ホールドベントという声に気付き、すぐにかわす3人。飛んできた方向を見ると、ライダーがいた。
「あいつ…仮面ライダーガイの芝浦淳か!」
 そのライダーは芝浦淳。仮面ライダー『ガイ』である。
だが、龍騎の記憶ではガイはヨーヨーを使ったことは無いはず。
そう思っていると、もう一人のライダーが現れた。
「何だ、あいつ…見たことも無いライダーだ…」
 そのライダーは全身が緑色で、頭には大きな目のような何かが付いている。
見た目だけならカメレオンを連想しそうな姿だ。
「へー、神崎士郎が言ってた通り、他のライダーの事も色々知ってるみたいだね」
 ガイが緑色のライダーと話す。どうやらこの二人は手を組んでいるようだ。
「でもアンタの事は知らないみたいだよ。ベルデの高見沢さん?」
「お前バカだろ?何で知らない相手にわざわざバラしやがんだよ」
「え?別にいいじゃん。名前だけ知られても能力知られてないんなら別に不利にもなんないし」
 ガイとベルデが話している最中、ナイトがあることに気付く。
ベルデの声、そして高見沢という名。これで思い浮かんだのはある有名人物だった。
「高見沢…?まさか、高見沢グループ社長の高見沢逸郎か?」
 それを聞いたベルデは、驚いた顔でナイトを見る。仮面で顔が隠れているから表情は分からないが。
「ほう、よく分かったな。どうやって理解した?」
「その声とその名前だ。テレビでお前の声は知っていたし、その声で高見沢といったら高見沢逸郎しか思いつかなかった」
「それだけ知られてんのか。そいつぁ嬉しい…なぁ!!」
 声とともに『バイオワインダー』と呼ばれるヨーヨーで仕掛ける。今度はかわしきれず、龍騎に当たった。
「ま、待て!俺はライダーと戦う気はないんだ!」
 戦意が無いことを必死でアピールする龍騎。
だが、ガイは親指を下に向け、手をいわゆる『地獄に落ちろ』という形にして言い放った。
「あっそ、じゃあ死んでよ」

第八話 『激闘』

『STRIKEVENT』
 ガイがアタッチメント『メタルホーン』を装着し、龍騎へと仕掛ける。
『Panzerschild.』
 だが、その攻撃はすんでの所で止められた。
シグナムが防御魔法『パンツァーシルト』で道をふさぎ、その隙にガイの懐に飛び込んだからだ。
「何をしている城戸!死にたいのか!」
 どうやらシグナムは戦る気満々のようだ。
シグナムとしてもライダーとは戦いたくない。だがミラーワールドで動いているといつ襲われるか分かったものではない。
ならば遭遇したら死なない程度に戦い、ミラーワールドから追い出そう。シグナムはそう考えたのである。
シグナムはガイを蹴り飛ばし、そのまま一騎討ちへと持ち込んだ。
龍騎はそのシグナムの手助けに行こうとするが…
「どこ見てやがる、テメエ等の相手は俺だ!」
 バイオワインダーによる遠距離攻撃を受け、そのままナイトと共闘してベルデと戦うことになった。

「どうしたのお姉さん、もう息切れ?」
 余裕のガイと比べ、シグナムは多少息切れしている。
というのも、ガイは他のライダーと比べて高めの防御力を持っている。
さらに高い腕力とメタルゲラスの補助もあり、なかなか決定打を与えることが出来ないのだ。
と、その時シグナムが予備カートリッジを装填する。何か策でもあるのか?
「あれ?何かする気?」
 そう聞いたとたん、カートリッジをロードし、いつのまにかシュランゲフォルムになっていたレヴァンティンを鞘へと収めた。
だが、ガイもそれを見てむざむざやられはしない。
「ま、いいや。それじゃ、そろそろ死んでよ」
『FINALVENT』
 ガイがメタルホーンを持ち、メタルゲラスの肩へと乗る。その直後、もの凄いスピードでシグナムへと突っ込んでいった。
これがガイが持つ最大の必殺技『ヘビープレッシャー』である。
「待っていたぞ…そうやって大技を放ってくるのを!飛竜一閃!」
 刹那、シグナムが鞘からレヴァンティンを抜き、中距離用の決め技『飛竜一閃』を放つ。
アドベント・システムの力もあり、ライダーのファイナルベント技を相殺するだけの威力はついている。
そして接触と同時に煙が上がる。
「うーわ、これじゃ周り見えないな」
 だが次の瞬間、嫌でも周りが見えるようになると悟った。
シュランゲフォルムとなったレヴァンティンで体を絡めとられていたのだ。
「な、何だこれ!?まさか最初からこれを狙って…!」
「ああ、そうだ」
 煙の中からシグナムが現れる。
「私も誰も殺したくは無い。ならばこうやってミラーワールドから追い出すまでだ」
 そう言うと鏡の方を向き、
「分かったら」
 振りかぶり、
「ミラーワールドから」
 思い切り振り、
「出て行け!」
 ガイを鏡へと放り投げた。だが、鏡へはまだ距離が足りない。
「レヴァンティン、システム起動だ」
『了解。アドベント・システム、起動します』
 システムを起動させ、モンスターデータを実体化させる。
シグナムのシステムにはドラグレッダーのデータが入っていた。
そして不足分の距離をドラグレッダーが吹き飛ばし、ガイをミラーワールドから叩き出した。
ふと、『シュウウゥゥゥ…』といった感じの音に気付く。自らの体が粒子化していっている音だ。
「時間か。城戸、私は先に戻る」
 聞こえたかどうかは定かではないが、反応しないところを見ると、聞こえていないのだろう。
それならそれでもいいとばかりに、シグナムはミラーワールドを去った。


 一方、龍騎・ナイトvsベルデの方は…
「くっ、あいつどこ行ったんだ!?」
 ベルデの持つ透明化のカード『クリアーベント』に苦しめられていた。
見えない相手からの攻撃、さらに攻撃の瞬間にすら姿を現さないから、苦しむのも当然である。
そしてその当のベルデは、物陰から次のカードを装填していた。
『COPYVENT』
 ライアの持つものと同名のカード。だが効果は違う。
ライアがコピーできるのは武器のみ、だがベルデは姿までもコピーできるのだ。
そしてコピーベントでシグナムの姿をコピーし、二人に近づく。
「あ、シグナムさん。そっちは終わ…!?」
 ベルデが姿とともにコピーした剣、レヴァンティンで斬りかかってきた。
慌ててドラグセイバーで受け止める。そしてその一瞬の隙を突き、ナイトがウイングランサーで思い切り突いた。
「な!?蓮、どういうつもりだよ!」
「あっちをよく見ろ。確かシグナムとか言ったか?あいつはそこでガイと戦っている。
ならばこいつは偽者…大方ベルデが化けたものだろう」
 そう言われ、龍騎は指し示された方向を見る。
確かにシグナムとガイが戦って…今決着がついた。
そして飛ばされた方のシグナムを見ると…いない。どういうことか。
『FINALVENT』
 こういう事だ。ベルデ最大の大技『デスバニッシュ』を仕掛けるために距離を置いていたのだ。
バイオグリーザの舌で足を縛り、まるで空中ブランコのようにナイトを掴む。
そして高速回転し、空中で止まった。当然頭を下に向けたナイトを掴んだ状態である。
「このまま脳ミソぶち撒けな!」
 そしてそのまま地面へと急降下していく。このままだとナイトは死ぬだろう。
だが、龍騎がそれを許さない。
「させるかぁぁぁぁ!!」
『STRIKEVENT』
 ドラグクローを呼び出し、昇竜突破を放つ。
その火球は狙い過たず、ベルデの腕をとらえた。腕を負傷し、体勢が崩れる。
その隙を利用し、ナイトが振り払う。何とか頭は打たずに済んだが、それでも体を強打し、気絶している。
そうこうしている間にベルデが立ち上がる。龍騎は身構えるが、
「時間切れか…やめた」
 開口一番にそれである。そのまますぐに帰っていった。
肩透かしを食ったような感じだが、確かにベルデが粒子化を始めている。
おそらく龍騎やナイトより先にミラーワールドに来ていたのだろう。
「時間に救われた…かな…」
 そう言った龍騎の仮面の下には、安堵の表情が浮かんでいた。


 数日後。
「島田さんからここのシュークリームがおいしいって聞いてたからな…」
 真司はとある喫茶店の前にいた。
なぜこんな所にいるか、それははやての家に居候していることを大久保に知られ、「たまには土産でも買っていった方がいいんじゃないか?」と言われたからである。
そして土産に何がいいか調べたところ、この店のシュークリームが美味いと聞き、それを買っていくことにしたのである。
意を決し、真司が店に入っていった。店の看板には『翠屋』と書かれている。
「いらっしゃいま…!!」
 何という偶然。蓮と手塚がいた。それも二人ともウェイターとして。
「お前ら…もしかしてここで働いてたのか?」
 あまりの出来事に、真司も驚きを隠せない。
「ああ、住み込みで午後3時ごろからな。秋山もだ」
 話す気がなさそうな蓮に代わり、手塚が答える。
「ただいまー」
 と、喫茶店のドアが開き、なのはが入ってくる。
「あれ?なのはちゃん、こんな所でどうしたの?寄り道?」
「え?違うよ。ここは―――」
「ここがなのはの家だ」
「…え!?」
 予想だにしなかった出来事にさらに驚く。
「それと、神崎士郎の妹…神崎優衣と言うんだが、知っているか?」
「あ、ああ」
「…その神崎優衣もここで働いている。もっとも、今は買出しで出かけているが」
 あまりの超展開に真司の脳がショートしている。
そして、熱暴走寸前の脳からようやくこの言葉を絞り出した。
「…偶然って怖いな」
 この場にいた全員が同意したという。


 同時刻、どことも知れぬ場所。
黒い長髪の女が倒れている。死んでいるのか?そう思いたくなるほど長い時間、ここで倒れているのだ。
「う…」
 どうやら目を覚ましたようだ。もぞもぞと動き出し、起き上がった。
「私は…生きているの?」
 言葉から察するに、今まで自分が死んでいたのだと思っていたのだろう。
女の名はプレシア・テスタロッサ。かつて『ジュエルシード』と呼ばれる結晶体で『アルハザード』という地に行き、娘を生き返らせようとした魔導師である。
だが、それも時空管理局、そして『高町なのは』と『フェイト・テスタロッサ』によって失敗、虚数空間へと落ちていったはずである。
「そうだ、アリシア!アリシアはどこ!?」
 目覚め、意識もはっきりしてきたところで娘を思い出す。そうだ。自分とともに虚数空間へと落ちたはずだ。
アリシアを探すも、結局見つからない。絶望で途方にくれていた。
そんな彼女の前に、『あの男』が現れたのである。
『絶望しているようだな』
「…誰よ?」
『お前の絶望を取り除けるかもしれない』
「絶望?ジュエルシードも一つしか無い、それじゃアルハザードに行けない。
アリシアを生き返らせる道が立たれたも同然なのよ?
それとも、生き返らせる方法があるとでも言うのかしら?」
『ああ』
 男は事も無げに言い放つ。すると、その言葉にプレシアの目に希望が満ち始めてきた。
「どういう事?詳しく教えて」
 そして男…いや、神崎士郎は話す。ライダーバトルの存在を。

「つまり、そのカードデッキさえあれば、アリシアを生き返らせる道が開けるという事?」
『そうだ。だが、今は13個全てがそれぞれの人間に与えられた後だ』
「…ならどうすればいいのよ?」
『簡単なことだ。他のライダーから奪えばいい』
 そして神崎は一枚の紙を渡す。一通り目を通してみると、それは名簿のようだ。
『ライダーの名簿だ。それに載っている人間からカードデッキを奪え』

   次回予告
「アリシアを生き返らせる…そのためなら、私は人殺しにもなるわ」
「意外ね。こんなに早く見つかるなんて」
「待っていて、アリシア…」
「やれやれ、神崎士郎も人が悪い」
仮面ライダーリリカル龍騎 第九話『ライダー交代』

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最終更新:2007年08月14日 10:53