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恋はバーミリオン -MintGreen-

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匿名ユーザー

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 恋には色がある。

 燃えるような赤。
 淡い初恋のピンク。
 悲恋の哀れな青。
 戸惑いと驚きの黄。
 幸せと喜びの緑。
 嫉妬に狂う紫。
 愛憎の黒。
 それからそれから……。
 ……。


 じゃあ……私の恋は、何色ですか?






『 恋はバーミリオン -Mint Green- 』






 私は……みなみちゃんが好き。
 これはもう、覆らない事実。
 じゃあ、どうするの?
 この想いを伝える?
 誰が? 私が?
 誰に? みなみちゃんに?
 あははっ、そんなの……無理に決まってる。
 だってみなみちゃんには、好きな人が居るんだよ?
 それなら私の気持ちなんて……無駄でしかない。
 なら、どうするの?
 諦める?
 誰が? 私が?
 誰を? みなみちゃんを?
 あはは、そんなの……無理に決まってる。
 だって。
 だって……。
「どうか、した?」
「ふわぁっ!」
 声に驚き、思わず声があがる。
 そして視界一杯にみなみちゃんの顔が広がり、顔が火を噴く。
「具合……悪いの?」
 心配そうな表情をされ、慌てて元気そうに振舞う。
「だっ、大丈夫。ちょっとぼうっとしちゃっただけ」
 もう何時の間にか、昼休みは終わろうとしていたところだった。
 ちょっと、考え事が過ぎたかな。
「保健室……行く?」
 う……。
 空元気なのが、見破られたらしい。
 具合は……あまり、良くない。
 昨日だって、一睡も出来なかったし。
 全部、こなたお姉ちゃんの所為。
 あんな事さえ、言わなければ……気がつかなかったのに。
 みなみちゃんへの、想いに。
 ……。
 思い出したらまた、顔が熱くなってくる。
 駄目だ、少し……頭を冷やそう。
「……うん、じゃあお願いしちゃおっかな」
 そのまま保険委員となる彼女の付き添いで、移動。
 保健室のベッドは固かった。
 だけど授業をサボって眠るとなると、背徳感で何処か気分も良い。
「じゃあ私、戻るから」
「うん……ありがと、みなみちゃん」
 扉を出て行く後姿を見送るのが、少し残念。
 今だけは……私だけの、みなみちゃんだったのにな。
 あ、駄目だ。
 また頭の中が彼女で一杯に。
 ……深く考えるのはやめよう。
 今は少しでも、気分を落ち着けないと。
 あ、ほらウトウトしてきた。
 寝不足だったから仕方がないのかも。
 このまま放課後まで休んでもいいかな。
 今日はもうあと少ししか授業がないから一度くらいはいいよね? こういうのも。


 ――夢を見た。
 こなたお姉ちゃんが居た。
 彼女は言う。
 笑顔で言う。
「誤魔化すのは、良くないよ」
 夢の中まで現れて、元凶の言葉を繰り返す。
 誤魔化してなんかないよ、と私は言葉を返す。
 それで……気がついた。
 気がついてしまった。
 認めてしまった。
 だから、苦しい。
 この想いは届かないと……分かっているから。
 いつしか零れた涙は、止まることなく流れ続ける。
 その涙が水溜りになって、池になって、湖になって――とうとう海になる。
 そのまま私は涙の海に沈んでいく。
 その私の頭に、またこなたお姉ちゃんの声が響く。
「ねぇゆーちゃん、何が見える?」
 声に反応し、目をゆっくりと開く。
 海の空に広がるオーシャンブルーが、私の網膜に焼き付いていくのを感じる。
「恋にはね……色があるんだよ」
 色?
 じゃあこれが私の……色?
 この、青色が?
「青は悲しみの色、これに情熱の赤を加えると……どうなるかな?」
 声に従い、青い海の空に一点の赤い染みが出来る。
 それが広がり、世界を変えていく。
 海は消え、赤と交じり合った世界が私の周りに広がっていく。
 それは紫。
 なんだろう、これ。
 もう悲しくない。
 今は――悔しい。
「紫は嫉妬の色。好きなのに振り向いてもらえない悔しさは――心を曲げる」
 何だろう。
 凄く……嫌な気持ち。
 嫉妬?
 私が、誰に?
 みなみちゃんに?
 いや、違う……みなみちゃんが好きな人に、だ。
「じゃあ、ここからどうすればいいと思う?」
 いつのまにか目の前に現れたこなたお姉ちゃんが、悪戯に笑う。
「緑を混ぜる? 黄色を混ぜる? また赤を混ぜる?」
 世界に様々な色の染みが広がり、世界を変えていく。
 駄目。
 駄目、駄目。
 そんな事したら……!
「そう、色は色。混ぜていけば――いつかは世界は黒に変わっちゃう」
 心に――闇が広がる。
 ……憎い。
 振り向いてくれない彼女が。
 私から彼女を奪った誰かが。
 そして……私自信が。
「おっととっと、危ない危ない」
 パチンッとこなたお姉ちゃんが指を鳴らす。
 すると世界は最初の、無色透明な世界に戻る。
 まるでそう、キャンパスを洗い流したように。
「ね? 誤魔化し続けたら……いつかは壊れちゃうんだ、世界そのものがね」
 色んな混ざり合った感情が私の中で溶け合うのが分かる。
 そうか、今……分かった。
 恋は――感情なんだ。
 それを誤魔化すということは、キャンパスに無駄な色を混ぜ合わせていくこと。
 そっか。
 そういうことだ。
 こなたお姉ちゃんの言った意味が、ようやく分かった。
 ――誤魔化したらいけない。
 ――無駄な色を混ぜてはいけない。
 それはつまり……。
 自分に――嘘をついてはいけない。
「よく出来ました」
 私の答えに満足したのか、こなたお姉ちゃんが満面の笑みを見せる。
 そして泡のように弾けて……消えていく。
 そうだ、これは夢。
 こなたお姉ちゃんなんて、居ない。
 居るのは、私の作り出した偶像だけ。
 なのに――私に教えてくれた。
 でも分かる。
 多分これは、こなたお姉ちゃんのあの言葉。
 誤魔化すなという、私を芽生えさせた言葉。
 それが私の中に残って……私が気がつくのを、待っててくれたんだ。
「自分の本当の色を、見つけてね……ゆーちゃん」
 最後に一言、それを残して……彼女は完全に、消えた。


 窓から漏れた光が暴力的に目を襲い、視界に天井が移る。
 光の正体は、夕日。
 ああ、もうこんな時間なんだ。
 本当に放課後まで寝てしまった。
 もう帰っちゃったかな……みなみちゃん。
「あ……」
「……おはよう」
 体を起こすと、目が合った。
 誰か――なんて愚問だ。
 私を待っててくれるのは、彼女しかいない。
「ま、待っててくれたんだ」
「……」
 コクリ、と無言で首を縦に振る。
 そして鞄を差し出す。
 ……どう見ても私の鞄。
 どうやら、持って来てくれたらしい。
「じゃあ……帰ろ?」
 そう言って立ち上がるみなみちゃん。
 先生への連絡もしていてくれたらしく、もう後は帰っていいということらしい。
 ……。
「ま、待って!」
「?」
 その手を掴むと、彼女の視線が私に。
 あ――今、私を見てるんだ。
 私を、私だけを……。
 ……もう、私に迷いはなかった。
「!」
 みなみちゃんの手を思いっきり引っ張ると、それにつられて彼女の体が屈む。
 そのまま唇を……奪った。
 ほんの少し、短いようで永遠のような時間のあとに……彼女の唇が離れる。
 抵抗しなかったのは、驚きから?
 いや、もうそういうのはいいんだ。
 私は……迷わない。
「好き」
 その二文字を、告げる。
 彼女には、突然だっただろう。
 まだ私の目の前で、目を見開いて驚いている。
 でも次第にその表情が、朱に染まっていくのが分かる。
 私がそうなのだから、向こうもそうに違いない。
 そして俯いたまま、ゆっくりと。
 静かに……言葉を紡いだ。
「私……も」
「えっ……」
 もう一度。
 今度は向こうに、唇を奪われた。
 さっきのような刹那じゃない。
 長い……深い、キス。
 両手で、体で、唇で……全身で彼女と触れ合う。
 彼女の全てが暖かく私を包んでくれる。
 そうだ……分かった。
 これが、私の……『色』。


 それはバーミリオン。
 あの窓から漏れる夕焼けのような。
 私たちの中に静かに流れ続けている色。
 紅く、熱い……暖かい朱色。
 愛してるという――叫びたいほどの、感情。
 それが私の……色。
 私の、恋の色。
 ……。
 恋には色がある。
 燃えるような赤。
 淡い初恋のピンク。
 悲恋の哀れな青。
 戸惑いと驚きの黄。
 幸せと喜びの緑。
 嫉妬に狂う紫。
 愛憎の黒。
 それからそれから……。


 ねぇ、貴方の恋は――何色ですか?


(完)












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コメント:
  • こなたかっこいい!GJ
    -- 名無しさん (2011-04-28 11:24:40)
  • ゆたかみなみの良さは鉄板すな~
    こんどはイチャラブなのが読みたいッス -- 名無しさん (2011-04-27 21:50:46)
  • イイ!!!!
    これはイイ!!!!! -- 名無しさん (2008-05-19 18:12:36)
  • ななついろを思い出した。GJ! -- 名無しさん (2007-10-26 14:28:29)
  • GJ!d(=ω=.) -- 名無しさん (2007-10-23 03:40:46)
  • かなりキタワァ これはいい! -- 名無しさん (2007-10-03 01:29:19)

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