ヴェルヌワールド

【ゔぇるぬわーるど】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 20MbitROMカートリッジ
発売元 バンプレスト
開発元 デュアル
発売日 1995年9月29日
定価 11,800円(税別)
セーブデータ 3個(バッテリーバックアップ)
判定 良作
ポイント ヴェルヌ作品題材のテーマパークが舞台
一本道ストーリーだが内容は熱い
戦闘バランス・ストーリー行動面に難あり


概要

バンプレストから発売されたRPG。
キャラクターデザインはアニメーターの福田道生氏、メカデザインは大御所である大河原邦男氏。

ジュール・ヴェルヌ*1は「SFの父」と称される有名な作家である。代表作は『海底二万哩』『十五少年漂流記』『八十日間世界一周』など。

ストーリー

本作の時代は西暦2028年8月。ヴェルヌの生誕200年を記念してどこかの海上に作られたロボットテーマパーク「ヴェルヌワールド(以下、VW*2と表記)」のプレオープンが行われた。
主人公は両親と弟のケイとともに招待され、ガールフレンドのアイも来るとの事で楽しい旅行になるはずだった。
だが、突如として両親ら大人たちが姿を消し、多くのロボットが暴走、パーク外の往来を遮断される異変に巻き込まれる。
難を逃れた主人公と弟は他の無事な少年少女たちと合流、状況を打開するためにパーク内の調査を開始する。

特徴

  • 個性豊かな登場人物達
    • 主人公一家の他にも世界各国からも色々な人たちがVWに招待されていたが、彼らもまたVWに閉じ込められてしまう。
      彼らは共に力を合わせて『十五少年漂流記』のように難局を乗り切っていく。
+ 仲間キャラクター紹介
主人公(名称変更可能(7文字まで)。デフォルトネームはYOU)
  • 14歳の日本人。ノーチラス号に乗るのを楽しみにしていた。剣道部副主将で剣道の技で戦う。
アイ(名称変更可能(7文字まで))
  • アメリカに留学している14歳の日本人で主人公のガールフレンド。女子野球部のキャプテンでバットとボールで戦う。
ケイ
  • 主人公の弟で10歳。パチンコと弓が得意でそれぞれ別の必殺技を使える。
  • 落ち着きがなく、勝手に単独行動をとったりする事も。
エマ
  • 11歳のフランス人。コンピュータが得意の車椅子のお嬢様。
  • 持ち運びパソコンを携帯しており、自身が観覧車に取り残された際はパソコンによる通信でその旨を伝えて来た。
ニコライ
  • 16歳のロシア人。ボクシングで戦う純朴な最年長。
クリス
  • 14歳のアメリカ人。医療ソーシャルワーカーでエマの付添い人の黒人少女。斜に構えた性格でバスケットボールで戦う。
デビッド
  • 14歳のイギリス人。ひねくれ者でクリスとは似たもの同士。ラガーマンでタックルやボールで戦う。
シャオリン
  • 13歳の中国人の少女。中国拳法の使い手で料理が得意。
ソム
  • 12歳のインド人。メカ好きで機械いじりが得意。エマよろしくパソコンにも強い。

テーマパーク「ヴェルヌワールド」について

  • VWは、ヴェルヌが描いた19世紀の夢を21世紀の科学で作り上げた、洋上のロボットテーマパークである。
  • VWの玄関口でもある中央島を中心とし、その周囲6方向にチェアマン島、地底島、飛空島、宇宙島、戦場島、海底島、以上7つの島で構成されている。
+ 各島の詳細
  • 「中央島」(八十日間世界一周)
    • 1872年、英国貴族フォッグの物語。八十日間で世界一周ができるかどうか、革新倶楽部の仲間たちと賭けをする。忠実な部下のパスパルトゥーとともにロンドンを後にした。インドで囚われの王妃を救う他、横浜、シスコ、NYと旅を続ける。
    • ホストロボットは、フォッグ、パスパルトゥー、アウーダ、フィックス、バンズビー、フランツ、歌姫ステラ、悪役ロドルフ。
    • サブテーマ「世界」に則って世界を表現しており、ヨーロッパ、インド、中国、日本、サンフランシスコ、ニューヨークの6つのエリアで構成され、主人公のフォッグ氏同様、革新クラブをスタートし専用カートで一周、異国情緒を楽しみながら八十日間世界一周の物語を体験できる。
    • ヨーロッパエリアにはヴェルヌの怪奇小説「カルパチアの城」を題材にしたアトラクションが設置されている。
    • 島の中心部にはサービスセンター「ポーラステーション*3」が設置。TV電話が実装された通信モニターで館内呼び出しを行ったり、負傷者用の医務室もある。
      中央にはエレベーターがあり、2階は他の6つの島へ向かうための気送列車駅が設置。屋上はテーマパークを一望できる展望台がある*4
  • 「チェアマン島」(十五少年漂流記)
    • 1860年、オークランドのチェアマン学園に通う少年たちは夏休みの旅行にスラウギ号で意図せぬ形で海へ出てしまう。嵐にもまれた船は無人島に漂着し少年たちの冒険が始まる。
    • ホストロボットは、ケイト、エバンス、ウォルストン。
    • 専用スクーナー船「スラウギ号」で出発。サブテーマ「自然」に則って、無人島に流れ着いた少年たちになりきってサバイバルを楽しむアトラクション島。
  • 「地底島」(地底探検)
    • 鉱物学の世界的権威、リデンブロック教授と、その甥(おい)アクセルは、16世紀、アイスランドの錬金術師、アルネ・アクネッセンムが残した秘密文書を解読。二人は案内人ハンスと共に、死火山の噴火口から、地球の中心部へ向かう。
    • ホストロボットは、リデンブロック教授、ハンス、アクセル。
    • 地底戦車に乗って恐竜の住む地底を探検。サブテーマ「生物」に則って恐竜を21世紀に再現したバイオテクノロジーを見学できる。
  • 「飛空島」(気球に乗って五週間)
    • 主人公で冒険家の「サミュエル・ファーガソン」。気球を作り上げアフリカ大陸へ旅立つ話。ホストロボットはサミュエル。
    • 大空への憧れをテーマに航空博物館、屋外展示場で飛行機の歴史を見ることができる。
    • 水の力で上空300メートルに浮かぶ「空中スタジアム」ではサブテーマは「健康」に則ってスポーツイベントを楽しめる。
      スタジアムへの送迎はサミュエルの飛行船「巨人号」によって行われる。
    • 空の玄関口でもあり、島の西部にはエアポートが設置されている。
  • 「宇宙島」(月世界へ行く)
    • 元、砲兵隊のメンバーで結成された大砲倶楽部は地上から月に砲弾を打ち込み、メンバー達を月に送る事業に取り組んでいた。しかし、行く手には軌道の狂い、流星衝突、酸素欠乏などの事態が待ち受けていた。
    • ホストロボットは、バービケーン、ニコール、ミシェル。
    • 砲弾に乗り込み、コロンビヤード砲コースターの強烈な力で月面に到達。
      月面ではサブテーマ「技術」に則って無重力コースターを体験したり、テーマパークを支えるロボットファクトリーを見学できる。
  • 「戦場島」(悪魔の発明)
    • 偉大な発明家トマ・ロック博士のロック式電光弾は恐怖の発明だった。爆弾と博士の身柄が悪漢ケル・カラージュに奪われてしまい、大西洋諸国の連合艦隊がカラージュの基地バックカップに進撃を開始。悪魔の発明ツアーのスタート地点は砂漠エリアのヘルスフルハウス。そこでロック博士がさらわれるところから話が始まる。
    • ホストロボットは、ロック博士、シモン、ケル・カラージュ。
    • サブテーマ「平和」に則って原始から現代、そして起こりうる未来の戦争を再現した「戦史トンネル」で人類の戦争の歴史を体験できる。
  • 「海底島」(海底二万哩)
    • 1860年代、各地の海で謎の怪獣が目撃が相次ぐ。事態を重く見たアロナックス教授とモリ打ちのネッドらが調査を開始。怪獣の正体は、ネモ船長の操るスーパー戦艦ノーチラス号だったのだ。意気投合した彼らはネモ船長と共に驚異の旅を経験する。海底の宝物、強烈な大うずまき、海底生物、謎の大戦艦……。
    • ホストロボットは、ネモ、アロナックス、ネッド。
    • サブテーマ「生命」に則ってネモ船長と一緒に潜水艦ノーチラス号で海底を探検。大ダコや謎の巨大戦艦と戦う最大の人気アトラクション。
  • ホストロボット
    • ショップの売り子や警備員といったテーマパークの従業員はそのほぼ全てがロボットである。敵として登場するモンスターの大半も異変で暴走したロボットである。
    • 各島では原作にちなんだ登場人物をモチーフにしたホストロボットが出迎えており、来場者に対して色々なメッセージを発信している。
      • ロボットと言うとただのルーチンワークと思うがそこは2028年が舞台。学習機能を有しており本物の人間のようにふるまう事が出来る。そしてメタな発言も沢山言う
    • 原則としてそのエリアから出る事は出来ないように設定されている。それは話のイメージを壊さないようにという考えからである。
    • 事件発生後は大半のロボットがおかしくなってしまう。ただストーリーをプログラムされたホストはイメージが優先されるためおかしくなったりはせずに、特に主役クラスは特別高度なプログラムで動いており主人公たちの助けになってくれる。
      • 悪役のホスト達は逆にそれを増幅されて本格的に牙を剥いてくるようになってしまっている。

システム

  • テーマパークが舞台の本作はフィールドマップが存在しない。
    • 舞台の都合上、ショップや自販機がダンジョン内でも設置され*5、宿屋の役割はレストランでの食事になっている。
  • 戦闘はサイドビュー方式のターン制。パーティーは最大で5人。
    • 各キャラはスポーツ系の得意武器で戦う。GPを消費して各キャラ固有の必殺技を繰り出すことができ、レベルアップによって新技を習得する。
      • 主人公のみのコマンドに仲間全員で1体に集中攻撃する「いっせい」、前ターンの行動をリピートする「マクロ」、戦闘からの逃走がある。
    • パーティーは前衛3人・後衛2人に並びを振り分けられる。前衛と後衛で攻撃倍率が変化し、攻撃方法自体が変化するキャラもいる。
    • ストーリーの進行によってホストロボット達がNPCとして戦闘に参加する。特定の行動や状況に応じてパーティーを援護してくれる。
  • EPとT-W(テクニカルウェポン)
    • 最序盤でバッテリーカードをもらった後は、倒した敵に応じて通貨兼エネルギー源のEPが得られるようになる。
    • T-WはEPを消費して使う攻撃・回復・補助といった他RPGでの魔法の役割を持つ。メニュー画面で各キャラごとに装備して使う。
      • T-Wは効果範囲を単体・横列・縦列・全体(味方がけの物は単体と全体のみ)に指定することができ、それにより消費するEPも増減する。
    • 仲間や後述のライドへのEPの補充はメニュー画面からいつでも行える。補充したEPを戻すことも可能。
  • 防具は頭・体・腕・足の4種類。格闘技で戦うキャラは防具が武器と兼用になっている。
    • 特定のキャラ専用の防具には「セット効果」が存在し、特定の組み合わせで装備するとステータスが上昇する。
      • セット効果の有無はアイテムコマンドの「みる」で確認できる。また、効果が発動すると防具名が緑色で表示される。
  • ライド(乗り物)による戦闘
    • ストーリー中、生身の人間が入り込めない特定の区間をライドで走破・戦闘を行う場面がある。
    • 戦闘は単独だが、HPとEPは生身の人間より高い。通常攻撃は全体攻撃の「ファイア」と単体の「アタック」があり、T-Wと同じくEPを使用する特殊攻撃がある。
    • HPの回復は専用のアイテムで行う。ステータスは固定で経験値は搭乗している仲間全員に加算される。
  • ゲーム中はどこでもセーブが可能。全滅したらゲームオーバーでセーブデータから再開となる。

評価点

世界観・ストーリー

  • 魅力的な舞台設定。
    • VWは数々のヴェルヌ作品を独自解釈も交えて再現し、多くのホストロボット達がそれを彩るテーマパークとして昇華されている。
      • 各島のショップにはその場所に合った名前が一つ一つ付けられており、レストランではその場所や作品ゆかりの食事が提供される。展示品に対する解説文といった小ネタも多く、作り込みは妥協を知らない。
      • 説明書の前半部が同テーマパークのパンフレットを模したものになっており、ゲーム外でも魅力を伝えようとする姿勢が感じられる。
    • 細かい所での粗もあるが、「現実に実現してほしい」「(異変が起こらなければ)行ってみたい」と思わせるようなテーマパークの作りは見事と言えるだろう。
    • ただし独自解釈要素に対する賛否がある部分も多い。詳しくは賛否両論点にて。
  • 一本道であるが洗練されたシナリオ。
    • オープニングでの煌びやかな歓迎からの異変発生を期に、紆余曲折を経てダンジョンをクリアしたり、新しい仲間と出会ったりしながら事件の真相が浮かび上がっていくようになっている。
    • 国籍の異なる主人公ら少年少女は時には反目・失敗しながらも成長し、力を合わせ難局に立ち向かっていく。このジュブナイル劇は「十五少年漂流記」オマージュとも言える熱い内容。
    • 悲劇を演じ続けることに苦悩する、夢と冒険の大切さを説くなど、時に人間以上に人間らしく振舞うホストロボットたちが作中で魅力的に描かれており、所謂「AI・アンドロイドもの作品」の要素も含まれている。
    • 外界から隔絶された閉鎖空間でのサスペンス要素も混在。物語の節々で黒幕が暗躍、事態を引っ掻き回して緊迫感を煽ってくる。
    • 物語終盤はホストロボットたちが各原作の枠組みを越えて協力するというヴェルヌ作品のクロスオーバーも展開される。
    • これらの要素は決して最初から多くを押し付けられるようなことがなく、徐々に慣れて行けるようになっている。

グラフィック・演出

  • マップグラフィックは緻密に作り込まれており使い回し感はほとんど無い。
  • キャラクター達の歩行ドットグラフィックも戦闘やイベントで色々な仕草を見せてくれる。
  • 主人公や仲間キャラ、多くのホストロボット達に顔グラフィックが用意されており、会話の際には分かり易く見栄えが良い。
  • 登場するモンスターのグラフィックは各島にマッチしたものが多い。
    • 複数のクリエイターがデザインに参加しており、多様性が現れている。
  • 戦闘画面の背景が豊富。概ね戦っている場所に忠実なグラフィックが表示される。
    • メニュー画面の背景にも今いる場所の戦闘画面の背景が使われる。戦闘が全く発生しない場所の背景までも用意されている。
  • 回転拡大縮小機能の活用。
    • 本作でもSFCの機能を引き出しており、あらゆるところで色々な演出が用意されている。
      • 例えば、ゆらぎ。電送機でカルパチオ城を電送させる際の演出、海底では地形が揺らいで見える表現などがあり、他作でありがちな単なるゆらぎではなくより複雑な使われ方をして見栄えを引き立てる。
  • 音楽面に関しては所謂「キャッチー曲」は少なく、BGMに徹している曲が多いのだが、クオリティ自体は標準以上で場面にマッチした曲が多く使われている。
    • ストーリー面での「AI・アンドロイドもの」を意識したのか、戦闘曲や店の曲などに電子音めいたメロディが使われている。
    • 作曲は『忍者龍剣伝II』、『ソロモンの鍵2』などを手掛けた元テクモの新田竜一氏が担当。
      メモリスペースを節約するために音楽データをできるだけ圧縮するよう依頼され、難しい作業だったということを後年のインタビューで述懐している。(ソース(英文))

ゲーム性

  • 操作性・UIは当時のRPGの標準以上のものを搭載している。
    • Bボタン押しっぱなしでのダッシュ機能あり。
    • 各地のエレベーターで行先を選ぶ際は最上階から最下層まで並んで表示、現在地を選んだ際はすぐに降りるようになっていて快適。
    • アイテムの整頓機能やイベントアイテムの別枠表示、「みる」コマンドで武器防具、T-Wなどの性能の詳細な表示が可能。
    • 戦闘では「マクロ」による前ターン入力コマンドのリピート*6、LRボタン同時押しによる逃走ショートカットがある。
  • 仲間加入時のレベルの扱い
    • 新しく加わったり再加入する際は主人公たちに合わせてレベルが上がっているので戦力外になるという事がない。
    • 仲間が離脱する際は補充したEPを戻して行ってくれるので無駄にならない。

賛否両論点

  • ギミックの類はない
    • ダンジョンの複雑さと敵の強さは厳しいものの、パズル要素のギミックは一切出て来ない。
    • アクション要素もなく、難しい操作などが要求される事はない。
  • 良く言えば豪快、悪く言えば大味な数字のやりとり。
    • 本作のパーティーキャラの多くは最大HPがレベル1の時点で500~600台であり、レベルアップでも同じ数値分上昇する*7。そのためゲームの早い段階で最大HPが5桁台に到達する。
    • それに応じて敵(特にボス)が与えてくるダメージも加速度的に上昇するため、自ずと戦闘で4桁~5桁のダメージが飛び交うことになる。これを豪快と取るか大味と取るかはプレイヤー次第だろう。
    • 獲得経験値も最初は1桁だが、終盤では一回のザコ戦で手に入る経験値がそれまで数万だったものがいっきに数十万、ラストダンジョンでは数百万と飛び級的に増えていく。これは事実上のレベルキャップとして機能している。
      その為本作では普通にプレイしてもレベルが最大になりやすくなっている*8
    • EPも戦闘でT-Wを運用していくゲーム性の都合上、多めに手に入る*9ようになっており、通常の買い物で金欠になることは少ない。
      HPやGPの回復アイテムは安価で購入できるため、それらのアイテムを大量に所持するのが前提のゲームバランスになっている節がある。
  • ゲームバランスを崩すアイテムの存在。
    • 「なぞのじゅうじか」という使うと数ターンの間敵の特殊攻撃を無効化するアイテムが存在するが、ボスにも通用するため定期的に使うことでボスをほぼ無力化できてしまう。
    • このアイテムをドロップする敵が序盤から登場するため、その気になれば大量に用意することも可能。ダンジョンの宝箱でいくつか手に入り、ラストダンジョンの敵も落とすため救済措置とも取れる。
  • 独自解釈が多く、ヴェルヌ作品の世界観を忠実に再現したゲームではない。
    • テーマパークが舞台でありエンターテイメント性を重視したためか、本作は原作改変要素が多くなっている。
      • たとえば地底島(地底探検)では登場人物のハンスが地底戦車に変形する*10。飛空島(気球に乗って五週間)は飛行機の歴史の展示やサブテーマに沿った空中スタジアムなど、原作要素自体がほとんどない。
      • 最序盤のボスに「キングコング」が登場するなどヴェルヌ作品とは関係のない要素*11もある。
    • 文学作家を題材にしたゲームでは、作家性や原作の雰囲気を尊重した同ハードの『イーハトーヴォ物語』とは別の方向性と言える。

問題点

戦闘バランスについて

  • ザコ敵が全体的にタフで、1戦闘に時間がかかりやすい。
    • パーティー全員がその時覚えている最も強い必殺技を使用しても1ターンで倒せないことが大半で、しかも体感レベルで攻撃回避率が高い。
      • 敵が攻撃を回避するエフェクトが長めで、その頻度もあって鬱陶しく感じやすい。
      • 1体の敵に通常攻撃を集中させる「いっせい」のコマンドも用意されているが、元が通常攻撃なのでまともな火力が出ない。
    • 必中のT-Wは多用するとEPの消費が激しく、結果的に赤字になってしまいやすい。GP回復アイテムが安価で大量購入できることもあり、自ずとザコ戦は必殺技を連発しがちになる。
    • 逃走成功率が不安定で、悪いときは5回以上立て続けに失敗することもある。安価で購入できる確定逃走があるが、購入できるのはゲーム中盤以降。
    • 本作のエンカウント率はそれほど高くはないのだが、エンカウント抑制手段が無く、上記の1戦闘の長さと逃走のし辛さもあるため、エンカウント率が高いと錯覚してしまいやすい。
  • 必殺技の表記が不親切。
    • 各キャラの必殺技について、メニュー画面で性能の説明を見ることができないので、どういう技かは実際に使ってみないと分からない。
    • GPが足りない場合、技の欄から技名自体が消えてしまう。GPの不足で使えないのかどうかがひと目で見て解り辛く、人によっては不親切に感じる事も。
  • ボス戦における問題点。
    • 基本的に通常攻撃は大したことはないのだが、必殺技および特殊攻撃が強力で早い段階でも4桁以上の大ダメージを受ける事になる。
      • さらに敵味方共にクリティカルヒットのダメージが2倍になる仕様のため、場合によっては最大HP以上のダメージを受けることもある。
        ダメージ半減状態になるアイテムやT-Wは存在するが効果が切れやすく、全体がけ出来るものが多用できるようになるのはゲーム終盤。
    • 大半のボスが通常攻撃と必殺技に対する回避率が高いため、必中で弱点属性を突きやすいT-Wに自ずと頼りがちになってしまう。
      HPもT-Wで弱点を突くことを前提としたような高さで、ボス戦が単調になりやすい要因となっている。
      • 状態異常系のアイテムやT-Wも効きづらく、効いても「セルフケアシステム」ですぐ回復されてしまう。
      • とあるボスは完全回復を使う。しかも、そろそろ倒せるか?という段階になってから使うのでまたダメージの与え直しになりダレる。
    • 仲間キャラの新規加入と同時にボス戦に突入することがあり、その場合は新規加入キャラが防具やT-Wを装備していない状態になっているのでそのボス戦で足手まといになってしまいやすい。
  • ライド戦闘における問題点。
    • 単刀直入に言うと「固定ステータス・装備キャラによる強制一人旅」であり、上記のザコ戦・ボス戦の問題点がさらに浮き彫りになる。ボス戦は有効な特殊攻撃を見つけたあとは攻撃と回復の繰り返しという非常に単調なものになる。
    • 主人公たちのT-Wと違い、ライドの特殊攻撃は必中ではない。また、メニュー画面で特殊攻撃の性能どころか名称自体を見ることが出来ないため、戦闘で実際に使うまでどういう効果なのかが分からない。
    • 専用の回復アイテム「しゅうりキット」の入手面で重大な問題がある。
      • しゅうりキットはライド戦闘が発生する区間内にあるショップでしか購入できないのだが、最後のライド戦闘の区間に突入すると、購入できるショップに到達するまでにボス戦を2回も突破する必要がある。
      • その為、前回のライド戦闘の区間でしゅうりキットを買いだめしておかないと回復面で苦しくなり、未所持のままで来ると最悪詰みに近い状況に繋がることがある。
      • 一応、区間突入前にしゅうりキットを自動的に15個入手する(アナウンスは無し)ようになっているのだが、戦い方や運次第で足りなくなる事もある。ザコ戦でもドロップするようにもなっているのだが、ザコ戦でもHPが削られる以上いい結果が出るまでセーブ&ロードを繰り返さないといけない。

RPGのバランスについて

  • ストーリーの都合上、行動面・編成面で不自由さを感じる部分が多い。
    • 別のエリアへ一瞬で移動する、所謂ファストトラベルやダンジョンを一瞬で脱出する手段は存在しない。
      • 各島へ移動するために気送列車を毎回利用する必要がある。演出が長めで、各島に到着した時のアナウンスも飛ばせない。
    • 次に行く場所・やるべき事の提示が1回きりなことが多く、ヒント機能*12も無いため聞いた情報を忘れてしまうと苦労することになる。
      • ゲーム最序盤にストーリー進行とは違う場所に行けてしまい、雑魚敵に瞬殺されてしまうこともある。
    • 強制イベントでクリアするまで出られないダンジョンが多く、どこでもセーブとの相性が悪い。
      • テーマパークが舞台であるため、ダンジョン内にショップがあったり、回復アイテムの自販機が置かれている事が多いが、それらが一切ないダンジョンも存在する。ラストダンジョンもこの類である。
      • あるダンジョンをクリア後、別のクリアするまで出られないダンジョンに強制的に挑まされる事もある。そのシチュエーションも味方NPCに急かされて強制されるというものでタチが悪い。
        他のイベントでは準備ができるまで待ってくれるものが多いため猶更である。
    • 一度クリアすると再訪できなくなる場所も多く、有用なアイテムや武器防具、T-Wの取り逃し・買い逃しが起きやすい。
    • 仲間キャラの強制入れ替えが多く、終盤でも少人数パーティーを強制される場面がある。
      • 離脱時にT-Wが外れる仕様上、再加入した際のT-Wの再装備が煩わしく感じやすい。
      • 装備品を整えて次のエリアに進もうとしたら強制入れ替えが行われ、買い与えた装備が無駄になることがある。
      • 新規加入キャラは装備が不十分な場合が多く、予備の防具を残しておかないと装備なしのまま先へ進むという事態が発生することもある。

その他

  • ラストダンジョン専用の曲が無く、汎用のダンジョン曲が使い回されている。
  • 設定でキーコンフィグやステレオ/モノラルの切り替えができない。
  • ゲーム内容と直接関係は無いが、パッケージイラストはボックスアート界の大御所である髙荷義之氏が担当しており、キャラデザの福田道生氏とは大きく異なる画風のためギャップを感じやすい。

総評

一本道ではあるものの全体的なストーリーは良く、ヴェルヌワールドという題を冠するにふさわしい大作に仕上がっている。
ゲームバランスはインフレ気味なので低レベルや準備不足で無理に先に進むと酷い目に遭うが、しっかりレベル上げと準備さえしておけばそれほど難しくはない。
ヴェルヌの世界を本格的に冒険してみたい方のご来場をお待ち申し上げております。


余談

  • 現在はプレミアとまでは行かないものの定価の数倍で取引されており入手は難しい。
  • 開発元のデュアルは後にプレイステーションでスタッフなど本作の流れを汲んだ2作目のRPG『ミスティックドラグーン』を手掛けることになるが…
    • 詳細は当該記事を参照。
  • シナリオを担当した漫画原作者・脚本家の富沢義彦氏は本作が映画「ウエストワールド」に影響されているという事をブログで述懐している。(ソース)
    • Twitterでパッケージ絵のラフを公開したり、ファン同人誌へのインタビューの寄稿を行うなど、現在でも本作へのアクションを起こしている。
  • 2023年現在、海上にテーマパークを作ると言う話は聞かないが、ロボットに関してはまるで人間のようにふるまうAIが発表されており、現実がSFの世界に近づいている実感がある。

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最終更新:2023年07月19日 11:28

*1 ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ。フランス生まれ。生誕1828年2月8日、死没1905年3月24日(77歳)。

*2 VWとは、Verne World、略してVW。作中でも使われている略記であり、各地のショップでVWグッズも売られている。

*3 中央島を世界に見立て、その極地点にあたるのでポーラと呼ばれる。

*4 ゲームの都合上視点が固定なので実際に見れるのは地底島と飛空島のみ。

*5 ショップでは買い物した際にオマケをもらえる事もある。

*6 前回戦闘終了時の入力コマンドも次の戦闘でそのままリピートできる。

*7 主人公の弟のケイなど上昇が緩やかなキャラもいる。

*8 経験値は99,999,999(≒1億)でカンスト。その際のレベルは64と中途半端な数字になっている。

*9 経験値が低いが大量にEPを獲得できるザコ敵も定期的に登場する。

*10 主人公もメタ的に突っ込みを入れている。

*11 ヴェルヌ作品で大猿とバトルする展開は、「神秘の島(ミステリアス・アイランド)」に一応あるが、こちらはオランウータンである。また、「地底探検」を題材にした1976年のスペインの映画「新・地底探険/失われた魔宮伝説」では劇中で巨大ゴリラが登場している。それを元ネタにしてキングコングを出したのでは?という指摘もある。

*12 『Sa・Ga2 秘宝伝説』のメモ機能や『ヒーロー戦記 プロジェクト オリュンポス』の相談・独り言、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のヒント屋など。