ダービースタリオン96

【だーびーすたりおんきゅうじゅうろく】

ジャンル シミュレーション
対応機種 スーパーファミコン
発売・開発元 アスキー
発売日 1996年3月15日
定価 12,800円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント ライバルや騎手が実名化しファンファーレは現実再現になった
パスワードでカセット間の交流が可能に
唯一のサテラビュー対応
「面白い配合」の登場
ダービースタリオンシリーズ


概要

1996年に発売した競馬シミュレーションゲーム「ダビスタシリーズ」の6作目(「全国版」を2作目とみなせば7作目)。
基本的なシステムは前作から引き継がれているため、本項では変更点のみにとどめるものとする。
ファミコン系ハードでは4作目だがゲームの地盤は完全に『III』ベースでマイナーチェンジのため『無印』→『全国版』同様と新しいナンバリング『IV』扱いにしていない(「3.5」のような位置付け)。
ゲームの根本は前作のマイナーチェンジだが実名化や後述の新機能の数々が高い評価を得ている。


変更点

  • レースプログラムが1996年準拠になった。
    • そのため展示室のGIレイを飾れる枠が3枚分増えた*1
      • これらはレベル自体は低い部類なので、GIが増えたとはいえ全GI制覇のハードルは上がっていない。むしろ後述のライバル馬が姿を消したことで下がっている。
  • レース中以外でもリセットを押すと翌週に飛ばされるようになった。
    • セリ市でのリセマラが若干しにくくなった。
    • 調教での故障「ちょっと脚を気にしながら走っているようです」「なんか様子が ヘンです・・・」が出たらリセットで簡単に帳消しにできなくなった。
      • セーブさえしなければできなくもないが他の馬の調教や予定していたレースを全てご破算にしなければならなくなるリスクがある。
  • 幼駒や自家生産の繁殖牝馬を売却するとパスワードが発行され、それを入れることでその馬がセリ市に登場する。
    • これによりタダではないが(どころか売却時の10倍の値)、カセット間で産駒をやり取りすることができるようになった。
    • 雑誌や攻略本などでは安くて強力な馬のパスワードが多数公開され、初心者を大いに救済した。現在もネット上で大量に公開されている。
    • 自分で入力することも可能なので、有力馬のクローンを作ることもできる。
    • しかし、この馬をブリーダーズカップに出すと母が「たぼくじょうせいさんば(他牧場生産馬)」という扱いになる。大会では禁止される場合が多い。通常のゲーム内では全く問題はない。
  • サテラビューにも対応し、その放送から来るデータを受信できる。
    • サテラビューは、サテラビュー本体に加えて衛星アンテナ、AVセレクタ、8Mメモリーパックといった設備や周辺機器が必要なことから当初から普及せず、次世代ハードが既に普及していたことや、購入箇所の少なさ、システムの複雑さなどから利用者数が伸びず終了した。ダビスタシリーズにおいては本作のみの機能である。
    • この関係上本作のロムカセットは8Mメモリーパック対応のために同じサテラビュー対応の「SDガンダム GNEXT」などと同じ大きな形状をしている*2
    • データ配信によって追加種牡馬をダウンロードすることができた。後にパスワードが公開されて単独でも利用可能になった。
    • 音声による解説と実況付きで公式大会が放送され、またそれに対してゲーム内通貨(本作ではなくサテラビューのシステム上)を賭けることができた。
  • リアルな要素が強まった。
    • 競走馬や騎手たちが全て実名になった。
      • 後述の続編では騎手は再びなまったものに戻されている。
      • 後に再び実名化されたものの、実名かつ似顔絵ありというのはシリーズでも本作のみの特徴である。
    • 更にファンファーレも実際の曲が取り入れられた。
      • ブリーダーズカップのファンファーレはGIのものが使われるが、北海道の2つは関東版のものが使われる。
  • 一部騎手のラインナップが変更。
    • 栗東の御屋敷(小屋敷昭)が塩村(塩村克己)に、武豊(前作では変名で「滝」)が先行から自在になった。
      • 塩村は1994年に秋の天皇賞をネーハイシーザーで勝ったことで若手の注目株となったが前作はそれから3ヶ月弱で発売されたことを考慮すると時期的に取り込めなかったので、本作まで持ち越されたのだろう。
    • 外国人騎手としてオリビエ・ペリエ、マイケル・ロバーツが追加。
      • ゲーム内では名字(ラストネーム)のみの表記。前作で「リサ」だったリサ・クロップも「クロップ」になった。
  • デビュー前であれば名前の変更が可能になった。
  • 初代から登場し続けたライバル馬の1985年生世代が引退。
    • アグリキャップ(オグリキャップ)、スーパークリック(スーパークリーク)、サクマチヨノオー(サクラチヨノオー)といった1988年クラシック世代(1985年生)がライバル馬から姿を消した。
      • 彼らをはじめ10頭はブリーダーズカップになまった名前のまま初期登録されている*3
      • ライバルとしてはいなくなったが、オグリキャップはシリーズでは初めて種牡馬として登場している。
  • 種付け時「ニックス」「インブリード」に続く第3要素「面白い配合」の追加。
    • 血統の多様性を評価したもので、いわゆる「異系の活力」的な概念をゲームで再現したもの。
    • 主な効果は勝負根性の強化と、スピード・スタミナの上限値の上昇。特にリスクはない上、後者の効果により特にニックスやインブリードとの併用で効果を発揮する。仕様を知らなければ非常に見つけにくいが、現実の名馬を再現した配合で発生しやすい。
    • これにより「インブリードをしないと強い馬が生産できない」という悪しき傾向をなくし純粋なアウトブリードでも可能性を広げている*4
      • これが告知されるのは「ニックス」「インブリード」非対象の場合のみだが、左記とダブっていた場合でも告知はされないが機能している(隠れ面白い配合)*5
      • 「面白い配合」については公式で仕様が明かされず、初期の攻略本でも未解明の要素として部分的に扱われるに留まっていた。ヘビーユーザー達がパソコン通信での情報交換を駆使して解明していった経緯がある。
  • 「危険な配合」のリスクが大幅強化。
    • それまでは50%以上のインブリード「危険な配合*6」の弊害は大きいとはいえその悪影響は気性と丈夫さのみだったが、勝負根性にも大きく影響を及ぼすようになった。
    • これにより、それをすると脚元が弱くて故障しやすく気性が悪いのに根性なしというダメ馬になりやすく、通称「ノアノア*7」のような外道配合の有効性が非常に薄くなった。
  • 前作で猛威を振るっていたナスルーラなどの「スピードダブルアップ」のインブリード効果がやや弱体化された。
  • 前作にあった馬体重ループのバグ技が封じられた。
    • データ上の処理限界の下限値(256kg)以外に、それぞれの馬に適正体重-100kg程度に左記とは別口の予備的な下限値が設けられ、これに達すると調教ならば必ず「なんか様子がヘンです・・・」と出て「屈ケン炎」「かなりの重症です」「なんとか命はとりとめましたが…」の故障が発生するようになった(「屈ケン炎」が圧倒的に多い)。
      • 坂路やプールならば上記のメッセージは出ないので対象外だがループさせようと思ったら週を送った場合のプラスで埋められてしまい、レースに出せば最低限レース後に故障発覚で上記いずれかになる。
      • そもそもどんな小柄な馬でも適正体重が300kg台になることはないので、300kg強の予備下限値から2回行っても4~8kgしか落とせない坂路やプールのみで256kgまで落とすこと自体不可能である。

評価点

  • すべてに亘ってリアル路線が強化。
    • 今まではなまっていた名前のせいもあって、マヌケな響きが付いて回ったが、それらが解消された。
    • ファンファーレも現実通りになり、競馬を知っている層からすれば現実とイメージをリンクさせやすくなった。
      • 2022年現在においても、現実のファンファーレを使用している競馬ゲームはダビスタシリーズのみである。
  • 産駒の名前を後から変更可能になった。
    • これにより売却値や入厩までのコメントを見て付け直せるようになった。現実でも産まれた直後に馬名登録をするわけではないので、これもリアル路線の一環と言える。
      • 今までは期待して付けたら気性難や根性なしだったりで即売り払ったり、走らせる気もなく即座に引退させたり、逆に片やハナから売り払うつもりで「アアイ」「アカ」*8などと雑に付ければ、それがまさかの高値が付いて、走らせてみれば強かったりとプレイヤーの意にそわない悲劇が多かったが、それが解消された。
        しかも売り払ったり無出走引退させても当分同じ名前が付けられないので、思い入れのある名前を再び使いたければ相当な時間をロスしなければならず、大いに不便だっただけに、それが解消できたのも大きい。
      • 逆にダメな馬を売り払う時に適当に付け直して売ることもできるのでより便利になった。
  • パスワードにより楽しみ方の幅が拡大。
    • ファミコン時代から忌み嫌われたパスワードだが本作では一転、好まれている一面が強い。
      • それというのも、ブリーダーズカップだけでなく、自身が生産した繁殖牝馬を売却時取っておくことでタダではないが後のプレーで再利用出来たり、アスキー自身が発行するものを入れることで本作では引退した過去作の種牡馬トウショウボーイ(1992年に死没したため「全国版」までの登場)や、持ち込みの種牡馬であるサドラーズウェルズやレインボークエストなどを利用出来たりと非常にその用途を広げている。
      • これらの追加種牡馬はサテラビューで先行配信された後、パスワードが公開された例が多い。
      • 無料で牧場を拡張したり資金を追加するといったお助けパスワードも用意されている。この方法は牧場名に依存したものではないためブリーダーズカップのパスワードは普通に発行される。
  • 競馬通をニヤリとさせる面白い配合。
    • これに多いのが実際の名馬同士なのが典型で、一例として「ミルラインレート(ミルレーサー)×サンデーサイレンス=フジキセキ」「フィガロ(マガロ)×サンデーサイレンス=タヤスツヨシ」等であり、競馬通にとっては嬉しい要素であり、これらは攻略書籍でも広く知れ渡った。
    • サンデーサイレンスはインブリードでは有効なのが少ないがマイナー血統が多いので面白い配合になりやすく、価値を高めている。
    • その一方でアンドレアモンのように、アウトブリードの面白い配合が成立しやすく面白いと言われやすいが底力Cのためロクに効果を発揮できないものもいるが、その辺りの判断もしやすい。
    • いずれにしても前作における「アウトブリード=ダメな配合」という現実にそぐわない悪しき設定がいくらか改善された。
      • 実際初期のチャンピオンホースは面白い配合とアウトブリードを駆使して生産されており、『III』における極端な多重インブリードに偏重した環境に慣れていた当時の多くのプレイヤーに少なからぬ衝撃を与えている。
  • 特例として登場のマチカネイワシミズ。
    • II』で登場した無料種牡馬マチカネイワシミズは1995年に種牡馬登録を抹消され用途変更になっていた。
      • そのため、本作では本来ならば登録から外されるはずだがシリーズ屈指の人気種牡馬だったため特例として登場している。
      • 現実ではともかく、ダビスタでは屈指の人気だったので粋な計らい。

賛否両論点

  • 1996年から中京競馬場の「高松宮杯」がGIになった影響でローテーションのスタイルが変わり森山、山藤厩舎の使い勝手が悪くなった。
    • それというもの6月1週になった高松宮杯に4歳馬でも出そうとするようになり(場合によっては5月4週の新GI「NHKマイルカップ」から連闘で)、キャンセルするとオークスや日本ダービーに使うことなくメトロポリタンステークスやエプソムカップに出そうとする。出したら出したで次は安田記念(又は金鯱賞)を目指す。また4歳秋も天皇賞(秋)に出してしまい菊花賞に出さないという悪癖を見せるようになった(牝馬の場合だと秋華賞には出す)。
      • このせいで、この両者のお任せに有力な馬を預けていると、オークス、日本ダービー、菊花賞、この3つのGIレイだけゼロで他ばっかりガンガンたまる異様な光景になる。そのため競馬をそれなりに知るビギナー層にとっての森山、山藤は「クラシックの価値がわからないクソ調教師」の汚名をほしいままにした。
      • 裏を返せば格の高いこの3レースは自分でなんとかしろということでもある。また美浦の藤枝、奥田はオークス、日本ダービー、菊花賞にも積極的なので選択の幅を広げたことになる。「森山・山藤が優秀」という言葉を鵜のみにした初心者は、GIレイの獲得は多くてもクラシックは皐月賞と桜花賞ばかり蓄積するという形になるので、ある意味で展示室はプレイヤーの質を見極められる指標としてより強いものになった。
    • しかし、山藤はともかく森山はクラシックを視野に入れないなら旧来通り充分使えるので、その価値は失われていないし、セン馬に拘るならば屈指の去勢大好きなのでうってつけ。
      • また、このために本来は地味なGIII「エプソムカップ」がダビスタプレイヤーの間でネタとして一躍有名になった。
  • アグリキャップらの引退で強力なライバル馬が少なくなった。
    • とはいえ新登場のナリタブライアンは三冠馬にふさわしい強さだし、比較的手薄だった牝馬GIにもヒシアマゾンという強力馬が登場し隙が無くなった。最強の逃げ馬であるミホノブルボンは安定した強さを見せ、海外に目を向ければラムタラが最強馬として君臨している。
      • これら強力馬とカチ合わなければ勝てる実感が得やすくなった。また上位騎手の騎乗依頼へのハードルが下がったことで有名騎手を乗せやすくなった。因みに上記ヒシアマゾンの主戦は中堅騎手の中館英二というのもプレイヤーにとって上位機種枠を圧迫しないので助かるプラス要素である。
    • 引退したとはいえブリーダーズカップにデフォルト登録されているので戦える機会がまったくなくなったわけではない。
  • 人気種牡馬の能力が下方修正。
    • シンボリルドルフの気性がBからCにダウン
      • 安定がAからBになった点も含めて産駒によりムラが出るようになり、上ブレによる大物が出る可能性が増し、逆に下ブレによるクズ馬が出るリスクも増した*9
      • つまり安定型はサンデーサイレンス、ノーザンテースト、リアルシャダイあたりが担い、対してルドルフはムラによる大物誕生に期待するようなタイプ(前々作でのトニービンのような位置付け)として差別化されたことになる。
      • しかし実際のルドルフはモガミやサッカーボーイといった気性が大いに難ありなものではなかった上に、そもそも『II』以前は気性Aだったというのも相まって非常に違和感がある。
    • トニービンの底力がAからBにダウン
      • 初年度産駒からウイニングチケット、ベガなど1993年のクラシックホースを輩出してきた人気種牡馬で、以後2年間はブライアンズタイムやサンデーサイレンスの台頭もあって多少霞んだイメージは否めないにせよノースフライトが1994年のマイルGIを連勝し、サクラチトセオーが1995年秋の天皇賞を制するなど*10産駒成績で申し分ないには違いなく、顕著な衰えを見せたわけでもないのに底力パワーダウンという明らかにマイナス評価がされているのは解せないものがある。
      • 登場順に比較すると、『II』(1300万)では気性B、底力A、安定Bで地味に荒れる魅力があったのだが『III』(1400万)では安定Aになった時点で少々評価は微妙になったものの、高い肌馬との相性が良くなった意味でまんざら悪くはなかった。しかし本作では肝心な底力のパワーダウンはいただけない。
      • なのに種付け料は1500万と高くなり、能力でも1400万のブライアンズタイムより劣る存在になってしまっているなど、いろいろ首をかしげたくなる。
    • もっとも、新種牡馬や新システムとの兼ね合いも含め、既存の種牡馬が下方修正含めたパラメータ調整をされるのは仕方ないことである。

問題点

  • 外道配合の荒業が封じられ、調教の馬体重ループも封じられたが新たなイカサマが誕生した。
    • それは、お任せ厩舎に預けておいて、月単位で飛ばしているとレースにも自動で出るのだが、そのレース中にリセットすると、再開時なんと同じ週から始まるので、再度同じレースが見られる
      • 騎手への指示が同じ(「任せる」「マーク」以外)なら全く同じ結果が出るので、先に上記の手段で着順掲示板を見てリセットすれば馬券の答えが最初から分かっているのと同じなので100%的中できてしまうのだ。ゲームとしては大いに問題である。
      • 武豊は人気が集まりやすいので、武豊を主戦としレースにガンガン使う「古窪厩舎」がまさにうってつけで、同時に武豊は戦法タイプが自在になったとはいえ実は逃げだけは苦手なので、自分の馬に武豊を乗せて人気を集めておいて逃げると負けやすくなり、波乱になりやすいという意味でも二重で美味しく、序盤は確定馬券目当てに「お任せ古窪」が続出した。
      • また、この方法はイカサマであっても特殊な牧場名で大金を所持したわけではないためブリーダーズカップのパスワードも問題なく発行される。
  • 種牡馬リストの最上位がサンデーサイレンスになっているのにライバル馬にその産駒がいない。
    • サンデーサイレンスは1991年から日本で種牡馬として起用され、1994年に初年度産駒がデビューし1995年は4歳(ジェニュインやタヤスツヨシなど)・3歳(バブルガムフェローなど)の二世代だけでリーディングサイアーを取ったことで一躍その名を轟かせたが、ゲームではその産駒はライバルとして全く出てこない。
      • ただ、シリーズの慣例からすると「発売2年前のクラシック世代」までがライバル馬の目安なので、登場しない事自体は不自然ではない。前作にもナリタブライアン等はいなかった。古馬としての活躍が未知数の馬は出しづらいのだろう*11
    • 上記の通り、スターホース目白押しな上にアグリキャップらがいなくなったのでその穴埋めとして起用しても良さそうなだけに残念なイメージが強い。彼らがいれば多少なりともライバル層が薄くなった手ぬるさをカバーできていたであろう。
  • 相変わらず危険な配合を止めてくれない牧場長。
    • 「うーん…これは危険な配合ですが…」と言いながら「わかりました。では種付けします。」と迷いもなくやってしまう。
      • これは前作まででも同じだが、リセットで簡単に回避できた。今作では強制的に週が送られてしまうことを踏まえると少々気が利かない。
      • 本作では「ノアノア」など危険な配合の有効性が薄れただけに、危険な自覚があるのならば「はい」「いいえ」の選択ぐらいはさせてもらいたい。
  • 中晩成馬
    • 晩成型の種牡馬をつけるとたまに生まれる新たな成長タイプの馬で、普通馬よりもやや晩成寄りなためこう呼ばれる。晩成寄りのくせにピークは早熟馬と同じというとんでもない成長タイプである。なぜこんな使い物にならないタイプを新設したのだろうか?
      • しかもピークが過ぎても告知されないのでなかなか気付きにくいのも難点。
    • 同じようにバグとしか思えない成長型は前作まででも出現したが、研究が進んだ本作だからこそ問題視された部分がある。

総評

根本的なシステムは前作をそのまま受け継ぎ、データを入れ替えたマイナーチェンジにすぎないが、リアル要素の充実もあって、それにとどまらないものになっている。
サテラビューこそ使える者が限られるが、パスワードによる配合の幅が広がっただけでなく、危険な配合の穴だった部分や、レース中以外でのリセットによるイカサマの防止もあり、より実力が試されやすいものになったと言えるだろう。
また批判的意見もあるが、オークス、ダービーとクラシックの最高峰に関しては他人任せでは取りにくくなったことで、まさに実力証明のようなレースとなった点はよりこのゲームの奥深さにつながっている。


その後の展開

  • 1997年7月17日にプレイステーションソフトとして初の『ダービースタリオン』が発売。
    • 全体的にモデルチェンジし、調教のマニュアル、オートが途中切り替えできるようになったり、セリ市が常時開催でなくなったりしている。
    • また自分の所有馬が種牡馬になった場合、旧来作では実質「引退時に乗馬としてタダで引き取られるかわりに種牡馬として買い手が付き成績に応じた売却金額分の金を残してくれる」だけだったが、この作品ではセリ市限定で、その産駒が出てくるようになった。相対的に幼駒のセリ市の価値も上げている。
    • 一方でライバル馬の実名はそのままでも、騎手がなまった名前に戻された残念な一面もある。
      • 『96』の時点で騎手会に無断での使用だったので問題視された。後に和解したのか、『ダービースタリオン64』以降は再び実名になっているが、得意戦法などの寸評はオミットされ、リーディングを基準に序列化しつつも明確なランク分けは避けられるようになった。
  • スーパーファミコンとしては1998年9月1日に『ダービースタリオン98』が発売。
    • 販売は任天堂。こちらは本作よりも『III』に近いマイナーチェンジ*12でスーパーファミコンではシリーズ最終作。種牡馬や繁殖牝馬はPS版と同様で、PS版の配合理論も採用され、パスワードもPS版と互換性がある。
    • ニンテンドウパワー専用ソフトのため、シリーズでもかなりマイナーな部類に入る*13
      • それでも当時の書き換えランキングでは高順位に位置しており(参考)、中古のSFメモリカセットにもこのタイトルが入っていることが多かったため、それなりに売れてはいたようである。
      • カセットに最初からデータを書き込んだ「プリライト版」も店頭予約取り寄せで販売された。限定販売にもかかわらずオークション等でよく見かけるあたり、こちらもけっこう売れていたようだ。
      • なお『ダビスタ98』は書き換え用カセットのうち、ゲームデータに32Mbit中24Mbit、セーブ領域には256kbit全てを使う。ゲームデータ残り8Mbitのうちゲーム選択メニューに4Mbitを使うため、ダビスタ98を消さずに追記できるソフトは4Mbitかつセーブ機能のないタイトルのみに限られた。
    • インブリードに関する重大なバグがあり、ゲームバランスがおかしくなっただけでなく、これまで培ってきた配合理論を根底からぶち壊すことになった。マイナー作品で被害者が少なかったのが不幸中の幸い。

余談

  • 説明書では騎手の名前が旧来通りなまったものになっているため「マイナーチェンジだから前作の画面を流用している」と思われがちだが実はそうではない。
    • 実際の前作のものなら栗東の最下位騎手が「御屋敷」のはずだが、説明書ではその枠が「潮村」と本作で新登場した「塩村」を変名したものになっている。
      • 恐らく当初は旧来通りなまった名前で行く予定で、だいぶ直前になって実名化に舵を切ったと思われる。
  • 前作や前々作にあったデモムービーがなくなり、非常にシンプルなタイトル画面になった。サテラビュー連動を意味する人工衛星が横切るくらいである。
  • 本作で騎手は実名になり「滝」が「武豊」になったが、現実では当時、武姓の騎手は他にいなかったため「武」のみの表記だった。
    • 翌1997年に実弟の武幸四郎がデビューしたため現実でもゲームと同様「武豊」表記になった*14
      • 幸四郎は「武豊の弟」として早くから注目株でデビューも近かったため、それを見越して取り入れたものと思われる*15
      • 以後のシリーズ作品では公式で実名に戻るまで武豊は「滝登」という表記になる。
  • ブリーダーズカップでの不正が横行
    • 当時は公式・非公式問わず様々な大会が行われていたが、馬の能力値をデータ改造した「改造馬」などを出場させたり、雑誌などで公開されていた他人の馬のパスワード*16で参加するモラルの無いプレイヤーによって、公式ブリーダーズカップの混乱は収まらなかった。
    • なお本作内で生産した馬に限らず、『II』や『III』、PC版『EX』のパスワードも読み込めるのだが、文字数によって区別できるようになっており、通常は96で生産された馬のみが参加可能であった。
  • 騎手が実名になり、リアルな競馬とイメージを重ねやすくなった一方で現実の競馬に疎い人は騎手の「岡(岡潤一郎)*17」を「岡部(岡部幸雄)」と見間違えたという事例が多々あった。
    • 岡潤一郎騎手は1988年デビューで栗東の安藤正敏厩舎所属。「ジューンペー」という愛称で親しまれ早くからその優れた才能を発揮して活躍し同年JRA賞最優秀新人賞に輝いた。1990年にはその才能を見込まれてオグリキャップにも騎乗したことあったほどで将来も有望だったが1993年1月、新馬戦での落馬事故により翌月若干24歳の若さでこの世を去った。
    • 前作では「丘」と「小田部」、それ以前では「おか(そのまま)」と「おたべ」と明らかに違う字だったのだが、実名化したことで同じ「岡」の字を持つようになり、また岡部は一番乗せたい騎手なので自ずと名前も頭に入り同時に「岡」の字についつい反応しやすくなる習性がついて、同じ「岡」を持つ岡騎手が一瞬「岡部」に見えてしまったようだ。
      • しかし、まんざら悪いことばかりではなく、当時は岡騎手の死去から既にまる3年が経過し、普段の競馬ニュースなどではすっかり取り上げられなくなったこともあり競馬ブームが波に乗った前作あたり(彼の死後)からゲームを通して競馬ファンになった者にとっては岡騎手の知名度は低かったので、これを機に岡騎手に興味を抱かせるきっかけにもなった。生存していればプレイヤー馬にも乗せることができたと思われる(引退した騎手はプレイヤー馬には基本乗せられない仕様)。
  • この年行われた第26回高松宮杯はスプリントGIになって初開催で前々年の三冠馬ナリタブライアン(当時旧表記で6歳)が出走して話題となった。
    • しかしいくら三冠馬で当時の現役馬の中では実績ナンバーワンとはいえ中長距離クラスの馬にとっては明らかに短すぎる距離で、そんな距離を得意とする生粋のスプリンター相手に戦うは不利と見られ*18、更に前走「天皇賞・春(3200m)」との距離の乖離が大きいことも不安視され1番人気は取れず(それでも2番人気)結果もやっとこの4着だった。そしてこれを最後に屈ケン炎を発症し引退に追い込まれたためラストランになった。
      • 実際に行われたのは5月、ゲーム発売は3月なので、そんな想定などできるはずもないためゲーム中では当然出てこない。よって本作中最も取りやすいGIである。
      • ナリタブライアン以外で実際に出走した面々のうちゲーム中でも登場する馬はビコーペガサスとフジノマッケンオーとドージマムテキがいるが、この3頭ともゲーム中の同レースでは出てこない。当該レースのライバルはサクラバクシンオーやヤマニンゼファーなど主に1990年代前半にスプリント~マイル戦線で活躍していた面々が顔をそろえている(厳密には95年までのCBC賞+ニシノフラワーなどG1クラスの馬)。なお95年までの高松宮杯は距離2000格GIIでそちらの出走馬は金鯱賞(96年からそれまでの距離1800格GIIIだったのが旧高松宮杯と同じ距離2000格GIIに昇格)で顔合わせる。
      • なお本作には厳密な意味での距離適性という概念がなく、長距離型の馬を短距離戦に出走させることで能力にデバフがかかるような仕様もないため、長距離で強い馬(スタミナがあって気性が落ち着いている)はスピードが足りていれば短距離でも強い仕様なので、仮に本作のナリタブライアンが高松宮杯に出たら強敵になっていたと思われる。
        これは実史通り出走してくるPS版で実感できる。実際勝ったフラワーパークより重い印奪って勝ってしまうケースも多い。
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最終更新:2024年03月09日 15:30

*1 4歳マイルGIのNHKマイルカップ、GIに昇格しスプリント戦になった高松宮杯、エリザベス女王杯が古馬にも開かれた関係で牝馬三冠の後釜となった秋華賞。

*2 スーパーゲームボーイに近い形状で、上部中央にメモリーパックの差し込み口がある

*3 1989年のジャパンカップを制した外国馬の「ホーリックス」のみ実名。

*4 現実ではインブリードは不受胎(種付料がパー)などのリスクを懸念する傾向が強く、少なくとも当時はリスクの低いアウトブリードの方が主流だった。

*5 一例としてキュービックムーン(ダンシングキィ)×サンデーサイレンスのダンスパートナー・ダンスインザダーク・ダンスインザムード三姉弟配合で、この場合ノーザンダンサー系とヘイルトゥリーズン系のニックスが成立しているので「なかなか面白い配合です」というコメントが出ない。

*6 血量50%以上で発生する危険な配合はクロス8本以上で発生する危険な配合と区別するために「超危険配合」と呼ばれることもある。

*7 ノーアテンション産駒の牝馬にまたノーアテンションを種付けした産駒。ノーアテンションはスーパークリークの父として有名。

*8 「アア」「アアアアアアアアア」等、同じ文字のみは却下される。

*9 実際この頃は初年度産駒トウカイテイオーに続く大物が出ず「安定して強い産駒を出す」とは言えなくなっていた。

*10 他には後の話だが1996年にオークスを制し、1997年には牝馬で初の2000m天皇賞を制したエアグルーヴも輩出している。

*11 凱旋門賞には1992年生まれのラムタラ等が登場するが、本作では海外馬は年齢固定なので特例的な措置と言える。

*12 サテラビューや牧場のポスト(データ取り込みパスワード機能)がないがファンファーレは本作同様に実際のものを使用している。

*13 「ニンテンドウパワー」とは1997年9月~2002年8月までローソンで行われたスーパーファミコンソフトの書換えサービス。書換え用カセットである「SFメモリカセット」を購入し、それにゲームを書き込むと言う方式(メモリ次第で複数タイトル入れることも可能)。サービス開始当時既にプレイステーションに世代交代していたので特に注目もされずカセットは購入時は空状態で、別途書換え料金が必要という割高なことも災いして普及しなかった。その後は任天堂サービスセンターに移行して2007年2月まで行われた。

*14 実は武豊がデビューした1987年当時は叔父の武永祥がいたため「武豊」表記で1993年に永祥が引退したため、このわずか4年弱の短い間だけ「武」だった。2017年に弟の幸四郎が豊に先んじて引退したことで再び武姓の騎手は豊1人のみとなったが、この時は本人が「武豊」の表記の継続使用を希望し、それが認められたため継続された。

*15 実際本作と似た立ち位置の『ウイニングポスト2プログラム'96』(光栄)でも旧来から収録されている武豊モデル「鷹匠」に加えてその弟設定で必然的に武幸四郎モデルとなる「鷹剛次郎」が史実より1年前倒しで登場している。

*16 PS版以降は馬自体のパスワードだけでなく本人証明用の識別コードが発行されるようになり、大会では識別コードが必須となった。パスワードと異なり識別コードは公開されない。

*17 お手馬はノーザンドライバーやリンデンリリー

*18 そもそも5歳春に故障して復帰した秋以降は大敗を繰り返し三冠制覇時の圧倒的な強さは見られなくなっていた。