kairakunoza @ ウィキ

ああ、素晴らしきお泊り会 11時まで B面

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
『スピードッ!!』

声と、トランプを場に出すとき床にたたき付ける音が重なる。
その後はお互い無言でトランプを猛スピードで出し合うだけ。
こなたの手の早さには勝てないので、私は正確さを重視して出せるカードは絶対に出すようにしていた。
私がスペードのジャックをダイヤのクイーンの上に叩きつけたのと
こなたがハートのエースをクローバーのキングの上に叩きつけたのは同時だった。
一緒に両手を上げて終了のポーズとる。
あ、危なかった……こいつ、こういう時だけはとことん素早いな。

「……また引き分けね」
「えぇー!!これでスピード対決0勝0敗13引き分けだよ!?やっぱり格ゲーで勝負しようよー……」
「だからそれだと私が勝つ確率がなくなるでしょ」
「ダメだよー、かがみ。勝ち負けにこだわってたら楽しめないよ?」
「じゃあこなた負けてよ」
「絶対ヤダ」

火花が散る。若干張り詰めた空気が漂う。たかがトランプゲームと笑われるかもしれない。
でも私は一つの目的のために負けられない。絶対に勝ちたい。

私が勝つ事を強く望む理由は4時間前まで遡る。

 -------------

こなたが私の指を舐めた時。自分でもちょっと認めたくない『私は受身に回ると弱い』と言う事が発覚した時。
気まずさが部屋を支配して、居たたまれなくなったのかこなたは夕食を作ると言って台所へ行った。
「私も手伝う」と言ったけど謹んで遠慮され、部屋で待っていてと言われた。
……それは何だろう。私に料理は無理と言ってるのか、それとも微妙な空気を引きずりたくないからなのか。
どちらでも嫌だなと思いながら、言われたとおりに部屋で待つ。
こなたの部屋は退屈しない。漫画は一日で読みきれないほどの量があるから、読んでいない本を取って読んでみる。
内容は『なんかゴツイ男がメイド服着てるギャグ漫画』だった。
文字数が多い気がするけど、何も考えなくて読めるから丁度いい。
そろそろ一冊読み終わろうか、というところで急に扉がノックされた。
こなたか? と思ったがこなたなら普通に入ってくるだろうし。
だとしたらおじさんかゆたかちゃんしかない、と扉を開ける前に向こう側から声がした。

「かがみ先輩、布団持ってきました」
「ゆたかちゃん?」
「はい」

扉を開けると、こなたよりも小さいゆたかちゃんが一生懸命布団を抱えていた。
半ば姿が布団に隠れてしまっている。言ってくれれば取りに行ったのに。
……言いにくかったのかな。こなたも私が怒ってると勘違いしてたし。
今はもう自己解決したから大丈夫だけど。

「ありがとう、ゆたかちゃん」
「いえいえ、お客様ですから」

布団を受け取り、いつもの場所に置いてゆたかちゃんに手招きする。
自分の部屋じゃないのにこういう事をするのに妙な違和感を感じたりもするけど。
ゆたかちゃんはなぜか妙にもじもじとしながら扉を閉めて一歩部屋に入って止まった。
何か言いたい事があるのかなと、私が近づく。

「どうしたの?」
「あの……さっきはすみませんでした!」

勢いよく頭を下げて謝ってきたゆたかちゃんと頭を衝突させそうになった。
何度も謝罪を繰り返してくるゆたかちゃんをなだめ、向かい合わせで座りこむ。

「今はもう気にしてないから。それに……」

ぶっちゃけると、扉を開けたら丸見えの場所でキスしようとした私達も私達なわけだし。
本当のことを言うと『扉を開けられたから』気に入らないのではなくて
『ああいう時にこなたが別の人の名前を言ったから』気に入らないんだし。
……そんなカミングアウトはゆたかちゃんには出来ないけど。

「あの、かがみ先輩」
「ん?どうしたの?」

正座している膝の上に握りこぶしを置いて、何かを我慢しているかのように振るえて。
具合が悪くなったのかなと心配してたら、ゆたかちゃんは私の目をじっと見て。





「こ、こなたお姉ちゃんと付き合ってますか……?」

幻聴で『カッポーン!』という鹿威しの良い音が頭に響き渡った。
思わず固まった私に私にゆたかちゃんが追い討ちをかける。

「あの……違ったらすみません。もう一度聞きますね。こなたお姉ちゃんと付き合って」
「わぁぁ!! 二回も言わなくていいから!!」

事実だし、付き合ってる事自体はものすごく幸せな事なのだけど
妹的なゆたかちゃんに尋ねられるとどうにも恥ずかしい。
顔に血が集まっていくのを感じて、対して隠せないけど片手で顔を覆った。
この反応では誤魔化せようもなくて縦に小さく首を振った。
ゆたかちゃんが「やっぱりそうなんだ」と呟く。……あれ、そんなに分かりやすいのか私達って。

「いつから分かったの?」
「付き合ってるとかは分からなかったですけど、結構前からお互い好きあってるんじゃないかなーって……」
「そうなんだ……って、前から? 何で?」

こなたが私の事を恋愛感情で好きだと言ってくれたのは、私が告白した後で。
それより前に好いてくれていたなんて聞いた事はなかったけど。

「だってお姉ちゃん、一日に何回もかがみ先輩のこと話すんですよ?
 かがみ先輩はかがみ先輩でお姉ちゃんに対する反応で丸分かりでしたし」
「そ、そうなんだ……」

何? もしかして私達って無自覚バカップルみたいな事をしてるわけ?
いや、バカップルは大抵無自覚か。
……あれ? ゆたかちゃんってば何か普通に受け止めてるけど、いいの?

「あの、ゆたかちゃん? 不思議に思ったりしないの……?」
「好きな人同士が一緒にいる事は全然不思議じゃないですよ」
「えっと……そう言ってくれると有難いけど、何か……あれ?」

当然のように返された。
こなたに前言ったけど『自分が当事者になると客観的な判断が出来なくなる顕著な例』なのか。
私達の周りって優しい人が多いなぁとしみじみ感じた。

「こなたお姉ちゃんをよろしくお願いします」

ぺこ、と頭を下げるゆたかちゃん。私も慌てて頭を下げる。
ねえこなた。ゆたかちゃんにこういう風に言われてるって想像できた?
私はまったく出来てませんでしたよ。
ゆたかちゃんってこなたよりしっかりしてるわ、本当。
こなたも少しぐらい見習えばいいのに、とか思っても
こなたがしっかりしてしまったら何だか寂しい気がするから不思議。



「あ、付き合ってるのなら布団は持ってこなくてもよかったですね」

ちょっと待って! 普通に言ってるけど結構とんでもない事言ってませんか!?
笑顔で人差し指を立てながら言うような事ではない気が……

「ゆたか、ちゃん? な、何を……?」

キープスマイルしてるけど、ゆたかちゃんのイメージがかなり変わっていく。
もしかして私、からかわれてる?

「でも、一緒に寝る寝ないはともかくとして一応布団は置いておきますね。
 こなたお姉ちゃんと一緒に寝ると、お姉ちゃんって抱きついてくるから暖かいですよ」

いや、何のアドバイスですかって、そもそも一緒に寝たんですか?
それとも私は発破かけられたのか? それとも宣戦布告か?
健全な精神は健全な肉体に宿るってあたってるのかなー? とか。
様々な思考が頭を飛び交う。

「い、一緒に寝たことあるの?」
「はい。っていっても、クーラーのきいた部屋で横になってて……ですよ。
 それに一緒に寝てても何時の間にかおじさんが真ん中に入ってきて『小』の字になってますから」

そう言えばこなたが前にそんなこと言ってたっけ。
でも、何だろう。このモヤモヤは。嫉妬と言うべきか。
一緒に寝るなんてしたことないし……抱きつかれるって行為もあんまりないし。
そう考えると布団が無用に思えてきた。
でも折角用意してもらった手前、使わないからと言って戻すのもどうかと思う。
……うん、置いとくだけ置いておこう。
自分の中でとりあえず納得すると、ゆたかちゃんは立ち上がった。

「お姉ちゃんは、かがみ先輩といる時やかがみ先輩の話をする時すごく幸せそうなんですよ。だから……大丈夫です!」

いや、何が!?
そんな『ファイトッ!』ってポーズをとられても……
本当に、私って発破かけられたのだろうか?
分からないけど……一緒に寝るだけなら、こなたにお願いしても承諾してもらえるかな。
『本当に寝るだけでいいの?』という悪魔の私が囁いてきたから、とりあえず脳内で張っ倒した。
そして、さっきから少し気になっていることを尋ねるために私も立ち上がると。



「かがみー、ご飯出来たよ……って、ゆーちゃんも来てたんだ」

丁度良くこなたが帰ってきた。
ご飯が出来たから呼びに来てくれたのだろうけど、こなたが居たら聞きづらい。
しょうがないから小声でゆたかちゃんに耳打ちして聞いてみた。

「こなたは私について何て話してるの?」

きょとん、としているゆたかちゃん。こなたも何だかこっちを見てむすっとしてる。
聞いてる内容がばれたのかな? と思ったけど聞こえる音量じゃないはず。
ゆたかちゃんはそれを見て、私の思い違いかもしれないけど少し悪戯っぽく笑った。

「ダメですよ。私の口からは言えません」

気になる。気になるけどこなたに聞いたらはぐらかされそうだし……
何か今こなたは怒ってるっぽいし。何で?
まあ、いつか聞いてみよう。とりあえず今日の目標が決まったことだし。
『こなたと一緒に寝る(だけ)』と。
……括弧のフォローが余計に危なく感じるのは気のせいだろうか。

夕食は、当然美味しかった。
こなたの料理のレベルは私よりも格段に高い。
生活に必要なスキルだし、いいことだけど何となく悔しい。
味わって食べていると斜め前に居るおじさんの笑顔がものすごく気になった。
過去に「実家が神社で巫女さんなんだって?」と言われたときの笑顔とは違う……お父さんのような笑顔。
上手く表現は出来ないけど。
その笑顔に悪い気はしないけど、落ち着きもしない。
それにこなたの方も見たりしてるし……なんだろう。
夕食を食べ終わり、こなたに先に部屋に行っててと言われそれに従う。
皿洗いぐらいなら手伝えるのにと思いながら途中の漫画を手に取った。
すぐに帰ってくるかと思っていたのに、妙に遅い。
おじさんと話し込んでるんだろうとあまり気に止めなかったけど。
しばらくして、後数ページで読み終わるというところになってこなたは帰ってきた。
そして私の顔を見た瞬間、驚いたように視線を逸らす。
どうしたのだろうかと思ったけど、私は私でこなたのお腹に張り付いたシャツを見て視線を逸らした。
皿洗いの時に濡れたのだろうけど……拭けよ。いや、拭いたんだろうけど着替えろよ。
お腹は完璧に透けてるけど、胸は濡れてはいるけど透けてない。残念なような、よかったような。
こなたに教えるべきか? 教えるべきよね? と言おうとしたら。

「お風呂の順番どうする?」

出鼻をくじかれ、こなたから聞かれた。
ああもうタイミング悪いな。思考処理が遅れてぽかんとしている私に、こなたが再び慌てたように言った。

「か、かがみは一応お客様だから、先に入ったら?」

一応って何だ。
そんな突っ込みをする余裕もなかったのか、私は頷いて風呂に入る事にした。
すれ違ったおじさんに「お湯、先に頂きます」と挨拶。
うんうんと頷いてるけど……なんですかその笑顔。
妙に上機嫌で歌いながら廊下を歩いて通り過ぎていく。

「すもっもっも、ももも!押忍!」

……えっと、何の歌ですか?
『操』だとか『捧げます』だとか聞こえるんですけど……
そういう歌は人が来てる時は歌わないほうがいいんじゃないでしょうか。
やっぱりうちのお父さんとは違うなぁと思っていたら。

「どわ―――っ!!! お父さんのバカ―――っ!!!」

こなたの絶叫が聞こえた。忙しいな泉家。
さっき皿洗いの割には帰ってくるの遅かったけど、その時おじさんと何かあったのか。
というか、あいつ自分が大声で叫んでる事気づいてるのか?
お風呂場について、服を脱ぐ。
他人の家って自分の家に比べて緊張する。
今まで以上に緊張している気がするのは、多分こなたとの関係の変化のせいだろうけど。
いつもより長く体を洗い、泡を流していると、また声がした。

「って、だから違ぁぁぁああう!!!」

こなたの声。何であんなに叫んでるんだろう。
酒でも飲んでよっぱらってるのか。というより、本当に叫んでる事に気づいてないんじゃないだろうか。
何を考えてるのかは分からないけど私の事が関係していたら嬉しいなと思いながら湯船に浸かる。
浴槽に寄りかかり、天井を見上げる。
一緒に寝るって事……受け入れてくれるだろうか。
風呂上りにいきなり「一緒のベッドで寝よう?」なんて言っても驚かれる事は目に見えてるし……
どうしたもんかと考えをめぐらせていたら、急にさっきの
『シャツが水に濡れてお腹が透けているこなた』を思い出した。
うあ、精神統一できてない! 風呂の温度が熱くなった気がする。
……もう一回体洗おう。ボディーソープ二回も使ってすみません。



結局長湯しすぎた。少しのぼせた。
髪は水分を含んで重いし、下ろしているから首筋も空気が触れなくて熱い。
こなたの部屋に戻るとクーラーがきいていて生き返った。
部屋の住人は……ベッドで丸まってる。

「おい、起きろー」

寝たふりなのかと思っていたら、どうやら本当に寝ているらしい。
近づいて顔を覗き込む。丸まっている姿は猫っぽい。
柔らかそうなほっぺたを突付いてみる。

「んみゅ」

こなたが奇声を上げた。人形でお腹を押すと音が出るやつあったなぁと思い出す。
断然こなたの方がいいけど。
少し顔にかかっている髪を人差し指で耳にかけてやる。
髪が肌にあたってくすぐったかったのか、こなたが身をよじった。
それを見た瞬間、ドクンと内側から強い衝動を感じた。
慌てて手を引っ込め、深呼吸。
『私は寝ている恋人を襲う趣味なんてない』というセリフを頭の中でリピートする。
ダメだ、寝ているこなたを堪能していたら危ない。起こそう。

「こなた?」

肩を軽く叩いて呼びかける。
軽く叩いただけなのに思いのほか揺れて、軽いんだなと再認識した。

「―――ぁ」

いつも以上にぼんやりとした瞳で私を見て、目を擦りながらベッドに腰掛けるこなた。
それでもぼーっとしているのは結構深く寝てたのだろう。ノンレム睡眠状態か。

「あー……お風呂上がったんだ」

こなたが視線を時計に向ける。
私も同じように視線を向けると想像以上に長居していた。
そりゃのぼせる訳だ……と、思っていたら視線を感じてこなたの方を見る。
ぽけーっと私を見ている。寝ぼけすぎだ。

「……どうしたの? まだ寝ぼけてる?」
「えっ!? あ、なんでもない! 私もお風呂入ってくるね!」

急に慌ててベッドから呼び動作無しで飛び上がって風呂場へと走っていった。
寝起きだって言うのに機敏だ。
何となくベッドに腰掛ける。こなたの体温が残っていた。
さっきまでここに寝ていたんだし……いつもここで寝てるわけだろうし。
座った状態のまま、横に倒れこむ。
ここで今日一緒に寝れたら――と想像してしまった。
なんと言うか、一緒に寝るだけですまなかった場合を、リアルに。

私の一挙一動すべてに微かに震えながら必死で声を抑えるこなた。
そんな状況でも、たどたどしく私の名を呼んでくれるこなた。

……って


――私はバカかぁぁぁ!!


落ち着け!! とにかく落ち着け私!!
幸せボケか!? どっか行けこのピンクな脳内!!
なぜか痛いノドで深呼吸して、どうにかこうにか心臓を落ち着かせる。
ダメだ、ここで寝ていたら思考が何かに毒されていく。
起き上がって本でも読もう。とことんバカなギャグ漫画を読もう。



新しい漫画を読み始めてしばらくしてこなたが帰ってきた。
髪が完全に渇いてなくても必ず髪の毛が一本立っているから不思議。

「ただいまー」
「お帰り。早かったわね」
「そうだね」

湯上りピンク色のこなたが何事もなかったかのように私の隣に座った。
私はさっきの想像上のこなたがプレイバックしてきて会話が思いつかない。
いや、言いたい事というか、お願いしたい事はあるけど言える空気じゃない。
この状況で『一緒に寝よう?』と言える人はいるのだろうか。
こなたも無言だったけど、急にゲームのスイッチを入れた。

「ちょっと途中のゲームがあるから、やってもいい?」
「んー、なら私本読んどくから」

言われた事に対する反応ならすらすらでるのに、何でこっちからは言えないのか。
そんな事を考えながらテレビ画面を見つめる。
……おいおい、ギャルゲーかよ。



十数分後、こなたが焦っていた。

『私、あなたが好きなのっ!』

テレビから聞こえる女性の声。
告白シーンだ。定番なのか、主人公は告白されるギリギリまで
告白されそうな雰囲気だと気づかない。
鈍感っていうのは主人公の必要条件なんだろうか。
こなたの指が滑らかにコントローラーを操作し、オプションを開いてセーブする。
こういういつもの動作って言うのは体が覚えてるのだろうか。
あ、主人公が抱きつかれた。こなたはますます焦っているように見える。
そして私も焦っている。
どうやってお願いすべきか。このままずるずると言えずに結局普通に寝てしまうことになりそうだ。
別に今日じゃなくてもまた泊まりにくればいいことだけど、それはそれで何かに負けた気がする。

『んっ……!!』

今度はキスシーンに入った。
声優って演技大変だなあと感心する。
色っぽい声と言えばそうなんだけど、こういう作った声よりこなたの声が聞きたい。
なぜかこのシーンで止まったままの画面を不思議に思っていたら、急にタイトル画面に戻った。
急いでこなたがゲームからカセットを取り出している。

「や、やっぱりかがみも参加できるゲームの方がいいよね! 格ゲーとか!」
「参加できるゲームって言われても、格ゲーでこなたに勝てるわけないじゃない」

というより、ゲームをしたら言うタイミングがますますなくなりそうでする気がしない。
こなたは「うぅ」と考え込んで、慌てて言った。

「それじゃあ、勝った方が負けた方に――」

多分、こういうのを『口が滑った』って言うんだろう。
しまった! というこなたの表情。対して私は感謝した。
この後に続くセリフっていうのは何となく予想がつく。

「……今、完璧に勢いで言いそうになったわね。で? 勝者が敗者になんだって?」

その予想したセリフを聞き出したいがために、押してみる。
こういうと絶対に変な意地か何かで言ってしまうのがこなたなんだし。

「勝った方が負けた方に、一つ命令できる!!」

ビシィッ! 人差し指を突きつけられた。
私は内心ガッツポーズをとる。とにもかくにも、これでお願いできる口実になる。
……本当はこういう命令じゃなくて、お願いで言いたいけど。
こういうことでしか言えそうにない自分が情けない。

「いいわよ。勝負の方法は? 言っておくけどテレビゲームじゃ私に勝ち目無いからそれ以外でね」
「えー……」

有利なものを禁止されたからか、こなたが不満そうな顔をする。
どっちにも対等な条件で勝負できるもの。
つまりトランプの『スピード』対決になったけれど……



「んじゃ14試合目……赤と黒どっちがいい?」
「もう一回黒で」

渡されたスペードとクローバーのトランプの束をシャッフルする。
さすがに集中力が切れてきたけど、負けられない。

「……手っ取り早いからってスピードにしたけど、むしろババ抜きの方がよかったんじゃない?」
「今更だよかがみ。というより、何かもう意地でスピードで決着つけたいんだよね」
「まぁ、分かるけど」



普通にお願いすればよかったなぁと思っているけど、もう遅い。
とにかく絶対に勝つ。集中するために、私は長く息を吐いた。

















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  • メイドガイw -- 名無しさん (2008-09-15 22:26:47)

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