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ユア・マイ・オンリー

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「ゆたか?」
 みなみは目を覚ましていの一番にそう口にした。
 自分でもそれはどうなのだろうと思ったが、
 真っ先にゆたかのことが頭に浮かんでしまったのだから仕方がない。
 そして当のゆたかはというと、みなみに優しく抱かれながら、すぅすぅと穏やかに寝息を立てていた。

 今日は休日。みなみはいつものように、ゆたかを家に招いていた。
 午前中はゆたかが持ってきてくれたメイプルパーラーの厚焼きクッキーをお供に話に花を咲かせたり、
 みなみがゆたかのために作った曲をピアノで演奏したりして、楽しい時を過ごした。
 そして昼食を取った後ベッドでくすぐりあってじゃれあっていたら、
 丁度まぶたが重くなってくる頃合だったこともあって、いつの間にか眠ってしまったのだ。
「ゆたか……」
 無垢な寝顔を見つめているとみなみはどうしようもなく愛おしくなり、ゆたかの髪をそっと撫でた。
 ゆたかは起きる気配なく、無防備な寝顔をみなみに向けている。
 その様子にみなみは愛おしさが最高点に達し、
 はやる気持ちを抑えながら、そっとゆたかの体に回していた手を解いた。
 そして覆いかぶさるように両肘をゆたかの体の両側につき、
 愛しき寝顔を先ほどまで以上に間近で見た。
 するとみなみには、すぅすぅと息をつくその口が、まるでキスをねだっているように見えた。
 断続的に息をついてくれているのは、きっと「口はここですよ」と知らせてくれているからだ。
 なんて親切なゆたか。待ってて、今キスするから。
 みなみは思考回路を自分に都合の良いように無理やり繋ぎ合わせた。
 しかし、
「ふぁ、みなみちゃん……?」
 と、まぶたを少し重たそうに持ち上げるゆたかと目が合ってしまい、
 みなみの折角繋いだ回路はこの予期せぬエラーで機能を停止させてしまった。
 しかし、「自分の名が舌足らずな声でとろんとした目のゆたかに呼ばれた」という情報が
 少し遅れてみなみに伝わるやいなや、その回路は燃えるように、いや、萌えるように出力全開で再起動し、
 ゆたかの唇を射止めるための信号をみなみの口へと素早く送った。

 しかし、それが受理される寸でのところでまたもエラーがみなみを襲った。
 ゆたかの唇によって、先にみなみは口を塞がれてしまったのだ。
 頭に後ろ手に回されて引き寄せられ、みなみは抗う隙もなくゆたかの餌食となった。
 唇にふわりとした感触が伝わったのも束の間、
 するりと口内に熱を帯びたものが入り込み、みなみの意識をぐしゃぐしゃにかき乱していった。
 何も考えられない人形になるのはすぐだった。
 みなみの思考が完全に落ちると、ゆたかはそれを喜ぶかのようにみなみを強く抱き寄せ、
 唇を悩ましげに這わせながら尚もみなみの中を好き勝手に遊んだ。
「ん……ん……」
 みなみはされるがまま、切なげな声を出すだけのゆたかの玩具になっていた。
 しかしみなみは抵抗などせず、それどころか、その役目を甘んじて受け入れていた。
 頭が麻痺して体の自由が利かないが、それで良かった。
 ゆたかを感じられる器さえあればいい。あとはゆたかに全部持っていかれてもかまわなかった。

 みなみは自分がどれくらいゆたかのものだったのか知る由もなかったが、
 気がついたときにはゆたかは既に口を離しており、みなみのことをじっと見つめていた。
「ゆたか……」
「駄目だよ、みなみちゃん」
 ゆたかはみなみが思考を取り戻すまで待っていたのか、ようやくといった具合で口を開いた。
「順番は守らなきゃ。次は私の番だもんね」
 そう言ってそれまでの少し真剣だった表情を緩め、ゆたかはふわりと微笑んだ。
 その様子にみなみは緊張が解けたのか、力尽きたのか、崩れるようにゆたかの体に頭を埋めた。
「だから、これはお仕置きだよ。順番を抜かそうとしたみなみちゃんへの、お仕置き」
 しかしこれはお仕置きといっていいのだろうかと、みなみは回りきらない頭でそう思った。
 けれど、ゆたからしい。キスを順番こにし合おうと言い出したのもゆたかだった。
 それを破ろうとした罰が、キスだなんて。
 みなみはゆたかに気付かれないように、くすりと笑った。

 ゆたかは「お仕置き」発言の後、しばらく何も言ってこなかった。
 みなみもゆたかの体に顔を埋めているのがあんまりに心地よく、
 言葉を発するのもなんだか億劫になっていたので、何も言わなかった。
 このまま二人揃って二度目のお昼寝タイムに突入するのかな、と
 みなみはかすかにまどろみが自分を襲い始めたのを感じて思った。
「ありがとう、みなみちゃん」
 みなみがその声を聞いたのは、下りはじめたまぶたが完全に閉じてしまうよりもほんの少し前だった。
「こんなに好きな人、今までも、これから先もずっとみなみちゃん一人だよ」
 その言葉にみなみははたと覚醒し、心の底から幸せな心地にさせられた。
 ゆたかに好きだと言われることは、みなみの心をひどく落ち着かせる。
 この世のどんな調べも、これほどまでにみなみを癒してくれはしない。
 小早川ゆたかという人物が、岩崎みなみに好きだと伝えるときの声が、みなみはたまらなく好きだった。
「どうしたの、突然」
 本当は理由なんてそれほど気にならなかったが、みなみはこの先、
 またゆたかが自分の大好きな声で何かを言ってくれることを期待して聞いた。
「今があんまりにも幸せすぎて」
 そう言ってゆたかは、埋めていたみなみの頭をそっと抱いた。
「こんな風にずっと一緒でいられたらいいな」
 思うよりも先に、みなみは言葉に出していた。
「きっと、ずっと一緒だよ」
 みなみは寝ていたゆたかと共に体を起こし、そしてそのままふわりと抱き寄せた。
 そしてこの声がゆたかにとって天上の調べであることを願いながら、
「だって、私は世界で一番ゆたかが好きだから」
 そうゆたかの耳元で囁いた。
「えへへ……大好き、みなみちゃん」
 ゆたかは体を離すと、みなみに軽く口づけた。
 ゆたかは少し頬を染めており、それだけでもう何もかも許せてしまいそうだったが、
 みなみはまたこの先を期待して、少し意地悪な笑顔を作ってこう言った。
「順番抜かし、だよ。ゆたか」
 それを聞いて、ええ、とゆたかは慌てた素振りになる。 
「罰として、今日一日キスは禁止」
 さらに駄目押しの一言で、ゆたかは泣き出しそうな表情になってしまった。
 みなみは顔に笑みが浮かんでくるのをこれ以上堪えることが出来なくなって、
 目に涙を浮かべ始めているゆたかに軽くキスをして抱きついた。
「私からしか、しないから」
「もう、みなみちゃんのばかっ……でも、」

 ――大好き。

 ゆたかはまたみなみの一番好きな声で、そう言った。



















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  • あれ、ブラックコーヒーが甘いぞ… -- 名無しさん (2011-05-09 02:25:23)
  • そのネタいただきーーーー!!!!! -- ひより (2010-04-19 04:07:11)
  • がはあっ…反則だ…
    -- 名無し (2010-03-09 15:59:40)
  • 血が止まらない。ビクンビクン -- 名無しさん (2009-12-07 09:08:42)
  • 吐血が出るほどいいっ! -- 名無しさん (2009-09-06 17:31:22)
  • バカップルマンセー!!! -- 名無しさん (2008-08-25 19:27:52)
  • ったく このバカップルめww -- 名無しさん (2008-08-23 09:28:52)
  • いちゃいちゃしすぎだwww -- 名無しさん (2008-08-13 19:37:41)

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