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雉も鳴かずば

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匿名ユーザー

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「ゆきちゃんって、親戚にお医者さんっているの?」
「いえ? いませんけど」
 家庭科実習の後片付け中のこと。つかささんから、心当たりのない質問が投げかけられました。
「あれっ? そうなんだ。私はてっきりそう思ってたんだけど」
「ええ。でも、それが何か――」
「高良さん、各班の片付けチェックを手伝ってくれる?」
「あ、はい、わかりました。またあとで聞かせてくださいね」
「うん、がんばってねー」
 どうしてかを聞いてみたかったのですが、先生からのお願いでは仕方ありませんね。
 私は思考を切り替えて、各班の後片付けの見回りをすることにしました。

「みゆきって、親戚にお医者さんがいるのね」
「えっ? い、いませんよ?」
 お昼休み、かがみさんといっしょに飲み物を買いに行く途中。
 そのかがみさんから、つかささんと同じような言葉が発せられました。
「えっ? でも、みゆきの将来の希望ってお医者さんでしょ?」
 つかささんと違って、何故か断定形だったのがちょっと気になりますね。
「ええ、それはそうですけど……でも、どうしてなんですか?」
「こなたと出かけてたときに、なんかそういう感じの広告を見たーってね。私は見逃しちゃったんだけどさ」
「そうなんですか」
 広告……と言われても、私にはなんだかピンと来ません。とりあえず、あとで泉さんに聞いておきましょう。

「みゆきさんっ! みゆきさんってばいつ結婚しちゃったのさー!」
「えっ、ええっ?!」
 い、泉さん、まだ放課後になったばかりなのに、なんてことを言うんですか?!
「し、してませんっ! 結婚なんてしてませんっ!」
 泉さんの発言のせいで、教室内がざわざわしてます……ううっ、やっぱりなーとか
言ってるのは誰ですか? 後でひとことは言っておきたい気分です……
「あれっ、そうなの? でも、あの看板を見たらてっきり」
「さっきもつかささんとかがみさんに言われましたけど、一体なんなんです? 私、
全然心当たりないんですよ?」
「いやほら、アキバから帰るときにたまたま見つけてね。結婚して籠絡して病院を乗っ取っ――」
「……泉さん、その話を詳しくお聞かせ願えませんか?」
「っ?!!??!?!」
 あら? 突然泉さんの表情が固まりましたよー?
「さあさあご遠慮なさらずに、泉さんの思ったままを言ってください」
「ごっ、ごめん、謝るっ! 謝るからっ、許してってばー!!」
 私が泉さんの肩に手を置くと、泉さんはガクガクと震えながら涙を流し始めました。
 何故泣いてるかはわかりませんけど、こうなったら徹底的に聞いておきましょう。

「ほら、ここだよ、ここ」
「……確かに、ありますね」
 泉さんに各駅停車で連れられてやってきた、糖武線のある駅のホーム。
 そこには確かに『高良病院』という看板が掲げられてました。
「いやー、高良って名字は珍しいでしょ? だから親戚か何かかと思って、そのうちに
ついついみゆきさんが結婚したんじゃーというヨコシマな思考が」
「そんなこと考えるなんて、ひどいです……」
「だ、だからさっきからずっとごめんって言ってるヨ?」
 目に少し涙を溜めながら、私のことを見上げる泉さん。
 放課後に話を聞こうとしてからずっとこんな感じなのですが、小動物みたいでなんだかかわいいです。
「はあ……まあ、確かにこんな感じに自分の病院を持てたら、とは思いますが」
「で、できるよ。みゆきさんならきっと大丈夫だってば」
「その時には、かわいい受付さんが必要かもしれませんね」
「……み、みゆきさん、どうして私のことを見てるのカナ?」
「ふふふっ。泉さん、やっていただけますよねー?」
「え、ええっ?! ちょっ、わ、私は無理っ!」
 逃げようとした泉さんですが、私はその小さな体をぎゅっと抱きしめて捕まえました。
「はっ、離してっ! 胸にっ! その胸に捕えられるーっ!!」
「ふふふふふっ」
 ……今日の償いは、まだまだこれだけじゃ足らないんですからね?

















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コメント:
  • 高良って苗字って結構いるよね -- 名無しさん (2008-05-24 07:31:27)
  • なんかニヤニヤほんわかしました -- 名無しさん (2008-05-23 23:08:32)
  • 高良病院実在ある意味凄い
    -- 九重龍太∀ (2008-05-23 22:08:09)

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