ワールドエンド・シンドローム

【わーるどえんど しんどろーむ】

ジャンル ミステリー×恋愛アドベンチャー


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション・ヴィータ
Nintendo Switch
発売元 アークシステムワークス
開発元 トイボックス
発売日 2018年8月30日
定価 5,907円
判定 良作
ポイント 田舎町に隠された伝承と秘密
夏の海と田舎に暮らすヒロインとの交流



生者に紛れ込んだ死者は誰だ――



概要

  • 「死者が蘇る」という町の言い伝えが残る、架空の田舎町「魅果町」を舞台にした恋愛ミステリー・アドベンチャーゲーム。
  • 閉鎖的な村、部活動、伝統を信じる村人、サスペンス要素など「ひぐらしのなく頃に」のようなゲームと言えば分かりやすいだろうか?  実際にコラボもしている。
  • キャラクターデザインを担当するのは「BLAZBLUE」シリーズでもキャラクターデザインを手がけた「加藤勇樹」。個性豊かに描かれた魅力的なキャラクター達と、ひと夏の恋愛を体験できる。

シナリオ

とある事情で田舎町の「 魅果町 」に転校した主人公は、電車内で「 音無雪乃 」という女性に出会う。女性はフリーライターで、「魅果町」を取材して記事にしたいという。

「魅果町」は百年に一度、死者が蘇り禍(わざわい)をもたらすと言われる「黄泉人伝説」と呼ばれる伝承があり、魅果高校で教鞭をとる山城香織は黄泉人伝説を元に「 ワールドエンド・シンドローム 」という小説を書き、ベストセラーになった。

その小説は地元企業の神代堂がスポンサーとなり、人気アイドル「二カレイ」が主演で映画化されることになった。

主人公は魅果高校に転校すると、その山城香織に興味を持たれ、彼女が顧問を務めるミステリー研究会に誘われ、「 楠瀬舞美 」「 神代沙也 」「 甘奈未海 」「 山田花子 」「 麻木健介 」が所属する会の一員となる。

主人公はミステリー研究会と忘れられない一夏の体験をする。


システム

  • 物語は「序章」「本編」「真相編」に分けられる。
    • 「序章」では主人公が転校して来て、ニチレイ主演の映画の決定、ミス研メンバーの身内との出会いが描かれる。
  • 「本編」では「朝・昼・晩」の三回に行動パートが用意されている。
    • 「別荘/高校/駅前/海岸通り/住宅街/森/神代邸」の魅果町の場所を移動する。移動した場所には2~3の細分化された場所がある。例えば学校は「屋上」「部室」の2つある。2~3の場所にそれぞれ移動しても1ターンしか消費されない。
    • 主人公は出会ったヒロイン達と交流する。選択肢は少なく、ヒロインと会うと自然と好感度が上がるシステムである。
    • 1周目は強制的にBADエンドであるが、2周目から前周で出会ったキャラのアイコンが地図に表示される。
    • ヒロインと出会うとヒロインの色のオーラが現れ、それ以外だと白のオーラが表示される。
    • 「真相編」は五人のヒロインのルートをクリアすると現れる。
  • システム
    • スキップ、既存スキップ、バックログというADVの基本システムが搭載されている。
  • ボイス
    • 主要イベントはフルボイス、雑多なイベントはテキストのみである。
  • TIPS
    • 物語の固有名詞や解説をしてくれる。
  • コレクション
  • 「魅果町」を探索するとお神代堂のお菓子やのパンフレットがもらえる。
  • 依頼
    • 「二カレイのサイン」などを入手してくる、魅果町のクイズに答えるなどを依頼される。

評価点

  • シナリオ
    • 黄泉人を中心とする人々の思いと人間の生死を扱ったシナリオは高評価。
    • 「死」という重い内容ではあるが、王道的で明るめな男女サークル物と田舎町の探索が挟まれるので、それほど重くなく、読み進めることができる。
    • 一方でヒロインのエンディングをひとつずつクリアしていくことで、ルートが徐々に解放され、ヒロインたちとの甘い恋とミステリー要素が紐解かれていく展開に、多くのプレイヤーから評価されている。
    • 各ヒロインルートの結末は衝撃的。後述の問題点も生まれてしまうものの、これらの演出により真相が知りたくなり、ゲームにのめりこむようになる。
    • また、行動パートでは1周目で偶発的に出会ったキャラも、次の周では意外な場所で会うことが多い。そのキャラの個別ルートへ行くと、「なんでこんな所にいるんだ?」と疑問に思った点が分かるという一度で二度美味しいシナリオである。
  • グラフィック
    • 水が流れる、風車が回るなど、動く背景により、風景の作り込みも非常に良く評価される。特に海辺の波や、駅前の柳などは環境音の臨場感も合わさりとてもリアルである。
  • 伏線
    • 真相編では各ルートで謎だった真実が明るみに出る。各所にちりばめられた伏線及び回収、複数の謎を層にして重ねたストーリー展開どちらも完成度が高い。おかしい動きをしていた者、表情・行動が不自然な者、不自然な言動などの態度が明らかになる。
    • 各ルートに巧みに隠されており、もう一度プレイするとにやりとできる部分が多い。
    • 特に最後の残された伏線はプレイヤーに感嘆を与えてくれると高評価である。
  • キャラクター
    • よくあるギャルゲー無個性主人公…ではなく、実は細かい背景がある。彼の言動や行動も伏線となっている。
    • キャラクターデザインは評価が高い。キャラ一人一人の向きや、口パク、目パチ表情など細かい挙動が合っていて雰囲気が非常に良い。
    • ギャルゲーだけあってヒロインキャラの魅力は十分。さらにそれぞれ秘密があり、それを知るためにシナリオに興味を惹かれる。
    • 王道的なキャラ設定の中に本作のオリジナルの背景が詰められており、魅力的である。清々しい純愛で初々しい物語が描かれる。
    • デート、キスシーン、海水浴といった王道的な恋愛イベントも用意されてる。 ついでにサービスシーンも。
    • 脇役も魅力的なキャラが多く、特に親友枠の健介の存在は重いシナリオを軽くしてくれる。
  • 夏の田舎町の散策
    • 町の探索は非常に楽しい。まるで夏休みに田舎町に遊びに来たような感覚で探索できる。
    • 見どころも多く、神社や自然、海、ホテルなど名所があり、都会の喧騒を忘れさせてくれる居心地が良い世界観である。
    • モデルとなった町があるなら行ってみたいという声も多い。
  • 音楽・OP
    • BGM・OP共に評判が良い。
    • OPは歌詞の内容と本作が非常にマッチしている。クリア後に聞くと、感慨深いものになっている。
    • BGMは落ち着きのある優しい雰囲気の物が多く、田舎町の風景と組み合わさっている。
  • コレクション・依頼
    • ヒロインルートとは違う行動をとる必要があり、ちょっとしたサブイベントとして本編の塩梅となっている。
    • 裏設定もあり、本編の補足でもある。

賛否両論点

  • TIPS
    • 428 ~封鎖された渋谷で~」などのゲームで登場するシステムであり、解説あり、笑いあり、雑学ありで楽しませてくれる。
    • 一方、他のゲームと違い、TIPSで説明したことをキャラに再び説明させる部分があり、少々テンポが悪い。
  • 主人公の過去
    • 物語の肝である主人公の過去であるがその内容に賛否。
+ 内容に関する詳細(ネタバレ)
  • ネタバレにならない程度に話すと「主人公のせいで姉が事故死した」という物。
  • 主人公自身も後悔しているが、「この世界なんて滅びてしまえ」などと悪態をつくこともあり、プレイヤーに不快感を与えることも
  • そもそも原因の事件も、そんなことをするヤンチャな人格でもないので、「姉を助けるため仕方なく」などの設定にした方が良かったのではないだろうか?
  • 展開が少々早い
    • 夏休み一ヶ月の間の話であり、この間にヒロインと仲良くなり付き合う。ほとんどのヒロインの主人公に惹かれていく過程の描写が少ないため、急にヒロインが主人公のことを好きになっている、と感じるプレイヤーも存在する。
  • サスペンス要素は少なめ
    • サスペンス・ホラー要素は後半に集中しており概ね全体の20%ほどである。
    • そのためサスペンス要素に期待すると肩透かしになる。

問題点

  • 難易度が高い
  • 近年のADVにしては難易度が高い。各キャラのルートに行くには、各キャラがいる場所に行って好感度を上げる必要があるのだが、ヒロインを見つけることは初見だと ノーヒントである 。ヒロインの行く場所を推理しなくてはならない。無論、誰もいない場所に行っても、 セーブ&ロードでしかやり直しもできない。
    • 2周目から出会ったヒロインのアイコンが地図に表示されるが、攻略が終わったヒロインが表示されるだけなので、根本的解決にならない。
    • せめて2周目からは全てのキャラの行動を見られるようにしても良かったのではないだろうか?
  • 攻略対象外の女性キャラがチラホラ
    • 大人の女性が登場するが、一部を除いて彼女たちは攻略できない。
    • 魅力的な女性キャラなので残念。
  • 取り返しのつかない要素
    • あるヒロインのパートに行くと、取れなくなるTIPSがある。
    • 2018年12月10日に配信されたパッチ(Ver1.01)で修正済み。
  • エピローグ
    • 真相編が終わってのエピローグであるが、あんまり評価が良くない。
    • ようするに海外ドラマの最終回にありがちなクリフハンガー*1
    • 一応、続編の存在は示唆されている。詳しくは、後述の余談にて。
  • テンポが悪い
    • いちいち日付が表示される、日の終りにセーブをいちいち聞かれるなど、テンポが悪い部分がある。
  • セーブが任意でできない。
    • 現代ADVでは必須である好きなタイミングでのセーブが出来ない。選択肢の前にセーブしたいと思っても出来ず、一日前からやり直すしかない。
    • 前のセーブに戻りたい時も、一度トップに戻ってから「続きから」を選ばないといけない。
  • 一部キャラの立ち絵がない、物寂しい部分がある。
+ 各ヒロインルートの結末(ネタバレ)
  • 各ヒロインルートの結末は、真相編に繋がる1人を除きBADエンドである。
    • そこにも伏線と謎があるので仕方ないのだが、メイン以外のヒロインとも恋人としてエンディングを迎えたいというユーザーも存在する。

総評

田舎町を舞台にしたサスペンス・恋愛ADV。独特な雰囲気の田舎情緒溢れる夏の雰囲気が楽しめるだろう。


余談

  • ディレクターである金沢十三男氏から、続編『ワールドエンド・フェノメナン』の存在が示唆されている。
    • 2023年末の個人Xによると諸事情で今は具体的に作れず、本作と世界線を共有する違うミステリー作品を制作中とのこと。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2018年
  • ADV
  • PS4
  • PSVita
  • Nintendo Switch
  • アークシステムワークス

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最終更新:2024年01月15日 19:10

*1 主人公の生死をぼやかすなどして続編を出す可能性を残す演出方法。