世界が分断されてしまうという未曾有の危機を、俺たちSOS団が苦闘の末に解決してから数日が過ぎた。
今までも常識では考えられないような局面に何度か立たされた俺だったが……
さすがに今回ばかりは想像以上に精神的に堪えちまった。数日前の出来事の顛末が脳裏にフラッシュバックしそうだ。
「まだまだ俺も精進が足りんってことか」
現在の心情をこっそり吐露してみる。幸い、こんな小言は誰にも聞かれる事はない。
今は俺しかいない自分の部屋、自分のベッドの上で瞼が閉じるのを待っている状態だ。
暗がりの中にうっすらと見える、時計の針は深夜一時を過ぎた辺りを指している。今日は随分と遅いな、睡魔よ。
そういえば現国の課題が出されてた気がしたが、朝一番にハルヒにノート写させてもらうか……と考えた時だった。
今までも常識では考えられないような局面に何度か立たされた俺だったが……
さすがに今回ばかりは想像以上に精神的に堪えちまった。数日前の出来事の顛末が脳裏にフラッシュバックしそうだ。
「まだまだ俺も精進が足りんってことか」
現在の心情をこっそり吐露してみる。幸い、こんな小言は誰にも聞かれる事はない。
今は俺しかいない自分の部屋、自分のベッドの上で瞼が閉じるのを待っている状態だ。
暗がりの中にうっすらと見える、時計の針は深夜一時を過ぎた辺りを指している。今日は随分と遅いな、睡魔よ。
そういえば現国の課題が出されてた気がしたが、朝一番にハルヒにノート写させてもらうか……と考えた時だった。
「!?」
机の上の携帯の着信音が鳴り響いた。……ぬかった、マナーモードにしておくべきだったか。
大抵、真夜中に掛かってくる電話は間違い電話の類と相場は決まっている。
着信音が四回、五回、六回…と鳴った所で、鳴り止んだ。大当たり、明日は良い事がありそうだ。
……勝ち誇った矢先、再び着信音が鳴り響く。
「何処の誰だよ、んな時間に……!」
もう少しで寝られる所を妨害されたんだ、多少言葉が荒くなるが許せよ。今の俺は疲れてるんだから。
古泉でもある程度は空気ってものを読めるだろ……と思いつつ、机の上の携帯を取って誰からの着信なのか確認してみた。
携帯のサブディスプレイには、見覚えのない番号が表示されていた……携帯からか。
二回ぐらいなら間違い電話だと気付かずに再度掛け直してくる場合がある。とりあえず止むのを待とう。
また五回程鳴った所で着信音が止む。
「番号はちゃんと確かめてからにしてくれ」
誰もが思うであろう言葉を呟きつつ、携帯をマナーモードに切り替えて再び布団に中に潜り込む。
大抵、真夜中に掛かってくる電話は間違い電話の類と相場は決まっている。
着信音が四回、五回、六回…と鳴った所で、鳴り止んだ。大当たり、明日は良い事がありそうだ。
……勝ち誇った矢先、再び着信音が鳴り響く。
「何処の誰だよ、んな時間に……!」
もう少しで寝られる所を妨害されたんだ、多少言葉が荒くなるが許せよ。今の俺は疲れてるんだから。
古泉でもある程度は空気ってものを読めるだろ……と思いつつ、机の上の携帯を取って誰からの着信なのか確認してみた。
携帯のサブディスプレイには、見覚えのない番号が表示されていた……携帯からか。
二回ぐらいなら間違い電話だと気付かずに再度掛け直してくる場合がある。とりあえず止むのを待とう。
また五回程鳴った所で着信音が止む。
「番号はちゃんと確かめてからにしてくれ」
誰もが思うであろう言葉を呟きつつ、携帯をマナーモードに切り替えて再び布団に中に潜り込む。
目を閉じて一分ぐらい経ったか、携帯がガタガタと震えだした。また同じ番号か?
再び携帯を手元に引き寄せて目をやる……案の定さっきと同じ、見ず知らずの番号からだ。
ハルヒなら『イタ電が多いから携帯の番号を変えたのよ。あんたに教えるのすっかり忘れてたわ』とか言いそうだが。
とりあえず電話の主は何者だ。文句ぐらい言わんとすっきり寝られん。
だが通話ボタンを押そうと携帯を開いた途端に電話が切れた……何がしたいんだよ。
携帯を枕元に投げようと、投擲のフォームを取った直後に手元で合計四度目の携帯へのアクセス。
これで切られたら腹が立って仕方がない……苛立ちながらディスプレイを確認するまでもなく俺はすかさず通話ボタンを押した。
すると俺が何かしらの言葉を発するより先に、電話の主が深夜の静かな部屋響き渡った。
再び携帯を手元に引き寄せて目をやる……案の定さっきと同じ、見ず知らずの番号からだ。
ハルヒなら『イタ電が多いから携帯の番号を変えたのよ。あんたに教えるのすっかり忘れてたわ』とか言いそうだが。
とりあえず電話の主は何者だ。文句ぐらい言わんとすっきり寝られん。
だが通話ボタンを押そうと携帯を開いた途端に電話が切れた……何がしたいんだよ。
携帯を枕元に投げようと、投擲のフォームを取った直後に手元で合計四度目の携帯へのアクセス。
これで切られたら腹が立って仕方がない……苛立ちながらディスプレイを確認するまでもなく俺はすかさず通話ボタンを押した。
すると俺が何かしらの言葉を発するより先に、電話の主が深夜の静かな部屋響き渡った。
『あ……!ちゃんと繋がった……あ、あの……もしもし?』
電話を掛けてきた相手は女だった。しかもここ最近頻繁に聞いた声……間違い、電話を掛けてきたのは橘京子だ。
『やっと出てくれて良かったです……なかなか出てくれなくて心配になっちゃって。キョンさんに相談したい事があるんですけど……いい
『やっと出てくれて良かったです……なかなか出てくれなくて心配になっちゃって。キョンさんに相談したい事があるんですけど……いい
ですか?』
こいつは俺が出た事を確認もしないで話を進めるつもりか……?
俺が出たのは確かだからそこんところの追求は割愛しておくがな。とりあえず文句は言ってやらんと気が済まん。
「橘」
『へ? あ、はい』
「そんなことより先に言うことがあるんじゃないのか」
『先に? えーっと……何かありました?』
「そもそも何でお前はこんな時間に俺に電話してきてるのかだろうが。何時だと思ってる」
『……でも相談したい事があって……あの……その』
「相談……俺にか」
『それにも理由が……あの……やっぱりいいです、ごめんなさい』
「一応、何の用件かぐらいは話せよ。安心して寝る事も出来ん」
『相談って言っても……電話では話し辛くて。出来れば直接会って相談したいなー……なんて』
「こんな時間にか」
『出来れば早いうちに話しをしたくて……』
また佐々木を神様にしたいから云々の話なのか? この前のあれでほぼ解決したようなものなのにか。
『駄目……ですか?』
「今から、とでも言うつもりじゃないだろうな」
『今からじゃ……駄目ですか?』
深夜にいきなり電話掛けてきて勝手に話を進めて、何がしたいんだこいつは。しかしまた電話掛けられてイライラするのも癪だが……
「仕方ないな……それで場所はどうするんだ」
『いつものSOS団の皆さんの集合場所の喫茶店の前でいいですか?』
「こっちにも色々都合があるんだ。無理矢理な話は今回限りにしてもらうぞ」
『ごめんなさいです……ではまた後で』
そう言うと橘は電話を切った。全く人騒がせな奴だ。それにしても急用で、しかも直接言いたい話って何だ?
こいつは俺が出た事を確認もしないで話を進めるつもりか……?
俺が出たのは確かだからそこんところの追求は割愛しておくがな。とりあえず文句は言ってやらんと気が済まん。
「橘」
『へ? あ、はい』
「そんなことより先に言うことがあるんじゃないのか」
『先に? えーっと……何かありました?』
「そもそも何でお前はこんな時間に俺に電話してきてるのかだろうが。何時だと思ってる」
『……でも相談したい事があって……あの……その』
「相談……俺にか」
『それにも理由が……あの……やっぱりいいです、ごめんなさい』
「一応、何の用件かぐらいは話せよ。安心して寝る事も出来ん」
『相談って言っても……電話では話し辛くて。出来れば直接会って相談したいなー……なんて』
「こんな時間にか」
『出来れば早いうちに話しをしたくて……』
また佐々木を神様にしたいから云々の話なのか? この前のあれでほぼ解決したようなものなのにか。
『駄目……ですか?』
「今から、とでも言うつもりじゃないだろうな」
『今からじゃ……駄目ですか?』
深夜にいきなり電話掛けてきて勝手に話を進めて、何がしたいんだこいつは。しかしまた電話掛けられてイライラするのも癪だが……
「仕方ないな……それで場所はどうするんだ」
『いつものSOS団の皆さんの集合場所の喫茶店の前でいいですか?』
「こっちにも色々都合があるんだ。無理矢理な話は今回限りにしてもらうぞ」
『ごめんなさいです……ではまた後で』
そう言うと橘は電話を切った。全く人騒がせな奴だ。それにしても急用で、しかも直接言いたい話って何だ?
さすがに家族全員が寝静まったようで、着替え終わってから玄関に辿り着くまでのミッションは難なく完遂出来た。
幸いなことにシャミセンは妹の部屋で寝ており、俺が部屋から出てきた時も気付かなかったようで安心した。
「自転車の鍵と家の鍵、よし」
誰にも物音が聞こえないのを確認しつつ小声で確認……したところで、一つ重大な事を思い出す。
そういや、昼間親父が買い物に行くのに俺の自転車使ったのは良かったが、帰りにパンクさせて帰ってきたんだっけ。
パンクしたままの自転車を使うぐらいなら置いて行った方が多少はマシというものか。已むを得ん、歩くしかないな。
物音一つ立てずに外に出られたのは良かったが、昼間には考えられない程に冷え切っていた。
上着を取りに戻るべきなのかもしれんが、今戻って手間取る時間が惜しい。さっさと行って帰ってこよう。
俺は駆け足気味で毎度お馴染みの喫茶店前に向かうことにした。
結局、仕方なしに返事をしてしまったわけだが……この安易な判断で後々に後悔することになろうとは思っていなかった。
幸いなことにシャミセンは妹の部屋で寝ており、俺が部屋から出てきた時も気付かなかったようで安心した。
「自転車の鍵と家の鍵、よし」
誰にも物音が聞こえないのを確認しつつ小声で確認……したところで、一つ重大な事を思い出す。
そういや、昼間親父が買い物に行くのに俺の自転車使ったのは良かったが、帰りにパンクさせて帰ってきたんだっけ。
パンクしたままの自転車を使うぐらいなら置いて行った方が多少はマシというものか。已むを得ん、歩くしかないな。
物音一つ立てずに外に出られたのは良かったが、昼間には考えられない程に冷え切っていた。
上着を取りに戻るべきなのかもしれんが、今戻って手間取る時間が惜しい。さっさと行って帰ってこよう。
俺は駆け足気味で毎度お馴染みの喫茶店前に向かうことにした。
結局、仕方なしに返事をしてしまったわけだが……この安易な判断で後々に後悔することになろうとは思っていなかった。
待ち合わせ場所に着いたものの、いつもの駅前は閑散としており、終電も終わった頃合のために人もほとんどいない。
どうやら俺の方が先に喫茶店前に到着したようで、橘の姿は周囲には見えなかった。
いつもは遅れをとるパターンの方が多いが、たまには先に待つのも悪くはないな。
だが肌寒くて敵わん……早く済ませて寝たいものだが。
どうやら俺の方が先に喫茶店前に到着したようで、橘の姿は周囲には見えなかった。
いつもは遅れをとるパターンの方が多いが、たまには先に待つのも悪くはないな。
だが肌寒くて敵わん……早く済ませて寝たいものだが。
十分程度待っただろうか、瞼が重くなってきた。さっきはそうでもなかったが、俺としたことが油断した。
睡魔がちくちくと嫌らしい攻撃を開始した間際、俺の視界が一瞬にして真っ暗になった。
「だ~れだっ」
やっとこさ現れやがったか。何が、誰だ?だ。
「遅刻しておいて何の真似だ」
「うふふ。いいじゃないですか。一度でいいからやってみたかったんですよ」
カップルじゃあるまいし、何を間抜けた事を。
「待たせたみたいで……ごめんなさい。これでも急いだんですよ」
「……ところでだ」
「はい?」
「何で俺の番号知ってるんだ。教えた覚えはないんだが」
「佐々木さんに教えてもらいました。キョンさんの携帯の番号教えて下さい!って言ったら、いいよーって」
勝手な事をしてくれるな。そもそも何でこいつが俺の番号必要とするんだ。嫌がらせのためか?
「電話しようか迷ったんですけど……掛けちゃった」
「教えて貰って掛けてくるのはまだいい。何でこんな時間にだ。しかも電話じゃ無理な用件ってどういうことだ」
「私、昼間はなかなか家抜け出せなくて。両親が結構うるさいんです。自由に出歩けるのってこの時間ぐらいしかなくて」
だから深夜に気付かれんように、か。両親が知ったら泣くだろうな。
「だが待て、いつも昼間に佐々木らと一緒に現れてるのは何だ」
「両親には友達と勉強会だっていつも言ってますから。内緒ですよ?」
なるほどな、この手のパターンか。俺も昔はそれで遊んでたっけ。
「それでだ、話って何だ。また佐々木が神様云々じゃないだろうな」
「えーっと、その事についてはまた……今度、みんな集まった時にでも」
じゃあ直接言うような話って一体何なんだ。
「歩きながらにしませんか? このままずっと立ち話というのも……あれですし」
妙に話が噛み合ってないような気がするが……この際どうだっていい。多少は我慢してやる。
「何処へ行くつもりだ」
俺の問い掛けを無視したまま、橘はふらふらと先に進み始めた。
睡魔がちくちくと嫌らしい攻撃を開始した間際、俺の視界が一瞬にして真っ暗になった。
「だ~れだっ」
やっとこさ現れやがったか。何が、誰だ?だ。
「遅刻しておいて何の真似だ」
「うふふ。いいじゃないですか。一度でいいからやってみたかったんですよ」
カップルじゃあるまいし、何を間抜けた事を。
「待たせたみたいで……ごめんなさい。これでも急いだんですよ」
「……ところでだ」
「はい?」
「何で俺の番号知ってるんだ。教えた覚えはないんだが」
「佐々木さんに教えてもらいました。キョンさんの携帯の番号教えて下さい!って言ったら、いいよーって」
勝手な事をしてくれるな。そもそも何でこいつが俺の番号必要とするんだ。嫌がらせのためか?
「電話しようか迷ったんですけど……掛けちゃった」
「教えて貰って掛けてくるのはまだいい。何でこんな時間にだ。しかも電話じゃ無理な用件ってどういうことだ」
「私、昼間はなかなか家抜け出せなくて。両親が結構うるさいんです。自由に出歩けるのってこの時間ぐらいしかなくて」
だから深夜に気付かれんように、か。両親が知ったら泣くだろうな。
「だが待て、いつも昼間に佐々木らと一緒に現れてるのは何だ」
「両親には友達と勉強会だっていつも言ってますから。内緒ですよ?」
なるほどな、この手のパターンか。俺も昔はそれで遊んでたっけ。
「それでだ、話って何だ。また佐々木が神様云々じゃないだろうな」
「えーっと、その事についてはまた……今度、みんな集まった時にでも」
じゃあ直接言うような話って一体何なんだ。
「歩きながらにしませんか? このままずっと立ち話というのも……あれですし」
妙に話が噛み合ってないような気がするが……この際どうだっていい。多少は我慢してやる。
「何処へ行くつもりだ」
俺の問い掛けを無視したまま、橘はふらふらと先に進み始めた。
どれくらい歩いただろうか、それまで黙っていた橘が急に口を開いた。
「人気のない街を歩くのって結構気持ちいいですよね」
一応それには同意は出来るが、誰が好き好んで大して仲の良くない女と深夜に徘徊しなけりゃならんのだろうか、誰か教えてくれ。
「こうやって出歩く時はいつも……一人なんですよ。今日はキョンさんが付き合ってくれて嬉しいです」
一体何処へ行く気なんだこいつは。
「風が気持ちいい……厚着しすぎたかな。キョンさん涼しそうですよね」
俺は寒いんだがな。上着の一枚でも貸して貰いたいもんだ。
「どうかしましたか?」
「別に」
「あんまりこっち来たことないんですけど……良い所ですね。一人暮らしするならこっちにしようかな」
やっぱり土地勘なし、か。高校生が揃って深夜に徘徊してて補導でもされたらどうするつもりなんだろう。迷惑を被るのは御免だ。
「やれやれ」
つい溜息と共にいつものあの言葉が口から漏れる。幸い聞かれはしかなったようだ。
それからお互い口を開く事もなく、しばらく目的地のない散策が続いた。
「人気のない街を歩くのって結構気持ちいいですよね」
一応それには同意は出来るが、誰が好き好んで大して仲の良くない女と深夜に徘徊しなけりゃならんのだろうか、誰か教えてくれ。
「こうやって出歩く時はいつも……一人なんですよ。今日はキョンさんが付き合ってくれて嬉しいです」
一体何処へ行く気なんだこいつは。
「風が気持ちいい……厚着しすぎたかな。キョンさん涼しそうですよね」
俺は寒いんだがな。上着の一枚でも貸して貰いたいもんだ。
「どうかしましたか?」
「別に」
「あんまりこっち来たことないんですけど……良い所ですね。一人暮らしするならこっちにしようかな」
やっぱり土地勘なし、か。高校生が揃って深夜に徘徊してて補導でもされたらどうするつもりなんだろう。迷惑を被るのは御免だ。
「やれやれ」
つい溜息と共にいつものあの言葉が口から漏れる。幸い聞かれはしかなったようだ。
それからお互い口を開く事もなく、しばらく目的地のない散策が続いた。
少し先を歩く橘の後姿を見ていて、その足取りが若干ふら付いているように見えた。
「おい、橘」
「……」
「聞いてんのか?」
「……あ、はい」
「お前もしかして酔ってないだろうな?」
「別に酔ったりなんかしてませんよ? お酒は呑みません……」
そう言って後ろを振り向いた顔が疲れているように見えたのは気のせいではないと一瞬で判った。
「どうかしましたか? 何か顔に付いてたりします?」
「お前……体調悪いのか?」
「どうってことないですよ。大丈夫……です」
大丈夫と言ってはいるが苦しそうにしか見えん。目つきも虚ろに見える。
「お前の家はどこだ。何なら俺が家まで付き添ってやるが」
「結構遠いんですよ……ここからだと距離ありますし」
じゃあどうするしたものか……と思った直後、今現在立っている場所を見回してみて気付いた。
何だかんだで黙々と歩いているうちに、俺の家に比較的近い所まで来ている事に。
「橘、大丈夫か?」
「やっぱり大丈夫……じゃないかもです」
このままここに野放しにするほど俺はまだ落ちぶれちゃいない。
「背負ってやるから、乗れるな?」
黙って頷いた橘は俺の肩に手を掛けた。疲れ気味のこの体には厳しいがそうも言っていられん。
「すいません……お手間掛けさせちゃって」
「昔はこうやって妹の世話を見てやったもんだ」
妹に比べれば軽々と、というわけにも行かなかったが、夜風で冷え切った体には橘の熱った体温がカイロみたいで温かい。
「それと……」
「今は気にしてないから黙ってろ」
然程遠い距離ではなかったが、病人を背負っているため走るわけにもいかん。橘を俺の家で休ませるべく足を進めた。
「おい、橘」
「……」
「聞いてんのか?」
「……あ、はい」
「お前もしかして酔ってないだろうな?」
「別に酔ったりなんかしてませんよ? お酒は呑みません……」
そう言って後ろを振り向いた顔が疲れているように見えたのは気のせいではないと一瞬で判った。
「どうかしましたか? 何か顔に付いてたりします?」
「お前……体調悪いのか?」
「どうってことないですよ。大丈夫……です」
大丈夫と言ってはいるが苦しそうにしか見えん。目つきも虚ろに見える。
「お前の家はどこだ。何なら俺が家まで付き添ってやるが」
「結構遠いんですよ……ここからだと距離ありますし」
じゃあどうするしたものか……と思った直後、今現在立っている場所を見回してみて気付いた。
何だかんだで黙々と歩いているうちに、俺の家に比較的近い所まで来ている事に。
「橘、大丈夫か?」
「やっぱり大丈夫……じゃないかもです」
このままここに野放しにするほど俺はまだ落ちぶれちゃいない。
「背負ってやるから、乗れるな?」
黙って頷いた橘は俺の肩に手を掛けた。疲れ気味のこの体には厳しいがそうも言っていられん。
「すいません……お手間掛けさせちゃって」
「昔はこうやって妹の世話を見てやったもんだ」
妹に比べれば軽々と、というわけにも行かなかったが、夜風で冷え切った体には橘の熱った体温がカイロみたいで温かい。
「それと……」
「今は気にしてないから黙ってろ」
然程遠い距離ではなかったが、病人を背負っているため走るわけにもいかん。橘を俺の家で休ませるべく足を進めた。
背負ってから数十分程で家に到着したのだが、無論隠れて連れ込むわけにもいかず、眠気混じりの頭で考えた情けない言い訳で辛うじて
飛び起きてきた両親を納得させたまでは良かった。
橘は居間でしばらく寝かせ休ませた後、明け方にお袋が車で自宅まで送ることになったのだが……
その時に玄関先であれやこれやと騒ぎ立てちまったせいで妹が起きてくるというトラブルに見舞われた。
「その人だーれー? ハルにゃんのお友達ー? キョンくんのカノジョー?」
若干疲れた表情をした橘が俺の方を見つつ、この場合はどうしたらいいんでしょうか?と言いたげな表情を向けた。
「あははは……」
頼むから俺にフォローしてくれ光線を出すんじゃない。
「キョンくん教えてー」
「あ、ああ……俺の……遠い親戚だ」
無論、妹を通してハルヒにこの事が知られてしまい、俺が散々な目に逢ったのは言うまでもない。
橘は居間でしばらく寝かせ休ませた後、明け方にお袋が車で自宅まで送ることになったのだが……
その時に玄関先であれやこれやと騒ぎ立てちまったせいで妹が起きてくるというトラブルに見舞われた。
「その人だーれー? ハルにゃんのお友達ー? キョンくんのカノジョー?」
若干疲れた表情をした橘が俺の方を見つつ、この場合はどうしたらいいんでしょうか?と言いたげな表情を向けた。
「あははは……」
頼むから俺にフォローしてくれ光線を出すんじゃない。
「キョンくん教えてー」
「あ、ああ……俺の……遠い親戚だ」
無論、妹を通してハルヒにこの事が知られてしまい、俺が散々な目に逢ったのは言うまでもない。
了