kairakunoza @ ウィキ

泉こなたは大変なフラグを立てていきました

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「…こなた来ないわね」
「そうだねぇ…」
たくさんの人達が行き交う駅前で、つかさと一緒にこなたを待っていた
今日から一週間が始まるってのに、またネットゲームで徹夜でもして寝坊か?
「どうせまた寝坊でしょ、先に行ってよ、つかさ」
「も、もうちょっと待っててあげないの?」
つかさが眉毛をハの字にまげてこちらの様子をうかがう
「待ってたらこっちまで遅刻しちゃうじゃない、遅刻なんてこなただけで十分よ」
「…それはちょっと、ひどいかも」
「ほら、行くわよ」
「う、うん」
なんだかんだ言って、つかさも遅刻は嫌なようだ
つかさを急かして、バス停へと急ぐ
「待ってー」
「…ん?」
ふと、後ろの方から聞きなれない声がした
まあ…私達には関係ないか、と無視して、つかさと並んで歩き出す
「待ってってばぁ~、かがみぃ~つかさぁ~」
「へ?」
「ふぇ?」
その聞きなれない声は自分達に向けて発せられているものらしい
二卵性といえどもやはり双子、二人同時に間の抜けた声を出して、後ろを振り返るかがみとつかさ
そこに、見慣れれない男の子が走ってきた
「ふぅ、間に合ったぁ~」
―――誰だこいつ?
男の子にしては少し小柄な背格好、それでも私達よりは少し背が高いけど
声もなんだか高め。顔は……イケメンの部類に入るであろう
結構、私好みかも…って私は何初対面の人の評価を…
「…どったの?二人とも」
それにしても馴れ馴れしいやつだ…どこかであったことあるのかな…
どことなく雰囲気が仲のいい友人に似ているような気がする
「あんた誰よ?つかさ知ってる?」
「……」
つかさから返事が返ってこない
男の子をじっと見つめるつかさ
「つかさ?」
「へ!?ん、んん、知らない人」
首を横に振り否定するつかさ
頭の中にある単語が浮かぶ
『ナンパ』
「あんたもしかして…ナンパ?もしそうなら、私達今急いでるから、他あたって頂戴」
「あ、お姉ちゃん」
つかさの手を掴み、踵を返してバス停へと向かう
「あれ?もしかして本当に分からないの?」
「分からないわよ、ていうか会ったことないでしょ、私達」
「いつも会ってるんだけど…もっとよ~く見てよぉ」
いつも会ってる?
「……」
言われたとおりもう一度よ~~く見る
ぱっと見はなんだか女の子みたいな感じなんだけど
立ち振る舞いが凛としていて、全体的にかっこいいと思う
やっぱり私好みの男の子だ…いやだから私は何を…
他に特徴といえば……
深いブルーの髪の毛、頭の上に飛び出たアンテナ
それから…左目の下にあるホクロ…泣きボクロくらいだろうか
―――そういえばこなたに似ているかもしれない
「ねぇ~、分かったぁ?」
首を傾げるしぐさが、男の子なのになんだかかわいい
「やっぱり分かんないわよ、私の友達に似てるけど」
「……その友達とは?」
「こなたっていう子なんだけど」
あ、名前なんて言って大丈夫だろうか
「……」
何かを期待した瞳で、私を見つめる男の子
そんな見つめられると…恥ずかしいんだけど
……あ
「もしかしてあんた…」
「お!?」
「こなたの親戚の人とか?」
眉間にしわを寄せ
私をかわいそうなものを見る目で見てくる男の子
こいつむかつく……
「はぁ…ちょっと姿が変わったくらいで、私が誰だか分からなくなるなんて…私への愛が足りなかったんだね」
どうやらこいつの一人称は『私』のようだ、男の子なのになんか変わっている…というか愛ってなんだよ
…と、いままで口を閉ざしていたつかさがこんな言葉を言った
「…もしかして、こなちゃん?」
なにを言ってるんだつかさは…あいつは一応女だろう
「お~!!つかさは分かってくれたか!!さすがは心の友だぁ~!!」
「はぁ?」
何を言ってるんだこいつまで
「…かがみはだめだめだねぇ」
「いや、初対面のやつになんでそこまで言われなきゃいけないんだ」
またもや捨てられた子猫を見るような目でこちらを見てくる
つかさも同じ顔をしている
…こいつら
「だーかーらー」
男の子は言葉を溜めると信じられないことを言い放った
「私がこなた、泉こなたなんだってば」
「……は?」


『泉こなたは大変なフラグを立てていきました』


こいつ馬鹿か?
何意味の分からないこと言ってるんだ…
「でもこなちゃん、どうして男の子になっちゃってるの?」
「ん~自分でも分かんない…朝起きたらこんな風になってて」
そういって両手を広げる自称「こなた」の男の子
私はいつの間にやら蚊帳の外だ
「へ~そんなことってあるんだねぇ」
いや、ないわよ
物珍しそうに男の子を見るつかさに心の中で突っ込んでおいた
全身を撫で回すように見るつかさの頬が、なんだか赤い
「どったの、つかさ?なんだか顔が赤いけど」
「へ!?な、なんでもないよ!!」
あわあわして慌てて目線を逸らすつかさ
「??」
その状況がいまいち理解できていない様子の男の子
私はなんとなく、つかさなぜそんな反応をしたのか理解できた、双子だからかも
「さてさてかがみんや」
目線をつかさから外してこちらに向ける、つかさが寂しそうな顔になった
「まだ、私をこなただと認識しないおつもりかな?」
腕を組んでこちらを見据える
「……百歩譲ってこなただとして」
私は頭の中で殺伐としている単語たちをきれいに並べて口から発する
「ぜんぜん納得できないわ。昨日まで生物学上女だったやつがいきなり男になるなんて」
「なっちゃったものは仕方ないじゃん」
仕方ないって…
「それにほら、逆の状態だけど『か○まし』とかもあるんだし」
「あれは漫画だろうが!!」
……認める、やっぱりこいつこなただ
「…変なもんでも食べたんじゃないの?」
「さぁ~」
立ったまま押し問答してても仕方ないので、バス停に向かいながらそんな会話をする
「さぁってあんた…自分のことでしょ?」
「だってぇ…あ」
「どうかしたの?こなちゃん」
こなたを見つめるつかさの目がなんだかいつもと違う
「そういえば昨日、みゆきさんに『背が伸びる薬』をもらったけど…そのせいかな?」
…明らかにそれじゃないか…というかみゆきは何を渡してるんだ
「みゆきさん今、新薬の開発にはまってるんだってさ、それでついでだから作ってもらったんだ
 そのときに『人体投与は泉さんが初めてなので、副作用が出るかもしれません』って言ってた気がする」
いやいやいや
「でも、薬で男の子になったんなら、元に戻す方法もあるんじゃ?」
そんなことを口走るつかさ
「まぁーその辺は今日みゆきさんに会ってみなきゃ」
かくして、今日は
いつもと同じなんだけど、何だか違うメンバーで登校することとなった
「そういや、その制服とかどうしたの?」
「ん?なぜかお父さんが持ってて、なんか知らないけれど泣きながら『これ着てけ…こなた』っていいながら渡されて」
そりゃあ娘が息子になったら泣くわよね…あのおじさんなら…てか男子の制服、なんで持ってるんだろ…


教室が騒がしい
まぁ、当たり前だと思う
いままで女の子だった人が、いきなり男の子になって登校してきたんだもの

「いやぁ、朝起きたら……」
「いやいや、してないって…」
「……男の子って結構……」
いまこなちゃんの周りには、いろんな教室からギャラリーが集まっている
なんとなくだけど、男の子よりも女の子のほうが多いような気がする
その女の子の中には、頬を赤く染めて見つめる子も結構いる
理由は分かる、私もおんなじ状態になったから
――― 一目ぼれ
はっきり言って、いまのこなちゃんはすごくかっこよくて、かわいいと思う…あれ?どっちだろう、どっちもかな
見た目もそうだけど、元から人懐っこい性格もあってか、全員に対してフレンドリーに話すこなちゃんは、すごく好印象だ
こなちゃんが、向日葵のような笑顔を見せるたびに、周りの女の子が次々落とされていく
実際、女の子の時も同性にもてていたこなちゃん
見た目からか、スポーツ万能だからか、性格からか…
他の女の子が好きになってしまうのもすごく仕方のないことだろうけど
その…こなちゃんは私の…と、友達なわけで…
「つかさ」
「うひゃい!?」
突然話しかけられて素っ頓狂な声を上げてしまった
「どうしたのつかさ……首根っこ掴まれた猫みたいな声出して」
こなちゃんは、自分が男の子になったということに自覚がないのだろうか
顔が…ち、ちち、近い…
「な、何こなちゃん?どうかした?」
できるだけ平静を装って声を絞り出す
「んとね、さっきみゆきさんに聞いたら、今日中には元に戻す薬を作ってくれるって」
「そ、そうなんだ」
「うむ、だから明日には元に戻れると思うよ」
「そっか…よ、よかったね、こなちゃん」
笑顔でそう言う、ちょっと引きつってたかもしれない
「ところでつかさ、聞きたいんだけど」
「何?」
「その…気のせいかもしれないんだけど…こころなしか、女子の視線に危険な香りが…」
「え…」
周りを見渡す…本当だ
なんだかみんな殺気立っている、こなちゃん…いくらなんでも、もてすぎだと思う
「みゆきさんもしかり」
「ゆ、ゆきちゃんも!?」
恐る恐るゆきちゃんの席を盗み見る
確かに、赤く染まった頬に手を添えて、うっとりした表情でこなちゃんを見てるけど…
なんか、あれは他の子と違う気が…なんていうか、新しいおもちゃを見つけた子供のような…
「ほらーお前ら、席着け、HR始めるで~…お前らも自分の教室戻らんかい」
助け舟がやってきた、これでひとまずは安心…だと思うたぶん……
「あ、泉。さっきそうじろうさんから電話あってな、そのことで話しあるから、後で職員室来るんやで?」
「え?あ、はい」
指を咥えて残念そうに教室から離れていくギャラリー達
さすがのこなちゃんもなんとなく危なかったということを感じたらしく
うなじを伝って変な汗が流れているのが分かる
うなじ……こなちゃんの、うなじ…
!!
首を横にブンブンと振って雑念を追い払う
何を考えてるんだろうか私は…


今日は朝からゆたかのお姉さん、泉先輩の噂でもちきりだった
噂によると、生き別れた双子のお兄さんが来ているとか、性転換したとか
どれも嘘っぽいものばかり
少し気になったので、ゆたかにそのことを聞こうと思った
「ゆたか…」
「あ、なぁに?みなみちゃん」
ゆたかはいつもの笑顔で答えてくれる
「泉先輩のことなんだけど…」
「え…」
表情が翳った
私、なにかまずいことでも聞いてしまったのだろうか
「みなみちゃんも……こなたお姉ちゃんのこと…好きなの?」
「え…?」
私から目を逸らし、悲しそうな顔をして、俯き言い放った
私は、なぜそんなことを聞いたのか、その理由が全くわからなかった
取り合えず、理由を言っておいたほうがいいと思い、言う
「違うよ…少し…気になっただけだから」
「そ、そっか…よかった…」
「……うん」
本当に安心したような顔をするゆたか
どうしても気になってしまって、聞かずにはいられなかった
「何か…あった?」
びくっと肩が震えた
少しづつこちらに顔を向ける
その顔は、こころなしか赤く染まって見える
ゆたかは恐る恐る口を開く
「…私…お姉ちゃんのこと、好きになっちゃったかもしれないの…」
「……え?」
突然の告白に、最初は何を言っているのか、理解できなかった
ゆたかはそのまま、まくし立てるように言った
「今朝ね、お姉ちゃんを起こしに部屋に行ったの、そしたらね…」
スカートをぎゅっと掴み肩を震わせて気持ちを吐き出す
「こなたお姉ちゃん、まだ寝てたんだけど…いつもとぜんぜん違くて…すごくかっこよくて…
 寝てるお姉ちゃんを見ただけで…胸が張り裂けそうになって…それで」
だんだん涙声になっていくゆたかに耐えられなくなり遮ってしまった
「大丈夫、ゆたか…分かったよ、それ以上言わなくていいから」
「……」
ゆたかが悩んでいるのなら
それがどんな理由にせよ、力になってあげたい
ゆたかは私の、大切な友達だから
「私で良ければ…力になるから…」
「…あ……ありがとう、みなみちゃん」
目じりには涙が浮かんでいたけれど
ゆたかはいつもの笑顔で笑いかけてくれた


「ふぅ…」
今日はなんだか授業が頭に入ってこない
まぁ理由は分かっている
「ん…」
ふと外を見ると目に止まったのは
「こなた…」
体育の授業なんだろう
なぜか男子に混ざってサッカーをするこなた(外見は男)がいた
華麗なドリブルで、密集する男子の間を難なくすり抜けていく
ゴール付近にたどり着くと、ボールを自分の上空に蹴り上げた
体勢をクルッと180度横回転させ、ボールを追うように跳躍
後ろ向きに回転しながら、ゴールに向かってボールを蹴り込んだ
―――オーバーヘッド
ボールが吸い込まれるようにゴールへ
こなたの方は、転ぶでもなくそのまま一回転して足からきれいに着地
…あいつ人間か?
そして、そのゴールの刹那
『きゃあぁあぁぁあああぁあぁぁぁあああ!!』
黄色い声援、よく見るとゴールポストの向こう側に人だかりができていた
しかも全員女の子
『泉せんぱーーい!!こっち向いてくださーーーい!!』
ギャラリーの方を向き、あの笑顔で答える…けれど、どう見ても引きつっている
にもかかわらず女の子達はきゃいきゃい言っている
まるで少女漫画とかの世界を見ているようだ…
そんな光景をみて思わず苦笑い…あの子も難儀ねぇ
でも……こなたが私達だけのものじゃなくなってしまったようで、なんだか寂しい
それにしてもこの気持ち…寂しいだけのものなのだろうか?
「柊…おまえも泉に惚れてる口か?」
「ふぇ?」
窓の方を向いていたら、突然後ろから声がかけられた…恐る恐る振り返る
「うちの授業中に、泉の方ばかり見とるとは、いい度胸してるやないか…」
そこには、顔はニコニコしているけれど
こめかみに青筋をヒクヒクさせている黒井先生が、私を見下ろしていた
「あ、いや…こ、これは」
「廊下に立っとれぇええ!!」
「は、はいぃ!!」


「大丈夫?ゆたか」
「ん…大丈夫だよ、みなみちゃん」
授業が終了する間際、気分が悪くなってしまったのでみなみちゃんに連れられて、保健室に向かう
「気分が悪くなったなら、すぐに言わなくちゃダメだよ…ゆたか」
「ご、ごめんねみなみちゃん、その…テストが近いから、どうしても聞いておきたくて…」
「ノートくらい、私がいくらでも見せて上げるから、だからこれからは、無理はしないで…お願いだから」
みなみちゃんの顔がいつも以上に真剣だ
「うん、わかった…これからは気をつけるよ」
「うん、分かってくれたのなら…いい」
みなみちゃんが笑ってくれた、とてもやさしい笑顔
「でも、一緒に授業抜けるんだから、みなみちゃんもノート取れないんじゃ…」
「え…あ…」
みなみちゃんが、おろおろしながら何か考えている
何かいい考えが浮かんだのだろうか、頭の上に電球が浮かんだ
「わ、私が誰かにノート写させてもらって、それをゆたかが写せばいい」
「……えへへ、みなみちゃんかわいいね」
「…ゆたか、あんまりからかわないで…」
すこし恨めしい顔でこちらを見る
「えへ、ごめんねみなみちゃん」
たったこれだけだけど、中学とかではできなかったようなやり取りなので、すごくうれしい
「あれ?ゆーちゃん?」
ドクンッ
心臓が大きく高鳴る
ゆっくりと、声のした方に顔を向ける
体育の後だからだろうか、タオルを肩にかけた、こなたお兄…お姉ちゃんがいました
ドクンドクンと、心臓が脈打つ、たぶん気分が悪いせいではないと思う
「また気分悪くなっちゃったの?」
「う、うん」
「あ、みなみちゃんこんちは~、ゆ~ちゃんに付き添ってくれてるんだ、ありがとぉ~」
「い、いえ、ゆたかは友達なので」
「あれ?」
ふと、首を傾げてクエスチョンマークを浮かべるお姉ちゃん
「もしかして、私がこんな姿だからぎこちないのかな?」
「ぇ?」
「あ、いや…」
「ん~まぁ仕方ないか…二人とも男の子に免疫なさそうだもんね」
肩にかけたタオルの両端を、左右の手でぎゅっと引っ張りながら、そんなことを言うお姉ちゃん
それよりも私は…さっきから匂ってくる、お姉ちゃんの汗のにおいが気になってしかたがなかった
今のお姉ちゃんの体は不安定なのか…男の人の匂いと女の人の匂いがいっしょになっていて…んぅ…
「あ、そうだ!!」
「ど、どうしたの?お姉ちゃん」
突然声を上げたお姉ちゃんに意識を引っ張り戻された
何か閃いたようで、いたずらっ子のような顔をこちらに向ける
「私今生物学上男なわけじゃん?つまり私は今お兄ちゃんなわけよ」
「ぇ?え?」
「だからゆーちゃん」
私の肩をがっと掴んで意気込むこなたお姉ちゃん
ふわっとお姉ちゃんの匂いが強くなってドキッっとした
「ぜひとも呼んでほしい!!お兄ちゃんと!!」
「ふぇえ!?」
お姉ちゃんがそんなことを言い出した
「な、何でぇ!?」
「だってぇ~、妹に萌える兄って言うのを、体験したいんだもん…お願いだよぉ~ゆ~ちゃ~ん」
「うぅ…」
お姉ちゃんに、お兄ちゃんって言うなんて…なんだか気恥ずかしいんだけど…
でも…今のお姉ちゃんに頼まれたら断れないし…むしろ、断る理由もないというもので…
「こ、こなた…お兄ちゃん」
結局…言ってしまった
「……」
お姉ちゃんが固まっている…
なんか『The World』って呟いていたみたいだけど…どういう意味だろ?
「こ」
「こぉ?」
「こ…?」
隣にいるみなみちゃんも、お姉ちゃんの言葉を繰り返す
「これが妹萌えというものかぁああぁあぁああぁあああぁあぁぁぁああああ!!」
「うひゃぁ!?」
「わっ」
すごくびっくりした、みなみちゃんもとてもびっくりしていたみたいだけど
全然そうみえない、流石だと思った
ふと体がふわりと持ち上がった
お姉ちゃん(お兄ちゃん)が私を抱えて走り出していた
「今から保健室に連れてってあげるよ!!お兄ちゃんが!!」
「ぅわ!!お姉ちゃん!?」
活発に動く心臓によって送り出された血液が、体中を駆け巡り、体温を上げる
至近距離で香るお姉ちゃんの匂いに、興奮する
そしてこの格好…「お姫様抱っこ」のせいで、まるで高熱にうなされているみたいだ…
「いやぁ~最初はね、周りの反応が怖くて、こんな体になったことを恨んでたけど…
 こんな萌え体験ができるなら、みゆきさんに感謝しなきゃね♪」
私にウインクしてくるお姉ちゃん、お願いだから…これ以上私を病み付きにさせないでよ…お姉ちゃん…
でも……なんか…『僕と一緒に逃げてくれ!!』『はい!!』なシチュエーションみたいで…
なんだかうれしいかも、なんて…えへへ
「さぁ~付いておいでみなみちゃん!!」
みなみちゃんもお姉ちゃん同様全力疾走
保健室に付いた後、ふゆき先生にこっぴどくしかられたのは…言うまでもないと思います


「はぁ…」
こなちゃんを見失ってしまった
放っておくと、他の女の子達に何されるか分からないので、近くにいなくちゃいけない、と思ってたのに…
キョロキョロとこなちゃんを探しながら廊下を歩く
ガラッ
理科室の扉を勢いよく開ける
今日はどこのクラスも理科室を使う予定はなかったと思う
「…ん~、いるわけないか…あれ?」
理科準備室の扉が少し開いているのに気がついた
隙間から中を覗き込む…誰もいないみたい
扉をあと少しだけ開けて中へと足を踏み入れた…瞬間だった
「つーかーさー♪」
「ひやぁああぁあ!?」
いきなり誰かに抱きつかれた
首を回して後ろを見る、青い髪の男の子…こなちゃんだった
「こんなとこで何してるの?」
私の左肩に顎を乗せてそんなことを言うこなちゃん
「そ、それはこっちの台詞だよ!探してたんだから」
「いんや~すまないね、追っ手を撒くためにここに隠れていたところなのだよ」
「そっかぁ、女の子に追いかけられてたんだ、大変だねぇ…こなちゃ……あ…」
「?」
現在のとんでもない状況に、今になって気がついた
誰もいない理科実験室、二人っきり、触れ合う体…
それが頭の中で反復して…体中が熱くなった
「どったのつかさ、顔…赤いよ?」
「え!?いや!!べ、べつになんでも!!」
自分の気持ちをごまかすためににっこりと作り笑いを浮かべて
目線をこなちゃんから外し、右上を見上げる
「…?……!……むふふ♪」
「えっ……」
この表情は知っている、こなちゃんが変なことを考えている顔だ…
体中の汗腺から汗が流れ出るのが分かる
「どきどきしてるんだ…つかさ」
「い、いや…そんなわけ…」
「今の私の体が男の子だからだね…つかさも男の子、あんまり得意じゃないからねぇ♪」
「ち、違うよ!!どきどきしてるのは、相手がこなちゃんだからで!!…はっ!!」
「ん?」
「あ、いや…な、なんでも」
私が言い終わるか終わらないかの間に、世界が回った
…気がつくと私は、床に仰向けに寝ていて、うえにはこなちゃんがいた
私の顔の両側に手を付いている状態
何がなんだか分からなくておろおろしている私に、こなちゃんは
「ねぇ、つかさちゃん」
今までと違う、まるで男の子のような声で言葉を紡ぐ
「キス…してみようか」
「……えぇええぇぇえ!?」
こ、こなちゃん何言ってるの!?キス!?キスって言った!?
「ななななな、何言って!!こなちゃん冗談は!!」
「僕は本気だよ、君と…キス、したいんだ」
顔も声も雰囲気も…全てが男の子だった、完璧になりきっている
間近で見るこなちゃんの顔は…本当にかっこよくて
いままでに見たテレビの俳優なんかよりも、ずっとかっこよくて…
その顔が今、私の息がかかる距離に迫っていた
「つかさ」
「!!」
つかさの唇に、あと数㍉のところまで自分の唇を近づけながら
今までで一番きれいな声、今までで一番熱っぽい声で
つかさの名前を呼び捨てにする
まさに『一撃必殺』
「……な~んちゃって♪どーおつかさ?ドキドキしたで……つかさ?」
「……グールグール地球は自転してるんだよぉ~、あははは~」
「つ、つかさ!?ちょ!!大丈夫!?」
私の上でおろおろ慌てるこなちゃんは、いつもの調子に戻っていた
こなちゃん…もうちょっと自分の状態……理解しようよ…キュウ~


「はぁーひどい目にあったわ…」
やっと放課後…授業中ずっと立っていたせいで足が痛い
「災難だったなぁ~柊」
「柊ちゃん、足…大丈夫?」
このクラスの友人、日下部と峰岸が話しかけてきた
「このくらいどってことないわよ」
「ふ~ん…まぁ自業自得だな」
「う、うるさいわね」
改めて指摘されるとかなり恥ずかしい…
「4回くらい呼ばれてたのにぜ~んぜん気づかないんだもんな」
「え!?そんなに呼ばれてたの!?」
「「うん」」
二人が声を揃えて言う
「うぐ…」
「いやぁ、あの時の柊の艶っぽい顔…どうせなら没収覚悟で写メしとけばよかったぜ」
「す、するな!!」
なにを考えてるんだこいつは…やっぱりこなたと日下部は同じノリなんだと思う
「まぁ、気持ちは分からないでもないな…ぶっちゃけ相当いけてるもんな、今日のちびっ子…あ、今はちびじゃないか」
「うん、本当に。私も乗り換えそうになってしまったもの」
あれ?峰岸が黒い…
「わ、私は別に…こなたのことなんか…」
「取り合えず柊ちゃん」
「な、何?」
「はやくこなたちゃんのところ行かないと、誰かに取られちゃうよ?」
「あ!!そうだった!!……あ…」
しまった…
日下部がニヤニヤ、峰岸がニコニコしながらこっちを向いていた
「ほらほら早く行かないとな」
「う、うるっさい!!黙ってなさいよ!!」
乱暴にカバンを掴み、教室から出て行く、二人が手を振って見送っていた
夕日で教室が紅色に染まっていたけど
私の頬の紅潮は、ごまかせなかっただろう


3年B組前に到着
「…か、噛んだりしたら変に思われるわよね…落ち着いて話しかけなきゃ」
こほんこほんと2回咳払いして元気よく扉を開け放つ
「おーっすこなた!!いっしょに帰……ろ…」
赤く染まる教室に残っていたのはこなただけ
窓を開け、近くの机に腰掛けている
外を見つめるその瞳の中には、遠くに沈んでいく太陽がうつっていた
何かに思いを馳せているのだろうか
少しだけ悲しげで、少しだけ疲れているような表情に、少しだけ混ざる笑顔
夕日をバックに黄昏るこなたの姿は
一目惚れなんてレベルでは収まりきらないほどの衝撃を私に与えた
「お、かがみ~ん遅いじゃん。待ってたんだよぉ?」
こちらに気づいたこなたが、こちらに歩いてくる…
「どったのかがみん?帰ろうよ」
「……つかさとみゆきは?」
「つかさとみゆきさんは、用事があるからって先に帰ったよ」
「……そう、じゃあ帰ろっか…」
「…?うん」
二人で並んで教室を出た

帰り道、『今日は疲れたからどこも寄らない』
そうこなたが言ったので
「じゃあ私も行かない」
とだけ言って、こなたの隣を歩く
二人の身長の何倍もある影が、私達の前をゆらゆらと揺れている
こなたは、自分の影だか私の影だか…どちらかの影を見据えて、こう言った
「かがみ…何かあった?」
私の顔を覗き込んで、少々心配そうな顔をするこなた
「別に、なんにもないわよ」
「だって…さっきからぜんぜん話さないし…」
「……」
こいつは…人の気も知らないで
何を思ったのだろうか、いつもなら軽く流している場面のはずなのに
…自分の気持ちを、口に出してしまった
「この鈍感朴念仁…」
「ふぇ?」
こなたが素っ頓狂な声をあげるが
そんなのは無視して続ける
「あんたから見れば、いつもと変わらないかもしれないけど…私からすると、その…
 男の子と二人きりで帰ってることになるわけだし」
「なんだぁ、かがみん照れてたんだ」
「て、照れてないわよ!!ただ…その、慣れてないから話しかけずらいだけで…」
「むふふふ♪」
「変な声を出すな!!」
話していると、外見は違くても、中身はやっぱりこなたなんだなぁ…と、感じた
いっしょにいるだけで私の心を暖かくしてくれる
突然、こなたが右手を差し出してきた
「……何よ」
「手、つなごっか」
「な!!何でよ!!」
「かがみに彼氏ができた時の練習~」
彼氏って…
「……ん」
こちらも左手を差し出す
「えへへ♪」
こなたが恥ずかしそうに手を握ってくる
つながったこいつの手は暖かくて、私よりも少しだけ大きくて、私の手をやさしく包んでくれる
「まぁ、私には彼氏なんてできないと思うけどね」
「ほぇ?なんで?」
「だって、私に釣り合うような男なんていないでしょ」
「うわっ、かがみいつになく強気な…」
――当たり前でしょ
――あんたより私にふさわしいパートナーが
――この世界のどこにいるって言うのよ
「ほら、行くわよ」
「うわっ、引っ張らないでよかがみぃ~」
オレンジ色に染まる道に、一際仲のいい二つの影が揺れていた


翌日、やっぱりというかなんというか…こなたが元に戻っていた
いままで通りの小さな女の子の体に……
「……」
「……」
「な、なんなのふたりとも…?」
つかさも同じ気持ちのようだ、元の姿に戻ったことで、他の子に取られるようなことは、なくなったと思う
そりゃあ元に戻っても、こなたへの気持ちは変わらない子もいるだろうけど、昨日ほどひどくはないだろう…でも…
なんかもったいない感じが……
なんでもうちょっと、イチャイチャしなかったのだろうか…っと、今になって後悔していたりする
まぁ実際目の前にすると、恥ずかしくて、イチャイチャなんてできないだろうけど…
「なんか分かんないけど…ほら、行くよぉ」
「「う、うん」」
いつもと同じメンバー
しかしその気持ちは、昨日一日で大きく変わっていた

「ゆきちゃん、おはよう…あのね」
学校につくなり、私はゆきちゃんの机へと足を運ぶ
こなちゃんは、ギャラリーに囲まれて、昨日のことをいろいろ聞かれているみたい
「おはようございますつかささん、いきなりですが…渡したいものがあるんです」
そう言ったゆきちゃんは、黒いアタッシュケースを取り出した…
「いいものを…持ってきました。つかささんとかがみさんのために…」

【 fake end 】





コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 作中、みゆきさんの科学力の方は誰も驚かないのか!? -- 名無しさん (2011-04-14 02:00:15)
  • 即wktk -- 名無しさん (2010-06-08 23:48:35)
  • こうゆうのもいいねwww -- R (2010-06-07 18:47:29)
  • グールグール地球は自転してるんだよぉ~に吹いた。 -- 七資産 (2010-06-01 19:15:47)
  • 普通TSものは苦手なんですが、これはとっても楽しめました
    続き期待してます -- 名無しさん (2008-04-28 01:53:13)
  • 米見て気づいたが、半年以上も前の作品なのか…
    -- 名無しさん (2008-03-23 22:53:39)
  • かなり面白かった
    次作に、とても期待 -- 名無しさん (2008-03-23 18:54:29)
  • こなたモテモテだなwww
    続きが気になって仕方が無い -- 名無しさん (2008-03-23 14:00:09)
  • fake end に期待
    -- 名無しさん (2007-12-21 16:37:45)
  • みゆきさんが持ってきたのってまさか… -- 名無し (2007-12-16 19:30:22)
  • 続編、是非読んでみたいSSですね~^^
    GJ! ですっ!!
    -- Qの人 (2007-09-17 13:16:07)
  • 面白いね、是非続編を!!! -- 名無しさん (2007-08-13 17:05:12)
  • これの続編を期待して止まないww
    -- 名無しさん (2007-08-11 13:54:39)
  • これはwktkが止まらない -- 名無しさん (2007-08-02 02:37:38)
  • みwiki自重しろwww -- 名無しさん (2007-07-31 23:18:42)
  • イイヨイイヨー -- 名無しさん (2007-07-30 14:24:14)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

添付ファイル
記事メニュー
目安箱バナー