謎の大陸伝説! 失われしnov

美琴「くそ! はーなーせーよっ! アキラ、黒剛!」
アキラ「いいから落ち着けって!」
進「怪我人のくせになんて力だ・・・」
ハカセ「もう! そんな怪我でどこへ行くつもり!?」
棗「姉さんも落ち着いて。信じられないけどこれでも一応怪我人だから」
美琴「決まってんだろ! あいつを見つけ出してホープを取り返すんだよ!」

病室から聞こえてくる騒がしい声。
中では包帯姿で暴れる美琴がアキラと進に取り押さえられ、朝霧姉妹に説得されている。
そんな様子に部屋の外で数人の大人がため息をつきつつ、安心していた。

蘭「やれやれ。美琴が怪我したっていうから慌てて来たっていうのに元気そうだね」
石屋「大きい怪我はないけど、擦り傷と打撲がひどいねぇ。
   あれだけのクラッシュで比較的軽傷で済んでるのは藤山先生のライディングスーツのおかげ、かな」
貞子「あ、あの。尼曽根ちゃんはいいとして、石屋先生こそどうしたのよ? なんかボコボコに見えるけど」
那須「お気になさらず。日頃の行いのツケがまわってきただけですから。いい薬です」
石屋「ひどいなぁ、那須さん。ぐすん」

ナオミとの決闘疾走の後、美琴はハカセの手で石屋のmay医院に運びこまれていた。
美琴のクラッシュの一報を受けmayの決闘者が続々と集まってきたのだが、
その際にいろいろ誤解があり治療にあたった石屋先生がボコボコにされてしまったらしい。

ハカセ「手がかりもないのにどこをどうやって探すっていうのよ!」
美琴「うっ・・・」
棗「考えなしにもほどがあるわね。これだから脳筋不良娘は」
アキラ「とりあえず今はゆっくり休めよ、な?」
美琴「ううっ・・・わかった、わかったよ!」

ムスっとふてくされてベッドに横になる美琴。
ひとまず落ち着いた部屋の様子を確認し、蘭と貞子が中へと入ってきた。

蘭「他に患者さんがいないとはいえ、病院では静かにね」
貞子「それで、いったい何があったの?」

ハカセが先のナオミとの決闘疾走のことを説明する。
重力場異常観測装置の設置を終えた美琴に謎の女決闘疾走者が決闘疾走を仕掛けたこと。
その決闘疾走者―――鳥砂ナオミは美琴を決闘疾走で破ると、美琴の《No.39 希望皇ホープ》を持ち去ったこと。
彼女は自分を『novよりの使者』と名乗っていたこと。

ハカセ「くわしい会話は美琴のD・ホイールのレコーダーを確認すればわかると思うけど」
アキラ「女とはいえ許せねぇぜ。無理矢理カードを奪っていくなんてよ」
貞子「ふーん、novね。街の名前かな? 誰か覚えある?」

貞子の確認の言葉に皆が首を横に振った。
mayの近隣にはimgやdecといった街が存在するが誰もnovという言葉に聞き覚えがなかった。

蘭「国や街の名前じゃないとしたら、どこかの施設かもしれないね」
進「デュエルギャングのチーム名かもしれん。聞き覚えはないが」
棗「そんな企業あったかしら」
美琴「・・・・・・・・・シャムス」
アキラ「ん? どうした美琴?」
美琴「シャムスのやつ、何か知ってるみてぇだった。あいつに話が聞けりゃ何かわかるかもしれねぇんだが・・・」

美琴の目線の先には彼女に負けず劣らずボロボロになったデュエルディスクがあった。
あの決闘疾走以来、ファトスシャムスは姿を見せていない。
もともと気まぐれに姿を見せないこともあったファトスシャムスであるが、
クラッシュの後だけに安否がわからないのは不安であった。

棗「もしかしてクラッシュの衝撃で消えちゃったんじゃ・・・」
美琴「んなわけねぇだろ! あいつがあたしに黙って消えちまうなんて、そんなことあるわけねぇ! あるわけねぇよ・・・絶対」
ハカセ「美琴・・・」
美琴「あー、くそ! なにがnovよりの使者だ! なにが反逆だ! あの野郎、わけわかんねぇことばかり言いやがって!」
皆「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」
突然の展開に美琴は憤っていた。決闘疾走に負けた自分が不甲斐ないというのもあるのだろう。
彼女を気遣って、皆どう声をかけたらいいか迷っている。

???「ちょっと待ちたまえ! nov? novと言ったか?」

そんな中。
新たな声が沈黙を破った。
重苦しい空気が漂う病室へと、扉を勢いよく開け放ち入ってくる人物が一人。
皆の視線がそちらを向いた。

那須「静かにしてください。怪我人の前ですよ」
石屋「お見舞い客一人追加だね。他にも何人かこっちに向かってるみたいだけど」
美琴「おまえ、終末ヶ岡!?」
馬耶「いかにも! 我がソウルメイトにして志を同じくする転生戦士であるところのアマゾネスの巫女が怪我をしたと聞いて馳せ参じた次第」
美琴「あー・・・そりゃどうも」

終末ヶ岡馬耶。
ファトスシャムス以外で美琴のことをアマゾネスの巫女と呼ぶ唯一の人物である。
重度の中二病を患った彼女は、アマゾネスの巫女=美琴のことを自分の同類だと認識しているのだ。
彼女も見舞いにきたようだが、どうやら美琴のクラッシュ情報はあちこちに拡散されているらしい。
それだけ美琴には決闘者の知り合いが多い、ということでもある。

馬耶「やはり私の目に狂いはなかった! 新たに過去の記憶を取り戻したのだな、巫女よ」
棗「『新たな』『過去の記憶』って意味不明すぎ・・・」
ハカセ「ええと、急にどうしたの?」
馬耶「それも悠久なる過去に消えた幻の大陸についてとは。そう、あれは私がまだアトランティスの戦士だった頃―――」
アキラ「あー、いつものことだ。ほっとけ」
進「触ると巻き込まれるぞ」
馬耶「創造神の手により我らがアトランティスとかの地は―――」
棗「この子、大丈夫なのかしら・・・」
蘭「ちょっと待って。あんた、今なんて?」

普段どおりの馬耶に皆があきれ返る中、蘭が違和感に気づく。
馬耶の口ぶり。
彼女は最初になんと言った?
今、何を語っている?

蘭「ひょっとして、幻の大陸っていうのはnovのこと?」
馬耶「んん? 当然だろう。その話をしていたのではないのか?」
全員「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
美琴「まるで意味がわかんねぇぞ! なんでお前が知ってんだよ!?」
棗「どういうことなの姉さん、私わけがわからない」
ハカセ「大丈夫よ棗。私もおんなじ」
馬耶「だから、巫女が古代の記憶を取り戻し、novのことを思い出したのだろう?
   ああ、その怪我はもしや記憶の混濁による錯乱のためか」
那須「ぜんぜん違います」
石屋「相変わらず個性的だねぇ、馬耶ちゃんは」
貞子「個性、で済む話じゃないような・・・そうでもないのかしら」
アキラ「だー、もう! 話が噛みあわねぇ!」

謎の言葉novについて、馬耶は何かを知っている。
ひとまず話を整理するために、蘭が皆を代表して馬耶に確認していく。

蘭「novってのは『過去に消えた大陸』なのかい?」
馬耶「うむ。創造神クンリニン=サンにより一夜にしてこの世界から消された大陸とそこに存在した超古代文明だ」
蘭「消えたってのは? 有名なアトランティスみたいに海に沈んだり?」
馬耶「そうかもしれないし、異次元へと大陸ごと飛ばされたとも
   いくつもの細かい大陸に寸断され今の世界の元となったともいわれている。
   優れた科学と魔術に支えられ繁栄を極め、伝説の中へと消えた幻の超古代文明。
   失われしnov。その界隈では知る人ぞ知るものだ。無論、私は転生前の知識として生まれる前から知っていたが」
蘭「超古代文明・・・」
馬耶「一説には、novについて悠久の時の流れの中で語り継がれていく際に
   novがmowと誤って記されかのムー大陸伝説の元となったという話もある。
   また、創造神クンリニン=サンは世界最古の英雄物語『マジレウス叙事詩』にもその名が見られ、創造神にして破壊神として―――」

えんえんと古代の伝説と自身の持つ過去世について語り続ける馬耶を尻目に、皆が顔を突き合わせて審議をはじめた。

蘭「どう思う?」
貞子「正直、意味不明・・・」
美琴「さっきアウナにメールしてみた。あいつもこういう伝説とか詳しそうだし・・・お、返事きた。
   なになに、『超古代文明novに関する伝承はごく少ないが、確かに存在する。大陸実在の真偽は不明』だってよ」
アキラ「マジかよ・・・終末ヶ岡の妄想ってわけじゃないのか」
進「頭が痛いな。どうするんだこれ」
棗「不良娘を襲ったのは超古代文明novの決闘疾走者だっていうの? ありえないわよ。
  そいつもあの子と同じで可哀想な人ってだけでしょ」
ハカセ「けど、あいつは美琴のことを知っていたし明確な目的を持って接触してきたのよ」
美琴「なんだってんだよ、ホント・・・・・・」

果たして馬耶が語る超古代文明とナオミの言うnovは同じものなのであろうか。
そしてホープを奪ったナオミの目的とは?
創造神への反逆とは何を意味するのか?
ファトスシャムスは本当に消えてしまったのか?
謎は深まっていく―――。


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最終更新:2015年04月30日 05:41