【第6話:潮鳴り】
みなみの家に小早川ゆたかと、岩崎みなみは集まっていた。
9月14日のことで、三連休の半ば。
ゆたかがピンポンを鳴らすと、みなみの愛犬であるチェリーが飛んできて、ぺろぺろとゆたかの指をなめる。
ゆたかが反対の指で頭を撫でてやっている間にドアが開いた。
9月14日のことで、三連休の半ば。
ゆたかがピンポンを鳴らすと、みなみの愛犬であるチェリーが飛んできて、ぺろぺろとゆたかの指をなめる。
ゆたかが反対の指で頭を撫でてやっている間にドアが開いた。
「こんにちは、みなみちゃん」
「うん、ゆたか。いらっしゃい」
「うん、ゆたか。いらっしゃい」
お母さんは、とゆたかが聞くと買い物にでかけているとみなみがいった。
差し出された紅茶と、チーズケーキを食べながら二人は雑談する。
差し出された紅茶と、チーズケーキを食べながら二人は雑談する。
「お手洗いいってくるね」
「うん、私の部屋で、待ってる」
くすりとゆたかが笑うと、みなみは恥ずかしそうにする。
待っててねと、手をひらひらさせてゆたかはとことこと歩いていった。
「うん、私の部屋で、待ってる」
くすりとゆたかが笑うと、みなみは恥ずかしそうにする。
待っててねと、手をひらひらさせてゆたかはとことこと歩いていった。
☆
――ゆたかの指がみなみの秘所を弄ぶように撫で回す。
手探りでゆたかはみなみの敏感なところを探し当て、くちゅくちゅと指をあてがるとみなみは「…あ、あ」と控え目な喘ぎ声を発し、妖精のように小さなゆたかを抱きしめてよがる。
「気持ちいい、みなみちゃん?」
「う、うん……」
そっか、とゆたかはみなみのヴァギナに触れるのを止める。
みなみが疑問の言葉を発する前に唇を重ね合わせる。
手探りでゆたかはみなみの敏感なところを探し当て、くちゅくちゅと指をあてがるとみなみは「…あ、あ」と控え目な喘ぎ声を発し、妖精のように小さなゆたかを抱きしめてよがる。
「気持ちいい、みなみちゃん?」
「う、うん……」
そっか、とゆたかはみなみのヴァギナに触れるのを止める。
みなみが疑問の言葉を発する前に唇を重ね合わせる。
「ん、ああ、ああ! ……はあはあ」
「……かわいいよ、みなみちゃん」
「――恥ずかしい…」
「……かわいいよ、みなみちゃん」
「――恥ずかしい…」
「どうして? みなみちゃんのあそこ、だらしないくらいべとべとだよ?
ほら、よく見る?」
「や、やだ……」
小さいという意味ではゆたかに勝るとも劣らないみなみの、小ぶりの胸も、乳首はかわいくたっていた。
ゆたかは左手でその乳首をかわいがった。
ほら、よく見る?」
「や、やだ……」
小さいという意味ではゆたかに勝るとも劣らないみなみの、小ぶりの胸も、乳首はかわいくたっていた。
ゆたかは左手でその乳首をかわいがった。
普段からは想像できないような色っぽい声を発してみなみは下と向く。
ゆたかはそれを愛でるかのよう、胸を指でいじる。
ヴィイイインと機械的な振動音を発するバイブレーターをゆたかは取り出す。設定を強にする。
みなみが「ちょっときつい……」と懇願するのを悪魔の笑みで拒否し、強制的にヴァギナになでるように当てた。
「ああんっ!!」
期待通りの妖美な声。純粋にゆたかはスレンダーなみなみを可愛いと思った。当て続けていると、びしゅっびしゅっと潮を吹く。
ゆたかはそれを愛でるかのよう、胸を指でいじる。
ヴィイイインと機械的な振動音を発するバイブレーターをゆたかは取り出す。設定を強にする。
みなみが「ちょっときつい……」と懇願するのを悪魔の笑みで拒否し、強制的にヴァギナになでるように当てた。
「ああんっ!!」
期待通りの妖美な声。純粋にゆたかはスレンダーなみなみを可愛いと思った。当て続けていると、びしゅっびしゅっと潮を吹く。
みなみは逆らえない。こうした関係はもう何ヶ月か前から始まったことだが、最初から攻めはゆたかで受けはみなみだった。
そして少なくてもセックスの時にはみなみに拒否権はない。
どんなに乞うたところで全権はゆたかに握られている。
どんなにあがいたところで、最後の最後までイかされてしまう。
そして少なくてもセックスの時にはみなみに拒否権はない。
どんなに乞うたところで全権はゆたかに握られている。
どんなにあがいたところで、最後の最後までイかされてしまう。
みなみはゆたかに告白した。それがタブーの領域であることはわかっていた。
同姓であるということ。そうであるのに、友達としてではなく、好きな人としてみていること。
それでも、告白した。
嫌われてもいい。このまま切ない友達関係を続けるくらいなら、いっそのことはっきりとさせたい、みなみは思った。
ゆたかは首肯した。
同姓であるということ。そうであるのに、友達としてではなく、好きな人としてみていること。
それでも、告白した。
嫌われてもいい。このまま切ない友達関係を続けるくらいなら、いっそのことはっきりとさせたい、みなみは思った。
ゆたかは首肯した。
「イッテいいよ、みなみちゃん!」
私が、見ていて挙げるから。だらしなくイッて恍惚の笑みをうかべるみなみちゃんをみていてあげるから。
だから、気持ちよくていいんだよ?
ぶるぶるとみなみは体を震わす。バイブレーターの無機質な音がやけに拡大して聞こえる。
「ゆたか……ゆたかあ」
愛する人の名前を連呼しながら、絶頂を感じた。
私が、見ていて挙げるから。だらしなくイッて恍惚の笑みをうかべるみなみちゃんをみていてあげるから。
だから、気持ちよくていいんだよ?
ぶるぶるとみなみは体を震わす。バイブレーターの無機質な音がやけに拡大して聞こえる。
「ゆたか……ゆたかあ」
愛する人の名前を連呼しながら、絶頂を感じた。
「ねえ、みなみちゃん」
「うん」
絶頂の余韻も収まり、元の服に着替え、恥ずかしそうにしていたみなみに話しかける。
「……みなみちゃんは、わかってる?」
確認するように笑う。
「――柊先輩のこと?」
「やっぱり知ってたんだ。私が『かがみ先輩と付き合っている』こと」
「……なんとなく、わかった」
みなみはかすれるような声だった。ゆたかはくすりと笑いかける。
笑っているのにみなみは微笑みを返すことなどできやしない。
胸襟に感じる強い痛み、みなみはそれを精一杯抑えようとやっきになる。
執拗に我慢しようとも激しさはますばかりだった。
「そうだよ、それなのにいいの?」
「――私は、ゆたかのことが大切だから」
それならば、どうして私の告白を受け入れたのかという疑問は考えないようにした。
それでも、一緒にいたいとみなみは思ったからだ。
たとえ遊びでも、こうして一緒に居る事実はかわらないから。
「うん」
絶頂の余韻も収まり、元の服に着替え、恥ずかしそうにしていたみなみに話しかける。
「……みなみちゃんは、わかってる?」
確認するように笑う。
「――柊先輩のこと?」
「やっぱり知ってたんだ。私が『かがみ先輩と付き合っている』こと」
「……なんとなく、わかった」
みなみはかすれるような声だった。ゆたかはくすりと笑いかける。
笑っているのにみなみは微笑みを返すことなどできやしない。
胸襟に感じる強い痛み、みなみはそれを精一杯抑えようとやっきになる。
執拗に我慢しようとも激しさはますばかりだった。
「そうだよ、それなのにいいの?」
「――私は、ゆたかのことが大切だから」
それならば、どうして私の告白を受け入れたのかという疑問は考えないようにした。
それでも、一緒にいたいとみなみは思ったからだ。
たとえ遊びでも、こうして一緒に居る事実はかわらないから。
泥沼だった。
「協力してくれる?」
「……うん」
「……うん」
ゆたかはベッドの座っているみなみの目線にあうように、かがむ。小さなゆたかではほとんどその必要がなかった。
刹那のごとく唇を重ねて離す。
ぼうっとしているみなみをゆたかはウインクする。
刹那のごとく唇を重ねて離す。
ぼうっとしているみなみをゆたかはウインクする。
恥ずかしそうに、嬉しそうにみなみは小さく笑った。
「それと」
ゆたかは持ってきた鞄をベッドの上に置き、チャックを空けて、小包を取り出した。
「9月12日にあげられたらよかったんだけど……、みなみちゃん、誕生日おめでとう」
きれいに包装された小包をみなみに手渡す。
「ありがとう、ゆたか」
みなみは複雑に渦巻いた気持ちを抑えることにした。
ゆたかは持ってきた鞄をベッドの上に置き、チャックを空けて、小包を取り出した。
「9月12日にあげられたらよかったんだけど……、みなみちゃん、誕生日おめでとう」
きれいに包装された小包をみなみに手渡す。
「ありがとう、ゆたか」
みなみは複雑に渦巻いた気持ちを抑えることにした。
☆
9月13、14、15と三連休も終わった火曜日、こなたはジリジリと煩い目覚ましを手探りで探し当てて止める。
「むにゃ……あ、朝か」
ほとんど無意識のまま立ち上がり、トイレに向かう。
それから階段を上るころには意識もはっきりしてきた。
まだ眠気は全然取れていないが、頭で考えるだけの余裕はでてきた。
「学校憂鬱すぐる。ニートになりたいよ……」
「――学校にいったら負けかなと思っている。18歳ぴちぴち女子高生。ニート候補(目線あり)」
すごくむなしい。それはもう、一人でボケと突っ込みと観客を演じきった関西芸人くらいに寂しい。
ゲームの黒井先生は悲しい。自分のボケを自分で笑う。なんてこなったい。
主演、助演、お客、全部私。
「むにゃ……あ、朝か」
ほとんど無意識のまま立ち上がり、トイレに向かう。
それから階段を上るころには意識もはっきりしてきた。
まだ眠気は全然取れていないが、頭で考えるだけの余裕はでてきた。
「学校憂鬱すぐる。ニートになりたいよ……」
「――学校にいったら負けかなと思っている。18歳ぴちぴち女子高生。ニート候補(目線あり)」
すごくむなしい。それはもう、一人でボケと突っ込みと観客を演じきった関西芸人くらいに寂しい。
ゲームの黒井先生は悲しい。自分のボケを自分で笑う。なんてこなったい。
主演、助演、お客、全部私。
金曜日のことを思い出すと仮病を使ってでも休んでしまおうかと思ってしまう。
頭の中にこびりついて離れないのはゆたかの「かがみ先輩と私、『えっち』したんだよ」という言葉。土日月とウイルスに感染したかのように延々とこなたの頭の中でリピートされていた。
ゆたかの顔や仕草を思い出す。あのゆたかが、あんな顔をするなんて、本当に、どうなっているのかわからない。
今日になって初めてゆたかがこの家からでていってくれて嬉しいとこなたは思った。
頭の中にこびりついて離れないのはゆたかの「かがみ先輩と私、『えっち』したんだよ」という言葉。土日月とウイルスに感染したかのように延々とこなたの頭の中でリピートされていた。
ゆたかの顔や仕草を思い出す。あのゆたかが、あんな顔をするなんて、本当に、どうなっているのかわからない。
今日になって初めてゆたかがこの家からでていってくれて嬉しいとこなたは思った。
「あれお父さん、早いね」
朝食を作る前にリビングいくとこなたの父であるそうじろうが既に椅子に座って新聞を読んでいた。
その顔がニコニコと上機嫌でいたので、こなたはその理由がわかった。
「こなたか、おはよう」
「お父さん、原稿終わったんだ」
「おう! これで朝からエロゲー三昧というものさ。 いやっほうううううううううう そうじろう最高ううううう!!!」
「……変態」
こなたはあほ毛をうにょーんと伸ばしながら朝からキャラの濃いそうじろうに付き合う。
朝食を作る前にリビングいくとこなたの父であるそうじろうが既に椅子に座って新聞を読んでいた。
その顔がニコニコと上機嫌でいたので、こなたはその理由がわかった。
「こなたか、おはよう」
「お父さん、原稿終わったんだ」
「おう! これで朝からエロゲー三昧というものさ。 いやっほうううううううううう そうじろう最高ううううう!!!」
「……変態」
こなたはあほ毛をうにょーんと伸ばしながら朝からキャラの濃いそうじろうに付き合う。
「そういうなよこなた~ これでもお父さん何日も徹夜続きだったんだぞ」
「そういえば、この間私が帰ったときも書斎にこもりっきりだったね」
「そりゃあ、最後の仕上げだったからな」
「まあ、娘として、おめでとうといっておくよ。あとお疲れ様」
作家という仕事は時間に融通が利く。少なくても締め切りの間以内ならどんな風に過ごしても自由だ。
計画的に書いていけばいいものを、作家や漫画家、同人作家にしても締め切りにならないとネタがでないのが不思議である。
結局ぎりぎりまで遊んで「あと一時間」とか「もう少しで終わりますから」とかヒイヒイいいながら執筆するのである。
泉そうじろうも例外ではなく、締め切り一週間前となると、こなたでさえあまり近づこうと思わない程の鬼の形相になって書斎に篭る。
わざわざ火中の栗を採りに行く気はない。触らぬ神にたたりなし。
泉家は朝食から夕飯まで当番制だが、締め切り前後は、気をきかしてこなたが担当する。
「そういえば、この間私が帰ったときも書斎にこもりっきりだったね」
「そりゃあ、最後の仕上げだったからな」
「まあ、娘として、おめでとうといっておくよ。あとお疲れ様」
作家という仕事は時間に融通が利く。少なくても締め切りの間以内ならどんな風に過ごしても自由だ。
計画的に書いていけばいいものを、作家や漫画家、同人作家にしても締め切りにならないとネタがでないのが不思議である。
結局ぎりぎりまで遊んで「あと一時間」とか「もう少しで終わりますから」とかヒイヒイいいながら執筆するのである。
泉そうじろうも例外ではなく、締め切り一週間前となると、こなたでさえあまり近づこうと思わない程の鬼の形相になって書斎に篭る。
わざわざ火中の栗を採りに行く気はない。触らぬ神にたたりなし。
泉家は朝食から夕飯まで当番制だが、締め切り前後は、気をきかしてこなたが担当する。
労いの意味もこめて、こなたは台所に入った。
トースターでパンを焼く。それから卵を器用に両手でわってフライパンに入れて、強火で熱する。
「パンと目玉焼きでいいよね?」と聞くと「おう」と帰って来たのでこなたはこがさないように注意をしながらフライパンを見守っていた。
ほどなくしてできあがり、台所に持ってくる。そうじろうは「すまないな」といって鼻歌をならして箸で目玉焼きを食べつつ、パンを口に運んだ。
「そういえばお父さん」
「んー? なんひゃ?」
「……せめて口にあるものくらい飲み込んでから答えてよ」
こなたはだらしないそうじろうを呆れながら見る。
「これだからお父さんは」と思うが、その血は残念ながらこなたに脈々と受け継がれているのである。
トースターでパンを焼く。それから卵を器用に両手でわってフライパンに入れて、強火で熱する。
「パンと目玉焼きでいいよね?」と聞くと「おう」と帰って来たのでこなたはこがさないように注意をしながらフライパンを見守っていた。
ほどなくしてできあがり、台所に持ってくる。そうじろうは「すまないな」といって鼻歌をならして箸で目玉焼きを食べつつ、パンを口に運んだ。
「そういえばお父さん」
「んー? なんひゃ?」
「……せめて口にあるものくらい飲み込んでから答えてよ」
こなたはだらしないそうじろうを呆れながら見る。
「これだからお父さんは」と思うが、その血は残念ながらこなたに脈々と受け継がれているのである。
「どんな小説なの?」
「今回は凄いぞ! なんといっても.h○ckのような電子空間と現実空間をリンクさせた超大作!」
「ぱくり?」
「違う!」
、そうはいったものの、こなたも泉そうじろうの作家としての実力は認めていたのでほとんど冗談だった。
てゆーか売れないとこなた自身こまる。
「今回は凄いぞ! なんといっても.h○ckのような電子空間と現実空間をリンクさせた超大作!」
「ぱくり?」
「違う!」
、そうはいったものの、こなたも泉そうじろうの作家としての実力は認めていたのでほとんど冗談だった。
てゆーか売れないとこなた自身こまる。
「――たく。今回のはウィルスがキーワードだな」
「ウィルスか」
「おう。そのウィルスが駆除しがたい強大なものでな。先進諸国の国家機密、個人レベルの情報をまるごとウィルスによって削除されてしまうんだ。
バックアップデータの場所まで自動探知して消してしまう。インターネットそのものの崩壊。そのため全世界が大混乱に陥り、情報化時代にデジタル・ディバイドが加速し、経験したことのない世界規模での失業、恐慌――」
「――そういえばさ」
「なんだよこなた。これから佳境を説明しようとしていたのに、いけず~」
「ちょ、抱きつかないでって。暑いしひげこいしセクハラだし」
「なにおー 泉式スキンシップをなんというか!」
「それを日本語では犯罪と呼ぶんだよ――まあ、それはともかくとして」
「ウィルスか」
「おう。そのウィルスが駆除しがたい強大なものでな。先進諸国の国家機密、個人レベルの情報をまるごとウィルスによって削除されてしまうんだ。
バックアップデータの場所まで自動探知して消してしまう。インターネットそのものの崩壊。そのため全世界が大混乱に陥り、情報化時代にデジタル・ディバイドが加速し、経験したことのない世界規模での失業、恐慌――」
「――そういえばさ」
「なんだよこなた。これから佳境を説明しようとしていたのに、いけず~」
「ちょ、抱きつかないでって。暑いしひげこいしセクハラだし」
「なにおー 泉式スキンシップをなんというか!」
「それを日本語では犯罪と呼ぶんだよ――まあ、それはともかくとして」
すりすりとよってくる父をこなたは足蹴にして体を払う。
暑苦しいったらありゃしない。
しかも何日もこもりっぱなしだったから――そりゃあ生活費を稼ぐためにも頑張ってもらわないといけないわけだけど――汗臭いし。
「ウィルスといえばさ、前にお父さん感染していなかった?」
「ああ」
そうじろうはどばーっと大量の涙を流して、
「ひどいもんだよ……せっかくのエロゲーやらAVやらがすべて水泡に帰してしまった」
俺のジャスティスを返せーっ!!!とかなんたらいって地面にのた打ち回る。
暑苦しいったらありゃしない。
しかも何日もこもりっぱなしだったから――そりゃあ生活費を稼ぐためにも頑張ってもらわないといけないわけだけど――汗臭いし。
「ウィルスといえばさ、前にお父さん感染していなかった?」
「ああ」
そうじろうはどばーっと大量の涙を流して、
「ひどいもんだよ……せっかくのエロゲーやらAVやらがすべて水泡に帰してしまった」
俺のジャスティスを返せーっ!!!とかなんたらいって地面にのた打ち回る。
「あっそ……」
こなたは堂々とアニメやら美少女ゲームやら、アダルトビデオの話題を娘に振り、嘆くそうじろうをじと目で見る。
とはいえこなたも、そうじろうの立場だったら同じように放心状態であったに違いない。
こなたは堂々とアニメやら美少女ゲームやら、アダルトビデオの話題を娘に振り、嘆くそうじろうをじと目で見る。
とはいえこなたも、そうじろうの立場だったら同じように放心状態であったに違いない。
「でもなこなた」
「ん?」
「おかげで、この小説が書けたんだからありがたかったけどな。幸い小説のほうは全部CD-Rでバックアップとっておいたから被害は最小だったし」
「もしかして小説のウィルスが実在していたりするの?」
「まあ、モチーフはそのウィルスだな。インターネット上ではメイドウィルスと名づけられているんだが、さすがに小説ほどの危険度はないよ」
「メイドウィルスってなんちゅーネーミングセンスやねん」
思わずこなたは関西弁で突っ込んだ。
「いやな、初期のウィルスがメイドさんの画像とか動画に忍び込んであったかららしいぞ」
「つまりお父さんも然るべきサイトに突っ込んで感染したんだね」
核心を突くこなたに、そうじろうは「いや……世の中はかくも恐ろしきかな」とごまかす。
「ん?」
「おかげで、この小説が書けたんだからありがたかったけどな。幸い小説のほうは全部CD-Rでバックアップとっておいたから被害は最小だったし」
「もしかして小説のウィルスが実在していたりするの?」
「まあ、モチーフはそのウィルスだな。インターネット上ではメイドウィルスと名づけられているんだが、さすがに小説ほどの危険度はないよ」
「メイドウィルスってなんちゅーネーミングセンスやねん」
思わずこなたは関西弁で突っ込んだ。
「いやな、初期のウィルスがメイドさんの画像とか動画に忍び込んであったかららしいぞ」
「つまりお父さんも然るべきサイトに突っ込んで感染したんだね」
核心を突くこなたに、そうじろうは「いや……世の中はかくも恐ろしきかな」とごまかす。
「まあ、いいけどさ……犯罪沙汰だけはほんとやめてね。そのうち単純所持も違法になるんだから」
「心配するな! 俺は三次元の普通の女の子にも萌える兼ロリコンであって単なるロリコンではない!」
「――どっちにしても人間としては最低だよね……」
ぐっと右拳を握り、テーブルで左手を支えながら力説するそうじろうをいつものようにこきおろす。
この人本当に大丈夫か?
「心配するな! 俺は三次元の普通の女の子にも萌える兼ロリコンであって単なるロリコンではない!」
「――どっちにしても人間としては最低だよね……」
ぐっと右拳を握り、テーブルで左手を支えながら力説するそうじろうをいつものようにこきおろす。
この人本当に大丈夫か?
「さすがにウイルス対策ソフトにもアップデートされたんでしょ?」
「まあなあ。でも、サンプルを手に入れられたから小説書くには相当役に立ったよ。
しかし類似ウィルスがごまんとあるから対策ソフトでも間に合わないとか」」
「サンプル?」
「おう、パソコンにlzh式で保存してあるよ。これがすごくてな。削除するファイルを指定できるみたいなんだ。
例えば『メイド』とに入力すればそれに関連されるファイルが全て削除される。
それも精度がしゃれにならなくて、まるで人間がいちいちファイルを確認して削除されているみたいだったよ」
熱弁するそうじろうの言葉に、こなたは感心して耳を傾けていた。こなたも気をつけようと、思った。
「まあなあ。でも、サンプルを手に入れられたから小説書くには相当役に立ったよ。
しかし類似ウィルスがごまんとあるから対策ソフトでも間に合わないとか」」
「サンプル?」
「おう、パソコンにlzh式で保存してあるよ。これがすごくてな。削除するファイルを指定できるみたいなんだ。
例えば『メイド』とに入力すればそれに関連されるファイルが全て削除される。
それも精度がしゃれにならなくて、まるで人間がいちいちファイルを確認して削除されているみたいだったよ」
熱弁するそうじろうの言葉に、こなたは感心して耳を傾けていた。こなたも気をつけようと、思った。
「このウィルスにはさらに特性があってな。削除されるファイルは自分のパソコン上だけに限らないんだ。
たとえばftpソフトなんかを使っていると自分のホームページスペースにアクセスできるだろ?
そこに勝手にアクセスして関連するファイルを削除してしまうんだ」
「……お父さんと家内LANをつないでいなくて本当によかったよ」
こなたは本気でそう思った。その理論なら私のDドライブまで被害が及ぶところだった。
それは困る。非常に困る。世の中で三番目くらいに大切なものがDドライブに眠っているこなた秘蔵ファイルだ。
たとえばftpソフトなんかを使っていると自分のホームページスペースにアクセスできるだろ?
そこに勝手にアクセスして関連するファイルを削除してしまうんだ」
「……お父さんと家内LANをつないでいなくて本当によかったよ」
こなたは本気でそう思った。その理論なら私のDドライブまで被害が及ぶところだった。
それは困る。非常に困る。世の中で三番目くらいに大切なものがDドライブに眠っているこなた秘蔵ファイルだ。
もしそんなことがあったら、親子としての縁をきってしまおう、なんてこなたは憤然とするのだった。
「他にも完全に削除されていない――例えば『ごみ箱』から削除しただけのような――ファイルからそうした他のアクセス先やパスワードを盗み出すから困ったものだよ」
「私も気をつけるよ」
「他にも完全に削除されていない――例えば『ごみ箱』から削除しただけのような――ファイルからそうした他のアクセス先やパスワードを盗み出すから困ったものだよ」
「私も気をつけるよ」
こなたは食べ終わった皿を片付けて制服に着替える。
制服に着替えるころには憂鬱度が当社比3倍の出血大サービスになっていて、本気で休もうかなと思いながら携帯に手を伸ばした。
時刻は8時を回っている。
とにもかくにも、もうでないと間に合わない。
しぶる体に鞭打って、空っぽの鞄を取り出し部屋を出た。
制服に着替えるころには憂鬱度が当社比3倍の出血大サービスになっていて、本気で休もうかなと思いながら携帯に手を伸ばした。
時刻は8時を回っている。
とにもかくにも、もうでないと間に合わない。
しぶる体に鞭打って、空っぽの鞄を取り出し部屋を出た。
玄関先でそうじろうと鉢合わせる。
こなたはがいってくるね、というと、おうと帰ってくる。ドアのノブを回そうとしたとき、
「……そういえばな」
「何?」
「あの事件、知っているか? 桶川市の」
「うん」
「あれ、また被害者がでたようだぞ。こなたも気をつけてな」
「……わかってるよ」
こなたは、勢いよくノブを回し外に出る。暖かい陽光が照りつけて、目を細める。湿気の高い蒸し暑い気温に気がめいる。
今日だけは、待ち合わせにいくのが憚られた。かがみはきているんだろうか、と思いながら駅へ向かった。
こなたはがいってくるね、というと、おうと帰ってくる。ドアのノブを回そうとしたとき、
「……そういえばな」
「何?」
「あの事件、知っているか? 桶川市の」
「うん」
「あれ、また被害者がでたようだぞ。こなたも気をつけてな」
「……わかってるよ」
こなたは、勢いよくノブを回し外に出る。暖かい陽光が照りつけて、目を細める。湿気の高い蒸し暑い気温に気がめいる。
今日だけは、待ち合わせにいくのが憚られた。かがみはきているんだろうか、と思いながら駅へ向かった。