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少女達の聖戦

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「今日は2人っきりだねぇ、みゆきさん。」
「そうですね。かがみさんは自分のクラスで食べるそうですし、つかささんは用事があると言って出掛けてしまいましたしね。」
「かがみはともかく、つかさがいないって言うのは珍しいよね。」
「誰かに呼ばれたそうですけど……」
「ほほぅ?もしやつかさにも春が来たのかな?」
「あ、いえ。下級生の女の子からだそうですよ。それ以上はさすがに聞いていませんが。」
「むー、それじゃあ春はまだ先の話か~。」
「あら、年下の女の子とお付き合いされているのは誰でしたっけ、泉さん?」
「う……まぁそれは置いといて。みゆきさんは誰かにチョコあげるの?バレンタインは来週だけど。」
「ええ。いつも通りお兄さんとお世話になっている皆さんに差し上げようかと。泉さんは聞くまでもありませんよね?」
「あははは、そりゃね。まぁ皆の分もちゃんと作るつもりだよ。ただねぇ……」
「ただ、何でしょう?」
「いやぁ。せっかくの一大イベントなんだしさ。普通のチョコやお菓子じゃつまんないじゃん。これは!っていうインパクトのあるのがいいんだけどね。」
「そうですねぇ……あ、それでしたら一つ心当たりがありますよ。」
「え、どんなの?」
「母が買ってきた本で見たのですが……」

 そんなこんなで早1週間。バレンタインデーを翌日に控えた2月13日の夕方。
「今までありがとね、みゆきさん。」
「いえ、私も楽しませていただきましたから。では明日は上手く行くといいですね。」
「まー問題はゆーちゃんの口に合うかだけどね~。」
「大丈夫ですよ。心を込めて作れば、想いはきっと届きますから。」
「だよね!変に弱気になってもしょうがないか。」
「ふふっ、その調子です。頑張って下さいね。」
「うん、それじゃまた明日学校でね。バイバイ、みゆきさん。」
「はい、おやすみなさい。泉さん。」
 ここ数日ですっかり通り慣れた道を1人歩きながら、お父さんにこれから帰るとメールを送っておく。
 そう言えばゆーちゃんも学校帰りにかがみ達の家に寄ると言ってたっけ。今日はどんなお菓子を作ったのかな?まぁ明日のお楽しみってところだけどね。
 そんな事を考えていると、家まであと少しのところで後ろから「おねえちゃ~ん。」なんて可愛い声が聞えてきた。
 振り向くと、思った通りの小柄な少女が駆け寄って来て、ぎゅっと抱きつかれた。
「おかえり、ゆーちゃん。」
「ただいまっ。お姉ちゃんもお帰りなさい。」
「ん、ただいま。寒かったでしょ、早くうちに入ろう?」
「うんっ。」
 抱き締めていた体を離して、代わりに手を繋いで歩く。にこにこ顔のゆーちゃんと家に着くと、揃って
「「ただいまー。」」
 と声を掛ける。すぐに「おかえり。」と返事がしてお父さんが迎えてくれた。
「そろそろご飯出来るから、2人とも着替えておいで。」
「「はーい。」」
 とまた揃って仲良く返事をする。

 着替えて台所へ向かうとすっかり食事の準備は終わっていた。
 3人揃って食事をしてると、お父さんがこんな事を言ってきた。
「明日は昼から出版社の人や作家さん達で旅行に行く事になったから、戸締りとかきちんとしておくんだぞ。」
「ごゆっくり~……って、ずいぶん急だね。」
「ああ、何人かの都合がギリギリまでつかなかったらしいな。」
「あの、じゃあお帰りはいつなんですか?」
「ん?あぁ一泊だから明後日の夕方には戻るよ。」
「んじゃ夕飯は準備した方がよさそうだね。」
「そうしてくれると助かるな。」
 という事は……明日は久し振りにゆーちゃんと2人っきり……そう思っただけで顔がにやけてしまう。ちらっとゆーちゃんを見ると、ちょっとほっぺが赤くなってるという事は、同じ事を考えたのかな?
「あー、明後日も学校あるんだからあまり夜更かしし過ぎるなよ~?」
「っ!も、もちろんだよっ。ね、ゆーちゃん?」
「う、うん。大丈夫ですよ、おじさん!」
 お父さんはやれやれ、って感じで首を振って。
「今日は俺が片付けやっておくから、2人はもう休んでていいぞ。代わりに明日の朝はよろしくな。」
 そう言ってテキパキとテーブルの上を片付けてしまう。こうなると私とゆーちゃんは言われた通りにするしかなくて、
「じゃ、おとーさん。お言葉に甘えて私達お風呂に入ってくるよ。」
「おじさん、あとはよろしくお願いしますね。」
 と言って台所を後にする。

 翌朝。ゆーちゃんと一緒に朝食とお弁当を準備して、いつものように他愛もない雑談をしながら3人で朝食を済ませると、
「じゃあすまんが、明日まで頼んだぞ。」
「はい、おじさんこそ気をつけて下さいね。」
「お土産よろしくね、おとーさん。」
 そんな風に挨拶を交わして私とゆーちゃんは学校へ向かう。
 2人並んで歩きながらお喋りをして。
「そだ。今夜は私が夕飯の支度するからさ、ゆーちゃんはゆっくりしてていいからね。」
「え?いいよ、お姉ちゃん。私も手伝うよ。」
「だーめ、今夜だけは私がやるの。その代わり、おいしいお菓子期待してるからね?」
「あ……そっか。うん、わかった。」
「ごめんね。ありがと、ゆーちゃん。」
 周りに誰も居ないのを確認してからほっぺにキスすると、嬉しそうなくすぐったそうな微笑を浮かべて手をぎゅっと握ってくれた。

 一日の授業が終わると、今日は食材を買う以外は寄り道せずに家に帰る。
「さぁて、じゃあ始めますか!」
 まずは材料の下拵え。これは普段やってるから問題はナシ。
 問題はこっちのビンの中身。多少多めに作ってみゆきさん家で試食した時は平気だったけど……ビンから少し出して味を見る。
「……うん、OK。んじゃこれに最後の味付け、っと。」
 あとは仕上げるだけの状態にして一息ついてると、
「ただいま~~。」
 と元気良く声が響く。玄関へ迎えに行くと、ちょっと大き目の袋を大事そうに持ったゆーちゃんがいた。
「おかえり、ゆーちゃん。それは?」
「ハッピーバレンタイン、だよ。お姉ちゃん♪」
 どうやら昨日のうちに作って、つかさに預かってもらってたのかな?
「じゃあ、まずはゆーちゃんのからいただいちゃおうか?」
「うんっ!今着替えてくるからね。」
 そう言うとトタトタ軽く音を響かせて部屋に向かうゆーちゃん。
「慌てなくたって平気だよ~。」

 居間で待つ事数分。ゆーちゃんがお盆に紅茶とお菓子を載せてきた。
「待ってました♪」
「えへへ。お口に合うといいけど。」
 ゆーちゃんが切り分けてくれたのは、
「はい、どうぞ。パウンドケーキを焼いてみたんだ。」
「おー、いっただっきま~す♪……んっ。おいしーよ、ゆーちゃん!」
「ほ、ほんと?」
「うん。嘘もお世辞もナシで美味しいって。こっちの紅茶もいい香りだよ。」
「よかったぁ……」
「ほら、ゆーちゃんも食べよ。それとも食べさせてあげよっか?」
 言いながら、小さく切り分けたケーキを口元に運ぶと、頬を染めながらパクっと食べるゆーちゃん。
「んふふー。間接キスだね、ゆーちゃん?」
 この言葉にますます顔を赤くして……って、これ以上に恥ずかしい事を何度もしてるんだけどなぁ?
「じゃあ、お返しに……はい、お姉ちゃん。あーんして。」
 今度はゆーちゃんが私に食べさせてくれる。そんな風にして交互に食べさせながら、最後には……まぁお互い口移しで食べさせ合ったけど。

 あまり食べ過ぎると夕飯が入らないだろうから、残念だけど程々で止めておく。
「さて、それじゃあ今度は私の番だね。」
 ゆーちゃんには席で待っててもらう事にして、仕上げに取り掛かる。とは言っても、お肉を焼く以外は盛り付けるだけの簡単作業なんだけどね。
「おまたせー。こっちこそお口に合うかどうか微妙だけど。一応試食はしたし、不味くはないはずだよ?」
 テーブルに並べたお皿を見て、ゆーちゃんは不思議そうに首をかしげる。まぁ私も写真を見た時には同じだったし。
「今日のメインディッシュは『チキンのモレソースがけ』だよ。」
「モレソース?」
「うん、わかりやすく言うと『チョコレートソース』だね。メキシコなんかじゃポピュラーらしいよ?まぁまずは一口食べてみてよ。」
「う、ん……いただきます……香りはちゃんとチョコの香りなんだ。」
 恐る恐る、という風に口に運ぶゆーちゃん。
「んー、何だか不思議な味だね。うん、でも美味しいよ。ちょっと私には辛いかも……」
 ペロッと舌を出して苦笑するゆーちゃん。
「カカオの香りも味もするけど、思ったより甘くないしスパイシーなんだね。」
「まぁ向こうはスパイスとか使うのは多いみたいだね。これはチョコを使った何かって探してたら、みゆきさんに教えてもらってね。お菓子はゆーちゃんが作ってくれるのはわかってたから、じゃあ私はこれだ、って。」
「でも、面白いね。チョコレートの料理なんて。」
「探せばまだまだあるみたいだね。あと、デザートにチョコのスープもあるよ。」
「スープ?チョコの?」
「うん、まぁチョコレートドリンクみたいなもんかな。」
「ふぅん、本当に色々あるんだ……ねぇお姉ちゃん。今度私にも教えて欲しいな。ダメ?」
「いいよー。って言ってもね、私だってまだこの2つしか知らないんだよね。」
「じゃあ2人で色んな料理作ろうよ。きっと楽しいよ!」
「そだね。んじゃ今度みゆきさんに本借りてこよっか。」

 食事の片付けを済ませて一緒にお風呂に入り、まぁお互い背中を流し合ってるうちに色んな所を悪戯して逆上せそうになったのはご愛嬌、かな。
 翌日……2人揃って寝坊はしたけど、遅刻はしなかったよ。一応ね。





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