ハチエモン

【はちえもん】

ジャンル くちびるアクション
対応機種 ゲームボーイアドバンス
発売元 ナムコ
開発元 ナツメ
発売日 2003年7月4日
定価 4,800円(税別)
プレイ人数 1人
判定 良作
バカゲー
ポイント 「くちびる」を活かした手触りの良い2Dアクション
クセの濃いギャグとキャラクターたち(全員ハチエモン)
テレビ局関連作品シリーズ

くちびるつこてどこでもいくで〜!



概要

近畿圏のフジテレビ系テレビ局「関西テレビ放送」(カンテレ)のマスコットキャラ、「ハチエモン」が主役の横スクロールアクションゲーム。
仲間たちが無くしてしまった「くちびる」を集めながら、各ステージのゴールを目指していく。
伸縮自在なくちびるを使った独自のアクション、関西テイストの奇抜なギャグが特徴的。


あらすじ

はるか南のかなたにある素敵な小島「ハチアイル」では、ハチエモンとその仲間たちが楽しく遊んでいました。

ところがある時なんともマヌケな事件が起きてしまいました。
一緒に遊びに来ていた仲間たちが「くちびる」を落としてしまったのです!

そこで、困っているみんなを助けるため、ハチエモンのくちびる探しの冒険がはじまりました。

(公式サイトより引用)


システム

  • ステージ内では、ハチエモンの仲間たちが落とした「くちびる」があちこちに見つかる。ステージごとに設定されたノルマの分だけ集め、ゴール地点の屋台に入ればクリア。
    • ノルマ分以上に集めたくちびるは、1つにつき食べ物10個分に換算される*1。1プレイでステージ中の全てのくちびるを集めるとコンプリートを祝われ、ステージ選択画面のそのステージの周りに花や旗が立つようになる。
    • ステージにはそれぞれ制限時間が設定されている。多くのステージはかなりゆとりを持って設定されているが、中には1分しか余裕がないものも。
    • 一部ステージには最後にボスが待ち構えており、倒してからゴールすることになる。
    • ステージの難易度はデータ作成時に「ふつう」「むずかしい」「げきむず」から選ぶことができ、それによって敵の配置が変化する。途中変更はできないので、周回でより高難易度を求めるやりこみ向け。
  • 左右キーで移動、Aボタンでジャンプなのはオーソドックスな横スクロールアクションと同じ。Bボタンで伸びる 「くちびる」 が本作のアクションの要となっている。
    • 上下キーと組み合わせ斜め方向に打ち分け可能。何もせず放置しハチエモンが渋い顔をしてから放つと、リーチがさらに伸びる。
    • 敵にくちびるを伸ばせば、キスで照れさせ一定時間無力化できる。無力化した敵は足場として利用可能。アイテムに伸ばせば、それをくわえて回収することができる。
    • 伸びたくちびるは地形にくっつき、ハチエモンの体をくっついた地点まで引き寄せながら縮む。その状態でBボタンを押したまま十字キーを押すと、くっついた地点を支点にくちびるが伸び、ハチエモンの体がくちびるに支えられる形となる。そこからAボタンを押すとくちびるを離してジャンプができる。
      • これを利用することで遠くの足場に乗ったり、垂直な壁を登ったりとワイヤーアクションのようなことができるほか、くちびるで逆立ちするような形で高さを稼いでハイジャンプといったアクションも可能。
        まさに売り文句に偽りなしといったところである。
    • 他にもRボタンで戻ってくるくちびるを投げる「くちびるブーメラン」、下キーとAボタンでくちびるをぶん回しながら転がる「回転アタック」と、くちびるを存分に活かしたアクションが備わっている。
    • Lボタンを押すと、ハチエモンが「カンテーレ」コールをする。これには隠れたアイテムやブロックの位置を数秒ほど浮かび上がらせる効果があり、そこにくちびるで触れると実体化できる。
  • 道中に落ちている好物のタコヤキを食べると、ハチエモンがさまざまな姿に変身。変身したままボスと戦闘になることもある。
    • 氷の上でも滑らない「ペンギンハチエモン」、豆粒サイズに小さくなり狭い隙間も通れる「ミニエモン」、くちびるの代わりに刀を握り機動力も上がる「八右衛門」など、計11種類。

評価点

  • 良質な2Dアクションゲームとしての出来
    • まぬけな絵面とは裏腹に操作性は良好で、独特なアクションも相まって動かしていて楽しい。
    • 素の機動力はそれなりだが、くちびるを活かした地形移動を組み合わせることで壁や天井に張り付いたり宙を舞ったり、思いもよらない場所まで探索することができる。
  • 構成の練られたステージ
    • どれも特有の地形や仕掛けなど特色が色濃く出ており、なおかつくちびるアクションをしっかり活かせる作りになっている。
    • ステージ数は全28面*2、ボスは全7体。数がややあっさり目な分ギミックの使い回しが少なく、舞台がどんどん移り変わるのもあってそれぞれのステージが印象に残りやすいものになっている。
    • 各ステージのくちびるは道中で自然と取れるものから、探索しがいのある場所に隠されたものまで様々。コンプリートを視野に入れるとなかなかの歯応えとなる。
    • 難易度「げきむず」でも理不尽さを押し付けられる箇所はほぼなく、挑戦しているうちに突破口が見つかるような絶妙な調整がされている。
  • 抜かりないネタ要素
    • 後述のおバカな点を始め、細部に至るまで独特なユーモア精神たっぷりで、こちらを飽きさせずに楽しませてくれる。
    • メニュー項目で放置していると「まだえらばんのん〜?」と聞かれたり、ステージ内でオプションを開くとその度にハチエモンの顔グラフィックが変化したりと、細かな小ネタも。
  • 秀逸なBGM
    • ナツメスタッフの水谷郁、渡辺哲存、藤村宣子が担当。矩形波とPCM音源を巧みに組み合わせた元気の良い楽曲の数々が光る。
      • 中でも明るいながらどこか切ないメロディーが美しい海ステージのBGM、バックの三味線が激しいはちゃめちゃな曲調のボス戦のBGMは特に人気が高い。

おバカな点

  • まず「くちびるでキスして壁や天井に張り付き、敵を照れさせながら進む」というコンセプトからしてインパクトが強烈。
    • くちびるを体長の何倍もの長さに伸ばし、取り外して投擲武器にする姿は初見で怯むこと間違いなし。
    • 野球ボールや竜巻など、ただのオブジェクトにもくちびるブーメランを当てればたちまちハチエモン化。敵を自動で倒してくれる味方キャラとなる。
    • ステージ中に登場する花飾りをつけたサポートキャラの「ハチコ」は、くちびるを伸ばしてキスすればアイテムをくれる。
      • キスするたびに食べ物を出してくれる時もあれば、小刻みに震えた後1UPをポンッと「生む」時もある。
        ちなみに1UPの見た目は小さなハチエモンそのもの。演出が示唆するものは…
    • 放置して渋い顔になるとくちびるを長く伸ばせるのは先述の通りだが、さらに放置するとハチエモンが放屁。画面内のキャラクターが全員ずっこける。
      • 放屁のアニメーションが終わると同時に全員起き上がるので、足止めにもならない完全なネタ技である。
  • ステージをクリアすると、ボーナスゲームの「はちすろっと」がスタート。「程度の形容詞」「味の形容詞」「食べ物の名前」が書かれた3つのリールを止め、いい感じの食べ物になるように揃えよう。
    • 「とても あまい しゅ〜くり〜む」「さいこ〜に おいしい はちていしょく」など、おいしそうなモノができれば食べ物大量ゲット。「びみょ〜に くさい ぎゅうにゅう」のようなあまり想像したくないモノが出来上がることも…
  • 登場キャラは全員赤いくちびるのハチエモン顔。
    • ザコ敵の「カラフルハチエモンズ」に至ってはハチエモンを色替えしてサングラスを付けただけというなんとも潔い見た目をしている。*3
      背景にいるキャラクターや物も、よく見ると全部ハチエモンの顔がついている徹底ぶり。
    • もっとも、元となったハチエモンのメディア展開からしてそんなノリである。仲間の動物たちも、全て本作以前にハチエモンの変身した姿として広告媒体などに登場していたもの。
  • どのキャラも顔つきは同じながら個性豊かでクセの強いキャラクター性を持ち、見ているだけで面白い。
    • 主人公のハチエモンは「いつも自然体で、本音で生きている」という元の設定に沿ったキャラ付けがされており、よくしゃべる。時に情に厚く、時に妙に冷たく、時に腰の低い、おなじみのおっさんボイスの姿が愛らしい。
      • もう一つのチャームポイントであるプリっとした「おしり」もちゃんと描写されている。
    • 「オーサカ」ステージ*4に登場する敵は、全てパーマに割烹着の「オバチャン」。無敵キャラ。キスして照れている隙にやり過ごして進むことになる。
      • 服の色によってオバチャンの行動パターンも様々。瞬間移動したり火を吹いたり、3人に分身して放屁でロケットのごとく打ち上がったり…
      • ムービーシーンでも会話の圧でハチエモンをヘロヘロにさせる「無敵」ぶりを見せる。
        オーサカをクリアするとオバチャンが仲間となって各地で屋台を開き、変身アイテムのタコヤキが解禁されるという流れになっている。
  • ボスもヘンテコで強烈な曲者だらけ。
    • 最初に戦うことになるのが、ハチエモンのたまごボディから筋骨隆々のリアルな人間の体が生えた「マッスルハチエモン」。ハチエモンのくちびるをつややかで戦士の証だと言いもぎ取ろうとしてくる、変態に片足突っ込んだ暑苦しいキャラ。
      • 戦闘ではオーラを放ちながらタックルしてくる。当たってしまうと掴まれ、宇宙まで投げ飛ばされ地球を一周する羽目になる。
        たまに頬を赤らめ動きを止めるという愛らしい(?)一面も*5
    • オーサカのボスは「タワーハチエモン」。ハチエモンの顔がついた高層ビルが、足を生やして三層に分離し襲いかかってくる。
      • ハチエモンがデータベースに登録されていないため侵入者として排除してくるというもはやお約束の戦闘導入。
        ふざけた見た目だが、爆弾投下・レーザー・踏みつけのトリプルコンボでこちらを追い詰めるなかなかの強敵である。
    • 空では「はちたいがったいハチエモン」が待ち構える。ハチエモンそのままの姿が8体連なって龍のごとく宙を舞う様子は、シンプルながら気色悪さすら醸し出している。
      • 自身がハチエモンたちを捕食することで、皆でひとつのくちびるとなり幸せになろうとしているかなり危険な思想の持ち主。登場ステージ名は「かみなりとナルシストとハチエモン」だが明らかにナルシストどころではない。
      • その強さはラスボスに比類。列を組み渦を巻き、縦横無尽に空中を動き回る。加えて体を構成する8体のハチエモン全員の体力を削らないと倒せない。
        飛び道具を持たず、こちらが無限に空を飛べるウィングハチエモンになっているため、回転アタックとの相性がとても良いことに気づけるかがカギ。
    + ラスボスは…
  • 北の島の遊園地「くちびるらんど」に巣食う「ヤマタノハチエモン」。名前に反し首が4つしかない。
    • 分離した4つの首と順番に戦った後、最後に全て同時に相手することになる。はちたいがったいハチエモンのごとく空を泳ぎ、背景からは火も吹いてくる。ラスボスなだけあってそこそこ長期戦。
    • 倒せば晴れてゲームクリア。ヤマタノハチエモンはくちびるらんどの観光資源としてくちびるを集めていたことが判明する。
      実際この最終ステージには、動くくちびるがいくつも付いた悪趣味な遊具や鉄柱が多く見られる…
    • くちびるを譲ってもらったハチエモンと仲間たちがお礼に遊園地を綺麗に建て直したことで一件落着となった。
  • 幕間のムービーシーンは、関西テイスト豊かな独特のテンポのギャグが満載。
    • 仲間がくちびるを落として悪者に盗まれてしまったという「マヌケな事件」から始まり、オーサカから泳いでハチアイルに帰るはずが間違えて南極に来てしまったり、雲の上から落ちてビルの屋上に叩きつけられ「しばらくおまちください」のテロップが入ったり、愉快なシーンが最後まで続く。

賛否両論点

  • 難易度は「ふつう」でもやや高め
    • 後半のステージに進むにつれ各種アクションを使いこなせる前提の難易度のマップが増えるので、序盤のうちに慣れておかないと苦戦することになる。
      • 特に顕著なのが山ステージで、「垂直の壁に潜む敵を無力化しつつ登る」「逆さまの階段状の地形をくっつきジャンプで登る」など、頭を使うアクションを連続で要求される。
      • 特徴的なくちびるアクションを腐らせずフル活用できる、ということでもある。
    • ボスも闇雲にくちびるで突くだけでは太刀打ちできない難敵揃い。性質や行動パターンを見極めて、くちびるブーメランや回転アタック、壁くっつきも駆使しつつ戦う必要がある。
      • 幸い体力はほとんどが高くない。有効な攻略法を見出せるかどうかで難易度が大きく変わる。
    • ザコ敵のカラフルハチエモンズは、倒されると一定時間後に特定地点からリスポーンする。このリスポーンまでの間隔が早く、地味に難易度を上げる一因となっている。
      • 「ふつう」で約9秒、「げきむず」で約5秒。倒しつつ通り過ぎるだけなら気にならないが、一定のエリアに留まって隠れたくちびるを探したり、難所にチャレンジしたりするとなると厄介な存在となる。
  • 一般的なワイヤーアクションとは異なり、地形にくっついたくちびるはしっかりハチエモンの体重を支え、十字キーを押した方向に素直に伸びる。
    • それゆえ初心者でも比較的動きの制御がしやすくなっている一方、振り子運動を活かしたアクションなどは不可能。
  • シュールなネタ要素は多くが笑いをもって受け入れられる一方、ムービーシーンでの漫才のようなノリ*6がキツくてついていけないという人も少なからず見られる。

問題点

  • 複数の敵をB連打で処理しようとすると、「1体目をくちびるで無力化したはいいが、2体目への攻撃が足場判定となった1体目に吸われてしまい、その結果地形移動が暴発して2体目に勢いよく突っ込んでしまう」という事態が起こりやすい。
    くちびる伸ばしが移動・攻撃の両方の役割を兼ね備えているがゆえの弊害。
    • くちびるブーメランや回転アタックを使えば回避可能だが、前者は連射速度が良くない、後者は空中の敵に使えないという欠点がある。
  • 「カンテーレ」コールをする度にハチエモンは一瞬静止する。そのせいで隠しアイテムを探そうとするとテンポが若干落ちてしまう。
  • タコヤキでの変身の種類は一見多けれど、特有のアクションを追加するような、変身している感触を得られるものは少ない。
    • 八右衛門のようにアクションが変化するものは機動力の向上も相まって触っていて楽しいだけに、もっとバリエーションが欲しかったところ。

総評

ハチエモンの特徴的なくちびるが、ギャグ的にもアクション的にも存在感抜群。
くちびるならではの独自性を発揮しつつ手堅くまとまったゲームシステムには目を見張るものがある。
作り込まれたステージや高品質なBGMも含め、総じてただのキャラゲーの域に収まらない佳作だと言えよう。
関西ノリが苦手な人には一部シーンが受け付け難いのはご愛嬌。


余談

  • 本作より前に同じくナムコから発売された『ことばのパズル もじぴったん アドバンス』に、ハチエモンがゲスト出演するスペシャルステージが収録されている。ドット絵は本作の流用。
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最終更新:2023年06月26日 16:27

*1 食べ物は100個集めると1UP。マリオでいうコイン

*2 クリアまでに22面、クリア後に隠しステージが6面

*3 オープニングで「謎の敵」扱いされているがおかげでほとんど謎ではない

*4 大阪府が島になって浮いたそのまんまな見た目をしている

*5 壁くっつきして避けている時に真下でやられると「早くどけー!」となること請け合い

*6 「○○かいっ!」という古典的なツッコミや、天丼ネタなど