にわかに降り出した雨が、賑やかな音を立てながら地面を打ち付けている。遠い空からは低く雷が唸っていた。
「まさに青天の霹靂……災難ね」
学校帰り、雨宿りの場所を探して飛び込んだ公園のトイレ。ポケットからハンカチを取り出し、かがみが呟く。
小さなハンカチは、髪の毛を拭いただけでほとんどびしょ濡れになってしまった。
「かなり濡れちゃったわね」
「うーむ……」
一緒に帰っていたこなたが、何か深刻そうな唸り声を上げる。
「どうしたのこなた?」
「いや、買ったばかりの今月のコンプが……」
こなたは抱えた鞄の中を心配そうに覗き込む。
「濡れちゃったの?」
「いや、まだ平気なんだけど。ビニールじゃなくて紙の袋に入ってるから、鞄に水が染みるとまずいんだよね」
「ああそう……」
こんな時でもオタグッズ優先なこなたに呆れつつ、かがみが相づちを打つ。
「うーん……とりあえず奥の方にしっかりしまっておけば大丈夫かな」
「にわか雨だろうから、すぐにやむんじゃない?」
「それならいいんだけどね」
外を眺めてみると、もうしばらくは降り続きそうな気配だった。
こなたは深々とため息をついたが、すぐに気を取り直したように顔を上げた。
「ま、これも良しとしよう。夏の雨宿りってのは、ギャルゲー的にボーナスイベントだからね」
「何で?」
「だってほら、夏服だから濡れるとスケスケで。お色気シーンの定番ですなぁ」
「なっ!?」
かがみは思わず胸元に腕を回す。言われてみれば、白い布地から下着のラインが浮き出ていた。
悪戯っぽい笑みを浮かべるこなたに、かがみは顔を赤くする。
「別に照れることないでしょ。女同士なんだし、私もスケスケだし」
「そういう問題か!」
怒鳴って、勢いこなたに背を向ける。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん……」
こなたは唇を尖らせてぶちぶち言うが、かがみは黙して答えなかった。
雨はまだ上がる気配を見せない。
「……ヘっくしっ!」
雨音だけの中に、大きなくしゃみが響いた。
「かがみ、大丈夫?」
「ん……大丈夫だと思うけど……ちょっと寒くなってきたかな」
夏とはいえ、雨振りの中、服が濡れたままというのはさすがに冷える。
「ハンドタオルとかあればよかったんだけど……」
こなたがもう一度鞄を開けて、体を拭くのに使えるようなものはないかと探る。あいにくそういう物はなかったらしく、肩をすくめる。
「まさに青天の霹靂……災難ね」
学校帰り、雨宿りの場所を探して飛び込んだ公園のトイレ。ポケットからハンカチを取り出し、かがみが呟く。
小さなハンカチは、髪の毛を拭いただけでほとんどびしょ濡れになってしまった。
「かなり濡れちゃったわね」
「うーむ……」
一緒に帰っていたこなたが、何か深刻そうな唸り声を上げる。
「どうしたのこなた?」
「いや、買ったばかりの今月のコンプが……」
こなたは抱えた鞄の中を心配そうに覗き込む。
「濡れちゃったの?」
「いや、まだ平気なんだけど。ビニールじゃなくて紙の袋に入ってるから、鞄に水が染みるとまずいんだよね」
「ああそう……」
こんな時でもオタグッズ優先なこなたに呆れつつ、かがみが相づちを打つ。
「うーん……とりあえず奥の方にしっかりしまっておけば大丈夫かな」
「にわか雨だろうから、すぐにやむんじゃない?」
「それならいいんだけどね」
外を眺めてみると、もうしばらくは降り続きそうな気配だった。
こなたは深々とため息をついたが、すぐに気を取り直したように顔を上げた。
「ま、これも良しとしよう。夏の雨宿りってのは、ギャルゲー的にボーナスイベントだからね」
「何で?」
「だってほら、夏服だから濡れるとスケスケで。お色気シーンの定番ですなぁ」
「なっ!?」
かがみは思わず胸元に腕を回す。言われてみれば、白い布地から下着のラインが浮き出ていた。
悪戯っぽい笑みを浮かべるこなたに、かがみは顔を赤くする。
「別に照れることないでしょ。女同士なんだし、私もスケスケだし」
「そういう問題か!」
怒鳴って、勢いこなたに背を向ける。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん……」
こなたは唇を尖らせてぶちぶち言うが、かがみは黙して答えなかった。
雨はまだ上がる気配を見せない。
「……ヘっくしっ!」
雨音だけの中に、大きなくしゃみが響いた。
「かがみ、大丈夫?」
「ん……大丈夫だと思うけど……ちょっと寒くなってきたかな」
夏とはいえ、雨振りの中、服が濡れたままというのはさすがに冷える。
「ハンドタオルとかあればよかったんだけど……」
こなたがもう一度鞄を開けて、体を拭くのに使えるようなものはないかと探る。あいにくそういう物はなかったらしく、肩をすくめる。
「人の心配より、あんたは平気なの? 同じくらい濡れてるのに」
「んー……私もちょっと寒いかも」
「やっぱり」
「この状況はまずい……ガチで風邪引くと、学校を休めても思う存分楽しめないし」
「あんたねぇ……」
「あ、そだ」
頭の上に電球を光らせ(イメージ映像)ポンと手を打つこなた。
「この手があった」
「何?」
首を傾げるかがみの傍へ、こなたがツツと歩み寄り、
「えいっ」
「ひゃっ……!?」
不意に背中から抱きつかれたかがみが素っ頓狂な声を上げる。
「な、何すんのよ!?」
「いやぁ、身を寄せ合って暖を取るのはサバイバルの基本じゃん?」
「サバイバルじゃないだろ!」
「細かいことは気にしな~い。こうしてるうちにぬくぬくしてくるからさ」
「ちょっ、どこ触ってんの!」
「胸」
「確信犯か!」
振り解こうとするかがみだが、妙にしっかりホールドされて離れられない。ここぞとばかりに格闘技スキルを発揮しているこなただった。
「かがみの体あったかいなー」
かがみの背中に顔を埋めるようにして、こなたが呟く。
「あぅ……顔くっつけないでよ。息がくすぐったい」
「ふむ、ひょっとして背中が弱点とか?」
「知るか! ……あーもう、早く雨やまないかな」
こなたを引き離すことを諦めたかがみは、天を仰ぐような気持ちで呟く。雨音は心なしか弱まっているが、まだ止むには至らない。
「私はもう少しこのままでもいいけど」
「冗談じゃないわよ」
「……双子なのに、つかさと比べるとかがみはそれなりにある方だね」
手のひらの感触を吟味しながら、こなたがポツリと呟いた。
「そりゃまあ……って、ちょっと待てい! あんたつかさの胸も触ったことあるのか!?」
「もちろん」
欠片も悪びれず頷くこなた。
「もちろんって、あんたは……」
怒るよりも呆れてしまい、額を押さえてため息をつく。
「んー……私もちょっと寒いかも」
「やっぱり」
「この状況はまずい……ガチで風邪引くと、学校を休めても思う存分楽しめないし」
「あんたねぇ……」
「あ、そだ」
頭の上に電球を光らせ(イメージ映像)ポンと手を打つこなた。
「この手があった」
「何?」
首を傾げるかがみの傍へ、こなたがツツと歩み寄り、
「えいっ」
「ひゃっ……!?」
不意に背中から抱きつかれたかがみが素っ頓狂な声を上げる。
「な、何すんのよ!?」
「いやぁ、身を寄せ合って暖を取るのはサバイバルの基本じゃん?」
「サバイバルじゃないだろ!」
「細かいことは気にしな~い。こうしてるうちにぬくぬくしてくるからさ」
「ちょっ、どこ触ってんの!」
「胸」
「確信犯か!」
振り解こうとするかがみだが、妙にしっかりホールドされて離れられない。ここぞとばかりに格闘技スキルを発揮しているこなただった。
「かがみの体あったかいなー」
かがみの背中に顔を埋めるようにして、こなたが呟く。
「あぅ……顔くっつけないでよ。息がくすぐったい」
「ふむ、ひょっとして背中が弱点とか?」
「知るか! ……あーもう、早く雨やまないかな」
こなたを引き離すことを諦めたかがみは、天を仰ぐような気持ちで呟く。雨音は心なしか弱まっているが、まだ止むには至らない。
「私はもう少しこのままでもいいけど」
「冗談じゃないわよ」
「……双子なのに、つかさと比べるとかがみはそれなりにある方だね」
手のひらの感触を吟味しながら、こなたがポツリと呟いた。
「そりゃまあ……って、ちょっと待てい! あんたつかさの胸も触ったことあるのか!?」
「もちろん」
欠片も悪びれず頷くこなた。
「もちろんって、あんたは……」
怒るよりも呆れてしまい、額を押さえてため息をつく。
「……あ、やんできた?」
こなたの声にかがみも顔を上げる。雨音が少しずつ引いていき、やがて消えた。どうやら雨はやんだらしい。
「よかった……」
「そだね。この状況は惜しいけど、帰りが遅くなるのは嫌だし」
「何が惜しいだ……早く離してよ」
「だが断る。この泉こなたが最も好きな事の一つは、ツンデレキャラの照れ顔を見る事だ」
「照れてないし、ツンデレでもねえ」
「ちぇ……」
渋々こなたが腕を解く。途端、かがみは寒気がぶり返したように感じた。何だかんだで、温まってはいたらしい。
雨宿りしていたトイレから出る。雨は上がっていたが、空はまだ曇っている。
「また降り出さないうちに、早く帰りましょう。……ふぁ……へっくし!」
かがみ、二度目のくしゃみ。
「まだ寒いの?」
歩きながら自分の腕を抱くかがみの顔を、こなたが心配そうに覗き込む。
「平気よ。ほら、晴れてきたみたいだし」
見上げると、雲間から日射しが落ちてきていた。
「でも寒そうじゃん」
「……まあ、そうだけど」
「そんじゃ、寒くないようくっつきながら帰ろっか」
歩きながら、またピタリと身を寄せるこなた。人通りが無いとはいえ往来だ。かがみは慌てふためく。
「やめなさいよ恥ずかしい!」
「ちぇ……」
本気で名残惜しそうにこなたは距離を取る。
「何故そこまでくっつきたがる……」
「そりゃあ、好きだからに決まってるじゃん」
「なっ、すっ……!?」
「ああ、loveじゃなくてlikeだからね。勘違いしないように」
「わ、分かってるわよ! 誰がそんな勘違いするかー!」
顔を真っ赤にして怒鳴るかがみ。自覚は無いが、まさしく『ツンデレキャラの照れ顔』を具現化していた。
「うむ、良い物を見せて貰いました」
グッと親指を立てるこなた。
「まさかあんた、そのために好きとか言ったのか……?」
「いや、かがみが好きなのはホントだけど」
「っ……もうっ、いい加減にしなさい!」
再び顔を真っ赤にしてかがみが吼える。雨上がりの日射しに映えるその表情に、大変ご満悦なこなただった。
こなたの声にかがみも顔を上げる。雨音が少しずつ引いていき、やがて消えた。どうやら雨はやんだらしい。
「よかった……」
「そだね。この状況は惜しいけど、帰りが遅くなるのは嫌だし」
「何が惜しいだ……早く離してよ」
「だが断る。この泉こなたが最も好きな事の一つは、ツンデレキャラの照れ顔を見る事だ」
「照れてないし、ツンデレでもねえ」
「ちぇ……」
渋々こなたが腕を解く。途端、かがみは寒気がぶり返したように感じた。何だかんだで、温まってはいたらしい。
雨宿りしていたトイレから出る。雨は上がっていたが、空はまだ曇っている。
「また降り出さないうちに、早く帰りましょう。……ふぁ……へっくし!」
かがみ、二度目のくしゃみ。
「まだ寒いの?」
歩きながら自分の腕を抱くかがみの顔を、こなたが心配そうに覗き込む。
「平気よ。ほら、晴れてきたみたいだし」
見上げると、雲間から日射しが落ちてきていた。
「でも寒そうじゃん」
「……まあ、そうだけど」
「そんじゃ、寒くないようくっつきながら帰ろっか」
歩きながら、またピタリと身を寄せるこなた。人通りが無いとはいえ往来だ。かがみは慌てふためく。
「やめなさいよ恥ずかしい!」
「ちぇ……」
本気で名残惜しそうにこなたは距離を取る。
「何故そこまでくっつきたがる……」
「そりゃあ、好きだからに決まってるじゃん」
「なっ、すっ……!?」
「ああ、loveじゃなくてlikeだからね。勘違いしないように」
「わ、分かってるわよ! 誰がそんな勘違いするかー!」
顔を真っ赤にして怒鳴るかがみ。自覚は無いが、まさしく『ツンデレキャラの照れ顔』を具現化していた。
「うむ、良い物を見せて貰いました」
グッと親指を立てるこなた。
「まさかあんた、そのために好きとか言ったのか……?」
「いや、かがみが好きなのはホントだけど」
「っ……もうっ、いい加減にしなさい!」
再び顔を真っ赤にしてかがみが吼える。雨上がりの日射しに映えるその表情に、大変ご満悦なこなただった。
おわり
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- GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-03 04:55:05)
- ラブコメチックな展開が微笑ましい印象。 -- 濡れ手に粟 (2012-02-06 02:39:05)