ジリリリリリリリリ!!
警報のベルが鳴り響く。脱獄を伝える警報だ。
急ぎ看守や警官がその現場…浅倉のいる部屋へと向かった。
だが、そこに浅倉は見当たらない。代わりにいたのは紫の鎧と銀の仮面を着けた仮面ライダー『王蛇』だ。
「このイライラ…お前らで晴れるか…?」
『SWORDVENT』『ADVENT』

『今更何かを言おうとは思わん。今俺に出来るのは、お前に浅倉を倒せる力を与えることだけだ。』
 そう言うと、神崎はカードデッキを取り出す。
須藤はすぐに、これが例のカードデッキだと理解した。
「何のつもりか知りませんが、これは頂いておきます。
この力で浅倉を、そしてその浅倉に力を与えたあなたを殺す。
今から覚悟しておくことですね」
『覚えておこう』
 そう言うと、神崎は去っていった。

 翌朝、八神家にて。
「ふぁ…おはよう」
「あ、おはよう真司君。今日は早いなぁ」
 いつもの真司なら、もうしばらくは寝ていたはずだ。
真司がアパート暮らしの頃は、いつも慌てて準備していた音が聞こえていたものである。
「そりゃ二度寝しようとした時にボディプレス食らったら誰だって目が覚めるよ」
 ヴィータの仕業だ。その場にいたヴィータ以外の全員がそう直感したという。
『…では続いてのニュースです。昨日未明、脱獄事件が発生しました』
「脱獄?何だよ、物騒な話だな」
(…こりゃ今日の仕事この件の取材になるかな?)
 物騒だと発言するヴィータを尻目に味噌汁を口に含む真司。
『脱獄したのは、殺人容疑で逮捕・起訴されていた浅倉威容疑者、25歳です』
 思い切り味噌汁を吹き出す。
真正面にいたシグナムに味噌汁が直撃したのは…多分気のせいではない。
目に味噌汁が直撃してのたうち回っている。
『浅倉容疑者の部屋へと行った警官隊は全員死亡、身体の一部が欠損した遺体も発見されています。
警察は浅倉容疑者の犯行と見て調べを進めています』
「マジかよ…」
 呆然とする真司。復活したシグナムの発するオーラにも気付かずに。
「…城戸、話がある。家の裏に来い」
 言うが早いか、真司の首根っこをつかんで家の裏へと行くシグナム。
それを見た全員が合掌していた。リィンに至っては十字を切っている。
その当の真司は、八神家全員が合掌していることから、話の内容を察知した。
そしてその十数秒後、家の裏から殴打の音と真司の悲鳴、謝罪の声が響いたという。
「「Amen(…です)」」「二人ともどこでそんなの覚えたん?」

第七話『夜の騎士』

「ってぇ…朝からひどい目にあった…」
 朝からシグナムにボコられ、痛む顔を冷やしながら会社へと向かう真司。
 キィィィン…キィィィン…
 会社に行くのは後回しになるようだ。
「クソ、朝からモンスターかよ」
 急いで気配の場所へと向かう真司。だが、それは無駄になる。

「ふん、大したことの無いモンスターだったな」
 真司がその気配の場所に着く数秒前。一人の男が鏡から出てきた。
彼の名は秋山蓮。仮面ライダー『ナイト』である。
そして蓮が鏡から出てきた少し後、真司がその場所に着く。そして蓮を見て思わず名を呼んだ。
「お前…蓮?ナイトの秋山蓮か?」
「何だお前は?それに、なぜライダーのことを知っている?」
 まあ当然の反応である。
それに対し真司は、蓮の説得を試みる。
「俺は城戸真司。蓮、戦いを止めろ」
「いきなりだな。お前にそんなことを言う資格があるのか?」
「それは…分かんないけど、でも、お前が戦っても無意味だし、恵理さんが喜ばないって事は分かるよ」
 戦う理由を言い当てられ、驚く蓮。
彼の戦う理由、それは彼の契約モンスター『闇の翼ダークウイング』によって昏睡状態になった恋人、小川恵理を救うためだ。
「何者だ、お前…!なぜ恵理のことを知っている」
「それをこれから話すよ。戦っても無意味だって理由も」
 そして真司は話した。ライダーバトルの真実を。

「…なるほどな。戦いは繰り返され、全ては神崎士郎の…いや、オーディンの手のひらの上か」
「ああ、そうだ。だから戦っても意味なんか無い。」
「だから戦いを止めろというわけか…断る」
 そう言って立ち去ろうとする蓮。
「おい、待てよ蓮!意味無いって分かってて何で…」
 真司の言葉を聞き、振り向いて答える。
「たとえ意味が無いとしても、恵理を救う道はそれしかない。
わずかでも可能性があるなら、俺はそれに賭ける」
 そう言って今度こそ蓮は立ち去った。
残された真司はただ呆然としている。
ちなみに現在の時刻はAM9:30である。
「…うわ、やっべ!遅刻だ!」
 時間に気付いて慌てた真司は、スクーターを思い切り飛ばして会社へと走っていった。
この後、例によって遅刻し、大久保のコブラツイストを食らう羽目になったことは言うまでもない。

 その日の昼過ぎ。やはりその日の仕事は浅倉脱獄の件の取材であった。
真司は浅倉がいた拘置所へと取材に向かっていた。
「なんか俺…初めてジャーナリストらしい仕事してるかも」
 そう考えているうちに、いつの間にか拘置所へと到着。
さっそく取っていたアポを利用し、浅倉脱獄時の唯一の生存者である看守に話を聞いた。
「…俺達が行った時には、浅倉はいなかった…いたのは紫の鎧みたいなのをつけた誰かと、紫色の巨大な蛇だ…
そいつらが仲間を次々殺っていったんだ―――――!」
 『紫の鎧をつけた誰か』『紫色の巨大な蛇』このキーワードを聞き、真司の頭にあるものが浮かんだ。
(浅倉…やっぱり今回もライダーになったのか)
 『紫の鎧』は王蛇、『紫の蛇』は契約モンスター『ベノスネイカー』。真司の頭に浮かんだのはそれだ。
浅倉が王蛇に変身して看守たちを殺し、脱獄した。真司はそう結論付けた。
「あの時の事は思い出したくないし、覚えているのはこれだけだ…分かったら帰ってくれ」

 真司はそのまま会社へと戻り、取材内容を報告しようとした。だが…
 キィィィン…
「嘘だろ?何でこんな時に―――」
 急ぎスクーターを飛ばし、気配の発生源へと向かう。そして変身し、ミラーワールドへと飛び込んでいった。
「何だ、お前も来たのか」
 龍騎が来た時には、既にナイトが戦っていた。相手はかつて倒したはずのモンスター、ディスパイダー…
いや、半獣半人になっていることから見ると、再生体のディスパイダー・リ・ボーンになったのだろう。
「邪魔だけはするなよ」
 ナイトはそう言うと、ウイングランサーを手にディスパイダーへと向かっていった。
だがそう簡単に接近は許さない。胸部から麻痺針を飛ばし、接近を阻む。
その麻痺針をウイングランサーで落とすナイト。いつの間にかドラグセイバーを持って龍騎も突っ込んでいる。
麻痺針攻撃が激しくなり、落とすのに忙しくて動けない龍騎。と、そこであることに気付いた。
「…あれ?蓮の奴どこ行ったんだ?」
 いつの間にかナイトがいない。どこに行った?
そう思っているうちにディスパイダーへの上空からの一撃が決まる。
ダークウイングをマント形態にして纏い、上空へと飛んで急降下攻撃を仕掛けたのだ。


 同じ頃、シグナムもまたミラーワールドへと飛び込んでいた。もっとも、別のモンスターを退治しにだが
「ここがミラーワールドか…なるほど、確かに『鏡』だ」
 辺りを見回すと、鏡のように反転した建物の中にモンスターがいる。猿型のモンスター・デッドリマーだ。
シグナムに気付いたデッドリマーは銃を向け、発砲する。
だが、今更銃弾程度ではシグナムは止まらない。たやすく見切り、接近した。
殺られる。そう判断したデッドリマーはすぐに逃げ出した。身軽な分、動きも早い。
それでもシグナムの方が若干速く、少しずつ差が縮まってゆく。
そして追いつき、レヴァンティンで斬りつけて動きを封じた。

 そして、二つの戦いは同時に決着がつく。

『『FINALVENT』』
 龍騎・ナイトの二人が同時にファイナルベントのカードを装填する。
その瞬間、ドラグレッダーとダークウイングが飛来し、両ライダーとともに飛んだ。
「おりゃあぁぁぁ!!」
龍騎はそのまま空中で反転し、ドラグレッダーの炎と共に足から飛び込む。
これが龍騎最大の必殺技『ドラゴンライダーキック』である。
一方ナイトはウイングランサーを軸にし、ダークウイングをドリルのように纏って急降下した。
ナイトの持つ最大の必殺技『飛翔斬』である。
この技を同時に受けて生きていられるほどディスパイダーは強くは無い。そのまま貫かれ、砕け散った。

「レヴァンティン、カートリッジロード」
『Jawohl.(了解)』
 カートリッジをロードし、レヴァンティンを構える。そして必殺の一撃が繰り出された。
「紫電…一閃!」
 炎の魔力を宿し、そのまま超高速で近づいて両断。
これがシグナムの持つ決め技の一つ『紫電一閃』である。
デッドリマーは危険を察知し、逃げようとしている。だが、足を斬られているためにそれは叶わない。
そして、そのまま真っ二つにされ、爆散した。

「…あれ?あそこにいるのは…シグナムさん?」
「その声…城戸か?」
 双方の爆発で互いの存在に気付く龍騎とシグナム。どうやら互いに近い場所で戦っていたようだ。
「知り合いか?」
 ナイトが聞く。だが、その答えが返ってくる事は無かった。なぜなら…
『HOLDVENT』
 突如、ヨーヨーらしき攻撃が飛んできたからだ。
ホールドベントという声に気付き、すぐにかわす3人。飛んできた方向を見ると、ライダーがいた。
「あいつ…仮面ライダーガイの芝浦淳か!」
 そのライダーは芝浦淳。仮面ライダー『ガイ』である。
だが、龍騎の記憶ではガイはヨーヨーを使ったことは無いはず。
そう思っていると、もう一人のライダーが現れた。
「何だ、あいつ…見たことも無いライダーだ…」
 そのライダーは全身が緑色で、頭には大きな目のような何かが付いている。
見た目だけならカメレオンを連想しそうな姿だ。
「へー、神崎士郎が言ってた通り、他のライダーの事も色々知ってるみたいだね」
 ガイが緑色のライダーと話す。どうやらこの二人は手を組んでいるようだ。
「でもアンタの事は知らないみたいだよ。ベルデの高見沢さん?」

   次回予告
「あっそ、じゃあ死んでよ」
『STRIKEVENT』
「…偶然って怖いな」
「私は…生きているの?」
仮面ライダーリリカル龍騎 第八話『激闘』

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最終更新:2007年09月02日 19:11