kairakunoza @ ウィキ

0から始めよう! 8話

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  • 8.ご飯を食べよう!


「飯だ飯ー!」
 日下部の声が響き、丁度午後十二時を報せる。
 結局ずっと日下部の横に居たわけだけど、結構楽しかったな。
 特にこいつの集中力のないことったら、授業中なんか必見ものね。
「では、そろそろ戻りましょうか?」
「んーそうね」
 天使に声をかけられる。
 そうね、結構のんびりしちゃったかな。
 まぁでも楽しかったからいいか、また来ようかな。
「みさちゃん今日のご飯はどうするの?」
「ああそれが弁当忘れちまってさぁー、食堂行こっかなーって」
 そう日下部が体を伸ばしていた時。
 私も帰ろうかとしていた時だ。
 声が聞こえた。
「おーい、みさお」
「んあ?」
 声に気がつき、日下部が振り向く。
 その瞬間微妙に……峰岸の顔が強張った気がした。
「弁当、忘れてたぞ」
「お、アニキー! センキュー!」
 突然現れた男性に、日下部が飛びつく。
 アニキ?
 ああそういや居るような事言ってたっけ。
 話には聞いてたけど、会うのは始めてかも。
 ……ってか名前も知らないや。
 まぁでも意外といい男ね……ヤサ男だけど。
「ああ、あやのちゃんも」
「こっこんにちわ」
 ……ん?
 今なんか、声が上擦ってなかった?
 いつも大人しい峰岸にしては珍しいかも。
「アニキも一緒に食べようぜー」
 と男性の腕に引っ付き、離れない。
 結構ブラコンなのか……それは知らなかった。
「あはは、分かった分かった。一緒していいかな? あやのちゃん」
「ぇっ?」
 その時峰岸から素っ頓狂な声が漏れる。
 顔は真っ赤だし、視線は覚束無いし……これはまさか。
「嫌いなんでしょうか? この人のこと」
 ってなんでそーなる!
 てめー一応天使だろーが!
「馬鹿ね、逆よ。逆」
「逆……ああ!」
 ポンッと拍手を打つ。ようやく理解したか……本当に天使かよこいつ。
 なるほどなるほど、そういや峰岸のそういう噂は聞かないわよね。
 結構美人だし引く手数多かと思えば……そういう事ね。
「じゃあジュース買ってくるわー、すぐ戻ってくっから」
「あ、み、みさちゃん!」
 席を寄せ合ったところで、日下部が空気を読んでか読まないでか席を外す。
 それを呼び止めるのにも失敗し、峰岸がお兄さんと二人に。
「あのー……帰らないんですか?」
 馬鹿野郎! 今いいとこなんだよ!
 おお、慌ててる慌ててる。
 耳まで真っ赤だよ。
「みさおのヤツ、何かあったのかな?」
「えっ? ど、どうしてですか?」
 そんな状態にありながらもちゃんと返事をするあたりはさすが。
 まぁ、声が裏返ってるわけですが。
「何か……妙に無理してはしゃいでる気がする。あいつ、辛い時は妙にはしゃぐ癖があるだろ?」
「あ……」
 その言葉に、峰岸も顔を強張らせる。……私も。
 ……そういや、今日の日下部はいつもよりハイテンションだったかも。
 ずっと隣りに居たのに、全然分からなかった。
 あれはじゃあ……空元気だったってわけ?
「じゃあみさちゃん。やっぱり柊ちゃんのこと……」
 私はもっと日下部を知ってるつもりだったけど……まだまだだったみたい。
 また私は、知らぬ間に気を遣われていたらしい。
「私ずっと一緒にいたのに……自分のことばっかり」
 峰岸が落ち込む。
 峰岸と日下部は幼馴染。
 だからそういう細かい癖だって知ってたはずだ。
 でも、峰岸に非があるわけじゃない。
 峰岸は峰岸で、私の事を心配してくれていたんだから。
「まぁ大丈夫さ、あいつももう高校二年生なんだし」
「!」
 落ち込んだ峰岸の顔が、一気に火を噴いた。
 お兄さんの手が……峰岸の頭を、撫でたから。
 ……。
 にーにー!
「ただいまー、おーどったんだあやのー。顔がトマトだぞー?」
「……っ! ……っ!!」
 何か言ってるみたいだけどもう超音波で聞こえないな。
 顔は本当にトマトだよトマト。
 なんか二人の意外な一面を見た気がする。
 分からないものね……ずっと友達やってても。
 ん? 何よ天使、何でそんな膨れっ面なの?
「正直他人の色恋沙汰とか、どうでもいいですよねー」
 お前天使だろ!
「ちなみに何かないの、そういう系統のポイント」
「ああそういやありましたねどっか、確か……『恋の成就:3000TP』」
 おざなりにハウトゥー本を開き、表から探す。
 ……ん?
「3000!? 凄いじゃない!」
 ひきこもりに次ぐレベル! 合わせれば8000! やった第三部完!
「確かにポイントは高いです……でも、すっごい面倒ですよ?」
「? どういう事?」
 まぁそりゃ、人間関係ほど難しいものはないけどさ。
 見るからに峰岸はお兄さんにベタボレ。
 お兄さんだって悪くは思ってないんじゃない? こんな可愛い子に想われるなんてさ。
「大丈夫よ、これでも恋愛小説は読み倒してるんだから!」
 ラノベだけどね! あと少女漫画!
「まぁ……止めはしませんが」
 まだ不満そうにしてる。
 いいのいいの、やるだけやる……それだけよ!
 そうね、まずは整理しましょう……えっと日下部と峰岸は幼馴染なのよね?
 ってことはそのお兄さんともって考えていいから、お互いのことはよく知ってると。
 じゃああとは峰岸が告白でもすれば……って今こんな状況じゃ無理か。
 それとも逆? お兄さんのほうが峰岸に……ううむ、難しい。
 いや、ようはきっかけよ!
 意識するようになればいいじゃない!
 そしたらあとは自然にくっつくって算段よ!
 えっと、じゃあどうしよっかな。
 そうね日下部を上手くそそのかしてお兄さんに……。
「あの」
「何? 今ちょっと忙しいから後にしてくれると嬉しいんだけど」
 って何書いてるの? その紙に。
 えっと何々……。
「宿主が法律を犯す……-80TP!?」
 思わず読み上げちまったよ!
「だから早く帰りましょうって言ったのに……」
 そういうのは全部言わないと分かんねーんだよ!
 ってんな場合じゃねえ!
 あのひきこもり、またエロゲかよ!
 ああもう気の利かない天使を締め上げてる場合じゃない、急いで帰るわよ!

  • 現在のTP:-374TP(↓)














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