「私のこと……覚えててくれたんだ………」
なのはは泣き続けるスバルに向かっていった。
「あのっ…私……ずっと…なのはさんに……憧れてて………」
「うれしいな………」
「………?」
「バスター見て、ちょっとびっくりしたよ。」
その発言にスバルは「あ!?」という声をあげながら謝罪した。
「すみません勝手に!」
その謝罪になのはは笑いながら許してくれた。
そのやり取りをティアナとリィン、そしてアムロは黙って見ていた。
その時、なのはとアムロを見ながら、
「ランスター二等陸士はお二人をご存知です?」
とティアナに聞いた。
「あ、はい、知ってます。」
そういうと、まずなのはを見て、
「本局武装隊のエース・オブ・エース、航空戦技教導隊の若手No.1。高町なのは一等空尉と……」
さらにアムロを見て、
「本局の特別独立兵ロンド・ベル01、様々な部隊で数多の功績を残した白い英雄。アムロ・レイ一等空尉ですよね?」
「はいですー!」
「あれが………」
そういってアムロを見続けるティアナであった。





第03話
 設立、機動六課





前のソファーにははやてとフェイト、それにリィンが座っている。
「登録は陸士部隊、フォワード陣は陸戦魔導師が主体で、特定の遺失物の捜査と、管理が主な任務や。」
「遺失物……ロストロギアですね?」
「そや。」
スバルとティアナは、はやてから新部隊の説明を受けていた。
なぜ自分達の試験についてではなくそのような話なのかはわからないまま話を聞いていた。
その時、
「で………」
はやては言葉をきり、二人を見つめた。
「スバル・ナカジマ二等陸士、それにティアナ・ランスター二等陸士。」
「「はい。」」
多少困惑しながらもはやての言葉に答える。
「私は、二人を私の部隊のフォワードとして迎えたいて考えてる……どないやろ?」
いきなりの勧誘。
その発言に戸惑う二人を見て、さらに続ける。
「まだ部隊の人員は揃ってないけど、いい経験になると思う………」
さらにフェイトも加える。
「スバルは、高町教導官に魔法戦を直接教われるし……執務官志望のティアナには、私でよければアドバイスとかできると思う………」
「あ、いえ……とんでもない…というか……恐縮です…というか………」
などとしどろもどろしだすティアナ。
スバルと顔を合わせる。
その時ティアナは気付いた。
「あの……お取り混み中かな………?」
そこには、先の試験に来ていたなのはの姿であった。


「……不合格は残念だったけど……まあ、しゃーないよね………」
「ま、よかったわ。再試験にひっかかれて。」
「だね~。」
芝生にて話すスバルとティアナ。
実はあの試験は危険行為で不合格だった。
しかし、なのはとアムロとリィンの話し合い(ただし仕事の都合上、アムロは報告書)の結果、特別講習の後再試験となったのだ。
「……でさ、新部隊の話……ティアはどうする?」
一週間後のはやての部隊への編入を考えていたスバルはティアナに聞いた。
「あんたは行きたいんでしょ?なのはさんはあんたの憧れなんだし、おんなじ部隊なんてラッキーじゃない。」
「まぁ……そうなんだけどさ………」
「それにアムロさんにも近づけるんだし、いい話じゃない。」
ティアナはスバルの言葉に対してそう返した。
しかし、
「へ?アムロさん?なんで?」
意外な言葉。
「え、だって憧れてるって………」
「私が憧れてるのはなのはさんだけだよ?」
「は?」
目を丸くするティアナ。
しかしスバルはそんな事お構いなしに返す。
「あの時私を助けてくれたのはあの二人だけど、アムロさんは私を保護したぐらいだったし………」
だがその言葉に、
「あんたアムロさんに失礼でしょ!」
ティアナが声を張り上げた。
が、
「……何でティアが怒るの?」
「あっ、それは………」
墓穴を掘ったようだ。
スバルはいやらしい笑みを浮かべながら、「ねーどーしてー?」と執拗に聞いて来た。
その時、
「痛い痛い痛い!」
「どーしてあんたはそういつも!」
ティアナがスバルをつねった。
「ティア痛いよー!」
「うっさい!」
そういって手を離す。
スバルはその場に倒れるが、すぐにティアナに言い返した。
「……ティア……私は知ってるよ………」
その目はとても優しく、物静かにティアナを見つめる。
「ティアが昔一度だけ言ったあの言葉。『アムロ空尉のようになりたいな』って言った事、今でも覚えてるもの。」
昔を思い出すかのように語るスバル。
その姿を見てティアナは表情を崩した。
が、
「それに!なのはさんとアムロさんは知り合いだからそのうち遊びに………」
ぎゅうぅぅ!
「だからあんたはー!」
「いひゃいよひあ~!(痛いよティア~!)」
一言余計だったようだ。


そんなやり取りをする二人を上の階から眺める人影。
「あの二人は入隊確定かな?」
「だね。」
なのはとはやてだ。
「なのはちゃんうれしそうやね?」
「二人とも育てがいがありそうだものね。」
「それは確実や。」
二人とも談笑をしつつ部隊について話し合う。
「新規のフォワード陣は、あと二人だっけ?そっちは?」
「今シグナムが迎えに行ってるよ。」
「それと………」
「うん。戦隊長は申請済み。当日になれば来るはずよ。」
「なら………」
そういって二人は外に視線を戻した。


 一週間後
 新部隊宿舎、ロビー


新部隊の面々が並ぶ。
「……全員が一丸となって事件に立ち向かっていける事を期待します。」
正面で挨拶をしているのは、部隊長のはやて。
「……ま、長い挨拶は嫌われるんで。以上、ここまで。課長及び部隊長。八神はやてでした。」
挨拶が終わり皆拍手をする。
拍手が止んだと同時に、副官のグリフィスが、
「……以上で終了予定でしたが、約一名遅れているためもう少しここで待機してもらいます。」
といった。
数人が何だ何だと話し始める。
当然、ティアナやスバルも同様である。
「…一体誰よ、初日から遅刻する奴は………」
「まぁティア………」
悪態をつくティアナをおさえるスバル。
「どこの寝坊すけなのかしらね?」
と言った時、
「……あいにく、寝坊ではなく仕事で遅れたんだ。」
という声が扉が開く音と共に響いた。
「え?」
その声の元を見るティアナ。
が、見た途端に固まった。
管理局唯一の異世界の青い制服を着た男。
「遅れて申し訳ない。」
そういいながらはやての元による。
「みんなにはまだ伝えてなかったけど、彼もここに配属になったんよ。」
はやてが皆に伝えた。
そうすると彼は敬礼をしながら自己紹介をした。
「本日ただ今より、アムロ・レイ一等空尉、戦隊長として部隊に配属になります。どうぞ、よろしくお願いします。」
そう、アムロである。
自己紹介を終えはやてに、
「……ところではやて、まだ部隊名を聞いていないんだが………」
と聞いた。
はやては待ってましたとばかりに、
「……この部隊は、遺失物管理部………」
といった後に声を張り上げた。
「機動六課よ!」


アムロとなのはは屋外の訓練所に来ていた。
「よく六課に来たね?」
「当然だ。すぐに編入することにしたよ。」
実際は訓練所となる水面を眺めているのだが。
「もっとも、断ったらただじゃ済まないからな………」
「にはは………」
そんな会話をしていると、
「なのはさーん!」
笑いながらなのはに駆け寄る女性。
「シャーリー!」
なのはも彼女の名を呼ぶが、
「……なのは、フォワード陣がきたぞ。」
走ってきた彼等を教えるアムロ。
「じゃ、そっちで話すからアムロさんも………」
「わかった。」
そういって場所を移そうとした時だった。
「アムロ一等空尉!」
走ってきたティアナがアムロを呼び止めた。
「あの……先程は申し訳ありませんでした!」
先程の謝罪である。


なのははフォワード陣にデバイスを返して説明をしている。
「……それと、メカニックのシャーリーから一言。」
さらに先程来たシャーリーと呼ばれた女性から自己紹介が入った。
「えー、メカニックデザイナー兼機動六課通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です!」
彼女はデバイスの修理や改造に長けているようで、
「デバイスとかの相談だったら、いつでも言ってね。」
といった。
「じゃ、早速訓練に入ろうか?」
シャーリーの自己紹介が終わると同時になのはは訓練を始めるようにいった。
が、そこには何もないためフォワード陣は首を傾げた。
しかし、シャーリーは目の前にモニターを出すと、ここは空間戦闘用シュミレーターがあるといい、シュミレーターをセットした。
するとそこに、廃棄都市のような町が現れたのだ。
「お前達も驚いてないで準備をしろ。」
そういってシュミレーターに向かった。


「アムロさん?」
「なんだなのは。」
シュミレーターに向かう途中、なのははアムロに聞いた。
「ティアナはどうしたの?謝ったけど………」
「謝るなら訓練で成果を見せろ……といったよ。」
「ああ、なるほど。」
そう聞くとなのはは笑いながら理解した。
「あと………」
「なんだ?」
さらになのはは、
「シャーリーが後でデバイスについて話したいって………」
と伝えた。


模擬戦訓練が始まった。
「ガシェットドローンⅠ型か………」
目標はカプセルのような形をしたグレーの魔導機械。
その疑似シュミレーションだ。
「うん。訓練にもなるし敵の形状把握も出来るしね。」
そういってなのははフォワード陣を目で追っていった。


「ところでシャリオ一等陸士……」
アムロはシャーリーに話しかけた。
すると、
「シャーリーで構いませんよ。」
とフレンドリーに返ってきた。
「了解した。ではシャーリー、」
改めてシャーリーに聞く。
「デバイスについて……聞きたいことがあると聞いたんだが………」
「あ、その件ですね!」
そう、先程なのはから聞いた話である。
シャーリーはモニターからは目を離し、キーを打ちながらアムロに聞いた。
「実は空尉のデバイス、まだ量産型のままじゃないですかー。」
「確かに、あれからずっとこれのままだったな………」
「ですから、空尉の新デバイスを作ろうと思いまして!」
「俺の…デバイス………?」
突然の発言。
確かに、ある事件の時に半壊したνガンダムからデバイスに変えてすでに何年もたっている。
シャーリーはさらに続け、
「構想は練ってありますし情報のほうも問題ありません!」
と意気揚々とアムロにいった。
事実今のままではいつかデバイスがイカれかねない。
そのためアムロはシャーリーに、
「では……お願いしようかな………」
と頼んだ。
「了解しました空尉!」
「皆と同じでアムロで構わないよ。」
などと話していると。
「二人とも、フォワード陣が頑張り始めたよ?」
となのはが言ってきた。


「さぁ!AMFをどう切り抜けるのかしら!」
シャーリーはさらにヒートアップする。
「彼等のは疑似AMFだな?」
「はい。勿論こちらも開発は進めてますよ?」
「そうか。」
AMF………
かつてアムロもこれには苦労させられた。
アンチ・マギリング・フィールドと呼ばれ、その名の通り魔法を無効化するフィールドである。
これを突破する方法は確かにある。
まずは多重弾殻射撃。
これはAMFを貫通させるためのコーティングである。
これはAAランク魔導士になれば出来るであろう技である。
次に質量攻撃。
つまりは魔法以外の攻撃だ。
昔はνガンダムの頭部バルカン砲(当時はまだバルカンまで改造されてなかったため、隠蔽工作の上実弾を使用していた。)を使っていたり、廃ビルに撃ちこみ崩れた破片で倒したものであった。
そして高威力魔法攻撃。
簡単に言えば力押しだ。
近距離格闘戦なら簡単に貫くだろうが、魔法攻撃、砲撃や射撃の場合はなのはレベルの砲撃魔導士でなければ倒せはしないだろう。
だが、
「……ほぅ………」
「みんな頑張ってるね。」
「なのはが見込んだだけはあるな。」
先程あげた戦い方を駆使してがんばるフォワード陣。
確かに見込はある。
「後は訓練次第だな。」
「しっかり訓練するつもりだよ。」
がんばる!という意志表示か、ガッツポーズをする。
「……訓練スケジュールは決まってるのか?」
しっかり訓練するといったのでどんな訓練をするかが気になった。
すると笑顔で、
「今日は夜まで通してやるつもりだよ。」
と答えた。
「……………」
恐らく今夜、フォワード陣は相当グロッキーだろう………


その日の夜………
「……………」
アムロは誰もいない食堂で、一人外を眺めていた。
そこに、
「空尉。」
背後から聞こえた声に振り向き、声の元を見た。
「…ヴァイス陸曹………」
そこには機動六課のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニックが立っていた。
「昔と同じ、ヴァイスでいいですよ、空尉。」
「アムロで構わないぞ、ヴァイス。」
そういってヴァイスはアムロの近くに腰掛けた。
「……久しぶりだな。」
「何年ぶりすかね?」
そういってヴァイスはコーヒーの入ったコップを渡した。
それから、
「ストームレイダーはあれからどうした?」
「今じゃヘリのサポートですよ。」
昔話に花を咲かせていた。
笑いあいながら話していると、
「……どういう因果なんすかねぇ………」
とヴァイスが言った。
先程とは打って変わって暗い表情になった。
「ああ、名前を聞いたときに驚いたよ。」
「……あいつの妹とは………」
そう、彼等二人には相当関係のある人物であった。
しかし、突然ヴァイスが、
「妹……か………」
といってため息をはいた。
「……すまない、嫌な事を………」
アムロは謝罪するが、彼は「構いませんよ。」と自嘲気味に笑った。


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最終更新:2008年08月10日 17:11