ハルヒと親父 @ wiki

ハルヒ先輩9

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haruhioyaji

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 「ちょっと、キョン。こっち向きなさい」
「なんだ、ハルヒ?」
「ネクタイ、曲がってる」
「ああ、すまん」
「はあ。この先、思いやられるわね」
「返す言葉もないが……って、ハルヒ、にやけてる」
「そう、喜びが心の奥底から、ふつふつとね」
「公道で人の袖を握るのはいい。だけど肩で笑うの、やめろよな」
「幸せ過ぎて、いけないことの一つや二つ、故意にやってしまいそうね」
「思いっきり確信犯だぞ」
「キョン、言葉は正確に使いなさい。確信犯というのはね、自分では義賊と思ってる犯罪者のことをいうのよ。あたしの場合は愉快犯よ!」
「どっちでもいいが、あんまり遊んでると式に遅れそうだぞ」
「構わないから待たせておきなさい」
「いや、どっちかっていうとおれは構うぞ。卒業式くらい平穏にすまそうな、ハルヒ」
「いいわ。で、その後は、あんたと二人で夜の卒業式ね」
「だから、『夜の』とか『大人の』とか、むやみに付けるのやめろよ。……というか、もう、そういうの、必要ないだろ?」
「そうね。高校生も廃業だし、公営ギャンブルもやりたい放題よ、キョン!」
「いや、あんまり、興味ないし。それと大学生も学生だから、基本ダメだし!!」




(数日前)

 「卒業式? って誰の?」
「キョン、あんたの」
「おれの? ……で、ハルヒがなんで?」
「あんたの学校行事はことごとく制覇するのが、あたしの夢なの」
「おれの行事を制覇して何の意味が? ……それに、もう行事は卒業式しか残ってないぞ」
「あとは、あんたが一人前いれば、残りの人生、海賊の腕にとまったオウムのように安泰よ」
「……いや、行き先に暗雲立ちこめるのが、おれにもかすかに見える。それにオウムがとまってる海賊の腕は、なんだか義手っぽいぞ」
「どんな荒波に飲まれようと、あたしに舵を任せておけば問題なしよ!」
「なんというか、それには異論は無いけど……だいたい卒業式なんて、つまらなくないか?」
「なんで?」
「おまえ、また『委任状』とかとって、また父兄として参加するつもりだろ?」
「そ、そうよ。今回は『白紙委任状』を取ってあるけど……」
「そんな超法規的措置は出番が無いぞ。あたりまえだが、卒業生と父兄の席は離れてるし、やることと言えば挨拶みたいなのばっかりだ」
「そうなの?」
「そうなのって、ハルヒ、卒業式は? ……いや、愚問だった」
「あんたは在校生として出てるはずよね」
「おれの前にいる元卒業生は、見事にさぼってたな」
「周りでびーびー泣かれると、うっとうしくて。そんなにボタンが欲しいなら制服ごと中身ごと持って行けばいいじゃない!……って気持ちになりそうだから」
「……なるほど。……おまえなりに自重したんだな」
「……あ、あたしだって、周りの雰囲気に、全く完璧に流されない、という訳じゃないわよ……」
「出てたら誰よりもびーびー泣いてそうだな、意外にも」
「とにかく! あたしには涙は似合わないし、別れを惜しむ暇もないの!」
「……で、ほんとに卒業式に来るのか?」
「何よ、嫌なの?」
「そうじゃなくて。今言ったとおり『びーびー泣いて』、『制服ごと中身ごと持って行』ったりするんじゃないのか?」
「うっ! キョン、あんた、意外とスナイパーね……」
「的がこんなに至近だと外れる気がしない。……おれはいいぞ。ハルヒが泣いてる姿、嫌いじゃないし」
「な、泣いたりしないんだからね! 覚悟しなさい!」
「……何の覚悟だ? だいたい、同級生なら『卒業→離ればなれ』ってシチュエーションになるが、おれたちの場合、『卒業→同じ大学へ通う』んだから、むしろ距離は近くなるんだぞ」
「そうよ、あたしの思うツボよ! ……2年も待ったんだからね」
「ああ……うん、そうだな」
「そうよ」
「……聞いてもいいか?」
「なに?」
「ハルヒは……いつまでおれと一緒に居てくれるんだ?」
「……あんたがあたしに愛想を尽かして……『もういい』って言うまでね。……言わせないけど」
「……よかった」
「な、なにが良いのよ?」
「手」
「手?」
「ほら」
「こ、こら。引っ張るな! もう、何、笑ってんのよ! キョン、待ちなさーい!」


















































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