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IFから始まるStory 第2章 愛情編【曲げられた想い】

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 1年で最も好きな季節は何? という質問に対して十人十色の答えが返ってくるかもしれないけれど、
逆に最も嫌いな季節は? と言われて半数以上が同じ意見だと思うのは私の偏った主観では無い筈よね。
つまり梅雨時というのは一部の人を除いて誰もが嫌がる季節だと思うのよ。

現に休日だというのに朝から降り続いている雨の所為で何処にも遊びに行けず
読破したラノベの2回目を読み終えて3回目に突入しようした矢先、
携帯電話から聞いた事も無いアニメソングが鳴り響いた。
「こなたの奴、また勝手に携帯の着メロ変えたわね」
怒る気も失せて携帯に出ると、こなたのニヨニヨ声が受話器から聞こえてきた。

『あれ?携帯の着メロ変わってなかった?』
「えーと・・・言いたい事はそれだけか? なら切るわよ」
『ちょっと待ってよ、かがみん』
「『ん』を付けるな。それで要件は何?」
『かがみ、今日ひま? 今から遊びに行こうかと思ったんだけど』
「別に良いけど。でも雨が降ってるのに物好きね、あんたも」
『いや~、今アニメイトに居てね。折角外に出たから寄って行こうかと』
「本当に物好きね、あんたも」
この行動力のベクトルを勉強に向けたら凄い事になりそうだけど、
でもそれだとこなたじゃ無くなるから、やっぱり今のままが一番良いのかもしれないわね。
『それじゃ、また後で』

電話を切ると雨音しかしない自分の部屋を出て
つかさの部屋の前で数回ノックをすると返事が聞こえてきた。
「つかさー、入るわよ」
「な~に、お姉ちゃん?」
さっきまでの私と同じく、本を読んでいたつかさが顔だけをこちらに向けて
いつもと変わらない笑顔を振り撒いてくるが
「今からこなたが来るんだけど」
「そっか・・・」
こなたの話題を出すと、さっきまでの笑顔は何所かに消え失せ
そんな状態が1ケ月近く続いており、その間つかさとこなたが顔を会わす事は無かった。


だがそれは、こなたを拒絶しているわけでは無く、会うのを戸惑っているように思え
例えば、答えは明白なのに回答を出すのを迷っているかのようで
その迷いを断ち切れたら、こなたとつかさは幸せになれる筈。

私は、その迷いを断ち切る手助けになればと、つかさの正面に座り優しく問い掛けた。
「つかさはこなたの事をどう思っているの?」
「どうって?」
「こなたの事、嫌い?」
「そんな事ないよ。私はこなちゃんのこと好きだよ・・・ただ」
「ただ『それは友達として』?」
私の問いに、つかさはうずくまる様に胸の辺りを抑えながらも
懸命に言葉を返し続けてくる。

「ううん・・・ただ、どうして良いのか分からなくて。
こなちゃんに告白された時は驚いちゃって、結局は振っちゃたけど
でも、あれ以来こなちゃんの事を考えると胸が締め付けられるみたいに苦しくて、
 こんな感じ初めてで・・・」

つかさは同性のこなたから告白された事に戸惑い、自分の本当の気持ちに気付いていない。
それが積み重なってつかさの心を圧迫してしまっている。
そして、その心の枷を取り除けるのは、私でも無ければこなたでも無い。
つかさ本人が自分の気持ちに気付かない限り、心の枷はつかさに深く食い込み続けていく。
だから、私が出来る手助けは助言をするだけ。

「ねえ、つかさ。その胸が締め付けられる感じから逃げないで立ち向かってみたら」
「立ち向かう?」
「苦しいかもしれないけど、今逃げたら後で絶対に後悔するわよ」

こなただって立ち向かって克服したから、つかさに告白する事が出来た。
今度はつかさが克服する番。
「私は自分の部屋でこなたが来るのを待っているわ」
それだけ言うと、私はつかさの部屋を出て自室に戻り
小1時間くらいして、こなたはやって来た。



「やっほ~、かがみー」
「おーす、こなたーって随分と荷物があるわね」
「聖地効果と言いますか、場の雰囲気には逆らえぬと言いますか。気付いたら両手一杯に手荷物なわけでして」
「要は衝動買いでしょ」
「うぐぅ」
呆れている私になんらかのアニメネタだと思われる返答をするこなただが
私はあえてツッコミを入れずに自室へ案内する。

「ねえ、かがみ」
「なに?」
こたなは先ほど買ってきた漫画を読み、私はさっきのラノベを読み返していると
顔を上げずに、こなたが私に話し掛けてきたから
私もラノベから顔を離さずに聞き返した。
「つかさは?」
「自室に居るわよ」
「そう・・・私、つかさに嫌われちゃったのかな?」
「そんな事無いわよ」
今のつかさは自分の気持ちに一生懸命向き合っていて、
こなたもその事に感づいているらしいけど、口に出して言わないのは
つかさを気遣ってくれている証拠。
だから今は待つしかない。つかさが私の部屋の扉を開けるまで。


こなたが来てから数時間くらい経った頃には雨も止んで、
分厚い雲の隙間から朱色の太陽が顔を覗かせそうになった頃
部屋の扉から軽くノックをする音が聞こえた。
「入って良いわよー」
私の返事を聞いて扉を開けた人物は、誰あろう“つかさ”だった。
部屋に入って来たつかさが、こなたの正面に座るのと同時に
夕日が徐々に部屋の中に差し込んでくる。




「あのね、こなちゃん・・・この前こなちゃんに告白された時
『そういう気持ちって良く分からない』って言ったけど、
あれは嘘じゃ無くて今も良く分からないの。
だけど、こなちゃんに対する好きと
お姉ちゃんやゆきちゃんに対する好きは違うような気がして・・・」

感情表現が下手なつかさにとって、想いを言葉にする事は難しいかもしれないけれど
でも、それが出来ないと自分に向き合った事にはならず
私がここで助言したら何の解決にもならない。
だから私は、黙ってつかさを見守り続けた。

「何が正しい答えなのか分からないけど、一つだけ分かった事があるの。
それは・・・私は、こなちゃんとずっと一緒に居たい」

それが、つかさが導き出した答えで
夕日によって茜色に染められた私の部屋に
こなたの声にならない嗚咽が轟き続ける。
「こ、こなちゃん。泣かないでよ」
「な、泣いてなんか・・・ひっく・・・いないよー・・・うっ、ぐす」
人の事を散々ツンデレとか言いながら、当の本人が一番ツンデレな気がしたけど
この雰囲気でそんな野暮な事を言えるほど私は常識外れでは無いので
黙って自分の部屋を抜け出た。

だって今の二人には一緒に居る時間が必要だから、外野は退散した方が良いものね。




部屋を抜け出て、縁側で沈みかけの割には眩しすぎる夕陽を眺めていると
TDLで、最後にこなたと乗った蒸気船の甲板で見た
あの曇りの無い笑顔を思い出してしまう。

これで良かったんだよね?

こなたもつかさも幸せになって
これが、私が一番望んだ結果だから

      • だったら何で

何でTDLの時に沸いた正体不明の不安感が消えること無く、今も私を蝕み続けるの?

これってハッピーエンドでしょ?
何にも不安に思う事なんて無いじゃない

誰か・・・

誰か、この不安を取り除いてよ!

私の悲痛な叫びは、完全に沈んでしまった太陽と
自らの存在を誇張している月に吸い込まれるように消えてしまった。












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