非エロ:提督×春風「春風と共に」18-860

859 :名無しの紳士提督:2016/05/08(日) 19:43:56 ID:2EwOJXRQ

こんばんわ。今日は母の日ですね
母の日とは全く関係ありませんが、
でもwikiにて「母になってくれるかもしれない女性だった」
と言われたりしていた春風ちゃんのSSを投下します
注意点といたしましては

  • 独自設定がいつもにもまして多い
  • 艦娘に独自の本名設定を付け、その子を呼ぶときに本名で呼ぶシーンがある
  • 星座ネタがとにかくくどい
  • 非エロ。だけどちょっときわどそうな描写もあってR-15かもしれない

といった感じです
NGは「春風と共に」でお願いします

860 :春風と共に:2016/05/08(日) 19:47:14 ID:2EwOJXRQ

「司令官様、第五駆逐隊、お呼びでしょうか?」

俺を司令官様と呼んだ女性は春風。
歳の頃は俺とは干支が一回り分も離れた18である。
髪型が俗に言うドリルヘアーでありながら、
召し物は大正浪漫を思い起こさせるようなものと、
和洋折衷というものを醸し出していた。
胸も尻も彼女の大和撫子的な慎ましさを表すかのような大きさだった。
そんな彼女はかつて太平洋戦争を戦い抜いた伝説の駆逐艦、神風型三番艦春風の艦娘である

「ああ、君に渡したい物があるんだ」
「えっ?わたくしですか?」
「そうだ。これを君に…」
「あっ、はい。これを…わたくしに…!?」
「ああ…俺からの……な……」
「あ……ありがとうございます。わたくし…大切に…します……
 あなた様からの贈り物を…ずっと……ずっと…………」

彼女は俺からの贈り物を涙を流しながら、心から嬉しそうに受け取ってくれた。


俺は一糸纏わぬ春風を抱いていた。

『痛っ!…くうっ……』
『すまない、大丈夫か?血が…』
『大丈夫です……だから、わたくしに遠慮なさらずに……』
『わかったよ…』

俺は血を流しながらも俺を受け入れてくれる彼女の言葉に甘えたのだった…………

861 :春風と共に:2016/05/08(日) 19:48:26 ID:2EwOJXRQ
「…………ん…………」

俺は目が覚めた。ふと時計を見るとまだ12時をまわっていなかった。
最後に確認したのが10時半の少し前だから約1時間ちょっとしか寝ていない事になる。

「夢か……」

そうだよな。俺が春風と結ばれるなんて事はないよな。
俺は彼女にケッコンカッコカリの為に指輪を贈ったけど、
それはあくまでも【ケッコンカッコカリ】というものの為に贈った物だ。
最高まで鍛え上げられた艦娘の強さを更に引き出すシステムで、
その為の道具が指輪だからケッコンカッコカリという名前がついたとか。
まあそこら辺は真偽不明だからあまり深く考えるのはやめておこう。
ちなみにケッコンカッコカリは強さを引き出す以外にも燃費を抑えられるという効果もあり、
大半は戦艦娘達に渡されるものだが、貴重品であることもあり、俺は春風にだけ渡した。
俺は彼女の事が好きだからこそケッコンカッコカリをした。
俺は比較的ケチな面もあるが、もし指輪が手軽にたくさん手に入るようなものだとしても、
俺は任務で手に入れた指輪だけは彼女に与えていただろう。
何故俺が彼女に惹かれたのか。彼女は生まれた日が駆逐艦春風の進水日と一緒で、
星座がどちらも太陽星座も月星座も射手座だ。
射手座は言い伝えでは蠍座の心臓アンタレスを狙っていると言われている。
彼女の側にいると春の風にあたっているかのように心地よい気分になれる。
産まれた時に太陽と月に天の蠍が座していた俺のハートが彼女に射抜かれたのも当たり前だろう。
……まあ、とにもかくにも俺と春風が男女の関係になったというのはただの夢だ。
結婚ではなくケッコンカッコカリの関係で男女の関係になるなんて事は流石に俺には出来ない。
男女の関係となるのなら…というか貞操を捧げるのなら
なるべくなら将来を共に歩いていく人じゃなきゃ嫌だ。
そして相手にも俺と同じ貞操概念を持つ事を求めたい。
だが今の時代にそんな我が儘言ってたら結婚出来ないだろう。
どこかで妥協する事も人生には大事かもしれないからだ。
そもそも彼女が夢の中と同じように清らかな乙女であるとは限らない。
そうでないとも言い切れないが、俺にわかる話ではないし、
彼女が俺の事を司令官様としてではなく、一人の男として好きかも不明だ。
まあいつまでもこんな事を考えていても無意味と思った俺は夢の続きを見ようと再び目を閉じた。



「司令官様、おはようございます」
「おはょ…」
「あら?元気がないようですが…」
「うぅ、すまない昨日はあまり眠れなかったからな…」

あの後俺は2時間くらい眠れなかった。
興奮してしまってか、悶々とした事ぱかり考えてしまったからだろう。

「何か怖い夢でも見てしまったのですか?」
「夢…ね。別に怖い夢なんて見なかったさ」

嘘は言っていない。見なかったのは怖い夢であって夢そのものではない。
さすがに本当の事は言えないだろう。

「実はわたくしも少し寝不足で……夢を見ていたせいかもしれません」
「夢を見てた?」
「司令官様、春風が見た夢を聞いてくださいますか?」
「なんだ?」

とりあえず眠気と戦いながら話を聞こうとした。

「わたくし、夢の中で怪我をしてしまって…」
「!?」

俺の眠気は吹っ飛んだ。俺が見た夢とどこか合致するような気がしたからだ。

「それでね、司令官様……?寝てしまったの?」

眠気が完全になくなった俺だったが、妙な反応をしてはいけないと狸寝入りをした。
昨日のあれは夢だ……夢なんだ……夢なんだよ!
俺は心の中で繰り返しながら、大淀が来るまで狸寝入りをしていた。


それから数ヶ月が過ぎた。あれ以降特に何もなかった。
どうやら彼女が見た夢は普通の怪我をした夢だったようだ。
俺が見た夢が実は現実だったなんてオチはない……
そう思った矢先に彼女から相談を受けた。

「司令官様、お忙しい中申し訳ありません」
「気にしないでくれ。私に出来る事ならなるべくしようと思う」
「すみません。では少し恥ずかしいですけれど聞いてください。
 実はわたくし……司令官様とケッコンカッコカリをしてから生理が来ないのです……」
「……え……」

俺は耳を疑った。まさかあの時に見た夢は夢じゃなかったのか……
俺は名家の令嬢を傷物にしてしまったというのか…………

「……でね、お医者様に相談したら……」

今の俺には春風の言葉がほとんど頭に入って来なかった。
入ったとしてもすぐに抜け落ち、ほとんどが頭に残らなかった。
駆逐艦娘春風。彼女の本名は【春 風花(あずま ふうか)】。春と書いてあずまと読む珍しい苗字だ。
春家は鶴舞(名古屋の地名。駆逐艦春風が進水した京都の舞鶴とは当然別)に代々続く名家であり、
それゆえに春風の立ち振る舞いにも品の良さが現れているのだろう。
俺も生まれは一応名家といえば名家かもしれないが躾なんてあまりされずに
(というかほとんど無視していて)好き勝手生きてきて、
提督になる時に教育を受けて何とか身につけたものの、根っこの部分ではあまり品がない。
そんな俺が名家の令嬢と釣り合いなんて取れるはずがないし、
ましてや婚姻関係すら結んでいないのに肉体関係を持って傷物にしてしまい、
そして身重な体にしてしまった……
いや、これは相手が名家の令嬢だろうが一般家庭の女の子だろうが関係ない。
…………この期に及んで言い訳をして逃げるなんて事はしない。
言うべき事はきちんと言うが、それでも俺は責任逃れなんて……するものか!


「春風……いや、春風花!」
「!?」

突然艦娘としての名前ではなく本当の名前で呼ばれたからか彼女は驚いていた。

「全ては俺の責任だ…!」
「し…司令、官……様………?」
「君を傷物にしてしまい、挙げ句身重な体にしてしまった。
 はっきり言って男として最低だ」
「え……ええ……?」
「あの日の事を単なる夢だと思い込んでいた為にこんな事になってしまった……
 だが夢ではなく現実だった……俺は夢と思っていた事を理由に逃げはしない。
 許してくれだなんて言わない。取れる責任は俺が全て取る。だから……」
「…………あの……話が全く見えて来ないのですけど……」
「……………へ?」
「どのような事があったのか、わたくしに教えて戴けないでしょうか?」

不思議そうな顔で俺を見つめる春風。
彼女は俺に責任を取らせに来たんじゃないのか?
頭の中で出来上がっていた事と現実の違いに、俺の頭は大混乱していた。


「あの日、そのような夢を見ていらしたのですね。
 大丈夫です、御心配なく。それはただの夢ですわ」
「だけど生理が来ないからって医者に行って…」
「別に赤子を身篭ったとか、そのような事はありません。
 お医者様に診てもらったところ、ただの生理不順でしたわ。
 ケッコンカッコカリをした艦娘にはたまにあることと聞きましたが」
「つまり君は大丈夫……って事、か?」
「ええ。御安心下さい」
「よかった……かな……」

春風が妊娠していないと知って俺は胸を撫で下ろした。だが妊娠をしていなくても…

「それと、もう一つ。わたくしは生まれてこのかた、
 如何なる殿方にも身体を許してきませんでしたわ」

俺の心中を察したかのように答えたそれは
俺が過ちを犯さなかったと言っているかのようだった。
相手の自己申告だから絶対とは言えないが、
少なくとも俺とは何の関係もなかったのだろう。

「……もしよろしければ…御確認、致しますか…?」

またもや彼女は俺の心中を察したかのように………ってちょっと待て!

「待ってくれ。君は自分が何を言っているのかわかるのか!?
 女の子の大切なものを私のような男に見せようとするなんて!?
 私が医者ならともかくただの人の俺に見せていいものでもないだろう。
 そういうものは、将来の旦那様にだな…」

なんか自分の考えを押し付けている気もするが、言わずにはいられないのが俺だ。


「……あなた様では、駄目でしょうか……」
「…俺が、か……」

それは想像していなかった…
いや、想像していて駄目だった時に絶望するのが怖いから想像しなかった言葉だった。

「わたくしは前々からあなた様のことを御慕いしておりました。
 いつもわたくしと一緒にいてくれて、いつもわたくしのために頑張ってくれていて……」

俺は彼女の側にほとんどの場合にいたのだが、彼女はそれを善しとしていたようだった。

「それに…あなた様の先程の言葉を聞いて、
 きっとわたくしとずっと共にいてくれると思うと……」

感極まらんばかりの声で俺への想いを伝える彼女。
もしここで拒絶すれば彼女は壊れてしまうだろう。
……射手座の元となった神話に出てくるケイローンは
その最期は不死身故に毒に苦しみ続けるというものだった。
その神話の毒はヒュドラの毒だったわけだが、
春風……いや、風花は蠍座の俺の毒を受けた射手座の女。
害成す毒は量によっては害成さぬ薬ともなるが、
もし俺が拒絶したならばそれは苦しみを産む猛毒となり、彼女を永遠に苦しめ続けるだろう。
……まあ能書き垂れたけど、俺には拒絶する気なんて全くない。
同情とかそんな感情などは一切なく、昔から好きだったからだ。

「…………あなた様の気持ちを教えて下さい……
 もしあなた様が迷惑を感じるのならば、
 わたくしは一生この想いを胸に閉じ込めて生きていきます…………」

今にも消え入りそうな声だった。
彼女が俺に想いを伝えてくれたのなら、俺も想いを伝えなければならない。
もう誤魔化す理由も、押し込めておく理由もない。


「……君の気持ちを知る事が出来ずに俺は前に踏み出せなかった。
 でも、君の気持ちを知った今もう迷いはない。
 今こそ伝えるよ、俺の本当の気持ちを。
 風花、俺は君の事が好きだ。俺は君がいるから今まで頑張って来れたんだ。
 だからこれからもずっと、俺と共にいてくれ……」
「……………………」
「……………………」
「…………ありがとう……ございます…………」

今にも消え入りそうな雰囲気さえしていた彼女の声だったが、
俺の告白を聞いて涙声になった。
だけどそれは悲しみの気持ちではなく、喜びに満ちていたものだった。
彼女の顔が満開の花のように綺麗な笑顔を見せていた。
そしてどちらともなく顔を寄せていき、唇を重ね合わせた。
唇は柔らかくて、春風のように暖かかった。
俺達の初めての口づけは、少ししょっぱいけど、とても甘いものだった。
そして俺達はケッコンカッコカリではなく、本当の結婚をした。
これからの道も決して平坦なものではないだろう。
もしかしたら今まで以上に苦しい事があるかもしれない。
だけど気持ちの通じ合った二人ならきっと乗り越えられるはずだ。
だから俺達は生き続けるんだ。
そう――――春風と共に――――


《終》

+ 後書き
868 :名無しの紳士提督:2016/05/08(日) 20:06:07 ID:2EwOJXRQ

以上です
今回は最初はエロシーンもあったんですが
書いているうちにそれらのシーンは蛇足っぽくなってしまうと思い
冒頭などの描写に修正を入れて非エロ作品にしました
ちなみに今回の話を思いついたのは
ケッコン後の母港ボイスをエロく妄想したのが原因という
完成したSSから見ると若干の本末転倒っぷり……

それではまた


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最終更新:2016年10月05日 16:22