前だけを向いて進め◆C1mr6cZSoU



「どうなってやがるんだ。俺、死んだはずだろ。なんでここにいるんだ」

近藤勇は一人空を見上げる。
自らの目に映る夜空は生存と何ら変わりはしない。

「うーん、ひょっとして俺死んで無かったのか………でも…………マジで斬首された記憶はあるんだよな……まあいいや。
悩んでも仕方ねーしな」

近藤はあまり悩むことなく、自らに支給された日本刀を抜く。
すると刀身の輝きはかなり鋭く、切っ先からは名刀の雰囲気が感じ取れた。
しかしそれもそのはずである。
近藤が手にした刀は、天下五剣が一つ童子切と並ぶ日本最高と名高い名刀大包平であるのだから。

「おお!良い刀じゃねえか。これなら良い感じにいけそうだ」

すると近藤は近くにあった大木に刀を向ける。

「とあっ!てやっ!せいっ!!」

鋭い三つの剣筋が木に三つの切れ目を作り、そのまま倒れてゆく。

「最高だな。あの爺さんはムカついたが、この刀は上出来だ。これならどんな野郎でも歯向かってくる野郎は
余裕で斬り捨てられるってもんだ」

近藤は若干笑い混じりに呟く。
しかし、その直後。近藤は背後に得体のしれない気配を感じ取った。

「誰だっ!……………女?」

近藤は振り返るが、その姿には思わず呆気に取られる。
しかし、女は小さく独り言のように呟く。

「………お前。殺し合いに乗るつもりか」
「あん。お前だあ?俺は新撰組局長の近藤勇って名前があるんだけどさあ。人を呼ぶなら自分を名乗って、相手にも
名前を聞いてからにしろよ」
「………そうか。それは失礼だった。ボクは香坂しぐれだ。それで近藤…………どうするつもりだ」
「別にどっちでもねえよ。あの爺さんの言う事を聞くつもりはねえが、俺にはむかう奴、邪魔をする奴は斬る。それだけだ」
「………そうか」

しぐれは近藤の返事を聞くと、袋から二本の曲線の形をした刀、通称干将・莫耶を取り出す。

「……どうやらお前は頭を冷やした方が良い」
「あん。ひょっとしてお前。この俺を馬鹿にしてる?」
「………馬鹿になどしていない。ただ思った事を正直に言っただけ」

しぐれは声自体は小さいが、しっかりとした口調で返す。
それが近藤を酷く怒らせる。

「なるほど。つまり俺の邪魔をするわけだ。いいぜいいぜ。掛かって来いよ」

近藤は静かに怒り、しぐれを挑発する。
しかし、しぐれは特に動じた様子も見せずにただ両手に構えた二刀を構える。

「分かった」

その一言が発したと同時。
七メートルは合った間合が一瞬で詰められ、しぐれは近藤の傍まで来ていた。

「なっ!?」
「はっ!」

近藤は咄嗟に後ろにとび左右から跳んでくる攻撃をかわすが、左頬を僅かに切っ先が掠める。

「………ちっ、油断したぜ。だが次からはそうはいかねえ。もう俺は油断するつもりは無い」
「………そう」
「てっ!おいっ!?」

しかし近藤が刀を構えなおすと同時、しぐれはいきなり両の剣を近藤に向け投躑する。
それに驚き近藤は思わず突っ込みを入れる。
だが、決して棒立ちをしているわけではない。

「くそっ!?」

肩を下げ、足を引いて致命傷を避ける。
投げられた二刀は右肩と左足を僅かに切り裂き、背後の木に突き刺さる。

「甘い。だが得物を投げたら……!?」

次に近藤がしぐれを見ると、その手には鎖鎌が握られており、その鎖の方を近藤へ向けて投げる。

「ちっ!」

鎖は正確に近藤の首を捉えていた。
しかし、咄嗟に刀を握っていない左手を首に入れて、縛り首を避ける。

「………どうする。もうボクの勝ちだよ。刀を捨てて………」
「けっ、甘いな。それで俺に勝ったつもりかよ。甘すぎるぜ。伊東や芹沢も甘かったが、お前はそれ以上だ」
「?」

近藤は強気で返すと、しぐれに向かい走り出す。

「こうすりゃいいだろうがっ!!」
「!?」

しぐれはそれにあわせて後ろに引こうとする。
だが不意をつく事に成功した近藤の方が僅かに早い。
そして詰められた間合は鎖の弛みを生む。
近藤はそのたるんだ鎖を腰に差した鞘に引っ掛ける。
そして刀を合わせ……

「おらあっ!!!」

掛け声と共に一気に刀を鞘へ納める。
鎖は刀と鞘に挟まれ、一気に引き千切られる。

「……そんな」

しぐれは近藤の予想外の行動に唖然とする。
けれど近藤はそんなしぐれの隙を逃さない。

「今度はこっちから行くぜ!」

鎖を首から外すと、刀を再度抜いてドンドン間合いをつめていく。

「まだ負けない」

しぐれは残った鎌を近藤へ向けて投げる。
だがそれを近藤は避けずに刀で弾く。

「それで終わりか」
「んっ」

しかし次の瞬間、しぐれは袋から最初に投げたのと寸分違わぬ二刀を取り出していた。

「また同じ刀か。いいぜ、何度でも相手してやるぜっ!!」

近藤は鋭い剣筋がしぐれを襲う。
だが、しぐれはそれを全て両の剣で捌く。
そして今回は両者引かない。
何度も何度も、互いの剣が交差する。
金属の弾きあう音がリズム良く響き渡る。
そしてその剣の交差は五分ほど続いたところで変化が訪れる。

「っ!」
「どうした!押されてるぞ!」

遂に近藤がしぐれを押し始める。
しぐれは激しい近藤の剣撃に、両手に握られた干将・莫耶で何とか防ぐ。
しかし次第にしぐれは後退していく。

「さっきの鎖鎌もそうだが、どっちも確かに凄かったぜ。最初の二刀を操る動きも、鎖を操る動きも、鎌を投げる動きも、
そして今俺の攻撃を防ぐその防御術もなっ!」

近藤は剣速を更に加速させ、しぐれを後退させる。

「だがよう。どれも中途半端なんだよ。所詮お前はさ。あらゆる武器を使いこなしてるつもりで、一つも極めちゃいないんだよ。
それじゃ勝てねえよ。この俺の純粋な剣にはな」
「くっ」

もうしぐれの動きでは完全に捌ききることは出来ない。
既に両腕には無数のかすり傷が出来ている。

「悔しければ極めてみろっ!俺の剣を超えてみろ。それが出来ないならここで死ね!香坂しぐれっ!!!」

そして次の一撃。
気合をこめた一撃が干将・莫耶を砕きしぐれの胴体に叩き込まれる。

「がっ!」

そのまましぐれは後ろに飛ぶように倒れ、下の海へと落ちていった。
近藤は流されてゆくしぐれを見つめながら刀を収める。

「鎖帷子を仕込んでやがったな。まあ死んでるかどうかはあいつ次第か」

近藤は近くの椅子に座り込み、一度息を整える。

「まあ、思ったよりは強かったな。せっかくだ。この際楽しませてもらうぜ。爺さんよ」







一方その頃。
しぐれは海から流れ、何とか浜に辿り着き、陸から上がる。

「つっ、強い」

しぐれは余りの強さに敗北感に、心の中は悔しさで滲んでいた。
支給されたのは四本の中華刀。そして自分の傍には鎌が一本落ちていた。
更に自らの上着の下に着込んでいる鎖帷子はそのままだった。
その武器を全て消化し、防具まで使った上での完敗。
悔しくないはずが無い。

「………ケンイチにはこんな姿、見せられないな」

仰向けに倒れながら、いつも以上に力無い声で、しぐれは呟いた。


【ちノ捌 離れ小島の端/一日目/深夜】

【近藤勇@史実】
【状態】健康 左頬、右肩、左足にかすり傷
【装備】大包平
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この戦いを楽しむ
一:強い奴との戦いを楽しむ (殺すかどうかはその場で決める)
二:土方を探す。
【備考】
死後からの参戦ですがはっきりとした自覚はありません。


【とノ漆 大陸の陸地の端/一日目/深夜】

【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】
【状態】ずぶ濡れ 疲労大 両腕にかすり傷 腹部に打撲
【装備】無し
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いに乗らず、乗った人を無力化させる
一:まず体力を回復させる
二:その後に武器と着替えの服を探す。
三:近藤勇に勝つ方法を探す

【備考】
登場時期は未定です。

ちノ捌の離れ小島の木に干将・莫耶@Fate/stay nightが刺さっています。
ちノ捌の離れ小島に鎖が砕けた鎖鎌(赤松が持っていた分銅付きの物)@るろうに剣心が落ちています。


時系列順で読む

投下順で読む



試合開始 近藤勇 昔飛衛と言う者あり
試合開始 香坂しぐれ 少女二人で夜越えて―/人斬り二人

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年04月27日 22:46