SIMPLE2000シリーズ Vol.108 THE 日本特殊部隊 ~凶悪犯罪列島24時~

【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむひゃくはち ざ にほんとくしゅぶたい きょうあくはんざいれっとうにじゅうよじ】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション2
メディア CD-ROM 1枚
発売元 D3パブリッシャー
開発元 ヴァンテアンシステムズ
発売日 2006年9月14日
定価 2,000円(税抜)
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 なし
ポイント 簡素なタクティカルシューター
雰囲気はいい
SIMPLE2000シリーズ


概要

タイトルの通り、日本の警察特殊部隊を題材としたタクティカルシューター。
プレイヤーは架空の特殊部隊である特殊行動部隊(Special Assault Combat Team, SACT)の一員として、日本各地で巻き起こる凶悪犯罪の対処にあたることになる。
また、時代設定は2015年で、発売当時から見て6年後の近未来を描いていることになる。


システム

  • プレイヤーはそれぞれ長所と短所のある4人の隊員から操作キャラクターを選んで任務にあたる。また、選ばなかった3人から同行する隊員を1人選ぶ。
    • 同行する隊員には指定位置までの移動、現在位置での待機、臨戦状態で待機、後に続け、装備を使え、ドアを開けろなどの指示を出すことができる。
  • カメラはファーストパーソンビュー、サードパーソンビュー、サイド俯瞰の3つを自由に切り替えられる。
  • 表示/非表示を切り替えられるミニマップには、プレイヤーと同行隊員のほか、付近の敵の位置も表示される。
  • 警察特殊部隊が題材ということもあり、同ジャンルの代表作の1つでもある『SWAT』シリーズのように、単に敵を殺すのではなく生きたまま捕縛することが高評価に繋がる。
    • 捕縛するには後ろから忍び寄って警告するか、殺さないよう気をつけながらダメージを与え転倒させる必要がある。
  • 装備枠は2つ。拳銃やライフルといった銃器のほかに閃光弾や催涙弾のような非殺傷兵器が使用できる。
  • リロードは必要だが、弾薬自体は無限に使える。
  • 時間経過でステルスゲージが貯まるとステルスモードを発動できる。発動中はプレイヤーの姿が見えなくなり、物音も立たない。一気に接近して敵を捕縛する、敵の視界が通っている場所を通過する、捕縛中に他の敵が接近してくる可能性に備えるなど、この機能の活用が攻略のカギとなる。
    • ゲージがあるため連続使用はできないが、それ以外の制限はない。成績への影響もない。
  • 難易度は簡単、普通、難しいの3段階。高難易度ほどステルスゲージの貯まる速度とプレイヤーの体力が低下する。
  • 体力の最大値は難易度「簡単」なら4ポイント、「難しい」なら2ポイントが標準で、ここから体力の高い隊員なら+1、低い隊員なら-1される。被弾時のダメージは敵の装備にかかわらず1ポイント。つまり最大で5回、最小で1回撃たれると死亡するということで、正面からの派手な撃ち合いは避け、銃を使うのなら先手を取って反撃のスキを与えず速やかに無力化することが求められる。
    • マップ内で見つかる薬を拾うと、プレイヤーと同行隊員の体力が同時に回復する。
  • マップ内にはいくつかのギミックが存在する。陽動のための電話や非常ベル、目くらましのための消火器、見つかると警戒状態になる監視カメラ、施錠されており鍵を探す必要があるドアなど。
  • ミッションをクリアすると、犯人の捕縛数、殺害数などからDからSSまでの評価およびこれに応じた得点が与えられる。一定の得点が貯まると階級が上がり、新しい装備がアンロックされる。
    • SACTは何故か軍隊式の階級制度を採用しており、プレイヤーは「三等」から始まって最終的に「元帥」まで昇進する。
  • 基本ミッションx9、ボス戦ミッションx9、エクストラミッションx19、合計37ミッションが収録されている。
    • 基本とボス戦のあわせて18ミッションをクリアするとエンディングが表示され、その後にエクストラミッションに挑むことになる。
    • ボス戦ミッションでは使用する隊員が指定されているほか、エクストラミッションでは味方を負傷させない、銃を使わない、犯人全員を捕縛するなどのクリア条件が課される。条件を満たせなかった場合は評価がDになるが、次のミッションにはそのまま進める。

評価点

  • 日本の警察特殊部隊という題材の珍しさ。
  • 攻略の自由度の高さ。
    • 通常のミッションでは犯人を全員無力化すればミッションはクリアとなり、手段や順序は問われない。もちろん可能な限り発見されず全員の捕縛を試みるのが高評価への道だが、クリアするだけなら逆に全員を射殺しても構わない。また、銃で撃って転倒させることができるので、捕縛を優先する場合にも隠密行動を必ずしも強いられるわけではない。
    • 適度に複雑なマップの構造や敵の動きを観察しつつ、いくつかの選択肢の中から自分なりの攻略方法を考えるタクティカルシューターの醍醐味はある程度実現されている。
  • コンビニや駅、空港など、なんとなく見慣れた風景がある程度再現されている。

賛否両論点

  • 『SWAT』シリーズなどと比べると、本作は単純でわかりやすいシステムを採用している。そのためゲームとしてのとっつきやすさはあるものの、そもそもタクティカルシューターとはガジェットの使い分けや部隊指揮による作戦の展開など、現実的な「複雑さ」や「不便さ」それ自体を楽しむジャンルでもある。その意味では、本作のカジュアルさは必ずしも好ましい側面ばかりではない。
    • ステルスモードは大胆なアクションを可能にする一方、特に低難易度では多用してゴリ押しすることもできてしまう。
    • 同行隊員への命令の種類が少ない上、ガジェットも非殺傷性の手榴弾程度なので、あまり複雑な作戦を立てることはできないし、ミッションもそれを求める設計にはなっていない。
    • 一方、例えばドアの開閉や捕縛などのアクションに多少の時間がかかったりプレイヤーの移動速度が遅かったりするのは、タクティカルシューターとしての複雑さの一部である。しかしカジュアルなデザインを好むユーザーはここに冗長さを感じるだろう。
  • 戦闘もリアルさは重視されておらず、単純なパターンに沿って機械的に動く敵に対処するゲーム的なデザイン。
    • 交戦距離は非常に短い。銃の有効射程は20mから30m程度が多く、スナイパーライフルでも50mから60m程度。手榴弾類も目の前に転がる程度の飛距離。
    • 敵は既定ルートを巡回し、物音など異常があれば調べに行く程度の賢さは持っているものの、視野が狭く真横にいても見つからなかったり、しゃがんで物音を消せば真後ろを歩いていたり、さらには真横で仲間が捕縛されていても気づかなかったりという鈍感さを兼ね備えている。聴覚も優れず、足音や銃声には相当近くでなければ反応しない。

問題点

  • 操作性の悪さ。
    • 操作方法は2種類から選べる。デフォルトの「設定1」は左スティックで前後移動と左右旋回、右スティックで視線移動、L/R2で左右並行移動という設定。しかし、右スティック左右での視線移動は「身体をひねって左右をうかがう」という動作になっており、スティックを離すと正面に戻ってしまう。照準を合わせるために左右のスティックを同時に操作しなければならず、上下に動かそうとしたときに誤って身体をひねってしまうことも多い。このひねり操作が役立つことはほぼない。
    • 「設定2」は左スティックで前後移動と左右並行移動、右スティックで視線上下と左右旋回という設定で一般的なFPSに近いが、銃のリロードは「数秒移動せず放置」によるオートリロードのみとなり、任意のタイミングでは行えなくなる。物陰で敵を待ち構えているときなどに勝手にリロードが挟まるのは小さなストレス。さらに、弾倉が空になると直ちにリロードを行うため、戦闘中に弾が切れるとモーションが挟まって武器の切り替えや転倒した敵の捕縛などの行動が遅れることも。
  • スコープの仕様。
    • スコープ使用時の照準移動は、高倍率スコープ(スナイパーライフルに付属するもの)の最大ズーム状態では通常時とさほど変わらないが、何故か倍率を下げるほどに感度が上がる仕様で、1倍、つまりスコープを覗いてすぐの状態では、少しスティックを倒すと真横を向いてしまうほどになる。アサルトライフルの中倍率スコープでは、最大ズーム状態でも感度が高く使いづらい。
    • スコープ使用時は移動できない。それ自体は他のゲームでも見られる仕様だが、操作方法「設定2」のオートリロードと合わさると途端に問題が起こる。例えばスナイパーライフルで1発撃ち、スコープを覗いたまま次の敵を探そうとしていると、「数秒移動せず放置」したと判定され、勝手にリロードが始まって照準が動かせなくなる。
  • ありがちなことに、味方の出来は褒められたものではない。
    • 同行隊員は基本的に見敵必殺を心がけており、犯人を見つけ次第射殺を試みる。
    • 各種命令は使い勝手が悪く、活用しなければ攻略が困難という場面はない。
    • 経路探索の能力は低く、命令しても壁や障害物に引っかかって移動を断念することも多い。
    • 物陰に隠れるのも下手で、プレイヤーはうまく隠れているのに勝手に身を晒して敵に見つかることがある。
    • 戦闘能力は低い。
    • 死亡時には評価が大きくマイナスされる。また、味方を負傷させないことが条件になったエクストラミッションもある。
    • 結果、どのような遊び方をするにしてもスタート地点で待機させて作戦に関与させないのが最適ということになる。
  • ミッションについて。
    • マップ自体は7種類のみで、9つの基本ミッションのうち2つで既に使い回しが起きている。敵の種類や配置がやや異なるものの、プレイ感覚や攻略法に大きな差はない。
    • 爆弾テロの阻止や要人の救出を思わせるタイトルが冠されていても、実際の内容は全ての犯人の無力化のみ。
      • ミッション中には拘束された人質の姿を見かけることもあるが、単なる置物である。当たり判定こそあるが、接近したり銃撃を加えたりしてもアニメーションやボイスなどの反応は一切ない。もちろん彼らがミッションの成否に影響を及ぼすことはない。
      • 開発中のバージョンと思しきスクリーンショットではミッション後の評価画面に民間人の救出数や死亡数が表示されていたため、何らかの理由でカットされたものと思われる。
    • ボス戦ミッションでは戦闘能力の高いボスを制圧することになる。しかし、他に犯人はいないのでステルスモードを使えばあっという間に捕縛できる。通常ミッションよりも遥かに簡単で手応えがない。
  • 敵が警戒状態(異常を感じてはいるが、プレイヤーを発見していない状態)になると警告が表示され、警報がなり、画面が赤く点滅し始める。警戒状態は少し姿を隠せば解除される程度のもので、評価へのマイナスもない。陽動のため意図的に敵を警戒状態にする場合もあるのに、この演出は明らかに過剰である。警戒が解けるまで続く赤い点滅が画面を見づらくすることもストレスを感じさせる。
  • 捕縛は背後から警告して敵が投降状態になった後に行う必要がある。しかし、敵の位置や向きによっては物理的に背後に回れず、催涙ガスや閃光弾で制圧した後にもうまく投降させられないことがある。
  • 地味な問題として、ミッション中のポーズメニューに作戦会議室(準備画面)に戻るコマンドが無い。装備を変更したい場合、一旦セーブしてゲームを中断したい場合などにやや不便。

総評

ハードコアゲーマー向けの硬派なゲームが多いタクティカルシューターというジャンルを、思い切ってカジュアルなバランスにまとめた本作。

しかし、純粋なタクティカルシューターとしてみるとあまりに簡素なところが本格的なファンには物足りず、カジュアルなシューターとしてみるとちらほら残る複雑さやシビアさになじみにくい……と、結果としてどこか中途半端な印象が拭えない仕上がりとなってしまっている。

さほど出来が悪いゲームというわけでもなく、慣れればそれなりに遊べるものの、賢いとは言えないAI、操作性の悪さ、使い勝手の悪い仲間、マップや任務のバリエーション不足といった問題は残されている。


余談

  • ヨーロッパでは英語版が『Special Forces』のタイトルでリリースされている。
  • いくつかのミッションでは、『THE 任侠』や『THE スプラッターアクション』など、ヴァンテアンシステムズの過去作のポスターがある。
  • しゃがんだ状態で密着すると敵の攻撃が当たらなくなるというバグがあり、一方的に股間を殴り続けて転倒させることもできる。どこかで聞いたような……?
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最終更新:2023年01月12日 17:06