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此方 -kagamin mix-

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休日。カラオケボックスにて、こなた達四人はいつもどおりの会話をしながらカラオケを楽しんでいた。
「んー、やっぱり『創聖』は名曲だぁねー」
「しょっぱなからそれってのもどうかと思うぞ?それにあんた、ア行しか歌ってないじゃないの」
「だって、『創聖の』じゃなくて『僧侶のアクエリオン』だもん。知らない?ディレイ・ラマ」
「泉さん、それを言うならダライ・ラマでは……?」
みゆきの言葉に、こなたは指を振り「チッチッチッ」と答えた。
「ディレイ・ラマっていうのは読経ソフトなんだよ。多分ダライ・ラマをもじって付けられたんだろうけどね。それを使って某動画サイトで歌を歌わせててね。ヒ・ダリの覚醒が面白いし鳥肌物だよ?」
「……まあ、なんだ。結局私たちには馴染のないシロモノって事で」
「むー、ノリが悪いなかがみんは」
こなたが膨れている横で、つかさが必死にカタログのページをめくっている。
「……で、次は誰が歌うの?」
「ああ、私よ」
ちょうどかがみが手をあげると同時に曲のタイトルが画面に出て、イントロが流れ始めた。
「うわっ、かがみってこんなの歌うんだ……」
「うっさいわね」
タイトルでこの曲がどんな物かすぐにわかったのか、こなたがものすごく嫌な顔をした。

「人ーは皆ー、生ーきーなーがーらーにー、曖昧ーの中でー、歩きー続ーけーてーいーくー、自動ーのー、命♪」

当時のビジュアル系バンドの曲を髣髴とさせる歌詞。しかし、こなたが嫌な顔をしたのはそれが理由だからではない。……この歌詞は、先に行くにつれてヤンデレ化するのだ。
「うわぁ、意外にうまいね、お姉ちゃん」
「そうですね。感情がこもっている、といいますか」
カタログをめくる手を止め、つかさがかがみの歌声に耳を傾ける。そして、曲はサビに突入した。

「こなた、こーの手ー、崩れ落ちた星、夜のー空にー高く輝いて、暗いー森でー見上げた笑顔に、やり場ーのーなーいー指にー♪
 こなた、せーめてー、ここに振り向いて、声をー顔をー全てを映して、たったー一人ー私を満たして全てー奪ーわーせーてー♪」

「ぶっほうっ!!?」
突然自分の名を呼ばれ、こなたは飲んでいたウーロン茶を噴き出した。……お願いだからその先は歌わないで!と念じるも、かがみが止まる気配はない。
リモコンで強制停止しようにも、つかさとみゆきが仲良く使っているため、無理やり奪い取る事は出来なかった。
そして、ついにかがみの歌う曲は後半部分……最もアレな歌詞の部分に突入してしまった。

            ***

――煤けた窓の外が 憐れに霞む 決してここは暖かくは無い部屋――

寝ても覚めても、こなたの事ばかり考えてしまう。あの小さな体、青く長い髪、決して完全に開く事のない眼。
「はあ……」
でも、手に入れることは出来ない。私も、彼女も、女だから。もし、私が男に生まれればこんなに悩まなかっただろうか。
「無い物強請りをしても、しょうがない……か」
座っていたベッドに体を預け、倒れるように寝転がった。……でも、諦められないよね。

――だけどこの指に 触れた 髪の 柔らかさが――

こなたの感触を思い出す。……頬の、頭の、髪の毛の……それを思い出すたびに私の胸は苦しくなり、どうしようもなくなってしまう。
「こなたぁ……私、こなたの事が欲しいんだよぉ……」
ああ、涙まで流れてきた。……こんなにも思っているのに、こなたには届かない。……どうすればいいの?

――だけどこの手には――

『簡単ダヨ』
私の中の誰かが、私に話し掛けた。
『泉コナタヲ奪ッチャエ。無理矢理自分ノ物ニスレバイインダヨ』

――アナタ 手繰る 糸が見えない――

……ああ、そうか。そうだよね。

その方法があったね。待ってて、こなた。

            ***

――こなた 見せて 星屑の夜空 夜の 空に 道を 照らして 暗い 森で 伸ばす この手を 溺れた私を――

「どうしたの、かがみ。こんな時間に呼び出して」
「……うん、こなたの顔が見たくてね」
「ふっふっふ。さびしんぼさんなんだから、かがみんは」
「そうかもね……」

――こなた 此処へ 辿り着いたなら 横へ 傍へ 私の距離まで 触れて 見せて 全てを晒して アナタの内側――

「……どうしたの、かがみ?なんか元気がないヨ?」
「大丈夫。私は元気だよ」
「そうかなぁ……ちょっと疲れたような顔をしてるけど」
「……ねえ、こなた」
「なーに?」

「……こなたを、私に頂戴?」

            ***

――こなた 逃げて 慌ててみせてよ 怯え 恐れ 人の 素顔で――

「やっ、やめてよかがみ!そんな、そんなことするなんて……一体どうしちゃったの!?」
「どうもこうもしないわ。私はね……こなたが欲しいの。だから、頂戴」
「今のかがみは、もう……いつものかがみじゃないよぉ!」
「大丈夫よ。痛いのは最初だけ。……後は何もわからなくなるから」

――震え 泣いて 朽ち果てて見せて 夢を終わらせて――

「かっ……は……」
「大丈夫。大丈夫だからね」
「か、が……み……」
「こなたは私の物になるの。ずっと、ずぅっと一緒だよ……」
「…………っ……」
「……これで、ずっと一緒だね」

            ***

『現在、行方不明になっている埼玉県の泉こなたさんについてですが、今だ消息はつかめず……』
相変わらずのニュースが流れるテレビを消した。……どうせ、見つかるわけがないんだから。
「行方不明って、酷いわよね。……こなたはずっとここにいるのに、ねぇ」
そう言って私が向いた先には、こなたがいた。……何も喋らない、ただの人形となったこなたが。

――こなた 誰も 知らない世界に 腕も 指も 柔らかな髪も 時を 止めた 人の 形で ずっと飾らせて――

「もう、誰も見つけることは出来ないよ。こなたは永遠に私の物なんだから……」
外側を防腐処理し、剥製となったこなたの手を頬に当て、私は恍惚に浸る。……私の愛する人は何も言わない人形になった。でも、幸せ。
「大好きだよ、こなた」

――こなた あぁ こなた――

こなたと抱き合う。それだけで私は満たされる。こなたに腕を回される。長年の夢だったポーズだ。
私は、こなたと一緒に一日を過ごすようになっていた。……たまに、乱暴な事をしてしまう時もあった。
それでも、こなたは何も言わない。人形だから。

――こなた この手 絡めた糸に抱かれて こなた この手 決して 放しはしない――

……何も言わない、人形。そう。私に冗談を言ったり、そんな事もしない人形に、こなたはなってしまった。
「……バカだな、私……」
何故、こんな事をしてしまったのだろうか。いくら悔やんでもこなたはもう私に言葉を発する事も、笑いかけてもくれない。

――こなた だけど 一度だけ笑いかけて 一人きりの 抜けた ガラの私を――

「ねえ、私、バカだよね。……こなたも、そう思う、よね……」
ふと、こなたが『本当にバカだね、かがみんは』と笑ってくれた気がした。……ナイフを手に取り、自分の喉に向ける。
「ごめんね。本当に、ごめんね……」

――『こなた、夢を砕いて』――

私は、喉にナイフを突き刺した。

            ***

「……って、あれ?」
かがみが歌い終わり、周りを見回すと……場の空気は黒く変色していた。
「か、かがみってそんな趣味があったんだ……」
かがみから一番離れた場所で、こなたは小さく震えながら呟いた。
「……かがみさん。申し訳ありませんが、今後はお付き合いの仕方を考えさせていただけませんか……?」
と、こなたをかばうように座りながらみゆきが真剣な表情で言う。
「お、お姉ちゃん……怖いよ……」
完全に血の気の引いた表情でつかさが言う。……全員、ドン引きである。
「や、やだなあ。冗談よ冗談。ほら、名前が同じ三文字でかぶせやすかったからさ。そんな引かなくても……」
「……思いっきり感情こもってたよね」
「ええ。特に『アナタ手繰る糸が見えない』の後が……」
「うん、鬼気迫る感じで歌ってた……」
全員からの総攻撃に、かがみはついに涙目になってしまった。
「な、何よ何よぅ……みんなして……」
「いや、これはかがみ自身が悪いと思うんだけど……」
「そりゃこんな替え歌して悪かったわよ!でも、そんなに引く事ないじゃない!」
かがみの言葉に、他の三人は口をそろえて……
『いや、選曲の時点で引く(きます)から』
と突っ込み返した。
「……ごめん、みんな……」
さすがに耐え切れなかったのか、かがみは自分のやった事を反省し、謝った。
「……まあ、でも。かがみの新しい属性も発見したし。ね、ヤンデレかがみん」
「悪かったってば……」
さすがに『誰がヤンデレだ!』と突っ込む訳にも行かず、あえて謝る事にした。
「……とりあえず、次いきますか。ちょっとリモコン貸して」
重い空気を変えるため、こなたが次の曲を入れた。……マイクを持ち、早速歌い始める。

「おーしーたーいー、もーおーしーあーげーますわー♪」

……実はこなたの入れた曲もヤンデレ率の高い歌詞だったりするのだが、それは気にしないでおこう。

「って、あんたもヤンデレ曲歌ってるじゃないの!」
「名前を変えて歌ったかがみよりはマシだよ」
「うぐぅ……」 


















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  • GJ!!(^_-)b
    ツンデレでヤンデレ属性もあるツインテールの人が歌っていた曲は
    魔理沙 -Shanghai mix-
    という歌です。
    よかったら聴いてみてね☆ -- 名無しさん (2023-05-12 11:19:55)
  • こなた人形欲しいお(´Д`) -- 名無しさん (2009-09-01 23:29:57)
  • >病院坂黒猫氏
    長文ご苦労様です。要約すれば、「続きに期待。今度は鬱展開少なめで」という事ですね?
    それならば……旋律王姫もいいかもしれませんね。後は氷装花などもありますよ?(※両方相手は死にます)

    もちろん冗談です(俺の趣味はヒラコーさんと同じなので)。まあ、ネタが出来たら書くかもしれませんが。
    あと、こなたの歌った曲については『激嬢想歌』でググればどんな曲かわかりますので。そちらで妄想を(ぉ -- ◆MoiSlbQnQw (2009-05-02 22:32:17)
  • 実際はカラオケの場面でありながら、気がつけばヤンデレ空間に引き込まれてしまう予想外な作品だね。
    それにしても、この作品でのかがみのヤンデレ具合については相当に怖いが、歌詞に合わせてシーンを進める中で美しさも感じさせる所は僕としては結構評価が高いと思うよ。
    そしてラストでの他三人のドン引きの姿が容易に想像できて、思わず笑ってしまったね。
    言い訳のし様もない状況で、かがみはさぞ困ったことだろう。
    後日このネタでいじられるであろうかがみの様子を思い浮かべると、思わずニヤニヤしてしまう。
    ・・・他の読者にもこんな想像をした人っているかな?
    まあいいか。
    何にせよ、最終的に平和な終わり方になってくれたから、僕はホッとしているよ。
    ヤンデレは平気だが、人死(マジ死に)は嫌いなのだよ、僕は。
    まあ、それでもついつい読んでしまうのが僕の悲しい性であると言わざるを得ないけどね。
    さて、オチのこなたのヤンデレ曲だが、これが続編フラグではないことは承知の上ではあるのだが、それでもヤンデレこなたの作品も読んでみたいと思う僕は明らかに腐ってると言わざるを得ないね。
    まあ、作者さんが宜しければお願いしたいところだが、どうだろうか? -- 病院坂黒猫 (2009-05-02 15:26:35)
  • 石鹸屋ですね -- 名無しさん (2009-04-04 18:39:14)
  • 実は作中のヤンデレかがみの部分は妄想ではなく「別の世界での現実」なんですよ。
    かがみの一途な思いが異世界の扉をこじ開k(ry
    ……というのは嘘で、元々ヤンデレかがみの部分だけが出来ていて、それに後付の形で前後の部分をくっつけました。 -- ◆MoiSlbQnQw (2008-08-18 18:01:04)
  • そうそう、カラオケで歌ってるとき脳内で変なストーリーが浮かんで
    やたら熱唱したら、周りがドン引きっていうのはよくあることです。妄想族の俺にとってw
    でも、このかがみはこわひww -- 名無しさん (2008-08-01 12:57:16)

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