雪のち、ふるるっ! ~ところにより、恋もよう~
【ゆきのち ふるるっ ところにより こいもよう】
ジャンル
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ひーりんぐ系ほっこり学園恋愛ADV
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対応機種
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Windows98~XP(パッケージ/DLsite) Windows7~10(FANZA)
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メディア
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DVD-ROM
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発売・開発元
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RUNE(ルーン)
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ディスクレス起動
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可能
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発売日
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2006年12月22日
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定価
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8,800円(税別)
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レーティング
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アダルトゲーム
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配信
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FANZA:2008年1月21日/4,054円 DLsite:2007年8月7日/4,054円
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判定
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なし
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ポイント
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低品質なシナリオとミニゲーム 棒読み声優陣 R-18面やキャラ萌え面で光る物は有り
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概要
「冬」と「妖精」をテーマにした、オーソドックスな恋愛ADV。
EDは5つ。選択肢により5人のヒロインいずれかと結ばれる。
RUNE作品には珍しく戦闘シーンがあり、戦闘時にはキーボードを使った音ゲーをプレイすることになる。
あらすじ
人間と妖精が共存する世界。
ほとんどの人間にとって妖精は見ることは出来ず、伝承等で耳にする程度の存在でしかなかったが
主人公「時沢一樹」は、雪の妖精のプリンセス「ふるる」と偶然キスをし、契約を交わしてしまう。
ふるるから父である「雪の王様」が行方不明になっていること、
それにより人間界にも危機が訪れつつあることを聞いた一樹とクラスメート達は「若草探偵団」を結成。
世界の危機を救う…という名目の、ご町内ドタバタ珍騒動が始まる。
キャラクター
主人公・ヒロイン
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時沢一樹(ときさわ かずき)
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主人公。新設校「若草学園」に通う、写真撮影が趣味の1年生。幼い頃に母を亡くしており、姉と父との3人暮らし。
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ふるると偶然キスによる契約を交わしたことから、彼女の目的に協力することになる。
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やや恋愛下手な面、ムッツリスケベな面があるものの、基本的には家族や仲間思いの優しい少年。
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ふるる
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雪の妖精のプリンセス。行方不明になった父を探す為、妖精界からやってきた。一樹と契約し、時沢家に居候することになる。
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非常に子どもっぽく、天真爛漫で無垢な性格。人間界の常識や羞恥心といったものがほぼ無く、躊躇なく男女で入浴しようとしたり、一樹とキスしたことを大勢の前で平気で話し始めたりする。
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一方、暴走した妖精と戦う際は非常に凛々しい表情に変わる。戦闘中にも敵意は滅多に表さず、「正気に戻った妖精が後悔しないように」という理由で戦うなど、非常に優しい性格。
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思ったことを何でも口に出してしまう性格と、意外な人間観察力の鋭さから、時に本質を突いた発言をし周囲をはっとさせる。
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雪の妖精らしく熱い所が苦手で、冷たい物や白い物・ふわふわした物が大好き。特にカキ氷が大好物で、冬の真っ最中でも平気で食べる。また、実は歌がとても上手い。
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河崎野々花(かわさき ののか)
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一樹のクラスメイトで、幼少期から家族ぐるみの付き合いをしていた幼馴染。若草探偵団は彼女の発案。
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元気の塊で、常に面白いネタを探しては「野々花ニュース!」と叫んで皆の前で発表したがる。
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甘い物に目がなく、有名ケーキ店のメニューを暗唱できる程。また自身も料理はかなり得意。
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一樹がムッツリスケベっぷりを発揮した時など、度々「野々花パンチ」という名の鉄拳制裁が飛んでくる。
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坂井恋夏(さかい こなつ)
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一樹のクラスメイトで、大人びた雰囲気のボクっ子。成績優秀、スポーツ万能、気配り上手というなかなかよく出来た人物だが、料理だけは大の苦手。野々花とは正反対の性格だが親友同士。
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ボーイッシュな見た目である為、女の子らしい服装が似合わないことを内心では気にしている。
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常に落ち着いているが、心ない発言やよからぬ言動をした相手には、口を人さし指で押さえるお仕置き「めっ」が発動する。
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鷹羽紗璃奈(たかばね さりな)
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一樹のクラスメイト、「おーほっほっほ」の笑い声が似合うお嬢様。恋夏を一方的にライバル視しており、ことあるごとに勝負を挑んでくる。
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元々都会で暮らしていた為、今の街での庶民的な暮らしにはなかなか慣れない様子。
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本当はとても優しい性格なのだが、思ったことを素直に言葉に出来ない性格の為誤解されやすい。典型的なツンデレ。
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若草なるみ(わかくさ なるみ)
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一樹のクラスメイトで、クラスの委員長。常に人の役に立つことを第一に考えている。本が好きなので、様々な知識が豊富。
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ふるるが来るまで隠していたが、実は人間ではなく若草学園の妖精。その為下校することはなく、校内に住んでいる。学園内に限り、様々な力を行使できる。
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結婚やウェディングドレスに憧れており、一旦妄想の世界に入ると帰ってこれない夢見がちな一面がある。また非常によく寝る。
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サブキャラクター
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雨宮光歩(あめみや みつほ)
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一樹のクラスメイト。掛け持ちしているバイトが忙しい為、若草探偵団には所属していない。
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非常に口が達者で、常に一樹をはじめとする若草探偵団のメンバーをからかっては煙に巻くトラブルメイカー。
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時沢奈美樹(ときさわ なみき)
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一樹の姉にして、一樹のクラスを受け持つ若草学園の教師。サバサバした性格の為、男子生徒から人気がある。
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結婚を間近に控えており、父と弟を残していくことを心配している。
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時沢重久(ときさわ しげひさ)
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一樹の父。物静かな優しい性格。若くして逝ってしまった妻の分、子ども達を幸せにしようと尽力してきた。
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工藤晋太郎(くどう しんたろう)
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若草学園の教師で、奈美樹の婚約者。奈美樹とは深い信頼関係で結ばれている。
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花水木るあ(はなみずき るあ)
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奈美樹が結婚式を挙げる予定の、教会の娘。極度の人見知りだが、一旦打ち解けると子どもらしい素直な一面を見せる。お菓子作りが得意。
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花水木英治(はなみずき えいじ)
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るあの祖父で、若草学園の理事長でもある。本来人間には見えないタイプの妖精も見ることが出来る。
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雪の王様(ゆきのおうさま)
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ふるるの父。本来はいかつい容姿だが、地上のトラブル解決の為に力を使い果たし、小さな雪だるまの姿になっている。酒に目が無い。
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彼の持つ4つの「雪の結晶」が失われたことで、人間界にさらなる異変が起こり始める。
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評価点
魅力あるキャラクター描写
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ふるるの純粋無垢な可愛らしさ、野々花の友達以上恋人未満な距離感、恋夏の意外に女の子らしい一面など、ヒロイン達の魅力が存分に描写されている。
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各ヒロインの個別ルートでも他のヒロインが空気化せず、キャラクターを上手く活かしている。
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例えば、ふるる以外のルートではふるるは主人公と結ばれず終わるが、最後に密かに想いを寄せていたとも取れるような描写がある。他のヒロインのルートを巡ることで、キャラの意外な顔が見えてくる。
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サブキャラクターにも魅力がある。特にるあは、RUNE恒例のロリ枠でありながら攻略できないことを嘆く声も多い。
より洗練されたグラフィック
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前作「思春期」で塗りの変化などにより賛否両論となった野々原幹氏のイラストだが、今回はより万人受けする描き方になった。塗りやディテールの書き込みなどのクオリティも上がっており概ね好評。過去の氏の作品と比べても、正当進化を遂げたと言って良いだろう。
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「立ち絵と一枚絵でキャラの顔の印象が違う」というのはRUNE作品に限らずよくあることだが、今作はほとんどの一枚絵がキャラのイメージを崩しておらず、統一感のある仕上がりになっている。
幻想的な世界観
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12月~1月頃を舞台としている点と妖精の存在が、日常と非日常を融合させ、学園物でありながらファンタジックな世界観を生み出している。
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特にふるるが歌うシーンやふるるが妖精界に帰るシーンは、BGMも相まって非常に幻想的で美しい。
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ふるるが時折口にする妖精言語や、人間らしからぬ独特な服装も、ファンタジー感を強調している。
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基本的に悪人が出てこないので、作品全体として優しい空気観がある。
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KIRIKOが歌う主題歌「雪のワルツ」も、癒し系の良曲で世界観形成に一役買っている。
ニッチなR-18シチュ
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「半強制的に女性に変身させられ、クラスメイトの身体検査をする」などの、ピンポイントな所を突いたフェティッシュなシチュエーションがいくつかある。
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これらのシーンは一枚絵もかなり気合いが入っており、実用性もある。
問題点
シナリオ関連
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シナリオ全土に渡って整合性が危うすぎる
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キャラクター設定や、前後の話を無視した支離滅裂な展開がかなり目立つ。
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男女の性差さえ意識していなかったふるるが、性行為の意味ややり方をさも当然のように知っている。
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一樹への恋心が芽生え、一緒の入浴を恥ずかしがり始めたふるるが、次のエピソードでは何の躊躇いもなく(一樹を変身させた上で)一緒に女湯に入ろうとする。
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序盤で「料理が得意」と明言され実績も示した野々花が、個別ルートに入った途端に一樹から料理の腕を疑われる。
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両想いになっていつの間にか下の名前で呼び合っていた一樹となるみが、突然名字呼びに戻ったかと思うと「これからは名前で呼んでください」という発言が飛び出す。
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キャラクター間の呼び方や、口調も誤っていることがある。
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野々花は一樹を「カズ君」と愛称で呼ぶはずだが、ふるると間違えたのか「かずき」と平仮名で呼び捨てにする場面がある。ボイスもその通りに読んでいる。声優からツッコミは入らなかったのだろうか。
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なるみが突然、ふるるの「~なのです」という口癖を使い始めるシーンがある。当然、それに対する理由付けなどは存在しない。
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ほぼバグの類だが、立ち絵の表示ミスも何箇所かある。
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基本的なキャラクター設定や舌の根も乾かないレベルの展開さえこの有様で、本作は複数のシナリオライターを起用しているが「ライター間で全く打ち合わせをしていないのでは無いか?」「デバッグ作業をまともにしていないのでは?」と思わざるをえない。
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投げっぱなしな根幹設定
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「人間と妖精が共存する」という世界観だが、あまりにも練り込み不足。
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そもそも妖精とは何なのか、どのような役割を担うのか…という基本中の基本レベルの事さえほとんど描かれない。
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精々学園の妖精であるなるみが「学園の見回りをしている」といったことが描かれる程度。雪の妖精や水の妖精が普段何をしているのか…といったことは一切明かされない。
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そもそも台詞のある妖精がふるる・ふるるの父・なるみの3名のみ。あとは敵として戦う狂った4大元素の妖精や、モブとして視認できない妖精(台詞なし)が出てくる程度なので、最後まで「妖精」という存在に対して具体的なイメージが湧かない。
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ファンタジーな舞台設定を用意したのは良いが、それを活かしているとは言い難い。
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ふるるルートのネタバレ
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「一樹の母は実は妖精」「人間と結ばれた妖精は不幸になるという伝承がある」という設定があるが、こちらはさらに説明不足。
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「重久と結婚したことで、母は不幸(=早世)になった。自分もふるると結ばれるべきではないのではないか」とふるるルートでの一樹は思い悩むが、そもそも母が亡くなった経緯が不明なので感情移入出来ない。
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「事故死」「火災で死んだ」「命を賭けて子ども達を守って死んだ」などの情報が得られるが、どれも断片的な上に一貫しておらずそこから推察する事もかなわない。
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おまけに一部の情報は、他のヒロインのルートをやらないと知り得ない。
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これに関しては「シナリオライターも考えていない」という説が濃厚。話の根幹に関わる部分の設定を煮詰めない時点で、シナリオゲーとしては失格である。
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スーパー銭湯イベントの不快さ
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かいつまんで言うと「スーパー銭湯の女湯に雪の結晶の反応があった。中に暴走した妖精もいる可能性があるが、ふるるは契約した一樹がいないと戦えない。その為、ふるる父の提案で無理矢理一樹を奈美樹に変身させ、一緒に女湯に入る」というもの。
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結晶の回収には成功するが、当然バレて一樹は女湯にいた野々花達にボコボコにされる。彼は無理やり戦いに巻き込まれただけで好き好んで女湯に赴いた訳ではないというのにこの仕打ちであり、定番のオチとして受け流すことも出来ず胸糞イベントと化している。
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先に女湯にいる人に説明するなり、危なくなったら後から一樹を呼ぶなり、いくらでも穏便に済ませる方法はあったはず。なのにわざわざ事態を最悪にかき乱す方向に展開を持っていく必要性は無い。
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事の発端となったふるる父も、ちゃっかり女湯に潜入して覗きをしているので尚更胸糞感が強まる。彼だけが鉄拳制裁を受けるオチならまだ笑いどころとして捉えらたのだが…
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一応、上記のような「穏便に済ませる方法」を提案せず、ふるる父の口車に流されて「変装して混浴」という手段を採ったことを、一樹が鉄拳制裁を受けた理由として解釈できなくはない。確かに奈美樹の姿へ変身させられたのは無理矢理だが、強い意志があればその状態でも女湯への侵入を断固拒否することは出来たはずである。
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身体検査イベントも似たような内容ではあるが、発案したのがふるるである点、バレたのが攻略中のヒロイン1人のみである点などからそこまで胸糞展開にはならない。
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緊張感の無さ
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ふるる父が雪の結晶を紛失したせいで世界規模での異常気象が起こっているのだが、とてもそんな緊急事態とは思えない程ののんびりした展開が続く。
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冬休み中はほとんど家から出ずに寝正月。休み中にやったことといえば、初日の出鑑賞会・初詣・攻略中のヒロインの個別イベント1つ。どれも本筋には一切関わらない。
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そもそも結晶を見つける展開のほとんどが「トラブルが起こっているという情報を得て現場に行ってみたら、発狂した妖精がいて結晶を持っていた」というもの。完全に後手に回っている上に行きあたりばったりである。死傷者が出ていたらどうするつもりだったのか。
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日常パートも必要だろうが状況が状況だけに、もう少し結晶を探そうとする努力くらいは見せて欲しかったものである。
ミニゲーム(音ゲー)のつまらなさ
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正しく入力しても何のエフェクトも発生しない為、上手くいったのかわかり辛い上に爽快感も皆無。音ゲーとしてのクオリティは著しく低い。
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難易度も極端。「標準」にすると初見ではほぼクリア不可な鬼畜ゲーになる。逆に「簡単」だと今度は負ける方が難しいヌルさに。
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なお難易度を上げても、自己満足以外のメリットは一切ない。
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パッチを当てないと、周回時に一度クリアした音ゲーをスキップ出来ない。周回前提のエロゲーでこれは無い。
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新しいことをやろうとしたのは良いが、完全に失敗している。
声優関連
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なるみ・光歩・奈美樹の声優はかなり棒読み。特に奈美樹は声質も年上キャラに合っていない上、出番もかなりあり聞く機会も多いので苦痛。
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ふるる役のサトウユキ氏、野々花役の緒方りさ氏など好演をしてくれているキャストもいるが、その分拙い演技の声優とのギャップが際立つ。
総評
キャラクターは可愛らしく、ビジュアル面でも進化は見て取れる。
しかしRUNEの売りの1つであったシナリオ面の著しい劣化、余計なアクが強い展開やキャラクターなどにより、大きく評価を落とした。
シナリオ本筋の整合性もかなりあやふやで盛り上がりどころもあまり活かせていないので、シナリオ面への期待はしない方が良い。
ストーリーはどうでも良くキャラの表面的な萌え要素だけを楽しみたいという人、R-18シチュに惹かれた人、
あるいは野々原幹氏やサトウユキ氏の大ファンという人以外にはオススメはしづらい。
余談
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商業エロゲーにおいて、ミニゲームレベルですら音ゲーは希少である。
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他は『カスタムオーダーメイド3D2』『ぱらだいすお~しゃん』などでミニゲームが採用されているくらいである。
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ノベルゲームの括りであれば工画堂スタジオの『シンフォニック=レイン』などが存在する。
最終更新:2023年11月14日 22:10