を果す為に、タラニスに乗った子供達を執拗に追いかけ回すと言う因縁を持つと言う設定だが、 その歪んだ人格故にあまりの救いなさが浮き彫りになる事となった
    • 彼女の養父であるプレッツェルはガスコの電撃侵攻作戦の隊長を任される位の帝国でもトップの軍人で、自国の危機を救う為に心を痛めながらもガスコの村人を捕虜として連れていく事を任務としていた。しかし、前述の通りプレッツェルは戦死してしまい、その事がきっかけでフラムの精神は失調を来してしまう。その失調故に作中では子供達の内の1人であるジンの父親を射殺する事となり、これによりジンとの関係は互いに憎しみ合う関係となってしまった。
      • 作中では2度も敵としてタラニスの前に立ち塞がる事となるが、1度目の戦闘に勝利すると仲間の制止を受け憎しみを絶ちきったジンが『俺の前から消えろ!』と啖呵を切られつつも見逃される事となる。しかし子供相手に見逃された事でフラムは却って逆上し、数章後に再び復讐を果す為に再戦する事となる。ボス戦の時には 悲鳴にも怒りにも聞こえる声で砲撃する 回復のスキルで機体を直す時には突然笑い出す 等、人格的にも完全に崩壊した様子が見られて余計救いが無く不気味に感じる。
      • タラニスが勝利すると 破壊された戦車から脱出し、鬼の様な形相で睨みながら銃を構えタラニスに対して白兵戦を仕掛けようとする 。が、直後に残骸の誘爆に巻き込まれるという末路を迎える。機体を失ってでも養父への復讐を果たそうとする執念深さを見せたが、既に背後で炎上している残骸の唐突な爆発により退場するというのは少々強引な幕引きに感じられる。
      • 対峙したタラニスの子供達(ジンを除く)もその凄惨さに哀れみを抱くのだが、それ以降の章には特に子供達の間でその事が触れられるような描写が無いため、歴代シリーズのキャラでも特に悲惨さが際立っている。
    • 憎しみを捨てきれなかった故の末路と言えば間違ってもいないが、ボス戦後に解禁されるライブラリ内のベルマンレポートでは彼女自身も恩師であり養父であるプレッツェルを目標に精進する一途な女性だった事が分かり、養父の死後、ジンの父親を見せしめに処刑した自身の変貌ぶりに気を病むなど、一概に悪人では無かった事が明かされる。復讐を果たせたジンとは対照的に全く救われないので何とも言えない後味の悪さが残るであろう。
      • 上記の事から、良くも悪くも強烈な人間性を持ってる甲斐あってか、2022年にTwitter上で実施された人気投票では『 大人部門1位 』を獲得。対する『子供部門1位』は ジン であり、因縁の相手同士が1位を獲得するという因果な投票結果となった。
+ 前作との繋がりについて
  • 真のエンディングの条件を達成した後に流れるイベントシーンを見る限り、 本作の時系列が前作から700~1000年前に位置する事が明かされる 。前作の舞台となるシェパルド共和国の地名が本作でも登場するのは ヴァナルガンドによって崩壊したガスコが後にシェパルド共和国として再建したから と言う理由である。
    • 崩壊したかつてのガスコを眺める黒いフードの男(と脇に立つロボ)は前作でも登場したとある人物と同一人物と思われ、 浮島世界の獣人達も旧人類と同様に愚かしい争いばかりを続けている と悲観し、ならば自身が導き手になればいいと目論んでいる。本作と前作が明確に繋がったシーンであるため前作クリア済みのプレイヤーからすればニヤリとするシーンであるが、前作未プレイのプレイヤーなど、折角達成した真のエンディングを見た後にこの様なイベントシーンを見せられると後味の悪さを感じなくもない。
+ 実績解除システム(通称、歯車点灯)について
  • 本作にはやり込み要素の1つとしてゲーム中に特定の実績を達成するとタイトル画面の右端に表示されている15個の歯車のアイコンが点灯していくというシステムが実装されている*6。全ての実績を達成した時に起きる事とは……
    + 以下、重大なネタバレ注意につき格納
  • 実績を達成した段階でタイトル画面に シークレット動画 と言う映像特典が解禁される。収録されている映像は続編「戦場のフーガ2」の予告映像(コンセプトラフ。後に『フーガ2』のティザーPVとして完成)であり、 「ヴァナルガンドとの戦いの末に機能停止したはずのタラニスが突如暴走し、一部の子供達を内部に監禁。残されたマルト達数人がタラスクスに乗って救出のためにタラニスと戦わざるを得なくなる」 という衝撃展開となっている。しかも温和な性格のマルトが 愛する人を失い復讐者と化す ため、ベストエンディングを迎えたプレイヤーにとっては感動から一気に絶望へと突き落とされる重苦しい内容となっている。
    • せっかくのハッピーエンドが台無し、と思うプレイヤーもいるであろうが、一方で勘の良いプレイヤーであれば「 復讐三部作の1つなのに復讐要素が少なすぎる 」と勘付くだろう。実際、ゲーム中で復讐に関わった人物は先述したフラム・キッシュと彼女に父親を殺された子供のジン、ラジオの女の計2名+1体のみであり*7、マルト達主要メンバーが復讐心に駆り立てられるような展開はない。つまりハッピーエンドは 「子供達が復讐に駆り立てられるのに充分な動機付け」 であり、ここからが「復讐」をテーマとする本作の 真の物語の始まり となる。総監督の松山洋氏がインタビュー記事で 「ソウルキャノンは撃たないでね!」 と念押ししているのも、この事を踏まえているためであろう。

『リトルテイル』テイストの欠如

  • シリーズを象徴する『浮遊大陸』・『獣人』・『ロボ』の3要素は本作では比率が極端であり、 ゲームデザイン上、浮遊大陸要素は実質的にオミットとなった 。公式でも『3要素は諦めずに必ず厳守する』と度々言及されてきたが、浮遊大陸要素が廃止になった理由に関しては全く発言がない*8
    • 舞台となるガスコ国は浮遊大陸であるが、現実世界の九州地方に似た一塊の大陸になっているので、過去作のプレイヤー以外だとマップ画面の空中部分を注視しなければ浮遊している事に気付きにくい。一塊の大陸である以上、過去作で一貫して厳守されて来た『大空に浮かぶ世界ならではの冒険』が全て放棄されており、本作で行われている大戦も現実世界の戦争と何ら変わり無い為にシリーズとしての存在意義が著しく失われている感が強い。
      • しかし、ガスコ国の地形が何故前作とは異なる一塊の大陸になっているかの理由はエンディングで明かされる上に、前作とも繋がる重要な要素である。
  • 獣人要素も浮遊大陸要素程では無いがやや冷遇。過去作にあった獣人の住む村は本作でも実装されているが、章が始まる前に挿入される選択式の紙芝居に変更され、住人に話しかけるとアイテムが貰えるだけの非常に簡素なパートとなってしまった。村の各所に移動する選択肢を選んでも、 移動先の背景画像が表示されず、その場所にいる住人だけが表示される という地味なものとなっている。移動先の地名だけは確認出来るがどの様な場所かは知る事が出来ず、子供達は旅の合間に村に立ち寄って物見遊山を楽しんでいても、こちら側にとっては何が起きているか分からないと言う事である。単に開発スケジュールが間に合わなくて背景画像を実装出来なかったのかは分からないが、これではゲーム上の表現としては曖昧過ぎるであろう。
  • 前作にあったアクの強い獣人達と比べてもメインキャラを務める獣人の子供達も立場上、どこか影のある後ろ暗さがある影響でキャラとしての面白さを損ねてしまった感が強く、ゲーム中でも「戦車タラニスが収容した乗組員の子供達」程度の存在感なので、扱い的にはモブキャラ程度の存在感しかない。彼らの容姿・性格も「ハンチング帽子を被った名作劇場の様な容姿の犬獣人の男の子」や「気弱で太った猫獣人の男の子」等、良くも悪くも素性の明かされない獣人の子供である。*9
    • 子供達の言動自体も良く言えば自由奔放で可愛らしいと言えるが、悪く言えば世間知らずで終始落ち着かない印象が強く、一部のイベントの言動等で不快感を感じる部分も多く見られる。
    • ブリッツやシーナは境遇故にネガティブ思考が目立ち、カイルやジンは他人に対して無鉄砲に当たり散らす一面が強く、特にジンに関しては上述の復讐も関係してるので非常に陰鬱な印象を与えてしまう。
    • 公式で主人公と称されてるマルトも他の子供達と比べると非常に大人しく、言動的に落ち着いた印象が強いが、これと言った主人公としてのポテンシャルも無い為にキャラとして目立ちにくいと言う印象が強い。*10シナリオ上固定化されたブリッツとは異なり、ソウルキャノンで彼を犠牲にしてもシナリオには影響は無いので、所謂『なんちゃって主人公』と言う側面が強く感じる。
      • この件に関しては発売後のインタビューで松山氏は『 戦場のフーガの主人公はプレイヤーの自由。自分の心の中で決めてもらってOKなんですよ。 』と回答を下している事が明かされた。*11
  • ロボ要素は戦車に形を代えて続投されているが、前2作にあった『ロボットの背中に獣人が搭乗している』と言うある種のシュールなビジュアルが払拭され、見た目にも硬派さが増した上に、ゲームデザインにも違和感無く組込まれている事から 3要素の中では最も優遇されている 。また、タラニスも戦車ではあるが、12人の子供達が乗る搭乗型ロボットだと解釈すれば根本的な部分では前2作のテイストからそれほど変わってはいないと言えるだろう。
    • ゲームの路線変更により、ゲームを進める機体が個人で所有するロボから移動要塞とも直喩すべき巨大な戦車に変更された事で、シリーズ恒例のコネコ捕獲や飛行探索等の寄り道要素も全面的に廃止されてしまった。本作では代わりに決められた路線図の上を直線的に終始進んで行く仕様に変更され、戦車同士の戦闘パートとタラニスの内部を散策し、交流を深める「インターンミッションパート」を交互に繰り返していくだけの単調な進行となってしまった。また、多くの獣人達との交流が大幅に削られてしまい、主人公側もハンターでは無くなったので、クエスト等の世界観を楽しむ要素も全面的に無い。ゲーム中で前作でも登場した幾つかの名所を通過する事になるが、立ち寄ったりすることも特に無く、ゲーム中ではあまり意味を成していないのが惜しい所である。ただ開発側はその2つのパートに徹底した作り込みを実施しているので、過去作に強い拘りを持っている訳でもなければ特に気にならない部分ではある。
  • 上記の賛否両論点からすると、自由にマップを移動し世界観を楽しむ要素が大幅に削られてしまったのは本作が「理念無き戦争の悪意」を主眼に置いたゲームデザインであるためで、その試みは充分に評価できる。

物語とゲーム性の整合性が取れず生じる違和感

  • 評価点でも書いた通り、本作のゲームバランスは非常に秀逸だが、物語との整合性に欠けている部分もあり、ゲーム性だけが突出している感が強い。
    • 物語序盤で、謎のラジオの声に導かれて炎上する村から逃げ出したマルトを始めとする6人の子供達は、辿り着いた洞窟の先で巨大戦車タラニスを発見する。子供達は捕虜としてさらわれた大人達を助け出す為、難なく戦車タラニスを操縦し、戦車の大砲・機銃すら簡単に扱える様になるが、 何故操縦できたのかはゲーム中では全く説明が無い。 大砲の扱いに関しては開発者曰く、大砲を操作する「砲座」に乗って砲撃を行うという事になっているが、4歳児が砲撃して敵軍を殲滅させうる砲座が果たしてどのような物なのかはビジュアル的には一切表現されていないのでゲーム中では全て省略されてしまっている。
  • ゲーム中で度々挿入される遺跡パートでは 子供達が戦車から降りてモンスターと銃撃戦を繰り広げながら財宝を入手していく という説明の付かない事態が起きる。物語序盤において敵兵に太刀打ち出来ずに怖くて逃げ出した子供達が何故戦車に頼らずにモンスターと戦えるのかは一切説明がなく、持っている蒸気銃もゲーム中では「持ってきた蒸気銃」としか語られない。
    • しかもこの蒸気銃、 弾さえあれば遺跡の壁でもモンスターでも粉砕出来る高性能であり、何処で入手したのかさえ全く明かされていない 。戦闘出来る理由を強引に考えれば『遺跡のモンスターがベルマン帝国の兵士よりも弱く、戦闘経験の無い子供達でも倒せるから』*12とも考えられるが、物語との整合性は全く取れていないのは事実である。ちなみに、チュートリアルの段階では銃の名称を蒸気銃と表記しているが、弾を入手した際には『 トイガンの弾 』と言う表記が出て来るのでどちらが正式名称なのか判然としない。*13
      • 遺跡に登場するモンスターの数体は前作に登場したモンスターの再利用であるが、前作のとあるイベントテキストで『生身のハンターでもモンスターに立ち向かうのは危険、ロボに乗るべきだ』と明言されていた為、本作の遺跡での戦闘と矛盾する事になり、これも違和感を禁じ得ない*14
      • このように矛盾点こそ多いものの、このパートの導入により過去2作で問題視されていた「機体から降りると敵に太刀打ちできなくなる」という問題点が改善された。
  • 子供の1人、シーナは収容所から脱走してベルマン兵士に追われていたところを通りかかったタラニスに収容されるのだが、マップ画面を見る限り、収容所からタラニス合流地点までは 数百km位 の距離がある。9歳が徒歩かつ逃げながら歩ききるにはいささか無理のある距離である。
  • 双子の姉弟チックとハックには『腹を空かせてタラニスに侵入する』と言うコミカルな初登場シーンがあるが、6歳児でも突破出来る戦車のセキュリティなのにゲーム中では一切ベルマン帝国の兵士が白兵戦といった形で干渉してこないという矛盾が生じてしまっている。*15
  • 本作のリトライと周回プレイの仕様は「 ジャンヌが発動させたタイムリープ 」という設定が存在する。何故AIであるジャンヌが時空に干渉する事が出来るのかは明かされないが、続編でも同様のタイムリープを起こす人物が登場するので、ジャンヌだけの能力と言う訳ではない。*16
    + ラスボス撃破後演出の矛盾点
  • ゲームクリア時のラスボスが大破するまでの過程が通常エンドとベストエンドで異なるのだが、使われている挿絵はラスボスが大爆発を起こし乗っていた浮島が崩壊する通常エンドの物で固定。そのためラスボスの残骸と浮島、タラニスが健在のベストエンドの場合は矛盾が生じてしまう。

デメリットだらけのソウルキャノン

  • シナリオの焦点となっているソウルキャノンは、確かにいかなるボスも倒せる超兵器ではある。だがその犠牲である「仲間を1人失う」というのは、シナリオ面以上に「出来る事が永続的に狭まる」という ゲーム面でのデメリットが大きすぎる
    • 苦戦する状況で素直にソウルキャノンを使ってしまった場合、確かにその場は切り抜けられるが、次のボス戦ではより一層苦戦する事は間違いない。「犠牲と引き換えに有利になる」のではなく「犠牲も出るし不利にもなる」という踏んだり蹴ったりのシステムなのである。
    • 一応、「一度ソウルキャノンを使うと次もソウルキャノンに頼らざるをえなくなり、泥沼になってしまう」という意図なのだろう。確かにシナリオ的には悲壮感があるかもしれないが、毎回ボス戦がソウルキャノン頼りになるゲームが面白いかと言うと……。
      • 結局、「ソウルキャノンを使うぐらいなら、ゲームオーバーになってインターミッションからやり直した方が絶対に良い」「使う時は、イベント回収のために適当にぶっぱなすだけ」という、悪魔の兵器としてはなんとも締まりのない事になってしまっている。
      • そしてその割に、HPが半分減るとすぐにラジオの女が「ソウルキャノンを使うしかない!」と煽ってくるので、鬱陶しい事この上ない。

救われないベルマン帝国の軍人たち

  • 過去作にあった敵側のコメディ要素が全て廃止され、 心情面に置いても(1人を除き)憎悪や暗黒面ばかりが強調されるダークな路線となった 。良く言えば心情描写が大幅に生々しく人間臭くなったと言えるが、作中では同情の余地なしにタラニスに乗った子供達が彼らを殲滅させなければならないので、 最後まで帝国側に全く救いがない
    • 帝国側唯一のコメディ担当であるブルットヴルストも容姿性格と共にコミカルだが、『イヌヒトの家系に生まれたせいで疎まれていた事が原因で、その恨みからガスコのネコヒト達を誘拐しノノ(呪力の源)を強制的に取り出す事でヴァナルカンドを目覚めさせるための電池を生み出す』と言う暗く重い部分*17を含んでるので、純粋なコメディベースのキャラではないと言える。また、ライブラリで混血故に疎まれたと記述があるものの、具体的に幼少時代のブルットに何があって現在の凶行に繋がったのかは明かれていない。
      • 本作の悪役に該当するシュヴァイン・ハクス上級大将も実質的に序盤と終盤のイベントシーン位しか出番が無く、どの様な人物であったかは非常に伝わり辛い物となっており、 彼の素性が明かされるのはゲーム中では無くライブラリ内のベルマンレポートのみ と言う何とも些末な扱いである。シリーズの悪役を務めてきたフールやブルーノの役割を踏襲したキャラだと思われるが、前者の様な憎めなさが全く無く、侵攻作戦の為なら部下の軍人達を捨て駒扱いする、自身が信仰する神に対しては盲目的だと言う、出番が少ない割にはあまり好感が持てない性格付けでしかない。*18
      • 一応、終盤ではタラスクスがヴァナルガンドと融合した時にハクス自身も生体部品と化してヴァナルガンドの一部となり、神を自称する見せ場があるが、その後、祖国のためにどう行動する予定だったのかは、その場でタラニスによって倒されるため判然としない。
      • 常にシリアス路線だった帝国側だが、2023年5月8日に電子書籍で配信されたアンソロジー集『ぼくらのチェイサーゲームvol.6 G線上のフーガ特別編』で本編とは異なるコメディテイストの彼らが描かれ、キャラ描写の面で大幅に補完される事となった。

グラフィック関係

  • シリーズ初のHDタイトルだが、グラフィック自体は2021年のゲームとして見てもあまり出来の良いものとは言えず、戦車を運行させるメインの画面は背景画像を板ポリゴンに張り付けただけの非常に簡素な物となっているが、探索パートやインターンミッションパートでは3Dでモデリングされた可愛らしく動く12人の子供達を見る事が出来る。ちなみに 子供達以外の3Dモデルは全て裏側が作られてない描き割り と言う事らしく、処理負荷を軽減する為の仕様と言う事。少なくとも2021年発売のゲームとは思えない位のローテク技術である。
    • 一方で子供達と対峙するベルマン帝国の軍人達や脇を固める村人達等は会話グラフィックと挿絵のみのハリボテでしかなく、実際にゲーム内の戦闘パートで敵として登場するのは彼らが搭乗する 戦車 なのでイベント以外の存在感が感じられず、破壊されると強制的に退場してしまうので投げっ放し気味である。
  • とある章では子供達の内の1人であるシーナがネコヒトにしか使えない呪術を使うシーンがあるが、実際にゲーム中で設定が生かされているシーンと言えば一部のスキルのエフェクト位で、前作の良さであったRPGらしいファンタジー要素を絡めたゲームデザインが本作では欠如しているので非常に地味に感じる。

前作にあった演出面での劣化・削除された要素

  • 前作とは異なりイベントの進行が全て強制進行となってしまったので全編ダイジェスト進行となってしまった。
    • 例として挙げるなら序盤の子供達が住む村が襲撃されるまでの流れも数枚の紙芝居で端的に表現され、RPGで定番の「村での日常から惨劇が起きて主人公が旅立つまで」の流れは全て省略されている。序盤以降の展開も「敵軍を撃破しながら捕虜となった各地の村人達を収容所から解放させる」の繰り返しなので、盛り上がる展開を迎えるまでに時間を要する。
  • 本作のイベント進行は2DCGによる紙芝居であり、近年のゲームにある様な3Dモデリングを使用したイベントシーンは本作には採用されていないと言う非常に賛否が分かれるものとなった。
    • 作画自体は正確なバランスで描かれており、『 CC2ケモノ愛を感じる 』と概ね好評であるものの、イベントの進行自体は前作のフェイスグラフィックを使用した2DCGと変わらない為に、『11年振り続編である以上はイベントの形式を発展させて欲しかった』や『見た目が基本無料のスマホアプリの様でガッカリした』等の不満意見も見られる。
  • 12人中、序盤のラジオに導かれた6人(マルト・ソックス・カイル・ボロン・ハンナ・メイ)以外は各章の冒頭~序盤に1~2人ずつ突拍子も無く登場し、次々とその場で加入する展開が続くため、一部のプレイヤーからは「 (ソウルキャノンの)弾丸補給 」等とネタにされてしまっている。その為、RPGにおける赤の他人を交渉によって仲間を引き入れる面白さは無い。
    • ライブラリを解禁していく度にガスコの国土に関する資料が補足されていくが、戦争の被害を受けている村があるにもかかわらず、 隣の村では飲食店が通常営業している 等、作り込みが浅い部分も見られる。

良くも悪くも解釈任せの作風

  • 全体的にストーリーが説明不足である為、本作をプレイしたプレイヤーからは悲観的に見れば『凄惨な戦争物のストーリー』や好意的に見れば『親をさらわれた子供達が世界征服を企む悪の帝国に戦いを挑む王道の少年漫画のノリ』等の様々な意見が寄せられており、やや人を選ぶ物となっている。勿論暗く凄惨なストーリーである事であるには変わりないが、説明不足故に深読みしなければ単純明快な王道RPGと捉える事も出来るだろう。
    • 過去2作に登場した黒猫団やクーパーズに該当する本作の敵勢力であるベルマン帝国は明確な悪として描かれているが、突拍子もなく登場し、退場していくので説明不足感が強い*19
    • しかし、彼らの心情描写はライブラリの項目「ベルマンレポート」の視聴と物語全体を把握しないと見えて来ない上に構図自体は過去作と同じく『全うな悪との対立』なので、王道的な展開と解釈する意見もあるので、やはりプレイヤーの想像に任せる形となる。
  • ストーリーは凄惨であるものの、近年の国産ゲームにしては表現は控えめである為、グロテスクな描写が苦手な人にも勧められる内容となっている。

上級者向けのゲームバランス

  • アクションを廃止してターン性のコマンドバトルに変更したのは良い変更点だが、従来のRPGで定番のエンカウントやフリーバトル等は本作では実装されず、代わりに「止まったマスに書かれている数字の分だけ戦闘を行う」という海外産のアナログゲームに近い、悪く言えば不親切な仕様となってしまった。HPとSPも特定のマス以外では任意回復出来ない為、枯渇するとあっさり敗北すると言うFC時代を彷彿させる理不尽さが難易度を上昇させている要因となっている。
    • その為、いわゆるRPGの醍醐味である「経験値稼ぎ」等は本作では一切行う事が出来ず、アイテムも特定のタイミングで入手は出来るが、前作の様に資金で買い込む事も出来なくなったので、低レベルかつ資源が乏しい序盤は劣勢を強いられる事になる。
      • また、タラニスの戦力強化に必要な素材は章開始時の村で上位又は下位の部品と交換ができるが、この村ではタラニスの強化に何がいくつ必要なのか調べられない。無闇に早く入手してしまった上位素材や必要ラインを通り過ぎてしまった下位素材は次の章までそのままとなってしまうため、事前に強化画面でメモやスクリーンショットをしておくのが得策である。尚、現在この点に関しては後述する大型アップデートにより改善された。
    • 当然の事ながらゲーム中で一切救済処置は存在せず、頭で考えて敵を撃破しなければ物語を進行させる事が出来ないので、恐ろしく人を選ぶゲームと言える。しかし、プレイヤーが独自の解法を見つける事で難易度は低下し、戦略がガッチリ嵌まって敵軍を撃破した時の達成感は非常に高いので、非常に奥の深い戦闘システムである。

やり込み要素の1つ「???」の人を選ぶ内容

  • ライブラリの項目の内、右下に「???」という項目が2つ存在しており、条件を満たす事によって項目名が明らかになる。ここで挙げるのは一番右下にある「???」であり、ゲーム中、稀に発生するイベントを完了する事で解放される。その内容というのが…
    + 以下ネタバレ
  • 項目名は「秘密の花園」。早い話が トイレイベント である。インターミッションパートに入ると稀に連絡ノートのお願い部分が「・・・」と無言状態&ご機嫌ゲージがマックスになっているキャラクターがいる場合があり、そのキャラクターで屋上までいくと、そこに おまる が配置されている。そしておまるを使用すると「 流水音が流れる中、そのキャラの赤面顔が映り、直後に画面一杯に花畑が映し出される 」といった具合に、直接の描写が無いとはいえなんとも罪作りな内容となっている。その手のジャンルが好物なプレイヤーであればいいが、健全なプレイヤーからすれば何とも言えない内容ではある。
    • 発売から約半年後の2022年1月27日にサイバーコネクトツーが配信した生放送番組で、 松山洋氏が開発終盤に開発チームに提案・無理矢理実装させた 事を自ら明らかにしており、 おまるのデザインも自ら手掛けた と述べている。経緯についても「子供達はどこでトイレをしているのか? ⇒ ゲームで表現してなんぼだ ⇒ 屋上に空きスペースがあるから低確率イベントとして実装しようぜ」との事。

発売後のアップデートの乏しさ

  • 公式の発売後の対応は不具合を修正する修正パッチとゲーム部分の改善パッチの配信のみであり、ストーリーの追加に関する配信は一切ない。元々ボリュームの多かった本作だが、未完成と思わしき部分も多く見られるので、やはり何らかの追加要素が欲しいとの意見もある。
    • 長らく改善パッチ以外のアップデートがアナウンスされていなかった本作だが、2022年1月20日から5月までの間に全3回に渡ってコスチュームDLC(第1弾:学生服 第2弾:SAMURAI (武士、和服など) 第3弾:ファンタジー (勇者、お姫様など))が配信された。服装が反映されるのはインターミッションと探索時のみなので、周回プレイ時の最低限のモチベーション維持用、とも言える。
      • 2023年3月31日に続編である『2』のシステムを流用した大型アップデートが各プラットフォームで配信され、快適性が向上した。

フルボイスではない

  • 本作はタラニスのAIであるジャンヌとナレーションのみフルボイスであり、 それ以外の登場人物は『Solatorobo』と同様に掛け声のみのパートボイス と言う厳選された仕様である。しかし、『テキスト表示のイベント進行とフルボイスのイベント進行が混在しているのは違和感しかない』と言う否定意見も見られる。

問題点

オープニングアニメは無し

  • 自社パブリッシングソフト故に仕方の無い事なのだが、本作には従来シリーズのようなアニメ映像のオープニングが無く、ゲームを起動するとすぐにタイトル画面に移る。過去作でオープニングアニメを楽しんでいたプレイヤーにとっては寂しい部分である。

使いにくい粗削りなUI

  • 本作はUIの作り込みが非常に浅く、戦闘パートのコマンド選択の場面でも左側に選択肢の文字が一斉に表示されるせいで画面が見辛くなるなど不便な部分が目立ち、イベントシーンに関しても戦闘パートの上から強引にキャラのフェイスグラフィックを表示するなど突貫工事で仕上げた感が強い。
    • フェイスグラフィック自体は本作のキャラクターデザインを担当した時津祐介氏の力量もあって非常に美麗だが、差分による動きのパターンが非常に少なく、目と口だけを差し替えただけなど変化に乏しく感じる。
      • 作画に関しても良く分からないものが多く、多くのキャラは斜めアングルで作画されているが、ハクスやバウムとシュトーレン等は設定資料をそのまま抜き取って着彩したかの様な不自然な正面アングルによる作画など統一感が無く粗が目立つ。

操作しにくいインターミッションパート

  • 子供故に仕方のない事かもしれないが、全体的に生身の子供達の移動速度が遅く、タラニスの各施設を利用する為には面倒なリフト移動を繰り返さなければならないので操作性が悪い。また、子供達の切り替えが全体的に煩わしく、切り替える度に初期位置に戻されるのでストレスが溜まりやすい設計になっている。

バグが多い

  • 目立った不具合も無く、デバッグの作業もしっかり行われていた前作に比べて、対応機種が多岐に渡る本作は非常に不具合が多い。現在はアップデートにより大分改善されたが、未だに細かい表示バグを始めとした不具合は報告され続けている。
    • 発売当初はゲームの進行が不可能となる強制終了が多発し、コマンド選択時の処理落ち等や、 没データと思しきテキストが突然ゲーム中に出現する 等挙げればキリが無い。

探索パートの問題点

  • 本作では戦車同士が戦うコマンド式の戦闘パートの他に、子供達が生身で戦闘を行うサイドビューのアクションパートである『探索パート』が度々挿入される。
    • このパート自体の導入は単調なゲームの進行を緩和するものとして非常に意欲的な試みだと思われるが、問題は作り込みの浅さであり、操作そのものはインターンミッションパートの左右移動にアクションゲームに必要な当たり判定を加えただけのものとなっている。
      • 開始前に遺跡に潜入する子供達を3人選ぶ事になるが、誰を選んでもアクションの変化等は存在せず、モーション等も全て統一されているのでアクションゲームとしての面白さはあまり無い。探索の目的自体もアイテムの全回収と、複数の部屋の中から目当てとなる宝箱と開錠する為の鍵のある部屋を探し出す事のみしかなく、遺跡の構造自体も通路の構造が難易度毎に違うだけで代わり映えしない構造が延々と続くだけである。
      • もっとも、このパート自体がゲームデザイン上の主眼に置かれている訳では無い副産物的なものであると考えれば合点が行くが、素材回収と連絡ノート埋め以外の目的は一切無いので、ゲームを攻略する上でのメリットはあまり感じないのは確かである。

印象の薄いガスコ軍

  • 本作における味方サイドの軍隊がガスコ軍であり、ガスコに対し電撃侵攻を仕掛けてきたベルマン軍を相手に劣勢に陥りながらも、タラニスの活躍によりベルマン軍が混乱している隙に乗じて反撃に転じていく、というのがゲーム中での動向である。しかしゲームのストーリーは「子供達の物語」のスタンスを徹底しているため、「大人達」であるガスコ軍については以下の通り活躍の機会に乏しい。
    • 物語の終盤でようやくタラニスに乗った子供達と合流し、タラスクスを破壊する為に戦車隊が加勢するが、直後のタラスクスの砲撃により 戦車隊が一瞬で跡形もなく蒸発する と言うあまりにも不憫な扱いを受けてしまう。その後の活躍はと言うと、タラニスがヴァナルガンド内部への侵入口を発見するまでの時間稼ぎや、ラストバトルを経てヴァナルガンドを破壊した後に、タラニスを降り、 村に帰る手段を失った子供達を飛行船に乗って迎えに来た (or タラニスが大破し負傷した子供達を飛行船に乗って救助しに来た) 位である*20
    • また、設定でガスコ全体を活動範囲としているのに対し、ゲーム中でタラニスやその子供達と直接関わり合うシーンはほぼ無いに等しい。タラニスの調査報告や全く別の地域での占領区解放など裏方に回っているのがほとんどである。タラニスが敵の勢力圏に真っ向から突っ込んでいくのに対し、首都や国土の防衛で手一杯であるため仕方の無い事と言えば仕方ないのだが、せめて道中で末端の兵士と関わり合うような小イベントぐらいは欲しいところである。
    • ネームドキャラも大将のメルロー将軍、補佐のマスカット中尉の2名だけと、敵側のベルマン帝国よりも圧倒的に少ない。また、ライブラリにベルマン軍とその軍人の内情が窺えるベルマンレポートがあるのに対し、ガスコ軍側は一切無いため、ガスコ軍の情勢やキャラクターの心情などを窺い知る事が出来ない。マスカットの調査報告書、といった感じの補完要素が欲しいところである。
  • 対するベルマン帝国も、作中に登場するのはあくまでもハクス率いる帝国軍がメインであるため、本国についてはレバー・カイザー皇帝*21が「かつて失われた国土を取り戻す」と表明している事やイヌヒト中心の国家、飛行船の技術に優れているといった点が断片的に語られる程度のため、どのような国家・情勢であるか全貌が把握しづらい。ただ、こちらはゲーム本編に直接干渉するような存在では無いため、ベルマンレポートや完全設定資料集での補完で事足りる要素とも言える(後者は国勢について若干の補完あり)。
    • しかし、2023年3月14日に掲載された漫画版『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』の23話で、 上流貴族が支配するスラム国 と言うゲームに描かれなかった事実が明かされ、これにより大幅に帝国側の設定が補完される事となった。

総評

前2作で不評だったゲームバランスを全面的に改善し、何度でもやり込めるインディーズゲームとして新生したリトルテイルブロンクスシリーズの一作。
荒削りな部分はあるものの他のゲームには無い独自のゲーム性が高評価を得て、癖は強いが中毒性の高いゲームシステムは『やり出すと止まらない』や『夢中になってしまう』等、国内外問わず絶賛されている。一方で、過去作のノウハウがあまり生かされずに、終始説明のみで終わる致命的なシナリオの薄さや、 本作が3部作の内の1作にしか過ぎず、続きをプレイする為には残りの2作を定価で新規購入しなくてはならない 等、本作で挙げられる数々の懸念点には賛否が分かれている。

しかし、低迷していたシリーズの権威を取り戻したと言うべき作品である事には間違いなく、『 シリーズの良さを潰したのにヒットに至った 』と言う逆転現象を起こしてしまった。よって、旧来のファンからは否定意見が強く残るが、インディーズゲーム屈指の名作として今後もその名を残すであろう。


余談

発売までの経緯など

  • 企画が初めて公表されたのは2018年の2月で、発表当初から「戦争」を扱ったリトルテイルブロンクスシリーズの新作という事だけは公表され、当初からシリーズの思い入れがあったファンから批判が相次ぐ事態となった。今までの王道的な漫画映画的な世界観が一気に損なわれたので、やはり本作が掲げている「戦争」のキーワードが嫌悪感を示す要因にもなったのだろう。また、本作は同社の「復讐三部作」の第1弾であり「戦争×復讐×ケモノ」が本来のテーマとなっている。なお、三部作のテーマが「復讐」である理由については松山氏本人が復讐モノ好きである事に起因している。(ファミ通.com:復讐が大好物な松山社長が『戦場のフーガ』の今後を語る)
    • 企画の公表から発売まで3年半以上の長い開発期間を経て発売に至った本作だが、度々延期した理由については「他のタイトルとの並行した開発体勢だった為、思う以上に難航した」と公言されている。2019年3月にYouTube上でプレイ動画を初公開した時には同年秋に発売予定と告知されていたが、結果的に2年半程延期している。当初の予定では開発期間1年半、開発予算は1億5,000万円とされていたが、結果として開発期間3年半以上、開発予算は3億2,500万円になっている。利益額については発売から3ヶ月経った時点で1億2000万と当初は売り上げに芳しくない状態であったが、2023年4月の時点で世界累計18万本を突破した事が報じられた。売上についてはアメリカなど主に海外が上位を占めている。
  • 当初の予定では2021年7月29日にマルチプラットフォームで一斉発売予定だったが、 PS4とPS5版は価格表記ミスにより僅か数時間で販売停止となり、誤って購入したユーザーには返金措置をとる という不祥事が起きてしまった。その後、2021年8月10日に価格を改定した上で再発売された。
  • やはり本作は非常に難産だったらしく、松山氏の強行突破とも言うべき制作指揮で完成まで漕ぎ着けた事が、後述するファミ通.com内のコラム『インターミッション』において松山氏本人から延期に関する一連の理由が明かされている。いずれも本作が初の自社パブリッシングソフトであるが故の開発知識の皆無(松山氏も含む)が最大の原因となっている。他にも本作の倫理観の欠如や脚本面での抜け落ち等、下記の開発体制が影響している思われる。内容については以下の通り。
    • 開発スタートの時期に、上述の通り、他タイトルとの開発が並行し、そちらにスタッフがほぼ総動員されていたため、開発スタッフが わずか3人 (企画2名、アーティスト1名)、プログラマー 0人 の状態でスタート。
    • プログラマーが来るまでに仕様作成するものの、他タイトルの炎上によるスケジュール遅延により、1年経ってもプログラマーがアサインされない状況に。
    • テンションが上がるから 」とモチベーション維持を目的に復讐三部作プロモーションビデオを公開。ただし、この動画の時点ではモデリングだけしか製作しておらず、実際の開発には着手していなかったと言う。
    • 已む無くプログラム部分を非公表の福岡のゲーム開発会社に外注(原文では「パートナー企業」と表記)するも、外部プログラマーとのやり取りが未経験であるが故に連携が取れず、4ヶ月経ってもゲームと呼ぶには程遠い物を製作中。これによりCC2が「パートナー企業との距離感やハンドリングや指示の仕方が極端に下手」という事が露呈。さらに外注を指示した松山氏本人が『 誰がこんなゴミを作れ言うたんじゃボケ! 伝え方がイマイチわからんでモタモタしてただぁ? フザけんなよ? キッチリ勝負できるモンを作らんかいッ!』 (原文ママ)と逆ギレしてリテイクを出す事案に。
    • 提出された要素を松山氏が毎回チェックする方針に切り替え開発を続行。その間に各要素の作り直しが3回も行われ、開発予算も 2億円を突破 する。ところが一切の妥協も許さない松山氏がマスターアップ4ヶ月前という切羽詰った状況にもかかわらず、上記の やり込み要素「???」の実装を強引に指示 。これにはヨアン氏もTwitter上で「(フランス語で) My Boss is crazy」とコメントしたとされる。 さらには記事内で反省の色も見せないどころか続編でのパワーアップ実装も公言。
    • 2018年10月から楽曲製作が開始。「空と大地のキヲク」「轍に咲く花」などのテーマ曲を始めとして楽曲と仕様書が製作されていき、セリフやナレーションの収録なども終了する。ところが、1年ほど経過した2021年の年明けに作曲担当の福田考代氏がシナリオの進捗を確認したところ、後半部分が大幅に変更されており、曲の調整や追加の曲の製作を実施。結果として 発売約2ヶ月前 の2021年5月頃まで作業が続いた。

C5プロジェクト

  • サイバーコネクトツーの自社パブリッシングによる商品化を目的とした企画のことで「 C yber C onnect C reative C hallenge C ompetition」の略。
  • 同社社長の松山氏によればこのプロジェクトは「いまのゲーム市場は、(AAAタイトルのような)巨大プロジェクトと対局にあるインディーゲームと呼ばれる小規模・短期間開発タイトルが育ってきている。つまり、ビッグバジェットを投入する重厚長大なゲーム制作と、最小限の予算と人員ながらキラリと光るアイデアで勝負するインディー制作に二極化している。そこで若手クリエイターを育成するためにもすべてを自社で賄うゲーム制作のラインを起ち上げた」というもの。*22
    • なお、本作の後に続く「復讐三部作」の残り二作はパルクール斬撃アクションの『刀凶百鬼門』と2.5D横スクロールアクションの『CECILE』が現在開発中とのこと。

スピンオフ作品・コミカライズ版

  • プロモーション活動も積極的に行われており、YouTube上でスピンオフの短編マンガ動画『はじまりの日』と『花のある生活』が配信された他、本編とは異なるギャグテイストの映像作品『G線上のフーガ』(全25回)が配信された。『G線上』の方はギャグ作品故に本編との関連性はあまり無く、キャラが崩壊・暴走している等の特徴がある。どの映像作品も本作に出演した声優陣によるフルボイスの収録であり、全体を含めるとかなりの物量である。また、いずれも後に海外向けに字幕・台詞欄を英語表記にした海外版が配信されている。
    • 現在は完結済だが、2022年9月30日に配信されたアンソロジー集『ぼくらのチェイサーゲームvol.5』に特別編が掲載された。
    • 『花のある生活』はゲームのシナリオよりも先に原稿が完成しており、「戦争で壊されたものを癒すものの象徴としての花」を題材に、動画から着想を得て作曲されたのが主題歌「轍に咲く花」となっている。
  • 2021年12月7日からはファミ通.comにおいて公式コミカライズ作品である『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』が連載を開始。漫画執筆は『D・Mファイター焔』や『メタルファイト ベイブレード』などを手掛けた足立たかふみ氏が担当している。連載は隔週火曜日に行われており、間の週では上述した「インターミッション」が掲載される。
    • 漫画版は全5巻構成のため、展開がやや駆け足気味で一部章のカット・統合が行われているが、基本的にゲームのストーリーを再現しており、未プレイの人でも楽しめる親切な内容となっている。一方でゲーム本編に無かった描写の掘り下げ(タラニスの複座式砲座の描写、戦車に搭乗せずに銃架を使い白兵戦を行うベルマン軍兵士の存在など)や漫画版独自の展開*23もゲーム全編のネタバレにならない程度に盛り込まれており、ゲーム本編とは一味違うストーリーを楽しむ事もできる。なお、描写の掘り下げに力が入っている分、物語後半の一部シーンに 肉体損壊・大量流血の描写 があるため、閲覧の際には注意する事。2022年3月24日から電子書籍版の単行本の配信が開始されているが、製本版の発売は松山氏曰く『現状では出版企業を募集中であり、今の所は未定』との事。
      • 序盤はゲーム本編と同じ展開を辿っていたが、漫画版11.5話で、 ゲーム本編から分岐したパラレルワールド と言う事実が明かされ、ゲーム本編とやや異なる展開も描かれるようになった。その為、本編をプレイ済みであっても「ゲームと違う」という新鮮さと異様さが感じ取れる内容となっている。
      • 上記の通り、漫画版最大の特徴として続編の布石がふんだんに盛り込まれた松山氏ネーム執筆の『 ○.5話 』パートが随所に挿入されており、謎が謎を呼ぶ展開が繰り広げられる。

その他・豆知識・小ネタなど

  • 本作のタイトルである「フーガ」及び各章のサブタイトルはいずれもフランスの作曲家、クロード・ドビュッシーが製作した楽曲の作品タイトルからの引用となっている。
  • 第10章のボス戦終了後にタラスクスがマーナガルムを発射するシーンがあるが、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』の被弾音のオマージュなのか、ガラスが割れる音がする。
  • 公式で主人公と称されているマルトが良く発する「僕は長男だから~」の台詞が『鬼滅の刃』を意識した台詞ではないのかと一部のファンから指摘されたが、インタビュー記事において同様の質問を受けた松山氏から類似性は無く偶然被っただけだと否定されている*24
  • 子供達の年長格であるマルトの由来は叙事詩「リグ・ウェーダ」に登場する暴風神ルドラの息子マルトから。普段は穏やかだが、戦いに赴くと恐ろしく変貌すると言う伝承は次作「2」の下敷きとなっている。
  • チュートリアルのソウルキャノン発射イベントで選ばれた子供は、日本ではボロンが1位。大食いキャラであるため食いぶちを減らす事を目的に選ばれる傾向にあるようだ。一方、アメリカでは わずか4歳のメイが1位 という結果。理由としては、戦場では女子供が真っ先に死ぬため、ボロンのような体格の大きい人物の方が頼られる傾向にあるため。戦争に対する国ごとの感性の違いが窺える。
  • 上述の通り、ゲーム開発当初はブリッツが存在せず、子供達は最大11人であった。11人である理由については松山氏が「子供達が宇宙船のような戦車に乗って旅するなら11人」と述べているため、恐らくSF漫画「11人いる!」のリスペクトと思われる。
  • 当初ベルマン軍の紋章はシンプルな十字マークであり、コンセプトアートにもそのままの形で描かれているが、ハーケンクロイツ(ナチス・ドイツの党章)などを連想させるデザインであるためか開発途中でNGを食らったため、現在の犬の3つ頭型のデザインに落ち着いたとの事(参照動画​および参照サイト)。十字マーク自体はゲーム中だと回復ポイントにある木箱のマークに転用されているが、『鋼鉄のメロディ』では、第11話などで戦車にコンセプトアートそのままの形で描かれている。
  • 本作が前作とは全く異なる海外産のアナログゲームの様なシステムになってしまったのはゲームデザイン/ディレクターを担当した元UBISOFTの社員であり、2021年当時のサイバーコネクトツー所属であるヨアン・ゲリト氏*25の手腕が影響していると思われる。あまりJRPGらしくない意地の悪さを感じる仕様になったのも頷ける話である。
  • 作品の世界観に合わせて、ボイスの言語は日本語とフランス語への切替えも可能。フランス語版の合唱曲はヨアン氏の人脈からフランスの音楽学校の協力を得た上で収録したものが使われている。
    • ちなみに開発リソースを分担するため、グラフィック周りはカナダのモントリオールに設けた開発スタジオ*26で手掛けている。公用語がフランス語ということもあり、モントリオールスタジオとの情報共有のやり取り等もヨアン氏が担当している。
  • ヨアン氏は2022年6月30日からTwitter上で本作に関するトリビアや裏話をいくつか明かしている。以下はその一部。
    • ブリッツの追加を提案したのはヨアン氏 (同氏のツイート)であり、特撮作品『パワーレンジャー』におけるトミー・オリバー (グリーンレンジャー)のような「敵か味方か」という立場で物語を盛り上げたキャラクターを欲した事に起因する。下記の余談の欄にあるフーガのプロトタイプにおいてブリッツの姿が確認できるため、2018年の時点でキャラデザインは完成していた可能性がある。一方でパッケージイラストには彼だけ描かれておらず、スピンオフ作品『G線上のフーガ』においても全25話中、第24話でようやくキャラ紹介が行われるなど微妙な扱いとなっている。*27
    • タラニスの名前の由来はケルト神話に登場する雷神。 ジャンヌ ・ダルクも崇拝した戦いの神であり、人間の生き血を欲して 生贄 を求める獰猛な神でもある。人身御供は木の洞や「ウィッカーマン」と呼ばれる編み細工に人を 詰め込んで 焼き殺すという形で行われた。また、車輪をシンボルとしているなど、様々な要素が本作のタラニスにも取り入れられている。
    • ガスコの首都パレシアの名前の由来は「パリ」とローマ帝国に敗北した要塞都市「アレシア」のミックス。
    • 物語の最初の舞台「プチ・モナ村」の名前は、ヨアン氏が幼少期に妹と夏を過ごした村「Monthureux」の名前の由来「Monasteriolum」をさらにフランス語訳した「Petit Monastère (小さな修道院)」を縮めたもの。
    • ヴァナルガンドのデザインは「『Solatorobo それからCODAへ』完全設定資料集 Vol.3」に掲載されているティタノマキナの挿絵を転用したもの。
    • 子供の内の1人、ハックが艦内で度々行っているスクワットは村を訪れた兵士から教わったという裏設定がヨアン氏Twitterで明かされている。後にその兵士は100人のベルマン兵士の待ち伏せを受け、その戦いの中で戦死したとの事。
  • 本作の限定版の特典は序盤の戦況が有利になる回復アイテムのセットと12人の子供達のモデリングを変更できる「 水着 」とサントラ付きのアートブックと一度だけ犠牲無しにソウルキャノンが打つ事が出来る「 ダミーソウル 」が付属している。
    • 回復アイテムのセットは有利と言えば有利だが、やはりシビアなゲームの進行を崩してしまうので特典として付けるべきかどうか疑問符が残ってしまう上に、1個だけとはいえダミーソウルは本作の悲壮感を根底から否定してしまっている感が強い。水着は単なるファンサービスにしか過ぎないが、本作に登場する子供達の後ろ暗さを上手く緩和している上に、厚着で隠れていた子供の体格等が見える等細かい部分での拘りを感じる。
    • サントラ付きのアートブックは、家庭用ゲーム機版ではゲーム内に収録されている訳ではなく、 購入確定後、ユーザーアカウントに登録されているメールアドレスにシリアルコードが送信され、公式サイト内の特典ページにそのコードを打ち込むと必要なデータがPCでダウンロード可能になる と言うゲームと連動しない斜め上の入手方法である*28。アートブックは既出の画像の寄せ集めばかりであまり真新しい物は無いが、サントラはMP3形式の為、名曲がいつでも聴けると言う利点がある。
      • 一方、PC版についてはデジタル形式で同梱となっている。
      • その後、2022年4月30日には『G線上のフーガ』のテーマ曲を含む計61曲を収録したオリジナルサウンドトラックCD2種が発売された。
  • 2020年5月3日にBS4Kにて放送されたNHK制作の番組『潜入!4K対応ゲーム 開発の舞台裏』にて、サイバーコネクトツーの密着取材の中で本作の開発現場が公開された。ゲーム紹介のナレーションで「 舞台は第二次世界大戦中のフランス 」と解説されている*29他、主題歌の「轍に咲く花」も番組内で曲の最後の部分が初公開されている。
  • 2021年11月に開催された「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」でCC2社長の松山氏が登壇し、今作における小規模開発の実状をテーマに「初の自社パブリッシング」という不慣れな状況から露見した数々の課題や失敗、それに対する解決策がかなり赤裸々に語られている (IGNによるレポート)。
  • 2018年にはゲームコンセプトのテストのため最初のプロトタイプが製作されており、この時は戦闘がリアルタイム形式で、戦術モードはキャラクターを車内移動させて砲座を入れ替える仕組みになっていた。また、僅かながらブリッツの姿も確認できる(ヨアン氏のツイート)。
  • 本作の製品版と開発途中の体験版では大きく仕様が異なり、製品版では実装されずに見送りとなったビッグキャノン(車体後部に格納されている巨砲)、子供達の関係性が変化する『ランダムイベントマス』の存在などが確認されている。
    • かなりの段階まで作り込んでいたらしく、実装されていた挿絵では『子供達がカードゲームで対戦し、敗北して嘆くボロン』や『戦争のストレスで憤慨して荒れるカイル』等の製品版に見られなかった一面が垣間見える(参照動画)。
      • また、2019年3月にYouTube上でプレイ動画を初公開した時には 途中セーブの仕様が存在しないローグライクゲーム だと言う構想が明かされていたが、結果的に製品版では見送りとなった様である(参照動画)。
  • 本作のプロモーションの一部をエッセイ漫画家のZENZO( 美女 )が担当しており、サイバーコネクトツーに訪問するルポ漫画や本作の進捗を公開する情報番組のゲストとして出演している*30

その後の展開

  • 2022年7月15日からは製品版とのセーブデータの共有が可能な本作の体験版が全プラットホームで配信され、3章まで無料で遊べる仕様となっている。
  • 2022年10月11日に本作の限定版に付属していたアートブックの完全版にあたる『戦場のフーガ完全設定資料集』が電子書籍として先行配信され、製本版は2022年10月14日に発売となった。
    • 設定資料集と言うよりはアートブックに近く、ゲーム中で実装された画像が概ね収録され、スピンオフ2作の製本化や、初出となるキャラクターの初期案や、(イメージ案ではあるものの)ゲーム中では前髪で隠れていたワッパの目元、ヴァナルガンドの生体部品と化したハクスの全体像の公開等のファンサービスもある。反面、文字設定などの追加情報(キャラ・メカ紹介文、世界観設定など)は最低限度に留まっており、本編のゲームプレイを阻害しない構成になっている。

続編

  • 2021年12月31日にサイバーコネクトツーが配信した生放送番組内(ぴろライブ! 年越し生放送スペシャル2022)で、トゥルーエンド後の物語を描いた続編「戦場のフーガ2 (仮称)」を仄めかす松山氏の発言とコンセプトラフ2枚が公開され、翌年2022年3月1日には上記ファミ通.comの「インターミッション」における松山氏のインタビューで 本作が3部作での販売を計画している 事が報じられた。
    • 以降もインターミッション内で度々続編の発売予定が報じられ、2022年7月14日~17日にフランスで開催された現地での『Japan Expo 2022』において、『戦場のフーガ2』の発売決定が先行発表された。後日、公式からも同情報が正式に報じられ、ティザーサイトがオープン。2023年1月26日には発売予定日が同年5月11日であると報じられた。
    • これにより本家リトルテイルから派生した『戦場のフーガシリーズ』が本作をもって確立する事となり、本作もまた長大な構想の一端にしか過ぎないと言う事が発言されている。
    • 予定通り2023年5月11日に『戦場のフーガ2』が発売された。

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最終更新:2024年04月25日 16:25

*1 本作ではゲームデザインから絵コンテまで作業量は多岐にわたる

*2 2章の光る少女出現イベント発生時にマルトが死亡済みだとメイの台詞が追加。「お兄ちゃんだったら会いたいな」と嘆く

*3 完全設定資料集181pに記載

*4 『テイルコンチェルト』の鉄巨神、『soratorobo』のラーレス・レムレスは結晶石を触媒にする事で復活・制御が可能になる設定であるため、このコアも恐らく結晶石かそれに相当する物と思われる。ただコア自体に「共鳴反応により完全稼働する」という新要素があるため一概に同一視はできないようだ(ヴァナルガンド自体がティタノマキナ最上位種である事も関係しているのかもしれない)

*5 あくまで『終戦』ではなく『停戦』であり、2国の関係は続編でも描かれる事となる

*6 点灯条件については後に全世界シリーズ累計ダウンロード数が30万を突破した際に公式が記念に公表している

*7 ブルットヴルストについては同族に対する逆恨みのため除外

*8 公式インタビューでは『開発段階で不要なものは全て廃止し、1個の尖りで勝負する』と松山氏が発言しているが、何故その様な開発体制に至ったのかは明かされていない

*9 絆イベントを進める事で、戦争が起きる前はマルトが学校に通学していた事やカイルやジンの家庭環境が断片的に見えてくると言う設定面でのフォローは存在する

*10 2022年の公式生配信で『最もファンアートが描かれているキャラとして』挙げられている事から人気は高い事がうかがえる

*11 ニンテンドードリーム2022年10月号に記載

*12 現に子供達にはステータスの概念が存在せずに攻撃を受けると1発で倒れてしまう、戦闘を行えるのは蒸気銃のおかげ等、頷ける部分もある

*13 続編では「蒸気銃」と名称は使われずに「トイガン」で統一されている。

*14 一応擁護すると本作と『soratorobo』の時系列は大きく離れている為、モンスターの生態系等は大きく異なる可能性もあり、

*15 もっとも、白兵戦になれば必然的に銃火器や刃物などを使用する事になるため、子供達が圧倒的に不利かつCEROの対象年齢引き上げに繋がりかねない

*16 タイムリープ発動時は前作でも登場した『とある空間』(続編では深層域と表記)が映し出されるが、空間の詳細に関しては本作の時点は明らかになってない

*17 他にも彼の悪口を言った兵士が後日、変死体となって発見されたという噂が流れている

*18 幸い凶悪だったハクスの闇に堕ちるまでの経緯が上述したベルマンレポートで明かされており、やはり彼も一概に悪人だったと言う訳ではない事が分かる。

*19 とはいえ、フラムキッシュは生身でジンの父親を銃殺、ブルットヴルストはネコヒトの人体実験で直接的な殺害を行っているなど、プレイする度に解禁されるライブラリを読めば彼らも生身での殺傷力に長けた軍人である事が分かり、設定に関して掘り下げられている

*20 ナレーションによるとベルマン帝国の飛行船を奪って迎えに来たと言う事らしいのだが、あまりにも唐突な展開過ぎる上にベルマン軍との間に何が起きていたのかは一切説明がない。

*21 完全設定資料集206Pに記載

*22 なお、松山氏は「現在のゲーム業界が慢性的に抱えている大規模開発のジレンマで若手クリエイターが業界を去ることも少なくない」という問題もプロジェクト立ち上げの理由に挙げている

*23 ラジオの女の指南を受けないままプレッツェル戦に突入、ゲーム続編に関わるキャラクターの登場等々

*24 ちなみにサイバーコネクトツーは本作の約2ヶ月後に発売された『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』の開発元でもあり、境遇こそ大きく異なるが主人公が家族を奪われる、妹と共に復讐の旅に出る等、本作との共通点もある

*25 続編『2』の完成後の2023年4月3日に退社

*26 2017年5月に設立

*27 これに関してはブリッツ自身が物語のキーマンとなる本作の裏主人公と言うべき存在である為に、ネタバレ防止を含んだ措置だと思われる

*28 と言っても、こういった配布方法は少ないもののそれこそ同人ソフトや小規模なインディデベロッパー作品でも見受けられるケースが実際にある。

*29 番組が放送された段階では本作が正式発表前だった為、情報の公開を避けるのと同時に視聴者に分かりやすく説明する為の演出表現だった可能性が高く、本作の世界観自体も第二次世界大戦中がベースになっていると言う事は変わらない

*30 プロモーションを担当する事になった経緯はZENZO氏が本作をプレイした事が切っ掛けで二次創作活動を行う様になり、それが松山氏の目に止まったからと言うもの。