偽りの再会 ◆cNVX6DYRQU



「その武芸の妙技の悉くを尽くし、互いに相戦いて一人になるまで殺し合うべし」
最初にこの言葉を聞いた時は、いきなりこんな事を言われて素直に従う者などいるのかと思ったが、
意外と物分りの良い者が多かったのか、或いは各人に個別の事情があるのか、かなり多くの者が派手に殺し合ってるようだ。
先刻からあちこちで剣気がぶつかり合う気配がし、時には刃と刃がぶつかり合う音までもが耳に届く。
人間離れした感覚でそれら全てを感じ取っていながら、富田勢源はゆったりとした歩みを変えようとはしなかった。
周りの状況を意に介していない訳ではなく、単にそれ以上の速度を出せないのである。
言語に絶する鍛練によって、斬り合いの場ではしばしば目明きを圧倒する程に感覚を鍛え上げた勢源だが、
剣術用に特化して鍛えた為、日常の生活における盲目の不便を完全に解消するまでには到っていない。
初めて訪れた地、しかも正体不明の相手に無理やり連れて来られた場所での歩みが殊更慎重になったのも当然だろう。

そうしてゆっくりと北上していた勢源だが、ここで前方から真っ直ぐ向かってくる人の気配を感じ取る。
更に距離が縮まると、相手の方でも勢源の存在に気付いたらしい気配がわかった。
気付くのが勢源より遅れたとは言え、周囲を包む闇と考え合わせると、目明きにしては相当に感覚が鋭いようだ。
そこから更に数歩近付くと、勢源の閉じた眼を視認したか、それとも刀を杖代わりにする歩き方から見抜いたのか、
「盲か……」
という呟きが聞こえてくる。その声、そして身のこなしも、勢源には全く覚えのないもの。
にもかかわらず、勢源の脳裏に唐突に、一つの名前が浮かんで来たのはどうしてなのだろうか。

「失礼。違っていたら申し訳ないが、もしや佐々木小次郎殿ではありませんか?」
「そうだが、そなたは?」
駄目元で聞いてみたのだが、何と大当たりだったらしい。
勢源の弟子であり、齢十八にして一派を拓いて独立して行った天才剣士にこんな所で再会できようとは。
「富田勢源です。しかし、随分と声が変わられたな。剣も独自の境地に達したようで」
しばらく会わない内にここまで別人のようになるとは、さすがは天才と言うべきだろうか。
もっとも、短期間でも師と仰いだ勢源の事を記憶にとどめてすらいないあたり、高慢さは相変わらずのようだが。
「富田?私と……佐々木小次郎と面識が?」
「ええ。以前に少し。まあ、忘れてしまったのなら無理に思い出す必要もないでしょう。
 しかし、貴方は当時から中条流始まって以来の天才と謳われていたが、それに奢らず、良く修行されたようだ」
苦笑しつつも正直に褒めてみるが、小次郎は喜ぶどころか困惑した様子が感じられる。
何か悪い事を言ってしまったか、そう思う勢源の前で、小次郎は首を振ると武器……おそらくは木刀を抜き放つ。
「まあ良い。それより、せっかくの縁だ。一手勝負せぬか?」
中条流では他流試合は禁じられているが、佐々木小次郎は元々中条流を学んだ剣士。
殺気も感じられぬし、互いの剣を高める為の手合わせという事ならば問題はあるまい。
そして何より、この愛弟子がどのような剣技を編み出したのか、勢源は是非ともそれを感じてみたかった。
「わかりました」
返事と共に、勢源は小太刀を抜き放つ。

「小太刀?」
小次郎の困惑した声が聞こえる。
確かに、どう見ても長刀にしか見えないのに、抜いてみたら小太刀というのでは小次郎が戸惑うのも当然だろう。
「この刀は一種の仕掛け武器になっていましてね」
こんな事で弟子を惑わすのは勢源の本意ではないので、小太刀二刀の仕掛けを小次郎に示し、一本を戻す。
「小太刀二刀……その内の一本のみで私と闘おうと?」
「脇差一本であらゆる危難を打ち払う……それが私の目指す護身剣。
 未だ完成には程遠い剣ですが、あなた程の剣士に協力いただければ、より理想に近付けるでしょう」
「このような殺し合いの場でも修練か。さすが、見上げた向上心だな」
「いえ。私の勘では、ここは修行の地としては理想的な場所。短期間の鍛練でもかなりの成果が見込める筈」
「ほう?」
「それどころか、こうしてただ歩いているだけでも時と共に力が増している感覚を覚える程です」
事実をありのまま述べる勢源だが、どうも小次郎はあまり本気に取ってくれなかったようだ。
何も言わずに薄く笑うと、小次郎は神速の連撃を放って来た。

暴風をやり過ごす柳の如く、小次郎の剣を最小限の力と動きで受け流して行く勢源。
手応えのなさに苛立ったのか、小次郎の攻めに糸一本ほどの無理を見出した瞬間、勢源は鋭い一撃を送る。
「なるほど、いい腕だ」
小次郎の木刀を破壊しようとした勢源の一撃は、素早く木刀を回転させる事で弾かれて不発。
それでも、小次郎を本気にさせる効果はあったようだ。
「行くぞ!」
言葉と共に来る凄まじい縦斬りを辛うじてやり過ごす勢源。
そこに、僅かの間をおいて横薙ぎと円を描く剣が勢源に迫り……

(なるほど、これが小次郎の新しい剣か)
そう心中で呟く勢源。
呟いた時には、既に小次郎の縦斬りに続く横薙ぎと袈裟懸けは、勢源の脇差によってあっさりと弾かれている。
だが、小次郎の必殺の剣をたやすく防いでおきながら、勢源は小次郎を不甲斐なく思うどころか逆に感嘆していた。
今回は三つの攻撃の間の僅かな時間差、そして二太刀目以降の剣に小次郎本来の鋭さがなかった為に止める事ができた。
しかし、もし限りなく同時に、かつ鋭さを損なう事なく、今の三撃が放たれていたらどうなっていたか。
同時に十分な鋭さを持って放たれればあの三太刀の軌道は正に必殺……剣の一つの完成形と言ってもいいかもしれない。
つまり、小次郎には既に己の目指す剣が見えており、後は修練によってそこを目指せば良いという事だ。
その意味では、彼は未だに真の護身剣が漠としか見えていない勢源よりも先を行っていることになる。

そんな事を考えながら次の攻撃を待ち構える勢源だが、小次郎の方は戸惑った様子で構えを解く。
「どうしました?」
「……こちらから勝負を挑んでおいてすまぬが、この場は退かせてもらおう」
そう言うと、小次郎は背を向ける。
まあ、当然とと言えば当然だが、己の剣の完成形が見えたからと言って迷いや悩みが消えたりはしないようだ。
だが、迷いがあるのは剣士にとっては決して悪い事ではない。
その迷いを乗り越えさえすれば、剣士は更に一段進んだ境地に辿り着く事ができるのだから。

「勝負が中途半端になった詫びに一つ忠告しておこう」
小次郎が言って来る。そんな事で気を使うとは、高慢そうに見えてやはり良い子だと、勢源は弟子の成長を喜ぶ。
「この試合は、どこかの愚か者が剣士同士が殺し合うのを見て楽しむ為に開催した、といった類のものではあるまい。
 私の推測にすぎぬが、我等が戦うこと自体が、何らかの魔術的儀式……つまり呪いの一種かもしれぬ。
 まあ、私にはどうでも良い事だが、知らぬ間に己の剣を利用されるのが気に食わぬのであれば用心する事だ」
「そうですか。ご忠告感謝します」
素直に礼を言う勢源。
正直に言うと勢源には小次郎の言葉があまり理解できなかったのだが、そんな事より弟子の気遣いが嬉しかった。
そこで、勢源も師匠らしく、先程から気になっていたことを忠告してやる。
「お礼に私からも一つ。その木刀、どうもただの木刀ではないようですね」
「ああ、確かにこれは尋常の木刀とは一線を画する逸物。私も気に入っているが……」
「いえ、そうではありません」
小次郎の木刀の出来が良いのは確かだが、光を失った故に研ぎ澄まされた勢源の感覚は、それ以上のものを捉えていた。
「貴殿が持つ木刀の中でも、先程の縦斬りの後の二撃に使った物などは逸物の一言で片付けても良いでしょう。
 しかし、貴殿が今手にしている木刀だけは別。決してただの名刀ではなく、かと言って妖刀とも少し違う。
 妙な刀、としか私には言えぬが、とにかくそれを使い続けるつもりなら注意されよ」
誠心からの忠告だったのだが、小次郎が引っ掛かったのは別の部分だったようだ。
「その言い様、私が……二種の木刀を使ったと?」
「私にはそう感じられましたが?」
何時の間に武器を持ち替えたのか、そして持っていない方の木刀を何処に隠しているのか。
それは勢源にもさっぱりわからないが、小次郎が複数の木刀を使い分けているのは間違いない筈だ。
「そうか……忠告感謝する」
そう言うと、小次郎は去って行く。これが、富田勢源と佐々木小次郎の再会?の顛末である。

勢源との邂逅から一刻近く後。海辺で剣を振り続ける佐々木小次郎の姿があった。
「はあっ!」
燕返しを繰り出す小次郎……まずは凄まじい速さの横薙ぎが繰り出され、少し間を置いて縦斬りと円を描く剣が現れる。
勢源と立ち会った時に比べても更に時間差が増した上、縦斬りと円は横薙ぎよりもはっきりと速度で劣っていた。
これでは燕返しはもはや必殺たり得ない。はっきり言って普通の連撃にすら劣るのではないだろうか。
だが、小次郎が幾度も燕返しを繰り出して確かめようとしているのは、己の必殺剣の惨状よりも、まず木刀の差異。
勢源の指摘を受けてからよく調べてみたが、確かにこの木刀は普通ではないようだ。
感覚を集中させると、妖気と言うほど凶々しくはないが、霊気と呼ぶには憚られる妙な気配が感じられる。
それなのに、何度試しても、燕返しの際に現れる二本の木刀からは、そうした気配はまるで感じられない。
つまり、燕返しで増えるのは、小次郎が持つ物とは違う、ただの――相当に出来が良いにしろ――木刀なのだ。
何故そんな事が起きているのか……ここで思い出されるのは、先刻の富田勢源と名乗る男の言動。

あの男は佐々木小次郎と面識があると言っていた。
確かに、伝承によれば佐々木小次郎は富田流の流れを汲む剣士だったと言うから、富田勢源と面識があっても不思議はない。
もちろん、佐々木小次郎が実在するのであれば、だが。
実際には佐々木小次郎は架空の人物であり、実在しない……だからこそ自分がアサシンの英霊として選ばれたのだ。
かと言って、あの富田勢源が居もしない佐々木小次郎と知り合いだなどという嘘をついたとも考えにくい。
彼が言っていた、小次郎の木刀の特異性や、燕返しで二種の木刀が現れている事は事実だったのだし。
そして、人別帖を見ればそこには三つの「佐々木小次郎」の名、更に二つの「犬塚信乃」なる人物の名。
これらの事から、一つの推測……いや、想像が成り立つ。
この御前試合の主催者には平行世界を運営する力があり、自分達を別々の平行世界から召喚したのではないかという想像だ。
無数の平行世界の中には佐々木小次郎が実在した世界もあり、あの勢源はそこから呼ばれたと考えれば説明は付く。
そして、主催者に多元世界を操る力があり、尚且つ、優勝者に古今東西天下無双の称号を与えるというのが茶番でなければ、
この御前試合が連なる平行世界を持たない、多元宇宙で唯一の催しである可能性が出て来る。
だとすれば、燕返しの不具合も当然……いや、むしろ、完全に使用不能になっていてしかるべきだろう。
多重次元を如何に折り曲げたところで、重なるべき近縁の世界が存在しないのだから。
しかし、燕返しは非常に中途半端な形ながら一応は使えている。
あるいは、主催者が、せっかく呼んだ小次郎が力を発揮できるように、何らかの救済処置を取ったのかもしれない。
例えば、別の時間と場所で振るわれた、遠く離れた平行世界の小次郎の剣を燕返しで召喚できるようにしたとか……
こう考えれば、燕返しで現れる二本の木刀が小次郎が手にしているものと違うのも説明がつく。
多元宇宙広しと雖も、この妙な木刀を手にした小次郎が他におらず、仕方なく普通に出来が良い木刀が呼ばれているのだろう。
それぞれの太刀に時間差が生じているのは、遠い世界の剣を召喚する際にどうしても生まれるずれとも考えられる。

では、燕返しで現れる二本の剣が本来より遅くなっている、しかもその度合いが時と共に酷くなっているのは何故か。
最初は主催者の制限かとも思ったが、先の考察が正しければ、奴らは小次郎の力を抑えるどころかか、その逆をしている。
そもそも、天下無双の剣士を決める為の試合で、参加者の剣技に制限を課すというのは、よく考えると不自然だ。
加えて、ここしばらくの燕返しの連続使用によって、小次郎は一つの法則を見出していた。
燕返しの一太刀目と二太刀目以降の間の時間差が、現れる太刀の速度と正確に反比例の関係にあるのだ。
ここで思い出されるのは勢源の「ただ歩いているだけでも時と共に力が増している」という言葉。
あの時は戯言と思って聞き流したが、その後の会話から、あの男は冗談とは縁のない生真面目な性格だと思えた。
更に、自分を佐々木小次郎と呼んだ事や、木刀の異常にすぐに気付いた事でわかるあの勘の良さ。
この件に関しても、小次郎の感覚よりも、勢源の言葉の方が真実を衝いていると考えた方が妥当かもしれない。
つまり、燕返しで現れた太刀の速度や現れるまでの時間が遅くなっているように思えるのは錯覚で、
実際には小次郎の感覚の方が速くなっているのではないか、という推論が成り立つのである。

この場合、単に小次郎の感覚だけが速くなったのならば、燕返しの剣だけでなく、全ての物の動きが遅くなって見える筈。
そう思って足元の石を放り投げてみても違和感は感じられないし、風にそよぐ草の動きも普段通りだ。
それとも、この島では小次郎の感覚に加えて、重力や風速、星の瞬きまでもが同様に速くなっているのか。
もしそうなら、重力や風が強くなっていて何も感じないという事は、感覚だけでなく筋力も同様に増している事になる。
まあ、平行世界を越える程の強大な力を持つ主催者ならそれくらいの事が出来ても不思議はないだろう。
そして、小次郎だけでなく、全ての剣士の能力も同様に上昇していれば、己とこの島の異変に誰も気付く事はできまい。
そんな中、燕返しで現れる剣だけは別世界に属する為にその恩恵を受けられず、相対的に遅くなった……それが真相なのか。

「古今東西天下無双か……」
主催者が多元世界を行き来する力を持つなら、たった数十人の剣士を戦わせて天下無双を決める無意味さがわかるだろう。
何しろ、無限に連なる多元宇宙には、佐々木小次郎は無限に存在するし、それは他の全ての剣豪達についても同様。
例えば、ここで小次郎が宮本武蔵と戦って勝利したとして、他の無限の武蔵達をも上回ったとはとても言えまい。
だが、この御前試合が天下無双の剣客を「決める」のではなく、「作る」為のものだとすればどうか。
推測が正しければ、御前試合が始まって僅か数時間で、小次郎の腕は、平行世界の自身の剣がのろく見える程に進歩した。
この調子で行けば、生き残りが一人になる頃には、その者は天下無双の称号に相応しい強さを得ているかもしれない。
それこそが主催者の目的であり、剣客達の戦い自体が、彼等自身の強さを増す為の魔術的な儀式になっているのだとしたら。
剣客の強化と同時に環境が変化しているのは、この御前試合の真実を参加者に悟られまいとしているのかもしれないし、
単に、参加者に重力を利用した振り下ろしや、風を利用した技を使う剣士がいて、その強味を残す為の配慮とも考えられる。

まあ、もちろんこれもただの当て推量だ。
第一、仮に主催者の目的が無双の剣客を作る事だとして、その後どうするつもりなのかがわからない。
無論、作り出した無双の剣客を意のままに従わせられるのなら、出来る事はいくらでもあるだろう。
しかし、ここの剣士達は主催者に反感を持つ者も多く、そうでなくても好意を持つ者は少数派だと考えられる。
それではせっかく無双の剣士を生み出しても、その力を利用するどころか真っ先に試し切りされるのがオチだ。
そもそも今までの推測に穴があったのか、或いは主催者に無双の剣客をも従わせるような切り札が存在するのか……

ここで、小次郎は袋小路に入りかけた思考を打ち切った。こんな事をいくら考えても、それは逃避でしかない。
主催者の思惑など小次郎にはどうでも良い事だし、このままではそれを確かめる機会などなく彼は死ぬ事になる。
理由はどうあれ、彼の切り札である燕返しが、この島では使い物にならない技に成り果てたのは確かなのだから。
となれば、小次郎がやるべき事はただ一つ。
燕返しが役立たずになった理由の考察ではなく、それに代わる新たな技の開発だ。
富田勢源……あの異様に勘の鋭い盲人はこうも言っていた。
「私の勘では、ここは修行の地としては理想的な場所。短期間の鍛練でもかなりの成果が見込める筈」、と。
ならば、それを最大限に活用して燕返しに匹敵する、いや、燕返しを超える奥義を編み出して見せよう。
普通なら短時間で燕返し以上の技を開発するなど絶対に不可能だが、不可能は修練によって越えられる事を彼は知っている。
要は、燕返しを編み出した時以上の執念と渇望を持って励めば良いのだ。
決意を新たに、佐々木小次郎の名を持つ、今はこの島で唯一となった剣士は苦難の道を歩み出す。

【へノ漆 海辺/一日目/早朝】

【佐々木小次郎(偽)@Fate/stay night】
【状態】左頬と背中に軽度の打撲
【装備】妖刀・星砕き@銀魂
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:強者と死合
一:燕返しに代わる奥義を編み出す
二:愛刀の物干し竿を見つける。
三:その後、山南と再戦に望みたい。
【備考】
※自身に掛けられた魔力関係スキルの制限に気付きました。
※多くの剣客の召喚行為に対し、冬木とは別の聖杯の力が関係しているのか?
と考えました、が聖杯の有無等は特に気にしていません。
登場時期はセイバーと戦った以降です。
どのルートかは不明です。
※燕返しは本来の性能を発揮できないようです。
※この御前試合が蟲毒であることに気付き始めています。

小次郎が立ち去り、その気配がすっかり消えると、勢源は我慢していた溜息を盛大に吐き出した。
漸く目明きの知り合い、しかも一番の愛弟子に会えたのだから、出来れば同行してほしかった、というのが正直な所である。
(しかし、小次郎の修行の邪魔をする訳にはいかぬ)
しばらくぶりに会った小次郎の剣が格段の進歩を遂げていた事が、勢源には素直に嬉しかった。
小次郎に完全に忘れられていた事も、その剣筋に己が教えた中条流の痕跡がなかった事も勢源の歓びに水を差したりしない。
そして、次に小次郎と会った時には更に完成された剣を見せてくれる。勢源はそう確信していた。
その時に、師として恥ずかしくない、今度こそは小次郎が一生覚えていてくれるような技を示せるよう、自分も精進せねば。
決意と期待、そして大いなる喜びを胸に、勢源は闇の中を進み続ける。

【へノ陸 街道/一日目/黎明】

【富田勢源@史実】
【状態】健康、
【装備】蒼紫の二刀小太刀
【所持品】支給品一式
【思考】:護身剣を完成させる
一:目明きを探す
※佐々木小次郎(偽)を、佐々木小次郎@史実と誤認しています。


※史実の佐々木小次郎の生年や師匠については諸説あるのですが、
 ここでは小次郎は16世紀前半の生まれで富田勢源の弟子だったと設定しました。




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存在証明/新たな決意をその胸に 佐々木小次郎(偽) 三剣士、復活を志す
おのれ、セイゲン!我敗れたり 富田勢源 夢十夜――第二夜『喪神/金の龍』――

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最終更新:2010年12月02日 20:47