サイドポケット3
【さいどぽけっとすりー】
ジャンル
|
テーブルゲーム
|
|
対応機種
|
セガサターン プレイステーション
|
開発・発売元
|
データイースト
|
発売日
|
【SS】1997年7月18日 【PS】1998年4月16日
|
プレイ人数
|
1~3人
|
定価
|
5,800円(税別)
|
配信
|
PS Store 2009年9月9日/600円
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
圧倒的に見やすいプレイヤー視点 ふざけたCPUの思考ルーチンで台無し
|
概要
データイーストが展開するビリヤードゲーム、『サイドポケット』シリーズの3作目にして最終作。
公益社団法人「日本ビリヤード協会」所属の女子プロ選手が本作の監修を務めている。
記事中ではPS版のボタン配置で説明する。
システム
アーケードを発祥とした初代『サイドポケット』(1986年)、およびSS向けに発売された『2』(1995年)と比較して、本作はシステム面でフルモデルチェンジを遂げている。
視点
-
これまでのビリヤードを題材にしたゲームでは、台の真上から台全体を表示する作品が殆どであり、リアリティに欠けていた。また、表示される球の小ささ故に微妙な狙いがつけ難いという問題があった。
-
本作ではそれを解決すべく、台をポリゴンで立体的に表現したうえで「手球(プレイヤーが突く白い球)を画面中心に固定し、カメラが左右キーで手球を中心に回転移動、上下キーで鉛直方向に上下する」という方式を採用している。これは、現実のビリヤードにおいてプレイヤーが手球をどの方向に突くか、台の周囲を移動して入念に観察する目線と全く同じである。
-
加えて、ショット方向となるガイド線が手球から画面奥に向かって表示されている。
-
この「手球が常に画面中心にあり、画面奥に向かって突く」という一人称視点により、リアリティの向上と狙いやすさを実現している。
ショットに至るまでのプロセス
-
ガイド線でショット方向を決めたら、○ボタンで構えに入る。この時、キャラクターが姿勢を低くするかのようにカメラがズームと共にキューのすぐ真上に移動する。
-
大きく表示された手球とガイド線、そして的球を見て問題無さそうなら、必要に応じて十字キーで手球の突く位置を中心から移動させる。
-
この狙いだと的球が穴に入らないと感じたら、×ボタンで構えをキャンセルして狙う方向を決める手順に戻る。
-
更に必要に応じて、R2ボタンを押しながら上下キーでキューを立てる角度を変えられる。大きく立てるとジャンプショット、更に立てるとマッセが可能。
-
最後に、キューを前後に振る動きを見て○ボタンでショット。(キューを手前に長く引いた時ほど強く突く)
-
以上のように、前述の一人称視点で「的球に対して狙いをつける → 構える → 手球の突く位置を決める → (キューを立てる) → テークバックの大きさで撞く強さを決める」という、現実にかなり近い感覚でショットできるのが本作の最大の特徴である。
その他の操作
-
△ボタンで、従来の真上から台全体を表示する視点と切り替えられる。
-
□ボタンでチョークを塗る。現実のビリヤードと同じく、ショット数回毎にチョークを塗らないと押し球・引き球ができなくなる。-
ゲームモード
-
ストーリー…推理アドベンチャーゲームのようにコマンドで施設内を移動しながらストーリーを進め、要所要所で登場人物とビリヤードで勝負を行う。ストーリーは2話用意されていて、主人公以外はフルボイス付き。
-
対戦種目はシーン毎に固定の3つからプレイヤーが選ぶ形式になっている。オプションでの難易度変更が適用されるうえ、対戦開始前にセーブできるので時間さえかければクリア可能だろう。
-
VS…他のプレイヤーあるいはCPUと対戦する。
-
ポケット(穴のある一般的なビリヤード台)は8ボール・9ボール・ローテーション・14-1(フォーティーン・ワン)・ボーラード・カットスロート・3ボール・ポーカー・ポケットゲームの9種目。
-
キャロム(穴の無い台)は三つ球と四つ球の2種目。
-
トレーニング…1人練習用。
-
ポケットは15個のラックを組んだ状態から、プレイヤーの交代なしで突き続けられる。全ショット回数に対して「穴に入れられなかった回数」「手球が穴に入った回数」および「連続で入れ続けたショット回数の最長記録」が表示されるので、15球入れるまでに何回ミスしたかが一目瞭然であり上達の指標になる。
-
キャロムは四つ球の「段位認定」が行える。
-
トリックショット…合計50問を収録。
評価点
-
台の3D表示と一人称視点による、臨場感のあるビリヤードが楽しめる。本作最大の評価点。
-
豊富な種目。
-
これまでの日本発のビリヤードゲームでは、1986年に公開された大ヒット映画『ハスラー2』で一気にメジャーとなったナインボールをメインとして数種目が当たり前であった。本作ではポケット9種目、キャロム2種目と飽きさせないラインナップである。
-
ストーリーモードのいい意味でのバカバカしさ。
-
1つ目は「恩師が騙されて借金のカタに取られたビリヤード店を取り戻すため、主人公は高額の賞金がかかった大会に出場。そこにはかつて反目しあっていた同門のライバルが。そして、大会の主催者は汚い手を使って裏社会で私腹を肥やしていることが分かってきて、恩師のビリヤード場も…」というシリアスなストーリー。
-
しかし、2つ目は「父親と息子が通りすがりで見かけた女性に一目惚れし、女性が入っていった豪邸に突入。唯一の男性である家主が不在なのをいいことに、住んでいる女性家族やメイドを手当たり次第にナンパし、デートの約束を賭けてビリヤードで対決」という実にくだらない(誉め言葉)内容。
-
キャラ絵が使い回しなのでシリアス回の後にナンパ回をプレイすると、あまりのキャラ変ぶりに思わず笑ってしまうこと請け合いである。スタッフも狙ってやったのだろう。
賛否両論点
-
大方のビリヤード経験者からは歓迎されるであろう一人称視点システムだが、従来の真上視点しか知らない(≒リアルでビリヤードを殆どプレイしたことが無い)人は狙う感覚が掴めず投げる可能性がある。
-
従来の真上視点に切り替えても狙えるが、台に対する球の大きさが現実に則しているので従来のビリヤードゲームより球が小さく感じるだろう。よって、どちらの視点でも狙いにくいという事になる。
問題点
-
CPUの思考ルーチンがメチャクチャ。
-
「穴のすぐ前に的球がある超イージーな配置なのに、手球を明後日の方向に突いて壁に跳ね返らせて入れに行く」などは序の口。むしろ普通に狙うことを禁止する縛りプレイでもしているかのようなルーチンなのである。バンク・キック・コンビは当たり前。もちろんコールショット有りのルールでもお構いなし。
-
おまけに思考時間が長い時がある。特に14-1のように的球が密集する状況が多い種目において、普通に入れられる的球が無い場合は30秒以上に及ぶことも。その挙句、適当に突いた(ように見える)フルパワーのショットで密集を崩しながら、コールした通りに的球を入れてくる。もはや完全に未来が見えている。
-
オプションでCPU戦の難易度を5段階から選べるが、違いはその「メチャクチャ(に見える)ショットを繰り出す頻度」だけである。上から2番目の難易度「HARD」まではそこそこの頻度でミスするので慣れれば安定して勝てるレベルだが、最高難易度「VERY HARD」では開始時にCPUが先攻を取るとプレイヤーに一度も突かせることなく勝利することもザラ。さながら脱衣麻雀ゲームで100円入れてスタートしたら相手に天和をアガられたのと同じ気分である。
-
「普通に狙って入れる、あるいは惜しくも外す。止むを得ない時のみ、天に祈りながら特殊なショット」。これがビリヤードの本来の姿であり醍醐味なのだが、何故スタッフはこのような思考ルーチンで問題ないと思ったのだろうか。
+
|
ビリヤードをTVゲームに落とし込むにあたり、止むを得ないと思われる点
|
-
テンポを損なわないようにする為か、一部ルールが省略されている。
-
ノークッションファールとスリーファールが無い。
-
14-1開始時のブレイクで、手球と2個以上の的球をクッションに入れなくてもOK。
-
ストーリーモードでは時折、ショット後にキャラクターのリプレイ映像が挿入されるのだが、少し上半身を乗り出せば普通に手が届く位置に手球があるのにメカニカルブリッジ(手が届かない位置にある手球を撞く時に使う、先端に板のついた棒)を使っている映像が流れる。
-
普通のフォームを表示すると、キャラクターのポリゴンの一部が台に埋まってしまう為と思われる。配置毎に適切なキャラクターのフォームを用意するのが難しいのは理解できるが、興醒めを回避するために別の興醒めが発生する事態になっている。
-
キューミス(手球の極端な上下左右を突こうとして、意図した方向から大きく外れるミスショット)の概念は無いので、チョークを一切使わずとも好きな位置を突くプレイが可能。ただし、手球のどんな位置を突いても中心を突いたのと同じ挙動になるので位置を変えることに意味は無い。
-
ジャンルを「ビリヤードシミュレータ」とするならともかく、これなら最初からチョークの要素自体要らなかったのでは。
-
キャロム種目は何故か対戦相手にCPUを指定できない為、2Pコントローラーを挿して1人で遊ぶか、同好の人を用意する必要がある。
-
キャロム自体が絶滅危惧種であること、的球を穴に狙うという明確な目的があるポケットとは大きく異なるルールである事から、思考ルーチンまで作るのは割に合わないという判断に至ったものと推察される。
|
総評
現実のビリヤード初級者以上同士でプレイするなら佳作レベルと言えるが、如何せんCPUの擁護不能な思考ルーチンにより1人プレイではかなり興醒め。
今からプレイするのであれば、現実のビリヤード経験者を確保することを強く薦める。
余談
-
本作の監修を務めた曽根恭子プロは、2023年2月時点においても国内女子プロランキングでトップ10入りする強豪である。
最終更新:2024年04月09日 12:41