自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

252 外伝47

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210 :外パラサイト:2010/03/06(土) 13:13:14 ID:6LiHdjEo0
1484(1944)年11月2日の早朝、ミスリアル陸軍ロードスアイランド義勇農騎兵連隊(実質的
には自動車化歩兵大隊)連隊長バスチャン・シリー中佐のもとに、連絡将校が機密のスタンプを押さ
れた封筒を持ってきた。
中身は師団長からの命令で、その内容は、48時間以内にアナールへ向って進撃せよというものだった。
暫くのあいだ命令書を睨みつけていたシリーは、左翼に隣接するアメリカ軍の戦区に、娼館で寝過ごした時
のアリバイ作りに協力した戦車隊の大佐がいたことを思い出した。

「なあコワルスキー、俺は気が変になったのか、それとも白昼夢を見ているのかな?」
ロードスアイランド義勇農騎兵連隊第二中隊を支援せよとの命令を受け、コーモンに派遣された第78
1戦車大隊B中隊を指揮するチャールズ・カルスロップ大尉は、自分たちを出迎えるため道路の両側に整列
したミスリアル兵を見て、自分の戦車の砲手を勤めるポーランド系の大男に尋ねた。
「あそこに並んでる兵士が全員女性のように見えるんだが」
「偶然ですね、俺も大尉殿に同じ質問をしようと思ってました」
部下の反応はもっとストレートだった。
「なんてこった!歩兵がみんなミニスカートだ!」
「オレたまんね――――――――――ッ!」
「ヴァカ野郎!こんなところで“暴発”させるんじゃねえ!」

“それは想像を絶する衝撃だった、特にスカートと膝上丈のブーツの間の素肌が限定的に露出した領域には、
男の本能の根源的な部分に訴えかける魔術的な何かがあった”
(とある戦車兵の回想)

「これは…新型ですか?」
ロードスアイランド義勇農騎兵連隊第二中隊を指揮するクラリカ・ソンギネット大尉は、アメリカ戦車
の縦隊の先頭に立つやけにいかついシャーマン戦車を見て尋ねた。
「ああ、俺達はジヤンボって呼んでる」
美貌のエルフに話しかけられ、内心ドギマギしながら答えるカルスロップ。
カルスロップの戦車は、この年の9月から実戦部隊に引渡しが始まったシャーマン戦車の装甲強化型だった。
これは正式名称をM4A3E2と言う、254輌だけ生産されたシャーマンシリーズの異端児で、最大装甲
厚178ミリという常軌を逸した重防御が施されている。
当然装甲を増しただけ重量も増えたため、動力装置と走行装置に過剰な負荷が懸かり、頻繁に部品交換を行
わなければならなかった。
ジャンボは重くて遅くて運用に手間のかかる戦車だったが、敵の繰り出すハードパンチに耐えて戦闘を続け
ることができたため、戦車兵の間で大変な人気があった。

211 :外パラサイト:2010/03/06(土) 13:14:11 ID:6LiHdjEo0
11月3日午前7時、臨時にクラリカ戦闘団と名づけられた混成部隊は、戦車とハーフトラックに分乗して
前進を始めた。
目標はトラスブールスという名の農村で、コーモン~アナール間の公道に沿って半マイルほどの間に石造り
の建物が50棟ばかり散らばっている。
村を見下ろす高台に出た戦闘団は、20体ほどのキリラルブスと中隊規模の歩兵が自分たちに向ってくるの
を目にした。
奇しくもトラスブールスに駐屯していたシホールアンル軍も、第101師団からの増援を受け、前面に対峙
するミスリアル軍を攻撃するため出撃したところだったのだ。
14輌のシャーマン戦車と20体のキリラルブスが、なだらかな丘の斜面で真っ向から激突する。
カルスロップのジャンボは一体のキリラルブスと、距離450で正面から撃ち合った。
キリラルブスの砲弾はジャンボの車体前面の、厚さ101ミリの傾斜装甲に弾かれる。
アメリカ戦車のM62被帽徹甲弾は命中の瞬間、キリラルブスを覆った緑色の膜にハネ返された。
「あいつマジックバリアを張ってますぜ」
「ハリー、“ハイパー・ショット”だ!」
T4高速徹甲弾、通称ハイパー・ショットは陸上戦艦の出現に衝撃を受けた兵器局が超特急で開発し、試作
品であることを示すTナンバーが付されたまま実戦部隊への供給が始まった新型砲弾で、稀少金属のタング
ステンを使用するため流石のアメリカも容易に量産が効かない代物だが、幸い鉱物資源の豊富なカレアント
から原料の安定供給があるため、1944年11月の時点で戦車1輌あたり3~5発が用意されていた。
「コイツを喰らって驚きやがれ、ファイア!」
200メートルまで距離を詰めて発射された新型砲弾は、見事にキリラルブスを撃破した。
次の瞬間、側面に回りこんだ別のキリラルブスの砲弾が、ジャンボの胴体左側に命中する。
重装甲を誇るM4A3E2も側面は76ミリしかなく(それでも通常の2倍)、真横から撃たれたらそれで
終わりだっただろうが、斜め横から撃ち込まれた砲弾は僅かに射入角が浅く、装甲版を凹ませただけだった。
「角度が悪いな、戦争を教えてやれ」
小林源文の劇画に出てくるドイツ兵みたいな台詞を吐くカルスロップ。
結局連携を欠いたキリラルブスは数の優位を活かせず、練度で勝るアメリカ戦車に圧倒されてしまった。
これはシホールアンル軍が技量未熟な新兵を最前線に投入せざるを得なくなったという事実を示している。
その後敗走する敵を追撃しトラスブールスを占領したのだが、その際負傷したクラリカをカルスロップが助
けるという一幕があった。
敵弾を受けたクラリカが倒れるのを見たカルスロップは戦車を飛び降り、気絶したエルフの女将校を抱きか
かえて敵味方の銃弾が乱れ飛ぶ中を疾走したのである。
「パルプマガジンのヒーローそのものだったね」
とは一部始終を目撃したコワルスキー伍長の談である。
その後もカルスロップとクラリカの交際は続き戦後正式にゴールインすることになるのであるがそれはま
た別の話である。
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