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2022年総評案2 大賞:悪魔と夜と異世界と

【2022】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58649/1675519237/
47:総評2:2023/06/19(月) 04:50:32 ID:???0
進捗報告を兼ねて修正案の暫定版を挙げておきます
https://writening.net/page?Fb25AP

結論含め大筋は変えてませんが、大賞理由から結びにかけての部分に構成などの変更点が多く追加もあるため、特にそのあたりについてご意見を募りたいです
仮にそれがなくてももう少し細部を見直して整えたいので、今は(仮)付きの暫定版とし、次を正式な総評案2修正版とさせてください
そちらの提出は、ご意見の多寡にもよりますが1週間以内には行います

2021年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)には、“力なき熱意の悲劇性”をもって終止符が打たれた。
ワーストワンの玉座に就いたのは、『Cuteness is justice』
やりこみSLGの魅力を伝えるべく制作された壮大な三部作の序章は、理想とは裏腹に、CG・システム・難易度調整のすべてにおいて、開発者の実力不足を浮き彫りにした。
しかし、先を期待したくなる高邁な志を示したのも、また確かである。
悲劇と希望が交錯するクソゲーは、虚無に飲まれゆく暗黒大陸に差し込んだ一条の光であった。
その光を各々の心に宿し、名もなき修羅たちは次の舞台に立つ。
戦いは、まだ終わらない。

近年のKOTYeにおいて、新年度の本格始動は遅い。
それは修羅たちの余裕か、あるいは迷いの現れか。
2022年の初選評が届いたのは、歴代最遅記録となる5月末。
服を着た白うさぎが姿を現し、修羅の国へと通ずる奈落の穴を開放する。
その途端、物語の始まりを待ちかねていたかのようにエントリーが続発し、その数は1ヶ月で5本に達したのであった。

先駆けを努めたのは、新ブランドLuna PrismのWデビュー作のひとつ、『官能小説家』
ブランドデビュー作を2作品同日発売という景気のいい話に反して、シナリオ・CG・システムのすべてが低質である。
宣伝文句では「官能小説に憧れた若妻と官能小説家のNTR官能体験」を謳っているが、ストーリーはただの不倫ダイジェスト。
開幕早々ヒロイン側からがっついてくる姿勢や、自分の妻に執着を見せない旦那のせいで、寝取りものとしての盛り上がりは薄い。
CGは差分が少なく、エア挿入や射精前白濁といった定番の副作用を発生させつつ、メインテーマたる「同意の上での疑似レ○ププレイ」において、相手の反応が乏しいという致命的な問題を引き起こしている。
システムは無料のノベルゲームエンジン丸出しで、貧相かつ不安定。
バックログは字が薄すぎて読みにくく、コンフィグは簡素すぎて音声の音量調節すらできない。
そんな虚無虚無不倫を救ったのは、主人公の名前が枠を超えて入力可能な懐かしい不具合であった。
これにより、伝説のオノマトペ「ずっぷ!」が時を越えて召喚され、再びメッセージウィンドウを彩った。
疑似レ○プに失敗した代わりに疑似ずっぷを成功させた本作は、怪音を響かせスターターピストルの役目を見事に果たしたのである。

二番手は、Hendingの『リンパに ATATA! ~メス牡蠣ミルクどぴゅらっしゅ~』
抜きゲーにおいてストーリーは二の次とはいえ、わからせを称しておいて即快楽落ちは看過できない。
幕間においても、「雑な罵倒を受けた主人公が、ヒロインたちのショート動画を荒らして反撃」といった茶番劇を見せられる。
その配信動画にLive2Dが浪費されており、エロシーンへの適用はごく一部のみ。
選評者に「抜くより溜まる」とまで言わせ、TikT○kに対する風評被害までもが懸念される事態を招いた。

続いて、ババアもので未開を切り拓いてきアパタイトにより、競合も需要もなさそうなブルーオーシャンが新たに発見されてしまう。
それこそが『イキ過ぎ異文化交流 ~清楚人妻NTR堕ちっ!~』である。
パケ絵には、地球上に存在しそうもない謎の部族のようなヒロインが描かれており、発売前から好奇の目を集めていた。
門外漢を寄せ付けないパケ絵バイバイ仕様、「わかる貴方へ贈る意欲作、素人お断り」との触書からは親切心が伝わってくる。
しかし、わかった上で選ぶ玄人には刺さるかといえば疑問である。
パケ絵に描かれた「完全体」ヒロインはオチ扱いで、タイトル画面とアイキャッチを除けばエピローグにしか現れない。
さらに、清楚から完全体までの進化の過程は、脈絡のない電光石火のキャラ変である。
最初に本番をおねだりされるや否や襲う側になり、清楚人妻からビッチギャル、さらにオラオラヤンキーへと変化。
そして最後は、ギャルとヤンキーと謎の民族の要素を煮詰めて発狂熟成させた完全体へと至る。
奇声と罵倒にギャハハ笑いを織り交ぜた台詞回し、伸び放題の体毛や蝿がまとわりつく体臭といった表現は確かに胸糞悪いが、それをNTRシーンにぶち込んで「胸糞NTRでござい」は通るまい。
異文化交流をテーマとしながら文化的描写にも乏しく、類まれな出オチとして名を馳せたのであった。

四番手には、Luna PrismのWデビュー作の片割れ『羞恥隷嬢学園』が襲来した。
前述の『官能小説家』とは、いわば双子であり、似通った問題点が多い。
ヤマもオチもない短すぎるシナリオ、名前による本文への侵食、全裸CGに対して地の文で部分着衣と言い張る裸の王様作戦など、お粗末さはきっちりと共有済み。
それでいて、苛立ちのツボを突く小技を散りばめて差別化されている。
複数ヒロインの調教ものにもかかわらず、ヒロイン同士の交流や同時調教のシーンは無し。
ならば同じヒロインを選び続ければ攻略は容易かと思いきや、「最終日に告白されるイベントだけは、本命ではなく別のヒロインと済ませなければならない」という意味不明な罠が待ち受ける。
SAVEとLORDのアイコンを入れ替える猪口才なサプライズも徒花を添え、デビュー作を2本同日発売する挑戦は共倒れに至った。
Wデビュー作がそのままW最終作とならぬように祈るばかりである。

そして五番手は、CG削減だけを目的としたクローズドサークルなのは毎度のことながら、下水管からスライムが湧き出るような射精音だけは斬新だった
『南国プリズン ~漂流した無人島が子作りしないと出られない島だった件~』
が努め、上半期を締めくくった。

しばしの休息を経て迎えた8月。
前作と共通ルートを重複させた分割商法により、前作の購入者には割高感を、未購入者には前作用の伏線が謎のまま残るモヤモヤを与えた『保健室のセンセーと小悪魔な会長』が、第二章の幕開けを告げた。

夏の主役を務めたのは、エセNTRの悪魔ことアトリエさくら。
かねてより、ほぼ月イチという常識外れの発売ペースとマンネリ防止に固執するあまり、原点たるNTRの何たるかを見失っているのではないかと危惧されていたメーカーである。
自らに課した縛りが臨界点を超えたか、あるいは別メーカーからエントリー済みの自称NTR作品2本に対抗してか、ここに来て夏季大攻勢に打って出た。
当該メーカー作品に共通の問題点として、寝取られ感を味わうだけの感情移入ができないことが挙げられる。
原因は、人間関係の描写の薄さと登場人物の奇異な言動が主であり、最初の刺客『寝取られ姉妹、美亜と悠美 ~繰り返される恋人強奪~』も例外ではない。
導入部のあらすじは「姉妹ヒロインの姉に浮気されて女性不信になった主人公は、そのあと再会した妹の献身によって立ち直りつつある」なのだが、作中の描写は「冒頭から浮気現場の回想が始まってあっさり終わり、3クリック後にはもう妹とヤッている」という高速展開である。
ヒロインにしても、妹は今カノでありながら影が薄く、姉は身勝手さばかりが際立つ。
これでは、今カノのどこが好きかも、元カノをなぜ好きだったのかも伝わらず、主人公への共感も生じない。
にもかかわらず、クライマックスでは「意に沿わぬ結婚式に臨む花嫁を土壇場で奪い返す」かのようなノリで、取ってつけたようなメロドラマが展開される。
未練を押し殺した姉に背中を押され、現場に乗り込む主人公。
泣いてその胸に飛び込む妹、あてが外れつつも潔く身を引く間男。
あるいは名シーンたりえたかもしれない。
実際の現場が結婚式場ではなく、「間男と妹が合体中のホテルの一室」である事実に目をつぶれるならば。
ダメ押しで、去り際の間男が主人公にも「(俺とシたくなったら)いつでも来ていいからね」と、突然の爆弾を落としていく。
最後にプレイヤーの感情をかき乱すことには成功したが、NTRに求められるそれとは種類が違うのであった。

その後も、アトリエさくらは積極果敢に追撃を繰り出し続ける。
初撃の3日後には『今夜もあいつに抱かれる彼女 ~快楽に溺れていく愛する彼女・美織里~』が着弾。
男主人公視点でNTR場面にアクセスさせる手段として「夢を通じての強制遠隔透視」という悲惨な超能力が駆使され、Hシーンは超時空ダイジェストで垂れ流される。
そもそもNTRと浮気を混同している節があり、重度の浮気性でしかないヒロインが、主人公・元カレ・セフレの間を巡り巡る様は「NTRウロボロス」と称された。

続く第三弾『愛する恋人を大嫌いな旧友に寝取られた件 ~上司で恋人の強気な彼女』は、突拍子もない言動で暴威を振るうヒロインが狂戦士と評された
序盤早々、竿役に「チ○コ舐めて」と言われるとその場でしゃぶり、すぐさま身も心もマジカルチ○ポの虜になる刹那の早堕ちを披露する。
その後は、竿役と共に主人公を追い込む側に転向。
それでも結婚は主人公としたいとぬかしながらも、浮気三昧の日々は堪能し続け、しまいには両方と結婚したいと悟りを開いて涅槃に至る。
一方で竿役は、「世間からバッシングされるレベルの浮気クズ」という的確なヒロイン評で共感を集めたのみならず、名字のルビが漢字そのままという笑いどころまで作り出し、憎まれ役が一番マシな人物とされる無惨な顛末と相成った。

さらに、『寝取られの教壇 ~教え子に奪われた愛する恋人』が発売2日後に即エントリー。
ヒロインの悪印象は薄れているが、その理由は「主人公の方が奇怪だから」である。
NTR妄想で焦りを募らせては脊髄反射で奇行に走るその姿は、ときに理解不能を超えて恐怖すら振りまく。
竿役の恋人が通っている学校に電話して交際状況を直に確認したり、勃たなくなったムスコを校庭で露出してしごき出したりと、とても勤続12年目の教師がすることとは思えない。
せめて「自らを犠牲にしてヒロインの名誉を守った」と介錯、もとい解釈するのが武士の情けといえようか。

NTRクライシスが一時収束したときには秋祭りの季節を迎えており、本年は狂ったお茶会が開催される運びとなった。
その開幕イベントにて、North Boxの『オトカノ ~おとうとの彼女が文系で強め!?~』が、異物混入事件を引き起こす。
前年にも『エルフのお嫁さん』で異世界設定と現代要素を潰し合わせておいて、性懲りもなく同じ轍を踏んだのである。
本作は実姉と彼女との精神入れ替わりによってエロの差分を増やした抜きゲーであり、CGは概ね美麗。
しかし、それだけでは払拭しきれない様々な不快感が、多彩なシミ汚れのようにこびりついている。
まず主人公のモノローグがキツく、古いパロネタや「(エエ)←こんな顔」といった安い表現に出くわすたびに失意の鼻息が漏れる。
片や実姉は、「弟が好きすぎる一方で復讐心も抱いている」という両極端な感情が消化しきれておらず、自分が元凶であることは棚に上げての恨み節で好感度を下げており、復讐心は不要な設定と断ぜられた。
また、入れ替わりの真相にはどんでん返しが仕込まれているが、伏線の張り方が露骨かつ執拗で、オチが見え見えを通り越して苛つかされる。
前作同様のHシーンにそぐわないBGMは、タイトル画面にまで流用される悪性進化を遂げ、最後の砦であるCGにしても、ぎょっとするほど低質なラフレベルのものが混じっているため、絵だけは良いとも言い切れない。
前作の汚点を踏襲しつつ新たな欠点をも混ぜ込んだその仕上がりは、正当退化作品との評にふさわしいものであった。

波乱の幕開けとなったお茶会。
そこでマッドハッターの役目を担ったのは、しるきーずこねくとの『ホームメイドスイートピー』であった。
疑似家族ものでありながら人間関係が薄っぺらく、軋轢も葛藤もたいして描かれない。
なりゆきで集った他人同士が一瞬で家族ごっこに順応し、そのまま恋人から肉体関係へとトントン拍子に進展していく。
各々が抱える昏い過去は、絆パワーでふわっと乗り越えてお仕舞いである。
さらに、物語の展開は泥縄かつ非常識。
具体的な手順や方法、実現性を全く考慮しない行き当たりばったりの行動に、それでも必ず結果がついてくるパターンの繰り返しで話が進む。
発端からして、
「ある日、大学4年生の主人公が独り立ちをふと思い立って生まれ故郷に帰るも、何の準備もあてもないため住むところすら見つからず、道すがら捨て幼女を拾い、一緒に彷徨っているうちにシェアハウスに辿り着き、そのまま2人とも入居する」
といった具合である。
幼女のくだりには「警察に任せる」という常識的な選択肢も用意されているが、そちらを選ぶと謎の声に失望され、超常の力によって物語の開始時点へと強制ループさせられてしまう。
その後も、ただ一直線に話の筋をなぞる香車のごとき登場人物たち、帳尻合わせでその場限りの設定を持ち出すライブ感、ノーヒントで的確すぎる行動をとって「そんな気がしました」で片付けるご都合主義が目白押し。
「親に捨てられた哀しみで将棋の捨て駒が苦手になる」やら「家出が極まりすぎて、親に関する記憶すら薄れて曖昧になっている」やら、話の前フリからしてこじつけの粋を出ていない。
ほかにも、「商店街の祭りを成功させた功績で即昇進でき、私的な飲み会帰りのタクシー代を経費で落とせる、実体不明の謎企業」やら、「妹への遺言を、自分が死んだあとで妹が出会い慕うことになる人物にあらかじめ託しておいた兄」やら、雑を極めたエピソードは数知れず。
「原因不明の不妊で治療を受けていた処女が、フラッシュバックで意識を喪失して病院に搬送され、そこで不妊の原因はトラウマだと即判明」する展開に至っては、未亡人前提のシナリオから未亡人設定を削除した弊害ではないかと推察されている。
総じて、良くて説明不足、悪くて支離滅裂。
過去の例でいえば「何が起ころうとチーズを買いに行く」と同じ原理である。
最短距離で物語を紡ぐために常識と因果律が捻じ曲げられ、不自然で満たされた混迷の箱庭が再臨し、またも修羅の国を揺るがしたのであった。

狂ったお茶会脱却のため、超えねばならない最後の壁は、Lump of Sugarの『ゆまほろめ 時を停めた館で明日を探す迷子たち』
気が付いたら「時を停めた館」に閉じ込められていた主人公が、同じ境遇のヒロインたちと脱出を目指す話である。
しかし、全体のおよそ7割を占める探索パートは、そのボリュームに反して極端なまでに内容が薄い。
なんの成果も得られない探索とギスギスする小休止、そのふたつを延々と繰り返すだけなのだから当然である。
その気になればいくらでも文章量を水増ししうる反則技であり、これにより本作は「君と廊下を歩むADV」に成り果てた。
この無間地獄にどうにか耐え続けていると、突如として連続Hシーンが勃発。
シーン数のノルマ回収が終わるまで、探索が完全に棚上げされてしまう。
そのままの勢いでエンディングに至ってもなお、トゥルー以外のルートでは核心に迫るような進展はない。
ヒロインたちが抱えている悩みを主人公が熱い一喝で吹き飛ばし、それで解決したことにする根性論エンドである。
トゥルーエンドでは大風呂敷を畳み切った感を醸し出せているが、途中での匂わせがかなり露骨なため、オチは概ね予想の範疇であろう。
全体像を4行で表現するなら
「変な館に迷い込んで出られない。
 意中のヒロインと一緒に探索しよう。
 ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!
 ああ…出られそう」
といったところか。
この内容で発売4か月前に早々とマスターアップが宣言されていたため、もう少し時間をかけるべきだったのではとツッコまれたのであった。

年の瀬が差し迫る頃には、拙速を尊ぶ常連Calciteの『気になるあの娘はえろちゅーばー!』が遅れてやってきた。
いつもの強引な展開は衰え知らずであり、ヒロインたちは顔出ししていない有名配信者だと主人公が勘付く流れからして、あまりに無理矢理すぎる。
教室でクラスメイトと会話中に、
「声が枯れている+歌い手が昨日収録だと言っていた→同一人物?」
続いて、脈絡なく友人を紹介される話になってすぐに会い、
「最近忙しいらしい+ただの学生が忙しい訳がない→多忙な有名配信者?」
その帰りに近所に住む人妻に遭遇し、開口一番配信の話を振って、
「配信について詳しい+アニメは操作できないから好きじゃない→ゲーム実況者?」
といった具合である。
このように主人公は屁理屈と妄想のハイブリッド思考の使い手で、視野も見識も狭いが、世界がそれ以上に狭いためすべて正鵠を射てしまう。
Hシーンへの導入にしても、「正体がバレたら学園にいられなくなるから口止め料代わりに体を触らせる」といった、情緒のないものばかりである。
メーカーのご多分に漏れず、本作も「服がそれっぽいだけの低級コスプレAV」の域は出られなかった。

同時期には、怒涛の夏季攻勢で住人たちを震撼させてもまだ懲りないアトリエさくらにより、冬季攻勢までもが仕掛けてられていた。
まずは『裏切りの寝取らせ 心まで堕とされてしまった最愛妻・愛依奈』が、発売の翌日に即参戦。
ようやくながら、「寝取らせを無理強いされた者が、次第に堕ちていく様子」を描くことに成功している。
しかし、事実上の攻略対象をヒロインではなく竿役に変更。
妻への説得が描かれるのは最初の1回のみであり、以降は竿役と差し向かいでの口説きとその反応に尺を割く。
最終的には3Pにまで持ち込むため、主人公は寝取らせ名目で竿役を狙うゲイではないかとの疑念すら抱かれた。

続いて現れたのは『ギャル妻・アンリの寝取らせプレイ 他の男の物を咥え、楽しそうに報告をする俺の妻』
寝取らせものとしての体裁と登場人物の言動は概ね破綻していないが、ただただ浅く少ない。
3人いる竿役には立ち絵すら用意されず、ロープライス相応の分量から3分割されたシナリオも、Hシーンの尺も短い。
また、竿役の1人は寝取らせプレイを散々堪能してから事後説教をかまし、良いこと言ってます感溢れるBGMと相まって萎えを加速させてくる。
本作によってアトリエさくらは、奇策に溺れるばかりでなく、地力の不足までも証明してみせた。
同年内6本のエントリーは、かのsealやアーベルを上回るワールドレコードであり、その功績はエセNTRヘキサグラムとして史に刻まれたのである。

明けて1月の予備期間には、エロゲー福袋に封じられていた年末の魔物『悪魔と夜と異世界と』が解き放たれた。
WendyBellの初参戦タイトルとなった本作は、全てがダサい。
それは外見と内面の両方が、格好悪く、かつ古臭いという意味である。
CGもBGMもシステムも時代遅れで、10年以上眠っていた没素材をリユースしたかのような野暮ったさ。
令和を感じさせない絵柄、縦横比が4:3、貧相なアクション絵、CG数にカットイン用の絵をカウントして水増しといった素養を取り揃え、キスシーンに至っては「グロ画像」「強欲な壺」とまで評された。
システムも、ただ古いだけではなく、立ち絵が動く演出中はメッセージウィンドウが消える腐れ仕様を搭載。
読んでいる途中の文章を頻繁に消されるイラつきは、筆舌に尽くしがたい。
シナリオは、二昔前のラノベをなろうテイストで多重劣化コピーしたような出来である。
表現やストーリー以前に基本的な文章作法がなっておらず、あらすじの時点で日本語が怪しい。
表現力も拙く、込み入った状況で主語を省いて状況を不明にする一方で、わかりきった主語の執拗な多重表記・直近の状況説明や心理描写の無駄なリピート・二重表現を織り交ぜ、感感俺俺を凌駕した。
ストーリーは、悪魔と天使の対立を軸に、テンプレに付いた手垢をこねて作られている。
バリエーションも乏しく、例えば戦闘の勝ち方は、神話に出てくるような武器を借りて圧倒するか、誰かが折よく助けに来るかの二択。
また、メインヒロインの悪魔娘はシナリオの万能潤滑剤であり、前述した武器の貸与をはじめ、人間の半魔化・半魔の人間化・怪我の治療・魔力回復・他者変身・記憶の部分消去・戦闘被害の修復・テレポート・時間跳躍を自在に行使し、起承転結らしきものすべてをインチキで取り繕っている。
そして本作の真骨頂は、テンプレやご都合主義に全面的に甘えながら、同時にそれらを徹底して皮肉るか否定する、恩知らずなパラサイト根性である。
「まるでご都合主義の物語」だの「安っぽいラブコメ展開は嫌い」だのと、まさにそうした展開の真っ最中に逐一ボヤき、プレイヤーのシラケた心に追い冷水を浴びせては、呆れや苛立ちを芽吹かせるのである。
総活として、典型ともいえるイベントをダイジェストで紹介しよう。
“敵に人質を取られて竜との戦いを強要され、絶体絶命の主人公。
「…………中二病アニメだったら、ここで覚醒イベントだろう。
 しかしこれは物語じゃない、現実だ。
 俺に出来ることは……
 悪魔に力を借りることだけ。
 ……正直、他力本願な自分が嫌になるよな。
 見てるんだろ?敵を殺せる武器をよこせ。」
テレパシーで応答した悪魔娘が転送した竜殺しの剣『アスカロン』を使い、あっさりと竜を両断する主人公。
「ううううっ……竜からのダメージと魔剣の反動で……身体が、動かない……」
しかし人質は、最初から悪魔娘の擬態でした(コメディBGM)
敵を煽る悪魔娘「ねーねー、どんな気持ち~♪」
主人公は騙した償いとして治療を要求して即時回復、そして次の戦いへ――”
本作のプレイ感の一端が伝わったなら幸い、あるいは不幸である。

以上でエントリー作品の紹介をひとまず終え、これより本年の結果を発表する。

次点は、
『ゆまほろめ 時を停めた館で明日を探す迷子たち』
『ホームメイドスイートピー』
そして栄えなき大賞は、
『悪魔と夜と異世界と』
とする。

2022年の傾向として、ジャンルの画一化とシナリオのさらなる低質化が挙げられる。
RPGやSLGといったゲーム性の強い作品が姿を消し、全エントリー作品がノベルゲームとなった。
有史以来初の事態である。
バグや悪徳商法も鳴りを潜めており、クローズアップされるのは必然的にシナリオの優劣となった。
しかし、そのシナリオが、悪い意味においてすら地味で映えない。
熱は入らず興は乗らず、接するほどに振り積もる退屈と失望が、緩やかに心をしおれさせてゆく。
もはや、手抜き感よりも元気の無さ、ひいては出せる力そのものの衰弱すら感じさせるような、腑抜けた作品ばかりが押し寄せた一年であった。
おのずと大賞争いは、「萎えの深みと広がり」を比べ合う消耗戦の様相を呈する。

大規模水増しの産物『ゆまほろめ』は、フルプライス相応の文章量に対する話の中身の無さにおいて、本年随一といってよい。
それでも下位2作の前塵を拝することになったのは、掘り下げても「同じことの繰り返し」以上の反応が返ってこず、手応えの不足が否めなかったからである。、
その点『ホームメイドスイートピー』のストーリーは多彩であり、強弱と緩急をつけた七色の不可解を間断なく脳に流し込むことで、プレイヤーとの主導権争いを制した。
物語を騙る何かと称されたシナリオ一点集中の出来萎えは、本年の大賞を競うに足るものといえよう。
しかし、そこに立ち塞がったのが『悪魔と夜と異世界と』であった。
稚拙な日本語とメッセージウィンドウ明滅による二重の読みにくさに耐えても、待ち受けるのはテンプレを否定しつつテンプレに頼る悪質なシナリオ。
CG・システム・音楽も含め、ボリュームはあるのに手放しで褒められるところがひとつもない。
そしてダメ押しが、「卑屈」という重篤な永続デバフである。
作中のエピソードを、その場で「ご都合主義」や「安っぽい」と卑下してみせているが、それで評価のハードルが下がることはない。
むしろ作品の品質を毀損するばかりである。
かつて「KOTYe史上最低の文章力」と評された『LAMUNATION!』ですら、「誰が何と言おうとこれは面白いんだ」という意志は貫き通し、少なからぬ支持を獲得している。
対して『悪魔と夜と異世界と』は、確固たる自信に繋がる実力も、自信のなさをねじ伏せる覚悟も持ち得なかった。
かくして、どこを掘っても萎え要素しか出てこない怯者の産廃が誕生し、その総合力をもって住人たちに畏怖の念を抱かせたのである。
これを以って、『悪魔と夜と異世界と』を2022年の大賞たる幼ごころの覇王と認め、新たな碑に名を刻むものとする。

「クソゲーとは何か?」
我々が長らく向かい合ってきた問いであるが、実はその答えの一端はすでに、KOTYeにおける議論の前提として掲げられている。
それが、
「自分がクソゲーだと思ったらクソゲーです。しかし他の人もそう思うかは別です」
との文言である。
実際に本年も、相対的に見て完成度が高いといえる作品についても、どうしても不満が拭いきれないとして選評が届いた。
『ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-』は、しょぼすぎるバトル演出と本筋からの恋愛&エロ要素除外が、
『AMBITIOUS MISSION』は、ある登場人物の超人設定が世界観をぶち壊しかねないほど突出していることが、それぞれ主な問題点として指摘されている。
これらに対して、全面同意はできかねるとする声も数あれど、エントリー自体は粛々と受け入れられた。
なぜなら、選評としての体裁が整っており、虚偽や事実誤認が確認されず、一定の理解が示されたからである。
その先は価値観の違いでしかない。
人は誰しも、各々の価値観で世界を切り抜いては積み重ね、巣のごとく己のセカイを形作っている。
そのさらに一欠片の当不当を争うのは詮無きことであろう。
知恵を絞るなら、異論をどこまで排除するか考えるよりも、異論を通じて自分の見識や考え方を広げ、相手の考えや価値観を理解しようとする方が有益ではないか。
そして、それが通る環境にいられる幸運に感謝を忘れてはならない。
エントリー条件が緩い分だけ、個々人の良識による補完が求められているのだから。

余談になるが、2022年の総評審議の最中に、据置版クソゲーオブザイヤー(KOTY)の「大賞なし」と活動休止が告知された。
ともあれ、まずは長い戦いをひとまず終え、休息に入った者たちの労をねぎらいたい。
公式サイトによれば、休止に至った原因のひとつは「対象外ルールを追加せざるを得なかったこと」である。
望ましいものだけを残すべく、望まぬものを排除し続けたが、しかし何も残らなかった。
そしてKOTYの総評は、クソゲーがなくなるのは本当に良いことなのかと疑義を呈するような言葉で終わっている。
述べられた通り、クソゲーがなくなる状況とは、往々にして望ましくない事態と思われる。
なぜならば、ゲーム開発に創造性や多様性が保たれ、開発者に独自の発想・自由な表現・果敢な挑戦が許されているならば、良ゲーの副産物としてクソゲーも生まれてしまうからである。
かような渾身のクソゲーは、ときに良ゲーを上回る笑い・驚き・感動を生むこともある。
そうではない、煮ても焼いても食えない毒イモの如きクソゲーならば、手間をかけ、触感くらいは楽しめるようにしてくれよう。
万物の例に漏れず、KOTYeの営みもいつかは終わる。
その時を悔いなく迎えられるよう、今は目の前のクソゲーと真摯に向き合うのみである。

最後に、ある悪魔の言葉を拝借し、KOTYe2022を締めくくるとしよう。

「アンタの作る最高に超良いセカイにゃあクソゲーはあるかい?」
最終更新:2023年07月29日 17:01