kairakunoza @ ウィキ

あふ☆いや ~らき☆すたAfter Years~ Ep.3

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
爆音と銃火に彩られた大広間。菫色のツインテールをなびかせて、少女が踊る。
【BGMとキーを叩く音に彩られた部屋。青いロングヘアを後ろで束ねて、作者がうなる】

少女の掌から、怒りと悲しみが銃弾に乗って放たれる。
【作者の掌から、勢いとノリが文字に乗って放たれる】

彼女の腕の一振りで、次々となぎ倒されていく兵士達。
【作者の指の一振りで、次々となぎ倒されていく物語の中の兵士達】

―戦いは、まだ終わらない。
【―執筆(たたかい)は、まだ終わらない】


日向こなた、ただいま猛然と新作執筆中。今回はアクションシーン満載ですよ。


『物語の神様』が降りてきた今、私に怖いものはない。
ばら撒いた伏線の糸が整然と絡み合って、一本の綺麗な組み紐が現れるこの快感。
話の緩急もバッチリ決まって、なだれ込むように飛び込むクライマックス。

……これが!これこそが!!小説家(ストーリーテラー)稼業の醍醐味ってもんですヨ!!!
食事?睡眠?そんなもん後回し、後回し♪

……いやー、今回はかなりギリッギリだったんだけどね、神様降臨。


―――――――――――――――――――
あふ☆いや ~らき☆すたAfter Years~
    Episode 3. ともだち
―――――――――――――――――――


「……あ、うん、大丈夫。間に合うよ~」
『無理されてませんか?睡眠はきちんと取られてますか?』
「いやー、ここ一週間で3時間ぐらいかな?……まあ、締め切り間際はいつもこんな感じだし、寝てなくても不思議と調子がいいんだよね」
『ダメですよ、泉さん……忙しいのに身体の調子がいいと思っていたら、急に倒れることもあるんですから』

……あ、それは聞いたことあるな。いくらでも働ける気がする、とか言ってた人がバタンと……

「だいじょぶだいじょぶ、無問題(もーまんたい)。あと少しだから。ちゃちゃっと仕上げて打ち上げやって、あとは三日間ぐらい寝てやるんだ♪」
『泉さん……やっぱり、日を改めたほうが……』
「ちっちっち。せっかくみゆきさんが時間取れたんだから、がっつり迎撃させていただきますヨ?」
『でも……』
「もー、相変わらず心配性だなぁ、みゆきさんは。自分の身体は自分がよく知ってるよ。大丈夫だって。……んじゃ、待ってるからねー」

一方的に通話を切って、ケータイを充電器に戻す。
そして私は、『♪ヤンマーニヤンマーニ……♪』のリフレインとともに、再び戦火の中に身を投じるのでありました。

原稿が上がったら、つかさのお店で打ち上げだ。気合も入ろうってもんですよ。
頑張れ、日向こなた先生!うまいビールが待ってるぞ!


  -x-  -x-  -x-  -x-  -x-  


誤字脱字や変な言い回し、論理の破綻やヤバイ表現……ん、大丈夫。問題なし。
いつものように、ボタン一発で編集部へメール送信。
それから、担当のトミタさんに電話。受信の確認と、次回作打ち合わせのアポ取り。

『OKです。……それじゃ、お疲れ様でした』
「あじゅじゅしたー(笑)」

……よっし、終わったっ!!
日向こなたは店じまい。泉こなたに戻りましょー。

壁の時計は、待ち合わせ時刻を5分ばかり過ぎてる。もうすぐみゆきさんが迎えに来るはず。
そういえば、新車買ったって言ってたなあ。
赤いMINIだったっけ?みゆきさんらしいって感じするよね。

そろそろ秋風も冷たくなってきたし、フォークロア調のブラウスにタイトなGパン、男物のGジャンとぶかぶかの鳥打帽で武装完了。
気の置けない仲間だし、服装も堅っ苦しくない感じのほうがいいよね。
……なに、センスないって?うっさいやい。

よっこらしょ、と立ち上がる。足元がちょっとふらつく。
おー、やっぱちょっとグロッキーだなこりゃ。打ち上げ済んだらさっさと寝よう。

窓の下に、白い屋根の赤い車が停まる。短いクラクションが二回。……来た来た、みゆきさんだ。

とたとたと階段を下りる。ひっそりとした家の中。
お父さんは取材旅行中。くっそー、売れっ子はいいなあ。
まあ、こちらはこちらで楽しませてもらうからいいけどね。

さーて、どの靴にしようかなー……
と、下駄箱に手をかけた、その時。

世界がぐらり、と回って、横倒しになって止まった。
左の頬に感じる、ひんやりとした床の感触。

……あれ?

擦り切れたフィルム映画のような視界。みゆきさんが私を見下ろし、立ちすくんでいる。
淡い桃色の髪が、白い肌が……色を失って、闇の中へと、溶けていく。

「泉さん!?……泉さんっ!!」

暗闇の中、呼び声がやけに遠い。
額に触れる指先の感触が、痺れに飲み込まれて、消えて、いく。

『……泉さん!しっかりしてください!…………いず…………』

……あは、ちょっと、転んじゃった。

「………ずみ………ん…………」

……今……起きる……からね。

『………………』

だってさ……久しぶりに……みんな……で………………


…………


  -x-  -x-  -x-  -x-  -x-  


「……ん……」

……暗闇に、一筋の光。
眩い光が、ゆっくりと暗闇を押し広げていく。

淡い桃色と菫色の影が、ゆっくりと像を結ぶ。

「泉さん!……よかった、お気づきになられたんですね」
「こなちゃん!……よかったぁ……」
みゆきさんとつかさが、目に涙を浮かべて私の傍に座ってる。

「私……どうしたんだろ?」

見慣れない白い部屋。
左腕に違和感を感じて視線を移す。二の腕から伸びたチューブが、点滴のパックに繋がってる。

……ああ、そうか。ここは……

「泉さんは、過労で倒れられたんですよ」
吊り上がった眉と、鋭い視線。そこそこ付き合いは長いのに、一度も見たことのなかった、みゆきさんの険しい表情。

「あー、いや、その……約束、パーにしちゃってごめん」
残った右手で、頭を掻く。

「そんなことを怒ってるんじゃありません」
声のトーンが一段と低い。隣でオロオロしてるつかさが、小動物みたいでちょっと可愛い。くそぅ。

「……どうして、そんな無理をされたんですか?私のためですか?」
うぅっ、妙な緊迫感。しかも、こちらは逃げも隠れもできないベッドの上。

「いや、そういうわけじゃないけど……」

みゆきさんの表情が、少し崩れた。
怒りと悲しさが入り混じった、微妙な視線。

「泉さん?」
「は、はいっ?」
思わず敬語になってしまう私。

「私は……お友達に約束を反故にされることよりも、お友達が私のために無理をすることのほうが……ずっと辛いです」
声が震えてる……みゆきさん、泣いてる?

「みゆきさん……」
「……そんなになるまで無理をされていたのに、……どうして……」

そこで、言葉が続かなくなった。
軽く握ったみゆきさんの両手が、小刻みに震えてる……

「……みゆきさん?」
右手を伸ばして、みゆきさんの左手に重ねる。

「本当、ごめん。ちょっと無理したのは事実。あやまるよ」
「泉さん……」
「それより、ありがとね。そんなに私のこと、心配してくれてたんだ……」

みゆきさんの向こう側で、つかさも泣いてる。
私のことを思って、泣いてくれる"ともだち"が二人。

私って、やっぱり幸せもんだよね。
ネットの中になら"友達"はたくさんいたけど、それはモニター越しだけの付き合い。
ログインしなくなればすぐに疎遠になってしまうぐらいの、緩やかな付き合いでしかなかったけど……

こんなに私のことを思ってくれてる、"ともだち"がいるんだから。

……あぁもう、こっちまで泣けてきちゃったじゃん。

「……こなちゃん?」
涙をぐしぐしと袖で拭いながら、つかさ。ちゃんとハンカチで拭かないと、せっかくのよそ行きが台無しだよ?
「おねえちゃんには、連絡しなくていい?」

「ん、かがみには黙ってて」
「……え?」
きょとん、とした顔。ほんと、小動物チックだなぁ。

「命に別状があるわけでもないんだし、大事な時期にこんなことで、余計な心配かけたくないからさ」

かがみは今、大事な時期。
遠い街で、弁護士を……自分の夢を目指して頑張ってる。

今は私のことなんて考えないで、夢に向かって一直線に突き進んでほしいから。

『困った時に頼るのが友人、困った時には頼らないのが真の友人』、って言ったのは誰だったかな。
……いや、みゆきさんやつかさが真の友人じゃないって意味じゃなくて、えーと。

「うーん、こなちゃんがそれでいいなら、そうするけど……」
つかさは、なんとなく納得してない感じ。
みゆきさんは優しく微笑んでる。私の気持ちを察してくれたみたい。あとでつかさに説明しといてね。

「本当、二人ともありがと。この埋め合わせはきっとするからね」
私はめいっぱいの笑顔で、二人の気持ちに応えた。


その時。

「こなた!大丈夫かっ!?」
病室の扉が勢いよく開かれて、お父さんが飛び込んできた。ゆーちゃんも一緒だ。

「うわぁっ!?」
思わず飛び退る一同。……でも、時すでに遅し。

お父さんの顔が「いいもの見せてもらいました」とでも言いたげに、ニンマリとほころんだ。

感動の名シーン、ばっちり目撃されちゃいましたヨ。
……は、恥ずい。これは恥ずい。うぁぁあああ。


― Fin. ―



コメントフォーム

名前:
コメント:
  • このシリーズはイイっすね! スレ内の人気も高いし、私も好き~ -- 名無しさん (2011-04-11 21:57:09)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー