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彼女は遷移状態で恋をする-こなたside-(3)

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  • 彼女は遷移状態で恋をする こなたSide(3)


 今日は日曜日。
 一昨日のカラオケの所為で、喉の調子は最悪。
 体のほうも……あんまり、良くない。
 それは、カラオケの所為?
 ……。
 悶々とする頭では、大好きなギャルゲーも進みが悪い。
 いいや、また今度にしよっと。
 パソコンの電源を切り、ベッドに身を投げる。
 それでも心の中で、何かが暴れてる、
 自分の感情がよく分からない。
 私は、どうしたいんだろ。
 どう……して欲しいんだろ。
 もやもやした、曖昧な感情が私を取り囲む。
 駄目だ、こうやってるほうが余計考えちゃう。
 何かしなきゃ……何かないかな、無心で出来るのって。
 勉強? あはは、そんなの私がするわけ……。
「あぁっ!」
 思わず声が漏れた。
 しまった、すっかり忘れてた!
 数学宿題出てたじゃん!
 わっ、ど、どうしよどうしよっ。
 そうだ、携帯携帯。
 ああもぅっ、なんで携帯してないんだろっ。携帯携帯しろってまた怒られるよ!
 ええと、あったあった。充電器に刺したまんまだったみたい。
 ふぅ、これで一安心。
 えっと、助けてかがみさ……。
「……っま」
 寸前。
 発信ボタンを押す寸前で、その指が止まる。
 多分、液晶に映った名前を脳が租借したから。
 な、なんで躊躇してるんだろ。
 言えばいいじゃん、いつもみたくさ。
 電話して、宿題見せてって。
 そしたらまた怒りながら言うのかな、「丸写しは駄目だぞ」って。
 結局見せてくれるんだけどね、あははっ本当ツンデレだよね。
 ……。
 押す。
 ……押す? 押す!
「あ、もしもし?」
 数回の発信音の後に、携帯の向こうから音がする。
『もしもし、おはようございます。泉さん』
 その奥からは、みゆき君の清々しい声が聞こえた。
 ……意気地なし。
「ごめんね、朝から」
『いいえいいえ、泉さんならいつかけてきても大丈夫ですよ』
 あっはっは、とみゆき君の笑い声がする。
 やっぱ優しいな、みゆき君って。
 その笑い声ならきっと……私の心に釘は打ち込まないのかな。
「実は数学の宿題が出てたじゃん? 私まだやってなくてさ」
『ああ、そういう事ですか』
 その一言で全部理解してくれたらしい。
 あはは、話が早くていいね。さっすがみゆき君。
『では午後にでもウチにどうぞ、泉さんの家では難しいでしょうし』
 ああ、そうだったね。
 前遊びに来たら全員お父さんに追い出されたんだっけ。
 結局皆でカラオケに繰り出したけど。
「うん、分かった。じゃあ午後に行くよ」
 そう言って電話を切った。
 ふぅ、これで宿題は安心だね。
 ……なんて、安心してたのが間違いだったわけで。
「こんにちわ。こなちゃん」
「よッス」
「あ……」
 みゆき君の家を訪れて最初に視界に入ったのは、瓜二つの紫の塊。
 それに一瞬呆気にとられるが、慌ててみゆき君を見る。
「み、みゆき君。これ……」
「ああ、呼んでおきましたよ私が。どうせなら皆でやったほうがいいでしょう?」
「おいおい、これ扱いはねーだろ」
 かがみからいつもの突っ込みが飛ぶ。
 あ……わ、笑わないと。ほらっ。
 だって、笑ってきてるんだよ?
 だからそれに、笑い返せばいい。
「も、もうっ。みゆき君と二人で仲良くフラグ立てよっかなーとか思ってたのに、お邪魔虫だなぁ二人とも」
「ええそうですよね、あいかわらずのKYっぷりは健在です」
「誰がだこら!」
「君以外に居るとでも? 自覚がない分余計厄介ですよね」
「や、やめなよ二人ともぉ……」
 口喧嘩しだす二人の間につかさが割って入る。
 相変わらずこの三人は、絶妙なバランスだなぁ。
「まぁ始めましょうか。泉さん、どうぞ」
「うん、ありがとっ」
 と、差し出された座布団に座る。
 そして四人で四角い机を囲む。
 ……私の向かいが、かがみ。
 なるべく視線は上げないようにしよう。
「丸写しするんじゃないぞ、ちゃんと自分で考えろよな」
 だけどその場所からは、いつもの声が聞こえてくるわけで。
 その言葉好きだよね……何回言うつもりなんだろ。
「大丈夫ですよ泉さん、私がきちんと教えますから」
 おおっ、助かるよみゆき君。
 そうだよ、かがみだと間違うとすぐ怒るんだもん。
 みゆき君なら優しく丁寧に教えてくれるもんね……なんか、物足りないけど。
「うぅ……ゆき、ずるい」
 つかさが何か悔しがってたけど、どうしたんだろ。あ、かがみに殴られた。
「集中しろ、ほとんど白紙だろお前」
 私がみゆき君に教わってるんだから、自動的にかがみはつかさを教えてる……お菓子食べながら。
 そういや好きなんだよね、特に甘いのが。
「あまりポロポロと食べかすを散らさないでくださいね」
「わぁってるよ、それくらい」
「おやこれは失礼、一般的な常識を持ち合わせているなんて知りませんでした」
「うっせーよ!」
 相変わらずのみゆき君の皮肉に、かがみが食って掛かる。
 あはは、相変わらずだなぁ、
 それに私やつかさも笑みをこぼす。
 まぁ、そんな感じで賑やかに勉強会は進んでいった。
 だからあんまり、気にしなくてすんだ……かがみのことを。
「じゃあ、そろそろ休憩にしましょうか」
 時計も三時を回ったころだった。
 区切りのいいところでみゆき君が本を閉じる。
 それにようやく私やつかさも机に項垂れる。
 うああ、やっぱり優しく教えられても疲れるもんなんだね。
「あ、そうだゆき」
「はいはい、なんでしょう」
 机に項垂れていたつかさが顔を上げる。
「ケーキ作ってきたんだ、皆で食べようと思ってさ」
「ああ、それは素晴らしいですね。何処ぞのお兄さんとは気遣いが違います」
「聞こえてっぞ!」
 あはは、とかがみを軽く交わすみゆき君。
 でもつかさのケーキかぁ、美味しいんだよねつかさのって。
 勉強にはやっぱ甘いものが必要だよね! コレ宇宙の(ry
「それで、切り分けたいんだけど包丁とか借りられるかな?」
「ええもちろん、私もジュースを持ってきましょうか。こっちですよ」
 と、つかさを引き連れてみゆき君が席を立つ。
 多分台所に案内するのかな。
 いいね、ケーキにジュース。 とりあわせがいいよ。
 ん?
 何か忘れてるような気がする。
 ……。
「つかさのやつ、何を大層に抱えてるかと思えば……」
「!」
 机にうつ伏せたまま、固まる。
 パタンと閉じた扉が耳を劈いた。
 そこから耳に届いたのは……ふんっ、という荒い鼻息。
 それと、自分の心臓の音。
 どうしよう。
 どうしようどうしようどうしよう。
 私今……かがみと、二人だ。

















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