先日機動六課に配属された。
配属期間は六課の試験運用期間分。
気付けば『白い英雄』等と呼ばれるようになって早六年。
呼ばれるようになってから様々な部隊を転々としていた。
1ヶ月、長くて3ヶ月、早くて1日なんていう所もあり、正直うんざりしていた。
だが今回は1年間。
俺にとって、この世界で初めての長期配属だ。
これだけの期間があれば、忙しかった毎日から少しは解放されると思っていた。
そう………
『思っていた』のだ………


 ……機動六課設立から2日………


「もっと素早く動いて!」
なのはの指示が飛ぶ。
それと同時にガシェットの攻撃がスバル目掛けて飛んでいく。
「うわわっ!」
驚きながらもウイングロードの上で素早く回避。
ここまでは毎回のように同じだ。
だがここからが違う。
彼女は回避を終えるとすぐさまガシェットを追いかける。
が、左右の路地に隠れていることに気がつかず、
「しまった!?」
囲まれてしまった。
数は5体。
囲まれた彼女はAMFのせいでか攻撃が出来ないようだ。
「ティア!」
スバルは彼女に援護を頼むが援護が来ない。
それも当然である。
スバルは先行しすぎたせいで孤立してしまったのだ。
しかも先程、ティアナもガシェットに囲まれて動けない状態になっていた。
「ならエリオ達は……!」
が、こちらからも来ない。
彼等は運悪くガシェットの大群に接触、交戦中だ。
「そんなぁ………」
スバルは力無くつぶやきながらも戦闘体勢をとるが、数の差にAMFの状況下。
圧倒的に不利である。
これでまだ2日目である。
2日でこれは正直辛いんじゃないだろうか………
と、その時、
『アムロ空威ぃ………』
スバルからの思念通話が俺を呼んだ。
恐らく援護要請であろうが、
「駄目だ。」
『ふぇぇ………』
すぐに断る。
この訓練は護衛対象となるビルを守りながら敵と交戦し、10分後の増援部隊--この場合、増援は俺だが………--の到着まで守り抜いた後、増援部隊と協力して敵を殲滅するものである。
しかし現在訓練開始から5分程しかたっていない。
「闇雲に突撃するスバルが悪いんだぞ。」
『すいません………』
沈むスバル。
そこに、
『だから言ったじゃないの!』
ティアナが喝を入れるために会話に入ってきた。
『すみません空尉!』
さらに謝罪。
「まだなんとかなる。持ち直してみるんだ。」
『はい!』
段々とだが指揮能力は上がってるようだ。
だが、スバルを制御できてないところを見ると、まだまだのようだ。
「スバルは仲間の援護を期待するな。自力で解決するんだぞ。」
『はぃ………』
スバルは突撃思考が強すぎるようだ。
もう少し仲間と連携をとれればいいが………
と、そこに、
「どう?彼女達は。」
なのはがバリアジャケットのまま降りてきた。
「筋はいいな。後は連携やチームワークだろう。」
隣に下りてくるのを見守りつついう。
「なら今日は連携を視野に入れながら……かな?」
そういってモニターを開きスケジュールに付け加える。

10:00~12:00、14:30~16:00
連携を視野に入れた訓練。

午前を変更し午後を割り込ませる。
すると午後のスケジュールが1時間半ずれた。
「また夜までか………」
そういって頭を抱えた。

……あえてもう一度言うが、これでもまだ2日目である………





第04話
 アムロの新たな日常






「ふぅ………」
一足先に戻ってきていた俺は、食堂に来て昼食を食べていた。
辺りには昼頃ということで沢山の人が集まっている。
そこに、
「………アムロか?」
聞き覚えのある女性の声が、背後から俺を呼んだ。
振り向くと、そこには赤い髪のポニーテールの女性。
「シグナムか、久しぶりだな。」
「ええ、こうして話すのも何年ぶりでしょうか………」
そういいながら俺は同じ机の椅子を指差し、彼女もそれを見てその席に座った。
彼女とは10年前からの仲で、幾度か共同戦線を張ったこともある。
ちなみに模擬戦も何度か。
「訓練はいいのですか?」
そういって机にトレイを置く。
「俺は午後から用事で出かけるんだ。早めに切り上げたんだよ。」
「そうでしたか。」
事実、午後にシャーリーから用事を頼まれており、一緒に本局に向かうことになっている。
「それにしても………」
と、突然話題を変える。
彼女もそれに気付いて箸を止めた。
「スバルやティアナは陸士訓練を受けているからよしとして、エリオやキャロまでもここに配備していいのか?」
率直な感想を彼女に聞いた。
「と、言いますと………」
「彼らはさすがに若すぎる。」
そういった。
「しかし、魔導師としての素質もありますし………」
彼女の言い分は確かに解る。
が、
「だが俺の世界の軍でもここまでは無いぞ。」
そういい返した。
10歳という少年少女が魔導師として戦うのはどうかと思ったのだ。
……だが実際の所、なのはやフェイト、はやてなどの初陣は9歳。
彼の世界で数十年後に13歳という若さでMS(モビルスーツ)で実戦に出た少年がいるのだが………
「それにこの六課の戦力、はっきり言って異常だ。」
そう彼女にいう。
すると彼女は呟きながら考える。
「……なのはにテスタロッサ、主はやてに………」
「俺も一応オーバーSランクだし、君達ヴォルケンズも相当な戦力だ。」
ちなみにアムロは空戦魔導師ランクSSの能力限定4ランクダウンのA状態だ。
「何か別のものを警戒してるようにもとれるが………」
そういうと彼女は「考えすぎでは………?」と言った。
「……そうかもしれないな………」
はやてがわざわざ俺を誘ってくれたんだ。
そんなことを考えるな。
そう考えながら食事を再開した。


時間は7時を過ぎた。
辺りは既に闇に包まれている。
空には俺の世界ではありえない二つの月。
既に慣れっこだが。
シャーリーはデバイス開発改造用のパーツを手に入れるため、本局にまだ残ったままである。
「……………」
そのため、一人無言のまま六課の宿舎への道のりを歩いていた。
その途中、訓練帰りのフォワード陣の4人と偶然出会った。
「アムロさん!」
その内のエリオとキャロ(とフリード)がこちらに駆け寄ってきた。
その姿を見て、ティアナが二人を止めようと「こら二人……!」と声をあげるが。
「お帰りなさいアムロさん!」
「お帰りなさい。」
さらに「キュクル~」というフリードの掛け声に掻き消された。
だがティアナはその発言にも「敬語を使いなさい!」と声をあげる。
横でスバルがなだめているが、
「ああ、ありがとう二人とも。」
とゆう言葉にティアナとスバルは驚いた。


「「知り合い!?」」
夕食時の食堂でスバルとティアナの二人は声をあげた。
「ああ、前にフェイトが合わせてくれてね。」
「勿論別々にだが………」と付け足しながら席についた。
先程出合ったエリオとキャロの二人が夕食を誘ってくれたので一緒に食べることになった。
「道理で普通に話したわけか………」
そう呟くティアナにエリオが、
「かなり前からあってましたので………」
そうつけたす。
実際、数年前から合っており、今ではいい兄貴分のような状態だ。
と、突然、
「……ところで、訓練の方はどうだ?」
と、4人に聞いた。
「…………」
同時にティアナは沈んだように俯き、エリオとキャロはガタガタと小さく震え出した。
無理もないか………と内心地雷を踏んだようだと思う。
確かに2日でこのハードトレーニングは厳し過ぎるのだ。
3人はトラウマを抱えているとなのはに後で伝えよう………
……訓練量は変わらないだろうが………
「とっ…とにかく順調ですよ!」
とスバルがフォローに入った。
「はは………」
正直、苦笑するしかなかった………

ほぼ1日中訓練の観察、手伝い。
たまに他の手伝い。
これが俺の新たな日常である………


それから数週間後………


早朝。
珍しく、空士仕様のバリアジャケットと3つのデバイスのフル装備で、なのはと共に空中でフォワード陣を見守もっていた。
そろそろとアムロは、腕に付けていた時計を見ると、後数分で訓練は終了だ。
それをなのはに伝えると、皆を前に並ばせる。
「本日の早朝訓練、ラスト1本、みんな、まだ頑張れる?」
皆体中汚れだらけで、肩で息をしている。
そのような状況でも、フォワード陣はそろって「はい!」と答えた。
すると彼女は、
「それじゃ、シュートイベーションをやるよ。」
といった。
シュートイベーションとは、教官となる人物自らが的となり、実戦のような戦いをすることをいい、主に射撃攻撃の対抗訓練に使われる。
無論、攻撃は手加減無しだ。
「じゃあアムロさん。」
「分かってる。」
そういって前に出る。
実はこのためにフル装備であったのだ。
「アムロさんにクリーンヒットを与えるか、5分間攻撃に堪え切るか………」
彼女は上空にあがり、皆を見据えた。
ジャッジをするつもりなのだろう。
「手加減はしないぞ。」
アムロは自分のデバイスを構える。
ここでの模擬戦で初めてフォワード陣との戦闘だ。
「誰か一人でも被弾したら始めからだよ。」
そういって彼女は左手をあげた。
皆に緊張が走る。
「レディ………」
皆が身構え、そして、

「ゴー!!!!」

始まった。


「行けっ!!」
そう叫ぶと、アムロは左手のデバイスを振り誘導弾を打ち出した。
数にして約5発。
実際は最大15発は撃てる。
ああは言っておいても手加減はしているようだ。
その攻撃に、
「全員絶対回避!2分以内で決めるわよ!」
ティアナは皆にそう命令を出す。
だが、
「たった5発なら大丈夫!!」
そういってスバルは突撃した。
「スバル!馬鹿!」
ティアナの制止を聞かずにウイングロードで走っていった。
確かになのはの訓練は5発10発どころでは無い数を出して攻撃してくる。
それに比べれば5発等と思ったのだろう。
しかしこの5発こそが最大の敵である。
ティアナはこの誘導弾の恐ろしさを知っているのだ。


「リボルバー………!」
拳を構え、アムロを狙う。
が、

ヒュン!

「うわっ!?」
体勢を崩して撃てなくなってしまった。
上下から計4発の誘導弾が飛んできて近くをかすめたのだ。
だが、
「まだーっ!」
誘導弾が外れたのでさらに突撃を続ける。
誘導弾の利点はその追尾性にある。
しかしその反面、カーブや前後反転等のタイムロスがある。
つまりは回避した後、背後にいる場合は少なからず隙ができるのだ。
スバルはそれを狙って突撃した………筈である。
が、

ヒュン!

「えっ!?」
自分の顔の左右を通り過ぎた。
ここまで当てない攻撃、アムロは「部隊の作戦を乱すな!」と警告をしているのだ。
しかし、
「まだまだぁーっ!」
さらに突撃してくるスバル。
「リボルバー………!」
彼女は構えるがアムロは何も動かない。
「シュートッ!!!!」
打ち出した弾丸がアムロに向かう。
が、
「無駄だ!」
その弾丸は誘導弾に撃ち落とされた。
「!?」
「スバル!」
ティアナが彼女を呼び戻そうと叫ぶ。
スバルは急いで後退しようと素早くターンをするが、ローラーブーツに無理な負荷をかけながらターンしたせいか、わずかによろける。
その瞬間をアムロは見逃さなかった。
「当たれ!」
2発の誘導弾がスバル目掛けて飛んでいく。
なんとか回避するが、その誘導弾の弾道が不可思議に動く。
「何これー!?」
カーブをするわけでもなく方向転換するわけでもなく直角に素早く飛んでくるのだ。
これがアムロ特有の誘導弾、「ファンネルシュート」である。
かつてフィンファンネルで攻撃していたときの感覚での攻撃のため、初めて接触した敵は対応できないままやられるのが大半である。
さらには発動キーとしてその技名を叫ぶのだが、彼の場合、特に何も言わないでも発動するので、隙が少ないのだ。
それを知っていたためティアナは回避を優先したのだったが、
「うわわわっ!」
スバルには伝わらなかったようだ。
なんとか正面からの攻撃をよけ安心するスバルだったが、その2発の弾はさらに彼女を追撃する。
反撃も出来ず逃げるしかなく「ひぁぁぁ!!」と情けなく叫びながらウイングロードで逃げ回るのであった。

スバルよ、一体いつになったらその突撃思考は治るんだ?


「わわわっ!」
背後からやってくる誘導弾は、確実に、かつ正確にピッタリとついてくる。
回避は絶望的だ。
『スバル馬鹿!何で言うこと聞けないの!』
ティアからの思念が入ってくる。
声だけでも怒っているのがわかる。
「ゴメン!」
謝ったが今はそんなことをしている暇はない。
その間にも誘導弾は私を狙い、腕をかすめた。
『待ってなさい、今撃ち落とすから………』
その状況を見てか、ティアは私を助けてくれるようだ。
が、


魔力が銃の先端でチャージされ、狙いをつけてトリガーを引く。
そして弾丸が打ち出される。
筈だったが………

ガキン!

「えぇ!?」
軽い金属音と共に魔力弾は消えた。
いわゆる「弾詰まり」を起こしたのだ。。
「わぁ~!ティア援護~!!」
スバルの悲痛な叫び声が思念でなく聞こえてきた。
恐らく近くまで来たのだろう。
「この肝心なときに!!」
イライラしながらも急いでリロードする。
修理を考えていた途端にこれだ。
リロードを終え構えて狙い、撃つ。
今度はうまく撃てたが、またいつなることやら………


「来た!」
甲高い発砲音と共にオレンジ色の弾が飛んできた。
スバルは助かったかのように声をあげた。
さらに援護弾とともに2発の誘導弾。
アムロを狙って追尾を始める。
「やるな………」
1発目を軽く受け流すと、2発目が真上に迫っていた。
だがこれを近くの誘導弾で撃ち落とす。
無駄もなく正確に。
だが、
「キュクルー!」
背後からフリードのブラストフレア。
「チィ………」
素早く左手を出しシールドをはる。
フリードの存在を忘れていた彼は不意の攻撃に防御するしかなかった。
左手でシールドをはりながらなかなか消えない炎を防ぐ。
「エリオ!今!」
だがその隙を狙われた。
気がつけば、背後にキャロの魔法で加速のついたエリオが飛んで来ていた。
「いっけぇぇぇ!!!!」


とてつもない爆音と共に周囲は煙に包まれた。
「うわあぁぁっ!」
その爆発に弾かれるようにエリオは吹き飛ばされた。
「エリオ!」
「外した!?」
スバルはエリオを心配し、ティアナは驚愕とともに驚きを隠せないでいた。
確かに直撃だったはず。
左手でフリードの攻撃を防いで、その時に背後からエリオの攻撃。
直撃以外はありえないと思ったのだ。
そのまま爆煙を見る。
すると、
「やられたな………」
アムロは無傷の状態で出てきた。
小さく笑いながら現れた彼を見た4人は絶望に似た心境だった。
なぜならこのボロボロの状態でまだシュートイベーションが続くのだ。
彼女達はデバイスを構える。
だが、
《Mission Complete》
「お見事!ミッションコンプリート。」
レイジングハートとなのはがゆっくり下りてきながらそういった。
「ホントですか!?」
エリオが驚きの声をあげた。
確かに手応えはあったが、吹き飛ばされたので防がれたと思ったのだ。
「本当だ。」
そういってアムロは自分の右脇腹を指差す。
ジャケットがダメージで黒くなっている。
それを見て皆の顔が明るくなった。
「じゃ、今朝はこれまで。いったん集合しよ。」
「「はい!」」
こうして今朝の訓練は無事に終わる、
……はずだった………


皆が整列する。
なのははバリアジャケットから制服になって、アムロはそのままの恰好でフォワード4人の評価をしていた。
なのはは皆が段々とチーム戦に馴れてきたと褒め、アムロがスバルの突撃、ティアナの命令を無視したことを叱る。
まさに飴と鞭の状況だ。
とその時、
「…?……フリードどうしたの?」
キャロがフリードの行動に疑問を持った。
それに対してエリオが、
「何か焦げ臭いような………」
と言うと、ティアナが気付いた。
「あ、スバル、あんたのローラー………」
「え?」
足元を見ると、一筋の黒い煙を上げスパークを起こしているシューズの姿。
「あぁっ!うわヤバッ!!」
そういって素早く外す。
「さっきの戦いで無理な回避をしたからだろうな。」
冷静に分析するアムロ。
回避の時に負荷をかけすぎたのだろう。
「あっちゃ~……」といいながらローラーを両手で抱き抱える。
「後でメンテスタッフに見てもらおう?」
「はい……」
なのははそうスバルに言うとティアナを見て、
「ティアナのアンカーガンも、さっき見てたかぎりでは故障起こしてたけど………」
「あーはい……騙し騙し使ってますし………」
と話した。
手作りのデバイスでは壊れるのも早く、故障も多い。
当然2人も例外ではない。
「そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えるべきじゃないか?」
アムロはなのはにそう切り出した。
「そうかなぁ………」
そういってなのはは腕を組みながら考える。
するとティアナは「新……デバイス………?」と聞き返した。


早朝訓練後、休みとなったので全員で六課に戻っていた。
「一端寮に帰って、シャワー浴びてからロビーに集合ね?」
「「はい!」」
そんな会話を見て思う。
フォワード4人は体中にすすやら泥やらの汚れ。
それに対してなのはは何ともなく、俺にいたってもジャケットの右脇腹が黒くなってる程度。
ボロボロの4人と無傷の彼女。
毎回思うが、なのはは何故ここまで育て上げようとするのか、ボロボロになるまで訓練を続けるのか、未だにわからない。
彼女を見ると満足そうな笑みをしている。
まさかとは思うが、Sなのか?
などと無駄なことを考えていると、
「あの車って………」
ティアナが前から来た黒塗りの車を見つけた。
その言葉に合わせて皆がそちらを見る。
俺には見慣れた黒い車。
近くに止まった車には、さらに見慣れた2人の女性の影。
片方はとても大人しいこの車の持ち主と思われる気配。
さらにもう片方はクェスに引けをとらない無邪気さを感じる。
こんな気配を持っているのは、
「フェイトさん!八神部隊長!」
この2人ぐらいだ。
車はあっという間にオープンカーの用になって、2人の姿をさらした。
フォワード4人はその車を見て驚いたり歓声をあげたりしているが、俺は当たったことに喜ぶべきかはやてに合ったことを悔やむべきか………
「何や嬉しそうや無いなー?」
ばれた!
ニュータイプか……何て下らないことを考えてないで………
「所で、君達はどこかに出るのか?」
そう切り換えた。
はやては話をそらしたとでもいいたげな目で睨んできた。
だがその問いにはフェイトが、
「うん、ちょっと6番ポートまで。」
と答えた。
6番ポートということは………
「教会本部でカリムと会談や。」
はやての言葉でやっと納得がいった。
あのカリムか、と。
「そうか、ならよろしく言っておいてくれ。」
そういって彼女達を送ると「了解。ほんならなー」と言いながら出発した。
こうしてフォワード4人は敬礼して、俺となのはは普通に見送った。


ここは六課の宿舎。
壁や床は鈍く反射しており、まるで金属と思わせるようだ。
反射する光の先、その先の階段に目をやるとエリオとフリードがいた。
他の3人は現在シャワー室を使用中のため待っているのだろう。
退屈そうにそこに座って腕を組んでいる。
まあ、一緒に入っていたら入っていたで大変な事に成り兼ねないだろうが………
「アムロさん!」
そう考えていたアムロに気付いたらしく、手を振っている。
よほど退屈だったんだろう。
「やあ、エリオ。」
そういって彼はエリオの横に座った。
フリードはエリオの膝の上に乗るとこちらを見て「キュクル~」と鳴いた。
六課が出来て早2週間。
そのたったの2週間で、エリオも中々成長してきている。
そこに、
「アムロさん、さっき言ってた『カリム』っていう人……知り合いですか?」
と聞いてきた。
「ああ、かなり前にはやてとあったんだ。」
そういいつつさらにつなげる。
「カリムは、聖王教会騎士団の魔導騎士で本局の理事官をやってる。」
「理事官!!」
そういってエリオは目を丸くした。
「まあ理事官とはいえ、彼女のせいで様々な部隊に行ったり着たりなんだが………」
「へぇ~………」
と、軽く説明を終えたと同時に、足音が聞こえてきた。
着替えを終えたティアナが出てきたのだ。
「ティアナさん2人は………」
エリオは残りの2人がいないことに気付き聞くと、
「もう少しかかるみたいだから待ってるようにね。」
そういってアムロ達の近くにきた。
「アムロさんは入らないんですか?」
ティアナは突然そう聞いてきた。
だがそれに対して、
「そこまで汚れてないからまた後で入るよ。」
そういってその場を離れた。
「……………」
同じだ………
離れながらもアムロは考えてしまった。
かつての戦友の妹、なぜか面影を感じてしまうのだった………


はやては今、聖王教会の大聖堂に来てカリムとあっていた。
外は綺麗な青空。
窓辺でお茶を楽しみながら会話をしている。
「…今日あって話すんはお願い方面か?」
はやてがそういうとカリムの表情が硬くなる。
真剣な話のようだ。
彼女は手元のモニターをいじり、カーテンを閉じる。
先ほどの青空は完全に見えなくなり、真っ暗になった。
途端にはやての表情も強張る。
カリムが続けてモニターをいじると大きなモニターが現れる。そこに写っていたのは、
「ガジェット………」
そう、彼女達の敵となっている機械の兵士の姿。
しかし、いつも見ている1型とは形状から形から全く違う。
2型と表記されている物は羽をもっており、飛行型と思われる。
3型と表記されている物は球体で、かなりの大きさのようだ。
「今までの1型以外に新しいのが2種類。性能は不明だけど………」
そうしてさらに彼女は新しいモニターを出す。
「…何や……これ………?」
映し出されたのは緑色に塗装されたガジェットらしき物。
だが画像が荒く、上手く写せてないようだ。
これを見せてカリムは、
「……さらに人型のガジェットが確認されたの。」
「人型!?」
そういってその緑色のシルエットを見る。
確かにガジェットに見られる目らしき物が頭に一つ。
そこから身体、身体から四肢らしい影。
「試作段階みたいで、すぐに撤退したんだけど………」
「……………」
そういうと2人は押し黙ってしまった。
「……ただ、本題は………」
そういってさらに本題を話し始めた。

……緑色の影………
もしアムロが見ていたら答えは出ていたのかもしれない………


その頃、六課では………

「うわぁー!」
「すごい………」
フォワード陣の皆が揃って声を上げた。
目の前には4つのデバイス。
そう、完成したのだ。
スバルの目の前には青い宝石のような首飾り。
リボルバーナックルと新しいローラーブーツ、マッハキャリバー。
ティアナの目の前には白いカード。
アンカーガンを新たに組み上げたクロスミラージュ。
エリオとキャロの前には以前と代わり無いストラーダとケリュケイオン。
だがリィンが言うには、基礎フレーム等の強化がされており、性能が飛躍的に上がってるとのことらしい。
そしてそれが皆に渡され、あらかたの説明を終えた後に、
「最後に、アムロさんの新型デバイスでーす!」
シャーリーがそういって彼に手渡す。
「これは!?」
それは、T字をした金属のような物。
知らない者からすれば、変な形のオブジェ程度だろう。
だがアムロにしてみれば忘れられるはずがない。
「サイコフレーム………」
かつてチェーンが持っていた物。
νガンダムのコクピット周りに使われているニュータイプの脳波を受信、強化する物。
実際試作品だったため、チェーンが腰に付けていたのだが………
「なぜこれがここに………?」
その問いにシャーリーは、
「アムロさんがこちらに飛ばされるときにあちこちの次元からも流れて来たんですよ。」
と言った。
「これが………」
そういってそれを持つと同時に、



「このアラートって………」
「一級警戒体制!?」



アラートが鳴り響いた。



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最終更新:2008年08月10日 17:13