長編



SS

僕が出会った夏のお話
+ ...
―これは仕事で僕が名古屋に出張したときの話だ
時期で言えば6月末ごろだろうか
僕はただのしがないサラリーマンであることは追記しておこう
時間はお昼時を少し過ぎた頃
せっかく名古屋に来るならと、リサーチしていた店に向かった
『味仙』、名古屋発祥台湾ラーメンの代表格
男性「ここ来てみたかったんだよなぁ…」
期待に胸膨らませ、店内に入った
店員「いらっしゃいませーっ」
中はラーメン屋というより学食や大衆食堂のような内装
店内にはすでに複数人の客がいて、意外と女性客もいた
そして店内には芸能人のものであろうサインがいくつも飾られている
案内された席に座り、メニューを広げる
と言ってもここに来たら食べるものは1つ!台湾ラーメンだ
辛みが強いものの、クセになる人続出という
男性「すみませーん」
店員「はい、お伺いいたします」
男性「台湾ラーメン1つ、でお願いします」
店員「かしこまりました」
楽しみで仕方がない、これのために名古屋に来た…というのはさすがに言いすぎだが
それでも間違いなく出張のモチベーションにはなった
少しして店の扉が開いた、するとそこには髪を肩くらいまで伸ばした茶髪の女性がいた
パンツスタイルだがその脚は鍛え上げられているようにも見える
何故だろう、一目見て不思議と彼女に惹かれつつある自分がいる
どこか力強さをも感じるその雰囲気、何だろう…ただのOLとかではないような…
その女性が案内された席はちょうど僕の隣だ
女性は気にしていないだろうが、どうしたものか少々意識をしてしまう
店員「お待たせいたしました、台湾ラーメンです」
そうこうしているうちに注文していた台湾ラーメンが届いた
一見醤油のように透き通りながらも、みじん切りされた赤唐辛子の乗った赤みがかったスープ
そこに浮かぶミンチにもやし、彩りを添えるようなニラ
そして刻み青ネギと、漂う香りがいかにも食欲をそそる
箸を手に取り、「いただきます」と一言
隣にいた女性は「イタリアンと生中お願いしまーす」と注文した
ん?イタリアン?そんなメニューあったか…?
メニューを見直すも、『アメリカン(辛さ控えめ)』しか載っていない
間違えたのだろうか
そう思いながらスープをレンゲで掬って一口飲む
か、辛いぞ!?辛いとは覚悟していたがここまでとは…
後引く辛さに汗がにじみ出てくる…
辛いだけと思っていたスープ、後からあっさりとした鶏がらの旨味が
優しく口の中を駆け巡ってくる
これは…クセになる!勢いそのままに麺をすする
コシのある細めの麺が甘く感じ、スープと抜群の相性を見せる
唐辛子で味付けされたミンチ肉も口の中で旨味と程よい辛みが広がる
これは流行る、その理由がよくわかった
男性「美味い…!」思わず声に出す
この時の僕は気づかなかったが、隣の女性は微笑むような表情を浮かべていた
店員「お待たせいたしました、生中と台湾ラーメンイタリアンです」
隣の女性に運ばれてきた、イタリアンは本当にあったメニューだったのか…?
しかしそのビジュアルは一線を画していた
自分が食べている鶏ガラの透明感は薄れ、より濃い赤色を見せていた
えぇ…こんなの食えるのか…?しかもこの可愛い女性が…
その指で箸を手に取り両手を合わせ、いただきます、と呟いた
掬い上げた麺を息で少し冷ました後、その口に運んでいく
ヌードルハラスメントなど恐れないような、非常に心地の良い音で麺をすすり上げていく
女性「はふ…っ、…んっ…」
夢中で麺をすすり上げる、いや、すすり込むという表現をした方がいいだろう
可憐な容姿と反し、麺を豪快にすするその姿はギャップとしては男からの評価はなかなかに高そうだ
ASMRとはこういうことを言うのか、と体感したような心地よい音
女性「ん…っ、ふ…」
レンゲで掬った赤いスープを飲み、そのままジョッキでビールを流し込む
彼女の頬を汗が伝い、喉を鳴らしていた
食べっぷり・飲みっぷりが素晴らしく良い
ジョッキを机に置いた彼女は満足そうな笑みと共に
女性「っっっっっはぁぁああぁああっ…!」
俗に言う「ぷはー」を最大限に誇張したような言葉だった
イタリアンという隠しメニュー?をすでに半分ほど平らげた彼女
汗ばんだ肌に張り付く髪が煽情的で、つい見惚れてしまう
……ん?この女性、よく見るとどこかで見たことあるような…
知り合いか?いや、こんな美人が居たら忘れるはずがない
だが、何か見覚えがある、一体どこでだ…?
そんな自問自答を巡らせるも、休憩時間は無限ではないことを思い出し
隣の女性を見習うかのように麺をすすってみた
男性「げほっごほっ!」
ダメだむせる!一気に吸い込むもんじゃない!
どうなってんだこの人!?
隣の女性はせき込んだ僕をちらりと見てきた
男性「あの…辛くないんですか…?」
女性「それがいいんですよねー」
そう笑顔で話しながら自身を手で扇いでいた
汗ばんではいるものの、表情は余裕そうだ
その一言の会話を残して、彼女は再び豪快にラーメンをすすってみせた
うん、見ていて非常に気分が良い、ストレスが吹き飛びそうだ
食べている最中にも拘らず、さらにお腹が減ってくる気分だ
舌が辛さに慣れてきたおかげか、鶏ガラの甘みを感じることが出来
また二口三口と食べていく度に違った味に変わるようだ
男性「あー、うまい」
思わず呟きながら食べ進める
隣の女性は、汗を机に垂らしながら、相も変わらず美味しそうに啜っていた
ビールジョッキをぐいっと傾け、中ジョッキを飲み干す
本当に美味しそうに食べる…
ちらりとこちらを見た彼女と目が合ってしまう
僕は慌てて視線を逸らして、また自分のラーメンに口を付ける
…やっぱりどこかで見たことあるような…
その彼女は残った麺を掬い上げ、器を持ち上げてスープを流し込んでいく
女性「はぁ…っ!」
額に滲んだ汗を拭い、満足げな表情を浮かべた
女性「ふぅ…」
パン、と両手を合わせ、ごちそうさまでした、と店主に聞こえるように言った
店主「いつもありがとうございます」
常連さんだったのか…というかこの人辛いのめちゃくちゃ強いのでは…?
すっとカードを取り出して、スタイリッシュに支払いを済ませた女性
女性「ほな、また来ます」
彼女の口から飛び出たのは関西弁
その瞬間脳内で繋がり『どこかで見たことある』感覚に全て合点がいった
男性「京極夏希だ!」思わず叫んでしまう
ヒーローインタビューで聞いたことがあり、それで繋がった
試合中、彼女は後ろ髪を括っていた
髪を結わず、私服で、ただそれだけのはずなのに今まで気づかなかった
店内には「今更?」みたいな空気や、僕のように気づかなかった人もいた
京極「あ、どーも」
どこか申し訳なさそうに会釈をした
男性「すみません…、握手だけ…いいですか?」
こんな空気で言っていいものかわからないがお願いしてみた
京極「はーい、いいですよぉ」
わざわざ荷物を置いて満面の笑みで、両手でしっかりと握手してくれた
柔らかい女性の手であることは確かだが、マメのような感触もあり
野球選手“らしい”手だった
何だこの人、神対応だ
驕りが見られない超庶民派、当たり前のことかもしれないが
こうして目の前で対応してもらえると一瞬でファンになってしまった
京極「じゃ、そろそろ行くんですみません、応援お願いしますね」
はい!と即答してしまった私、とにかく美人だった
そんな印象を残して、京極選手は嵐のように去っていった
…僕もいい加減食べ切ろう
手に残る感触を覚えながら、スープを啜った
男性「辛っ」
これが、僕が『夏』に逢った日のお話だった…

選手名鑑風キャラ紹介
+ ...
テンプレ
①身長・体重
②投打
③生年月日
④血液型
⑤出身中学(少年野球チーム名)
⑥趣味
⑦野球以外の特技
⑧好きなプロ野球選手
⑨好きな球団
⑩尊敬する人物
⑪好きな食べ物
⑫好きな言葉
⑬好きなタレント
⑭将来の夢
⑮家族構成

+ ...
①165cm、59kg
②右投左打
③2001.5.6
④O型
⑤うるま市立あげな中学校(やんばるスラッガーズ)
⑥音楽鑑賞
⑦ダイビング
⑧筒香嘉智、山川穂高
⑨熊本
⑩松井秀喜
⑪フライドチキン
⑫なんくるないさ
⑬比嘉愛未
⑭沖縄代表のスラッガー
⑮両親、妹

+ ...
①170㎝・61㎏
②左投左打
③2003.6.15
④O
⑤千葉・船橋市立宮本中学校(千葉西リトルシニア)
⑥読書
福王寺雪、カーショウ
⑨千葉ロッテ
⑩稲尾和久
⑪煮魚
⑫エースの品格
⑬トミドコロ
⑭プロ野球選手
⑮両親、弟、妹

+ ...
①身長体重171㎝ 72㎏
②右投左打
③生年月日2003年6月17日
④血液型A型
⑤出身チーム 金沢リトルシニア
⑥趣味 カート
⑦野球以外の特技 同じくカート
⑧好きなプロ野球選手 坂本 二岡 
⑨好きな球団 日本ハム
⑩尊敬する人物 垣内威彦 岩崎弥太郎
⑪好きな食べ物 ポークビッツ
⑫好きな言葉 処事光明
⑬好きなタレント 長嶋一茂
⑭将来の夢 プロ野球選手
⑮家族構成 父母自分

+ ...
①身長・体重 160cm 65kg
②投打 右投右打
③生年月日 2003年 11月3日
④血液型 A
⑤出身中学(少年野球チーム名) 氷見北部中
⑥趣味 釣り
⑦野球以外の特技 スキー
⑧好きなプロ野球選手 岡本和真、広瀬絵美
⑨好きな球団 新潟、巨人
⑩尊敬する人物 祖父
⑪好きな食べ物 刺身の昆布締め
⑫好きな言葉 直球勝負
⑬好きなタレント なし
⑭将来の夢 プロ野球選手
⑮家族構成 祖父母、両親、姉

+ ...
①身長・体重 172cm 50kg
②投打 左投左打
③生年月日 2004年3月28日
④血液型 AB
⑤出身中学(少年野球チーム名)
⑥趣味 読書
⑦野球以外の特技 速読
⑧好きなプロ野球選手 伊織
⑨好きな球団 中日
⑩尊敬する人物 両親
⑪好きな食べ物 和菓子
⑫好きな言葉 凡事徹底
⑬好きなタレント なし
⑭将来の夢 人に頼られる人になること
⑮家族構成 両親

+ ...
①168㎝・66kg
②右投右打
③2003.6.2
④A
⑤千葉・習志野市立第五中学校(千葉西リトルシニア)
⑥素振り
⑦剣道
⑧吉田正尚、森友哉
⑨西武
⑩小笠原道大
⑪トンカツ
⑫平常心をもって一切のことをなす
⑬里見浩太朗
⑭プロ野球選手
⑮両親、兄


とある割烹の日々(宮部智栄+α)
+ ...
第1話 友との他愛のない語らい(島本和香奈)
+ ...
―2019年、暑さ盛りの8月
宮部「今年のキャバリアーズは、この時期でも活気がありますわね」
島本「そうねぇ。Aクラスも狙える位置だし、ここが踏ん張りどころね」
宮部「和香奈ちゃんも、今年は私が現役だった頃のように元気な投球をしていて嬉しくなりますわ」
島本「・・・ところで、今も胸は縛ってるのね?」※サラシで
宮部「当然ですわ。この方が和服は似合いますもの」
島本「智栄は相変わらずキツいことを平気でやるのね・・・」
宮部「ふふふ、和香奈ちゃんには言われたくないですわ~」

第2話 しつこくも親しき師(菅谷正恵)
+ ...
菅谷「智栄ぼーコーチやらんかね?あたしの下に5年もいれば、どこでも欲しがるくらいのコーチになると思うけど」
宮部「今はこの店での日々が何より大事ですので、お断りしますわ」
菅谷「師にその態度!そこなんだよな~。物覚えもいいし何より度胸がある。モノ言えなきゃ指導者は務まらんからなぁ。実に惜しいわ」
宮部「感謝も尊敬もしてますけれど、こればかりは譲れませんの」
菅谷「まあしょうがねえな、気が向いたらいつでも言っとくれよ。ところでもう一杯な」
宮部「はいは~い」

第3話 同窓会(菅谷正恵・岡本知美)
+ ...
菅谷「京都の牧野、ありゃスケールがデカいなぁ。ともみーが見つけたんだって?」
岡本「いや〜そうなんですよ。地元の方から小耳に挟んで行ってみたら、すごく粗いけれども、まるでスピード感が違う子が一人いて、オッこれは、となりましてね。
話してみても良さそうな子ですし、次にドラフトかかる時は競合覚悟になりますよ、と熱弁振るいましてね、なんとか取ってもらったんです」
菅谷「ああいう素材を見つけて、ヨシ取ろうとできるのは大したもんだ。今後京都は怖いな」
岡本「来年からスカウトです、と挨拶した時に『河原で石ころの中からキラリと光る粒を見つけるつもりで見ていけ』というアドバイスをいただきましたよね」
菅谷「そうかぁ、そういやそんなこともあったな」
岡本「あれがスカウトとしての原点ですね。牧野はまさにそういう見方だから見つけることができたんだと思います」

菅谷「まあ、ああいうのを育てるのは楽しいけど大変だったろうな」
宮部「私が現役最後の年にはるかちゃんが入ってきて、投げてあげたこともありますけれど、もうフォームから何から作りかけという感じでしたわね。コーチさんもしきりに声を上げていましたわ」
岡本「大きかったのは、牧野の2年目に秋宮さんがコーチで来たことでしょうね。いつ見てもすごく熱心にやっている方なので。相当しごかれたと思いますが、牧野もまた変わらず楽しそうにやってましたので、こりゃ大丈夫だなと」
菅谷「そういう奴が一番強くなるんだよな、結局は」

岡本「四国では宮西が育ち盛りですねぇ。ありゃあいい、品がありますよ」
菅谷「だろ?こっちはとりあえず宮西軸にチーム作りだな」
岡本「実は京都もドラフトで目をつけていたんですよ、宮西」
菅谷「ほう」
岡本「今は横浜に行っちゃった本島さんが見てたみたいで、私も会議ついでにチラッと見に行きましたね。線は細いけど守備のカンは良いし、ユニフォーム姿がビシッと決まってた。当時から絵になる感じはありましたね」
菅谷「まあ、そういうインスピレーションは大事だよな」
岡本「普段の意識がどうかなって感じだったみたいで、6位くらいで残ってたら取るか、となったんですが、直前で四国にかっさらわれたんですよねぇ。今思えば非常に残念!」
菅谷「最近はその懸念されたあたりがしっかりしてきて、選手としても良くなってきたな。まあ話聞いてさ、ともみーが立派にスカウトやっていけそうで安心したわ」

宮部「ところで、知美さんの呼び方が変わってるのが気になりましたわ」
岡本「確かにそっすね。誰に向かって話してるかはわかるので気にしませんでしたけど」
菅谷「ああ、『みーちゃん』は新しく現れたからな。40超えた相手にちゃん付けもどうか、だし」
宮部「あら、それは気になりますわ」
菅谷「これもまた面白い奴だぞ。この呼び方を申し出てきたからな」
岡本「申し出て・・・本当ですかねぇ??」
菅谷「ま、それはそれだ。今はまだヒヨッコだが、そのうち知られていくだろう。素質はある」
岡本「そいつは楽しみですね」


湯浅和美&小島結乃 雑談風SS
+ ...
第1話「出囃子」
+ ...
―数年前、交流戦の時期のマリンスタジアム
「2番、セカンド、福王寺」クタバッテバッカイーンナ ブットンデコージャナーイ
和美「雪さん頑張れー!」
結乃「あはは、面白い登場曲~!あっそうだ、和美」
和美「ん・・・なに?」
結乃「もし和美がプロに行ったとして、どんな曲を入場曲に使いたい?」
和美「え?う~ん、そうだなぁ、コブクロの『今、咲き誇る花たちよ』とか?」
結乃「ほうほう」
和美「オリンピックのテーマソングにもなってたし、登板前に気持ちを切り替えるために聴くこともあるんだよね」

和美「結乃はどんな感じ?」
結乃「あたしはねぇ、『だれかが風の中で』かな!」
和美「・・・?」スマホポチポチ
結乃「『あゝ人生に涙あり』もいい曲だけど、ちょっと登場曲としてはスローテンポすぎるよね。あ、『銭形平次』もいいかも!」
和美(・・・結乃、古すぎないかな・・・)

(気が向いたら)つづく

第1.5話「結乃、ケータイを買う」
+ ...
―2019年、7月も終わろうかというある日の夜
キブンシダイデスボ-クハ ピッ
和美「はい、湯浅です」
結乃「やっほー!」
和美「結乃!何かあった?」
結乃「甲子園に行く前にね、また携帯を買ってきたんだ!その報告にね」
和美「よく番号覚えてたね・・・LINEのコードとか送ろうか?」
結乃「いや、電話しかできない奴にしたからいいよ!いざとなったらパソコンがあるし、とりあえず和美と話ができればいいわけだから」
和美「そう・・・」
結乃「甲子園に行ったら、また友達作って番号交換してくるんだ〜!和美のも伝えとこうか?」
和美「いや・・・それは、いずれ自分でやりに行くからいいわ」
結乃「おっ、そうこなくちゃね!それじゃ、おやすみ〜!」
和美「うん、おやすみ」 ピッ
和美「・・・次は、負けないわよ」

第2話「パフォーマンス」
+ ...
結乃「和美がピンチで三振取った時の左手をキュッと引くガッツポーズ、かっこいいね~!」
和美「あれは・・・やっぱり力が入った時だと自然に出ちゃうんだよね」
結乃「ああいうの見たら、みんないい感じでノッて行けると思うよ!」
和美「チームにいい流れを作れるのなら嬉しいな・・・本当はピンチなく抑えていくのが一番だと思うけど」
結乃「ま、あたしは和美が投げてるのを見るだけでノリノリだから、援護は任せといてよ!」
和美「うん・・・ありがとう」

和美「ところで、結乃って打った時はあんまり派手な動きはしないよね。バットの扱いは丁寧だし、ガッツポーズもしないし」
結乃「そりゃ、侍はそんなことしないよ!バットも本当は持って一周したいくらいだもん!」
和美「そうだね・・・持っていくのは見たことないけど、いいのかな」
結乃「暇なときに調べてみよっか!それより練習したいけど」
和美「でも、ベンチとかではすごく楽しそうに声出してるよね・・・いいと思うけど、それは侍らしいのかな」
結乃「ま、そういう人もいたんじゃないかな?そこはそれがあたしの平常心だから、譲れないね!」
和美「うん、私もそこは変えてほしくないな」
結乃「でしょ~?和美にそう言われると嬉しいね!」

第3話「本を読もう」
+ ...
―和美の家で、プロ野球中継を見ながら
結乃「ねぇ」
和美「ん?」
結乃「和美っていつも本読んでるよね。どこで習慣がついたの?」
和美「おじいちゃんが山積みにしてた本を借りて読んでたのが始まり・・・だと思う」
結乃「どんなのが好き?」
和美「小説とかも読むけど・・・やっぱり一番は野球の伝記とかドキュメンタリーかな」
結乃「ふ~ん、参考になる?」
和美「そりゃあもう!技術的にもそうだし、一流の選手がどういう心構えで取り組んでいたかを学べるのが良いんだよね!
私は本で稲尾さんを知って目標にしてるんだ!結乃もなんか読んでみる!?」
結乃「お、おう・・・和美がそこまで言うんだから、面白そうだね。何かおすすめできるのはある?」
和美「結乃は捕手だから、やっぱりノムさんの本は読んでおいた方がいいと思うよ。
いっぱいあるから、どれがいいかな・・・」(本棚をガザゴソ)
結乃「あー、あんまり手をかけるのもなんだし、目に付いたのでいいよ」
和美「じゃあ、これをどうぞ」
結乃「さんきゅ。興味が出たらまた何か読ませてもらおうかな」


明神瑠菜とはこんな選手
+ ...
期待の一年生は○○似
期待の一年生、明神瑠菜内野手と天神原鈴姫外野手が招待試合でAチームデビューを果たした。
明神は六番一塁手で3-1(三振、三振、左二)だった。
華奢ながらも凄まじい飛距離を誇る彼女の顔立ちは人気女優の奥山かずさを彷彿させる。
「容姿についてはよくいわれます。私の方が有名になるよう頑張ります」と自信を覗かせた。
この日は得意の高速バット置きは見られなかったが近いうちに高速バット置きを魅せてくれるだろう。
相方の天神原は二番左翼手で4-1だった。こちらは強肩を見せた。
低く伸びる送球は走者にとって脅威そのもの。進塁阻止、捕殺を幾度か記録した。
「レフトはやりにくかったです。が、今はそんなことは言ってられません」と定位置確保に向け鼻息は荒い。
春の大会が残念な結果だっただけに、二人の活躍は大きな刺激となりうるか楽しみである。

連載記事

早くもスタメン定着?明神瑠菜とはこんな選手(上)
関戸康介、花田旭など中学球界屈指の選手を集めた大阪桐蔭で彼らに先んじてスタメンを掴んだ選手がいる。
明神瑠菜、大阪府枚方市出身の三塁手。小学生の時はジュニアトーナメントの京都Jr.の三番。中学時代は名門枚方ボーイズの四番を担ったエリートである。
華奢ながらも、175cmの背丈を有し、快音を連発する。

ー悔しかった四年前のジュニアトーナメント
実はこの時の京都チームは優勝候補だった。自身は三番に座る中、エースは田村俊介(愛工大名電)、四番は森川倫太郎(健大高崎)、五番が松林克真(履正社)と破壊力は全チーム一だった。
予選リーグから大当たりで全勝でトーナメントに乗り込んだ。
しかし、準決勝は思わぬ打撃戦。三連発があったものの、直ぐに追い付かれる苦しい展開だった。
最終回の表、内野ゴロの間に一点取られ、自身に打席は回らず敗退となった。
「絶対ってないんですね。だから強くなりたいと思いました」

早くもスタメン定着?明神瑠菜とはこんな選手(中)

今回は小学生の時から活躍している明神瑠菜内野手の悩んだことにスポットを当てる

ーアンリトゥンルール
小学生の時にもU-12に選ばれている。
「お前たちが強いのはわかってる。頼むから、待ち球や盗塁、バントは控えてほしい」
アンリトゥンルールのことだ。偶々、近くにいたときに対戦相手の監督がいったことである。
「身ぶり手振りでなんのことかわかりました。でも、理由がそのときわかりませんでした」
気になってこの事を知ってる人は居ないかと思い、聞いて回ることにした。
思い当たったのは日本人の国際審判の小山克仁氏だ。国際試合で球審も務めたことある。何とかしてコンタクトを取れないかと思い、連絡をとった。
数日後、返信が来た。
「聞いてくれる選手がいて私としては嬉しい。今度、大阪行くときに会いましょう」
後日、枚方市内で合うことになった。
そこで、アンリトゥンルール、マナーの事を教わった。
「如何に日本が世界の常識とかけ離れてるか唖然としました。どうしたらいいか、そこに関して悩むこともありました」

ーもっと打ちたい
「明神さん、もっと思い切り打ちたいよね」
これが印象に残ってるという。
「はっ!それです」
心に響いた一言だった。
「力と力、この対決で勝ちたい。勝負したい気持ちがとても強いです」
そうなると文句言わせない選手になること。力で勝る選手になる。
彼女の活力となってるのはこれだ。
「ファーストストライクをキッチリ打てて長打にする事」が信念です。
誰も文句言わなかった。キッチリ打てて長打にできるのだから。

ー大食いと言われる由縁
中学時代、苦い思い出がある。「貧血が酷くて一度、気絶したことあります」
その時は人生でもかなりの体型だったようで体脂肪率もヒトケタが見えていた。しかし、それは健康を損なってしまうことだった。
「パタッと来なくなって四ヶ月目くらいですね。貧血が酷くて樟葉駅で倒れて気がついたら病院のベッドの上でした」
担当の医師曰く、脂肪が少なすぎて危険な状態とのことだった。この頃、同級生とかに貧血が持病といっていた。しかし、それは笑ってすませれる問題ではなかった。
何より、酷い貧血を起こしてるのだから再発防止をしなければならないのだ。
「それから体脂肪率を正常にするために沢山食べることにしました。そうしないと身体が持たないためです」
彼女の筋肉がつきやすい体質ということも相まって正常値を維持するには食べるしかない。その為、人の倍食べて維持している。
「あの件があったからこそ、身体を大事にしようと心に決めました」

早くもスタメン定着?明神瑠菜とはこんな選手(下)
壮大な夢と現在地

ーテレビ出演
たけしのスポーツ大将で桑田真澄投手、谷繁元信捕手のバッテリー相手に対戦する企画に出演することになった。
このとき、全日本で一緒だった天神原鈴姫外野手(大阪桐蔭)も出ている。
「弾道が低すぎてアウトになってしまいました(笑)」
よくよく見てみると、真芯を食っていた。捉えた感触は間違いない。
ほんの僅かな差で角度が付かず、野手の正面を突いた事は本人が技術不足を認めていた。

ーデビュー戦は…
入学して一ヶ月半近く経ち、Bチームの試合デビューを果たした。対戦相手も噂の一年が出てくるということでざわついていた。
「妙に騒がしいと思ったら自分の容姿の話が聞こえてきました。あぁ、そうだろうなって」
肝心の打席結果は、三振、中飛、遊直
三タコだった。
特に、差し込まれたと語るのは一打席目だった。
「狙いと違ったのでカットしたかったです。速さが違ったのを感じました。中学の時より二段速く感じてます」
カテゴリーが上がり、相手のレベルも必然的に上がってる。それは間違いの無いことだ。
しかし、次の試合ではマルチヒットに本塁打を記録した。
「今の課題はタイミングの取り方ですね。もう少し速い球を打つためにタイミングの取り方が大事と考えて取り組んでます」
三試合目もマルチヒットをマークして岡山の招待試合出場の切符を手にした。夏に向け、今年のチームへの危機感の現れとも言える抜擢であることは間違いない。


ー夢はグラドル?
高校は数ある誘いのなかから、大阪桐蔭高校を選んだ。プロ入りするには全国から猛者が集うここ以外考え付かなかったという。
「顔馴染みの同級生の多さですね。負けたくないというか」
そんな彼女にはある夢がある。
「グラビアアイドルに挑戦したいです」
そういう背景には彼女が女優の奥山かずさ(25)に似ている事も少なからず関係してるようだ。
「すごく似てるんです。何度も間違えられたことあります」
決定的な違いは背丈(奥山かずさが164cm、明神瑠菜が175cm)であるが、背丈を知らないと間違えるのはやむ無し。
相方の天神原曰く、「瑠菜さんの身体つきは美ボディーでは収まらない美しさです」
残念ながら今回の取材で彼女の美ボディーは見ることはできなかった。同級生の天神原外野手が言うのだから気になって仕方がない。ともあれ、グラビアデビューが待ち遠しい。

ーライバルはチームの四番?
コーチ「明神は西野から三塁を奪い取る気満々ですね。西野にはない所を必死にアピールしてます」
監督「守備の動きもいいし、何より(明神の)走塁意識の高さに驚いた。西野の尻に火が着いてるのは間違いない」
三塁には主砲の西野力矢(二年)が座る。彼にとって脅威となってるのは間違いなさそうだ。
監督「同じ土俵で戦うというより、お互い自分の長所で勝負しに来てる。それでも、まだまだ西野の方に分がある」
西野に勝負を挑む姿勢は首脳陣の心にも響いてるに違いない。

ー最後に
「目標はプロ野球を経て大リーグに挑戦してタイトル、ワールドチャンピオンになることです」

インタビューを通して、思わぬ夢を語ってくれたことに私は驚いた。成し得るためにも、まずは定位置を確保したいところだ。

おわり


若獅子が踏みしめた一歩(加藤友里)
+ ...
※本作品はフィクションです、実在の人物・団体とは一切関係がないつもりです

―それは突然のことだった
ある宣告を受けて、私は今…
1軍のベンチにいる

高卒ルーキーとしてドラフト3位で、地元埼玉西武ライオンズに入団
1年目は高校とプロのレベルの違いに苦しみながらも
自分で言うのはアレだけど、今まで培ってきたものを活かしたり
割と自信のある動体視力で何とか戦い抜いた
そんな私が1軍に呼ばれたのは、2年目シーズンの終盤
ライオンズはリーグ屈指の強力打線を武器に10年ぶりの優勝を果たした
所謂“消化試合”だった
だからこそなのだろうか、2軍には先輩も含め多くの選手がいる
その中で選ばれた…
球界を代表する巧打者、秋山翔吾選手
満塁本塁打数記録保持者、中村剛也選手
日本球界最速左腕、菊池雄星選手
そんな精鋭揃いとも言うべき、選ばれた“28人”の中に、私がいる…?
にわかには信じられず、私は半分放心状態でベンチに居る
星川琴「大丈夫?緊張してる?」
球場のムードにやられそうになっている私に声をかけてくれたのは
星川琴音さん、プロ10年目の投手
私と同じく高卒の入団で当時の順位は私よりも下でありながら
豪快とも言えるマウンドさばきで、ズバズバと剛速球を投げ込み
今では勝ちパターンの一角を担うほどになっていた
友里「さすがに、これだけの空気感…緊張するなって方が難しくて…」
苦笑いを浮かべる私の肩をポンと叩きながら
星川琴「初めての1軍って皆そんなものよ、ダメでもともと、やってみりゃいいのよ」
友里「ダメ元で…か…」
星川琴「いつでも出番来いってくらいのほうが気持ち楽よ?」
その言葉に、幾分軽くなった私は
ベンチから声を張り上げ、チームを鼓舞する

今日も打線が絶好調、2桁安打2桁得点、13-1で大勢は決したといってもいい
星川さんは小さく「今日は出番なさそうね」と微笑を浮かべながら試合の様子を見ていた
数年前までテレビで見ているような選手が
目の前はもちろん、真横に…
ファンの延長線上のように隠しきれない興奮と、そしてスタジアムの熱気
来るかもわからない出番を待つ不安…、いくつもの感情がこみ上げてくる

そして、その“時”は突然来た
監督の目は確かに私を見ながら、「次、行くぞ」と言った
友里「えっ…、……はいっ!」
かけられた言葉の意味の理解に一瞬遅れつつも、持ち前の元気で返事した
星川さんはそんな私を見て、頑張ってきなさいとでも言うように拳を突き出した
ヘルメットを被り、レガース・エルボーガードを装着し
ネクストバッターズサークルで待つ
ふぅとひとつ息を吐き、バッターボックスを見つめる
8番キャッチャーの岡田選手は空振り三振に倒れる
ベンチから出た辻監督が私のほうに手を伸ばした
代打の合図だ…
『バッターは9番、木村文紀に代わりまして…加藤友里ぃ!背番号97ぁ!』
スタジアムDJ、リスケさんの声でコールされた私の名前
湧き上がる歓声を耳に、一歩一歩バッターボックスに歩みを進めた
私が登場曲に決めた『Heroine』が球場内に流れる
今は…私がヒロインなんだ
そういう想いを込めて、バッターボックスに着いた私は足元を整える
高校時代からのクセのように、球審・捕手、そして投手と順に会釈をしていく
相手投手は強豪校大阪桐蔭時代に優勝を経験した澤田圭佑投手
バットを握りしめた腕を伸ばしながら上体を軽く反らし、投手のほうを向き
私はクッと集中モードに入った
まだ高卒2年目で、何より1軍初出場
当然この時の私に固有の応援歌なんてない
(※固有応援歌がつくのはまた後の話)
ベンチやコーチにサインを確認する
それにしても、スタンドから「がんばれがんばれ加藤!」の力強い声が
これが1軍の声援なんだ…
と、何物にも代えがたい興奮や感動をその全身に受け止めている最中
球審のコールで、1球目がストライクだったことに気づいた
今は、とにかく打たなきゃ…
返球の間に軽く打席を外し、ふっと息を吐いた
二球目に投げられたボールは食い込むように曲がってきた
何とかバットに当ててボールは三塁線の外に転がったファール、球種は恐らくスライダー
早くも追い込まれてしまった…
3球で仕留めてくるか、1球外すか…
私が相手投手の立場なら三球勝負に行く
そんな思考を巡らせた3球目は、少し抜けてボール球だった
一瞬バットが動いたものの、スイング判定には至らない
ちらりとベンチに目をやると、星川さんが温かい視線を送っている(ように感じる)
負けるものか、強い意思を持ちながら4球目を待つ
バッテリーの間ではサインのやり取りが行われている
パワーピッチングから放たれたボール、これなら…打てる!
しかしバットは芯を外し、打球は強くグラウンドを叩く
流れのままにバットを放し、私は全力疾走した
弾んだボールは遊撃手安達了一選手が捕球
守備の名手で、送球の正確性はもちろん捕球からの一連の流れが非常に軽やかだ
だからこそ運の悪いところに弾んでしまった
間に合え!必死だった私は頭からベースに飛び込んだ
ヘルメットが飛ぶのも、砂埃が舞うのも躊躇しない
空を飛ぶかのような心地になるほど、私が飛び込む時間が妙に長く感じた…

……
私の手はベースに届き、そしてボールはファーストミットに収まっていた
だが…一塁塁審の腕は横に広がることはなかった
アウトが宣告された、初打席初安打は叶わなかったものの私の心は晴れやかだった
まるで高校時代を思い出すように、ユニフォームは土にまみれていた
ヘルメットをかぶり直し、私はベンチに引き下がった
「ナイスガッツ」や「怪我気をつけろよ」などと声をかけられ
星川選手は「カットボールかな、惜しかったね」と優しく微笑みかけてくれた
初打席はお預けとなったものの、この打席は
プロ野球界に入った私にとって、小さく…しかし大きな一歩となった


にしむらん
+ ...
「今日も今日とて疲れたにゃ~…あれ?蘭ちゃん?」今日は試合が早く上がったから、蘭ちゃんを誘って温泉にでも行こうと部屋に行ってみると、蘭ちゃんは…
「はぁ…はぁ…」え!?…あの蘭ちゃんが一人で…オナニー?
大体いつも誰か連れ込むか紫築ちゃんに引っ張られてるのに…
「……誰とやってもダメなのよ、あんたが死んでから、私はずっと女の子の中にあんたを求めてる、でも、あんたの代わりは、あんたにしか出来ないのよ…」
……そう言うことか…
そう言えば私もかれこれ半世紀以上ご無沙汰してるなあ…ダメだ、相手は女の子の蘭ちゃん、
私が襲って…私が?
そうか、その手があった。
「協力してもらうからね、近くで見てる君?…いや、私見えてるから」

「……?先輩?」「やあやあ蘭ちゃん…一人でいったい何してたのかな?」「見てたんですか!?」
はい、そりゃもうばっちりとみてました。
「寂しいなら、慰めてあげようか?」
そう言い服にゆっくりと手をまわす、
蘭ちゃんは何が何やらといった様子で私が服を脱いでいくのをただじっと見ていた。
「先輩もそういう趣味なんですか?」「いやあ、寂しいだけよ、幽霊にだって性欲はあるもの」
蘭ちゃんには幽霊であることはしっかり話してある、変態な子は馬鹿にしないからね。
私の肌を見るなり蘭ちゃんの顔が少し青くなる、
私は戦争で焼け死んだ、そのときの火傷は今も消えることなくとぐろを巻いたような模様で体を包み込んでいる。
「……こんな目に遭って死んだんですか」「ま、そだね……蘭ちゃんは脱がないの?」「もう少し、先輩の体をみてます」
ほえ?ハリでもそんなこと言わなかったのに、この子は本当に不思議で、かわいい、だから私も久々のことに及んだんだけど。
「……白いんですね、それでいてくびれてる、胸が強調される凶悪スタイルってところですね、腰も安産体系…」「火傷がなかったら完璧?」
「火傷があっても満点です」
嬉しいことを言ってくれる、百年近く生きてきて、そんなことを言われたのは…初めてだよ。
「はむ…っ、まだ脱いでないですよ?」「私はいっこうに構わない」「先輩も私の裸をみないとダメです」……あいつが言った通り、みられたい一面もある、と言うかMが基本なのかもしれないね蘭ちゃん。
そして服を脱ぐそのしぐさの一つ一つも、蘭と言う名前に沿うような可憐な雰囲気を醸し出している。
「……へえ?こんな体だったの」
蘭ちゃんの裸は細身ながらに胸がしっかりとわかるモデルスタイル、筋肉がしっかりとわかる太もも、そして薄ピンクの…
「ペロッ…とね」「ゃぁん……エッチ」
蘭ちゃんの胸は筋肉質で
「んんっ…」甘噛するとその筋肉にしっかりと当たる、
悪いけど蘭ちゃんが攻めることは今日はないよ、話は聞いてるから。
「やぁっ…さっきアレしたばっかで舐めないでえ…」「ねっとりひてるにぇ…」舐めてあげると今度は右に左に体を動かし、顔は手で隠して恥ずかしそうにし始めた。
「蘭ちゃん、攻められる方が好きでしょ?」「そんなこと…!やぁっ」
「あれ?指を入れただけだよ?まだ……今日は素直になりなさい」
「……(コクリ)」
顔を真っ赤にして、うなずいたので
指をもう一本いれ、乳首を噛むと、先ほどまでのが嘘のかのように蘭ちゃんは私にしがみついてきて、喘いでいる。
「あぁっ…うぁ…ぁあ…あん!」
そしてあっという間に絶頂

まだ、終わってない。
「はあ……はあ……先輩?…!?」
絶頂してすぐの蘭ちゃんの顔に驚愕の色が見える、なぜなら。
「私は幽霊、偶像を作り出すことくらい容易いことなのさ」私の股の下に本来生えてはいない「アレ」がついているのだ。
「これを入れるんですか!?」
「うん、時間制限あるからさっさとイカせちゃうね」
ぬるっと私のモノが蘭ちゃんに入ると
「うあああ!!」悲鳴のような喘ぎ声を上げて、私にしっかと強く抱きつくと、そのまま動かなくなる。
「もっと、強くお願いします…」
ここで私のいたずら心が動き出す。
「聞こえないねえ」
蘭ちゃん、ぼっとさらに赤くなり
「……先輩ので私の中をかき乱してくだしゃい!」今度ははっきりとワントーン上がった声で叫んできた。
「ならお望み通り!」思いっきり、何度も蘭ちゃんのなかにぶちこんであげる、私自身にはなんも感じないんだけどね…
しかし蘭ちゃんの方にはたまらないらしく、すでに我慢汁が溢れだしている、しかしもう時間が近いので一気に決めさせてもらうことにしよう。
「3倍」「ひぇ?んん…やぁああ!!!もうだめ!先輩!私もう…!」

事が終わると蘭ちゃんは自分の喘ぎ声を思い出したりしたのか急にベッドの片隅でしょんぼり。
「……かわいかったよ?」「私のイメージが…」
ここで種明かしをしてやることにする、このまんまじゃ私も誤解されてしまうからね。
「しかし、蘭ちゃんの彼氏は本当に弱点を全部教えてくれたよ」

「……え?」
「蘭ちゃんの彼氏が近くにいたもんだから、ついつい話を聞いちゃった♡」


「……あのやろおおおお!!!!!」
蘭の叫びは寮の中を響き渡ったと言う
それ以前に喘ぎ声もね

ぬまかぜーね
+ ...
沼風×西村

これは、沼風の感度が絶頂に達していたときの話である。
沼風はもはや歩くにも限界、
そんなとき、フェニックスリーグでたまたま北海道での試合を迎えていた。
事は三回の表の話である、
四球で出塁した沼風、一塁には西村。
「やあ…にしむらちゃん…はぁ…」
「沼風ちゃん、無理しちゃダメだよ?」身長が互いに150位の二人が並んで話しているととてもほほえましいもので、蘭コーチなんかは出血してしまった。
そんなときだった。
「あっ!」偶然さいてょの牽制球が沼風をかすったのだが、
感度数億倍の沼風はそれで絶頂してしまったのだ
「あ、あうあう…」
じんわりと濡れていくズボン、沼風は恥ずかしくなってうるうるいまにも泣き出しそうになる。
「タイム!」すると西村がタイムをとったかと思えばつかつかと急ぎ足でベンチに沼風を連れて下がっていく。
観客はもちろん選手たちもあ然である。
……が、すぐに二人は戻ってきたので、すぐ試合は再開された。
「ズボン変えて、試合終わるまで持つようにしておいたから」「ありがとなー…」

試合後
西村は沼風と一緒に夜の公園を散歩していた、冷たい風が吹いているが幽霊にはお構い無し…
「ヘクシッ!」と言うわけでもなさそうだ。
一方の沼風はそんな西村をとろんとした目で見つめて、何やら体をくねらせている、息の荒さから暑がっているようにも見える。
「な、なあにしむらちゃん…」
「どうしたの…何してるの!?」
その場に人がいたら間違いなく驚く光景、西村がみた光景は、自分の目の前で服を恥じらいながら脱ぐ沼風。
「あついんよ…からだが…こんなときはどうするか、らんちゃんからきいてんねん…なんとかして?」
あの子め…しかし目の前の沼風を早くなんとかしないといけない。
近くの公園のトイレに沼風を放り込んで、西村も服を脱ぐ。
「しょうがない、チェレンコフ光を呼ぶスピードでイカせてアゲヨウ」
あっという間に沼風の股を開かせ、指を巧みに動かし始める。
「ああっ!んんっ!あああおあああ!」沼風はイくんだが、動けないことに気がつく
「金縛りが使えなくて幽霊じゃないよね?」「んぷっ…ん…あ…や…」
西村は舌技も一流で、動けない沼風をいいように扱う。
沼風は動けないのでただ股から液を垂らすのみ。
しかしこの二人、互いに小さいため周りからは姿ひとつ見えない。
「こういうのも好きなんでしょ?」
そのまま舌を舌に滑らせ、小さな乳首に這わせる、ここまで来ると沼風の絶頂は頂点を達してオーバーヒート、頭がぐるぐるし始め。
それを見越したかのように西村、さらに舌の聖域を自由自在に攻める。
「もうらめええええええ!」
刹那、沼風の叫びと共に潮が思いっきり吹き出し、夜の公園を彩った。

蘭「……そして西村は」
沼風「ほー」西村「何を書いてるのかな?」
蘭「あ」

ショートストーリー・稲荷 衣
+ ...
 昔々いなり寿司が好きな神様がおりました。その神様はずっと一人ぼっちでした。その神様がなぜ巨人に入ることになったかの物語です。

  ショートストーリー
       稲荷 衣

とある神社 境内~
稲荷「やっぱり晴れた日に縁側で食べるいなり寿司は最高じゃな!神様になるだけでお供え物でいなり寿司が貰えr(コロコロ、ん?なんじゃこれ?」
青年「そこのお嬢ちゃん、それをこっちに投げてくれないか?」
稲荷「誰じゃお前は、なぜ神聖な神社で玉投げなんてしておるんじゃ?玉投げはよそでせい」
青年「まあまあ細かい事は置いといて暇ならキャッチボールしようよ!君もハマると思うよ!」
稲荷「細かい事とはなんじゃ!ここは我n」
青年「一回でいいから、一回でいいから!」
稲荷「わかった、わかった!一回だけじゃぞ」
青年「よっしゃ!これグローブね」
~キャッチボール終了~
稲荷「久しぶりに体をうごかしたら疲れた」ゼェゼェ
青年「付き合ってくれてありがとうね!また明日!」
稲荷「二度とくるな!」
青年「ははっ!またね~」
稲荷「まったく、1日を無駄な事で潰したわ..」
~次の日~
青年「来ちゃった」
稲荷「帰れ」
青年「なんだよつれないなぁキャッチボールしようよ~」ナデナデ
稲荷「わかったから我の頭を撫でるな!」
~キャッチボール中~
青年「君の名前を聞いてなかったけどなんて言うの?」ビシッ
稲荷「稲荷 衣、稲荷神社のいなりに衣じゃ」パシッ、ビシッ
青年「じゃあ、衣だね。僕はーーーーって言うんだ」パシッ、ビシッ
稲荷「ーーーーか、覚えたぞ」パシッ、ビシッ
青年「ありがとう、それで衣ってさ東京野球倶楽部って知ってる?」パシッ、ビシッ
稲荷「新しく東京にできた野球チームか?」パシッ、ビシッ
青年「そう。僕ってねその野球倶楽部でプレーしてるんだ」パシッ、ビシッ
稲荷「それは凄い事じゃな」パシッ、ビシッ
青年「...そうだね、ありがとう」パシッ
~キャッチボール終了~
青年「今日もありがとうね、衣ちゃん」
稲荷「うむ、...また来てもいいぞ」
青年「?!...わかった!また来るねバイバイ!」
稲荷「そんなに急いでたら転ぶぞー。あっ、転んだ」
~何年か経ったある日~
青年「今日は僕のカーブを伝授したいと思います!」
稲荷「それはそうとしてそなた投げ方を横投げに変えたのじゃな、なぜじゃ?」
青年「...この前の徴兵があったろ?そのせいで肩が痛くなったから負担の少ない横投げに変えたんだ」
稲荷「そうか、それなら横投げに慣れるように練習を付き合ってやろう!」
青年「.....ありがとうね衣ちゃん」
稲荷「お礼はいなり寿司でいいぞ?」
青年「ははは!また買ってくるよ」
~1944年のある日~
青年「...おはよう衣ちゃん」
稲荷「どうしたそなた、そんなやつれた顔して。」
青年「そうだね...多分次の徴兵では帰って来れない気がするんだ」
稲荷「......そうじゃな、それでも帰って来い。これは命令じゃ」
青年「フフッ、なんだよ命令って(涙声)」
稲荷「命令は命令じゃ、絶対に帰って来い」
青年「じゃあ、絶対帰って来るからこのグローブを持っていてくれないか?それで帰って来たらいっしょにキャッチボールしよう」
稲荷「そうじゃな、その時はいなり寿司も持って来ていっしょに食べよう」
青年「約束だぞ?」
稲荷「ああ、約束じゃ」

しかしその青年は戦争が終わってからも帰って来ませんでした。そして戦争が終わってから四年後

正力「なんなんだ急に呼び出して」
スタッフ「いえ、この少女が巨人に入れろとうるさくて...」
正力「お嬢ちゃん年齢は?」
稲荷「我は千sいや、18じゃ」
正力「そうか、この子を巨人に入団させる」
スタッフ「?!なぜこんな小娘を?!」
正力「巨人軍に正面から乗り込んで来て入団させろと言いに来た奴は始めてだ、当然実力はあるのだろ?」
稲荷「ああ、ぜひ期待に応えてやろう」

こうして一人ぼっちの神様は野球という世界に飛び込みました。この後の活躍は皆様の知ってる通りでございます。これにて巨人軍、稲荷衣の物語は閉幕つまございます

郭曉明対焼津ねこ
+ ...
2012年8月某日旭川市内某球場―。

焼津「駒澤大学と試合?」

後輩「相手の郭とか言う先発はすごい投手らしいですよ」
焼津「負けるきはしないんだよ」

この試合の両先発はある意味悪名高い。
郭は兵役から復帰後、顔面スレスレの投球を女子選手にかます。
焼津は虐めを行った人物を粛清し、自分が中心のチームを作り上げた。
どちらも、速球派。どこか似ている両者である。

郭「あのツインドリル、オレの格好の餌食だな」

初回
焼津「(こいつ、私によくにてる、だからはじめに投げるコースはきっと!)」
カッキーン!

郭「……」白崎「どうした?」郭「なんか読まれてた気がするんですよ、あいつに」
白崎「気のせいだよ、気のせい」

いざ打席で焼津と対峙すると、選手たちはこう感じたと言う

「捕手からの返球を受け取って、こちらを見てくる時の眼光といい佇まいと言い、打てる気がしない」

焼津「今日はやけに球が走る…行きすぎなければいいけど」

駒澤大学サイド
郭「(ロリ顔ツインドリルか。イイ餌食なってもらうぞ)」
初球、インコース高めに投じた。

快音残して打球はレフトポールに一直線。

郭「…」
呆然としながら打球を見る。ドライブがかかりながらも、ポールに当たった。
郭「ば、ばかな…」
戸柱「郭!気にするな。後続を抑えろ」
郭「はい」
まさかの事態だったが、後続を三振に切って取り、1点にとどめた。

焼津「もう勝ったんだよ」
言うまでもない。焼津に先制点を許す=負けをほぼ意味している。


郭と焼津の投げ合いはその日偶然球場を訪れた人々を圧巻させ、まるでプロのエースの投げあいのような錯覚を得ていた

焼津が三振を取っても歓声があがり
郭が三振を取っても歓声があがる

郭「このままだとまずいな…」白崎「……」
焼津「北大の野球部の力を、私の力をみたか中央の!」

この日郭を見に来ていたスカウトも思わずどよめいた
「あのストレート…スライダー…こんな選手がいたなんて」

焼津「本当に今日は最高の投球ができてる……」
白崎「……」
焼津「さあ、さっさと料理してしまうんだよ」


迎えた七回裏―駒大は2番からの攻撃である。先頭はセカンドゴロに仕留められた。
白崎を迎えた。
焼津「イケメンの顔をゆがめたいんだよ」
そう言って白崎に投じた。

白崎「!?」
正に絶好球だった。
白崎の得意なコースに直球が来た。
乾いた音と共に、打球が左中間へ飛んだ。


焼津の投じたその1球
それを白崎は見逃さなかった

焼津「!」
「同点…ドンマイですよ」
今のは失投、しかし焼津が抱くのは別の感情

あの男と、まだ投げ合える
焼津「はーっはっは!私が落ち込むとでも!よく聞け!最後にきれいなホームランで私が蹴りをつけるんだよ!」
唖然とするしかない後輩はみなこう思い、畏怖する「やはり、この人はおかしい」

その後も焼津は投げ続けた、郭もそれに答えるかのように投げた

試合は引き分けに終わったが
焼津は満足できたとご満悦でいる
そして後輩の崩れた姿など見向きもせずに
郭のもとへと走る

焼津「……郭はどこなんだよ?」
郭「あ、おれおれ」焼津「……試合より優男なんだよ」郭「お前だって試合の時より可愛いぜ?」
二人「フフフ…あっはっはは!!」

焼津「これ連絡先なんだよ、暇があったら遊びに来るから、拒否権なしなんだよ」郭「え」
焼津「じゃあ、またなんだよー」

郭は場外にあるスタルヒンの銅像を見上げた。
郭「あのツインドリルのフォーム、正にこの通りなんだよな。チビのくせによ」
戸柱「郭、こっちだぞ」
郭「は、はい」
郭はバスに乗り、球場を後にした。
連絡先はカバンに忍ばせ、時を見て連絡しようとばかりに。


これから先の運命は知っての通り
しかし二人の関係はここから始まったと言うことを記す

終わり

焼津「プロになったらヒモにしようと思ってたんだよ…」郭「おい」


北からの助っ人 ライラ
+ ...
スケットノ・ドミニカーン(仮名)「ジャパンの寒さクレイジー!ヤッテランネーヨ!クニニカエラセテモライマス!」

偉い人「という訳で助っ人のドミニカ君(仮名)が突如帰国してしまった。外国人スカウトである君には代わりを務められる選手を探してきて欲しい」
スカウトはん「はい」
偉い人「無理言ってすまないね、今回のことは急すぎてこっちもびっくりしてしまったよ」

スカウトはん(どないしょー…また中米から連れてきてこんなんなったら嫌やし…)
スカウトはん(せや!逆転の発想や!寒いとこから連れてきたろ!確かフィンランドに野球に似たスポーツがあったはずや!)

そ し て 舞 台 は フ ィ ン ラ ン ド へ


スカウトはん「さっむ!新潟で慣れたつもりやったけど甘かったわ…さてさてペサパッロ見に行くで~」

スカウトはん「おーやっとるやっとる!今は女子の試合やな…っとガタイのええのおるやんけ!」
ライラ「ふんっ!」ッカーン
スカウトはん「よー飛ばしよるなぁ…後で声掛けてみるか。通訳はん、よろしくたのむで」

ここから先は自動通訳でお送りします

スカウトはん「ライラさん、やったな。単刀直入に言わせてもらいます…日本で野球をやってみる気はありまへんか?」
ライラ「えっ?野球ですか?それも日本で…?少し考えさせてください」
スカウトはん「こちらとしてもすぐに答えを出せとは言いまへん。一週間くらいはこっちにおりますさかい、どうするか決まったら連絡くださいな」
スカウトはん「あ、そうだ(唐突)、よかったらこれ見てくれまへんか?日本の野球の、ホームランのシーンを集めたビデオや。ペサパッロと違って野球では柵の向こうまで飛ばすとそれで点になるんや、ロマンあるやろ?あんさんはホームランバンバン打てるようになるとワシは思てまっせ。ほな、また」

ライラ「………」ビデオミルー
ライラ(野球では思いっきり飛ばしていいんだ…こっちのほうが合ってる…?……というより、本当の野球やってみたい!)


トゥルルルルル…ガチャ
スカウトはん「…決めましたか?」
ライラ「はい!野球やります!日本行きます!」
スカウトはん「…よう決めてくれた!嬉しいで!ほな偉いさんにはこっちから話しつけとくで、いろいろ準備してきーや」

ライラ「今日から皆さんとトモニレンジャーズで戦うライラデス。ヨロシクオネガイシマス」
一同ワーワーパチパチ
ライラ「ジャパンではこういうトキ、おみやげをわたすと聞きマシター。」つ◆

オエーー!!!! ___
    ___/   ヽ
   /  / /⌒ヽ|
  / (゚)/ / /
  /   ト、/。⌒ヽ。
 彳   \\゚。∴。o
`/    \\。゚。o
/     /⌒\U∴)
     |  ゙U|
     |   ||
         U



林秀玲 京都ウインズに入る
+ ...
林「日本に来たけど大学のセレクションも独立リーグもまったく受からない。野球ができればいいんだけどなぁ」

京都南部の表示が目に入る

林「京都か。守備悪くてもとってくれるところないかな」

林「京都に入ってからでもけっこう来たけど・・・ん?なんか今野球のポスターがあったような」

彼女はバイクを降り、ポスターらしきものが貼ってある壁に近づく

ポスター『京都ウインズ メンバー募集 野球がしたいという方歓迎いたします』

林「クラブチームみたいだけど、ここなら入れてもらえるかも。問い合わせしなきゃ」

林「(プルルルル・・・)私、林といいます。ポスターの募集を見てお電話しました」

ウインズ「選手の応募ですね。京都に今いらっしゃる・・・それならうちは(住所)ですのでぜひ見学にいらしてください」

林「ありがとうございます。後で伺います」

林「日本語難しいなぁ。とにかく行ってみよう」

林「このあたりだと聞いたけれど・・・」

威勢のいい声が近くのグラウンドから聞こえてくる

林「あ、ここかな?ごめんください!」

スタッフ「はーい。林さん・・・先ほどお電話いただいた方ですね。どうぞ」

林「失礼します」

私は部屋に通され、名前・守備位置などを質問された。

中迫「外野手か・・・迅速さんどう思う?」

迅速「いいんじゃないかな。左打ちの野手はうちに二人しかいないし。守備に自信ないって言うけど下畑さんよく離脱するからパワーあるサブいるでしょ」

中迫「そうだなぁ。下畑さん抜けると四番バイエンスだからな」

迅速「林さん、プレーを見せてもらえますか?」

林「はい!」

迅速「じゃあ、まず守備から!走塁と打撃も見せてもらうから気を張りすぎなくていいです」

林「はい!・・・うーん、10球中4球しか捕れなかった」

迅速「走塁!」 林「(これ得意)」ズザザッ

迅速「お、なかなか。打撃!高橋くん、投げてあげて!」 高橋「はい!」

林「」カキーンカキーン

中迫「おお、下畑さんと同じくらい飛んでる」

迅速「盗塁は苦手みたいだけど、走力も問題なし」

中迫「監督、どうですかね」

監督「俺はいいと思う。下畑は怪我多いし、バイエンスはなかなか当てられない。入ってくれれば彼らの刺激になるかもしれん」

中迫「分かりました。僕もそう思います」

迅速「私もそう思います。ベースランニングは私より速いかもしれない」

中迫「林さん、合格です。おめでとうございます」

林「本当ですか?ありがとうございます」

こうして私は京都ウインズに入れてもらうことができた。


智実と理砂(中日時代)
+ ...
中日一筋の永坂智実と三球団に所属した滝口理砂が初めて顔を合わせたのは、滝口が自由契約から中日に入団した2008年
今でこそ女子同士で枠を争うほどの層の厚さを誇るが、当時中日に属し現役で投げていた女性投手といえばこの二人だけだった
北代二軍投手コーチのもと、二人は日々切磋琢磨し成長していくことになる

この頃の中日リリーフ陣は守護神こそ岩瀬仁紀が君臨していたが、中継ぎは高橋聡文、浅尾拓也、小林正人らがフル回転
北代コーチの厳しくも引き締まった指導により、二人の技術は少しずつ磨かれ緊迫した場面を迎えても抑えることができるようになっていった
最初のうちは厳しいことを練習のたびに言われ、二人で慰めあった
永坂が力を伸ばし、滝口の投球内容と差が付き始めてもアドバイスしあうことで信頼を深めていく
相手と対戦したときの感触を記録し研究していた永坂は滝口のアドバイスも素直に聞き入れた
滝口はこのときのことを「嬉しかった」と言い、永坂も「まだまだ未熟さが出ていた時期に同じ年の同僚が気づいてくれたことを聞き流すのは損失」と語っている
かつての同期である一場と渡邊がヤクルトに移籍してきて、楽天初年度に指名を受けた三人の投手はセリーグに1年だけ同時に属す
滝口は懐かしさを感じながら彼らと対戦した

滝口の自由契約が決まったことを聞きつけた永坂は自分の部屋で一緒に風呂に入らないかと彼女を誘った
彼女はそうしようとうなずいた
夜になり、一緒に風呂の中へ。体を洗おうとする滝口を止め、永坂は「抱きしめていいか」と小声で尋ねた
滝口は驚いて赤くなったが「それだけでいいなら」と返事をした
互いに抱き合うと相手への感謝を口々に述べた。熱い水滴が永坂の肩に降りかかった
それが涙だと分かったときには彼女の頬にも涙がつたい、滝口の肩にも水滴を降らせた
ひとしきり二人で泣いたあとは体を洗いながら思い出話に花が咲いた

翌朝、永坂は改めて急に頼んだことを詫びた
滝口は笑って許し「ああでもしないとほとんど何も話せずに別れただろうから」と理解を示した
それから五年経ち、現役を引退した今年滝口は中日時代に住んだこのマンションに戻った
盟友永坂がプレーを続けそこに住み続けていることもその理由の一つだった


救援(結城渚)
+ ...
2016年5月上旬 HARD OFF ECOスタジアム新潟
新潟レンジャース対四国北条マリナーズ第4回戦
前回の対戦において新潟は四国に対し3連敗を喫している
首位争いを繰り広げるソフトバンク、ロッテを追撃するため
苦手意識を作らずここで勢いをつけるためには負けられない試合であった
しかし……

<<一番、山之内大当たり! 初球先頭打者ホームランでマリナーズ1点先制!!>>
<<川之江くんが離脱してどうなるんだろうと心配しましたが、いやこれは案外ハマるかもしれませんね>>
<<篠田の初球ミラージュカーブを完璧に弾き返しました山之内! 打ち出せば止まらない選手でもあります、今日は大暴れに期待しましょう>>
<<アレだけを待っていたというタイミングの取り方でしたね。ここはバッテリーの配球負けといったところでしょうか>>
<<山之内の読み打ちが当たりました。これも調子の良さというところでしょうか、さあ続いて打席に入ります藤本は……>>

初回に1点を先制した四国は先発貴志が三塁を踏ませないピッチングで6回までを無失点に抑える
しかし篠田も負けじと力投。失点を山之内のホームランのみに留める
負けられない新潟は7回、先頭打者関坂の打球は左中間へ
センター乾がワンバウンドで処理するはずが後逸しスリーベースヒットとなる
ノーアウト三塁のピンチ。ここで四国は今季移籍してきた左キラー東田を投入する

<<アレン、松尾を連続三振に切って取りました東田! 次は右の強打者武田ですが……やはり交代のようです>>
<<真柴を出してきましたね。昨日に続いて2連投になりますが、リードは1点ですしここは何が何でも、ということでしょう>>

ツーアウト3塁の場面。バッテリーは敬遠を選択する
しかし、ベテラン真柴の体からは連投の疲れが抜けきっていない。その疲れが手元を狂わせた

<<あーー!! 暴投です! 関坂滑り込んでホームイン!! 追いつきました1-1同点!!>>
<<ボールが指からすっぽ抜けたんでしょうかね? 痛いミスですが切り替えて欲しいですね>>

その後、逆転とはならなかったが貴重な1点を奪った新潟。8回表、この試合に勝つためには絶対に抑え込まなければならない

――新潟レンジャース、選手の交代をお知らせします

私の出番だ

――レンジャースのピッチャー、篠田に代わりまして

――結城 ピッチャー、結城 背番号13

マウンドに上がり、自分のフォームに合わせ土を均す。防具を着け終えた津嘉山が駆け寄って来た。
「頭の鬼田さんは歩かせても良い気でいこう。4番のウッドは今日アッパー気味でゴロアウトばかりだから、ランナー一塁ならゲッツーを狙えるわ」
「ン…今日はチェンジアップが浮き気味だから、勝負は速球でお願い」
「わかった。無理せず打たせて取りましょう」

昔の自分なら、調子が悪くても直ぐに修正が出来たのに……いや、愚痴を言っても何かが改善する訳でも無い。今やれる事をやるだけだ

初球、アウトローへのフォーシーム。少し下に外れてボール
2球目、同じコースにカットボール…空振り
完全に一発を狙っているスイング。低く集めれば打たれないだろうけど、甘く入れば持っていかれる可能性が高い
返球を受け取り、3球目のサインを確認する

(内角へのツーシーム……ひとつ攻めて、外のカットボールに効かせる、という事かしら)

サインに頷く。胸元から肘の下、ベルト付近を抉る様に。プレートの三塁側から投げる分、しっかりとコントロールしなければならない
グラブを顔の高さで構える。打たれても、ファールになるコースへ。左足をゆっくりと上げ、右腕をストンと降ろしボールを太ももの裏に隠す
左腕を踏み出す足と一緒に付き出す。着地時の捻りを、突き出した左腕を巻き込む事で右腕へと伝え、腕を振り抜く

「ボール!」

これでカウント2-1。後は外に逃げる球を振ってくれるかどうかだ
4球目、カットボール。食らいついてファールになりこれで2-2。追い込んだ

(ここでアウトに取れたら一番良いのよね……)

サインはストレート、しかし首を振る。さらに二度首を振ると、私の望むサインを出してくれた
セットポジションで構える。握りは、ツーシーム

<<空振り三振! 低めの落ちるボール球に手が出てしまいました>>
<<膝下に沈み込んで来ましたね。我慢し切れずに中途半端な振りでした>>

まずアウト一つ、しかし気は抜けない。次のウッドも右の強打者だ。特に私の様なタイプが一番得意なバッターで、ストライクゾーンで勝負すれば上手く掬われるし、甘く入れば逃さずホームランにしてくる
初球アウトローのカットボールを見逃してボール。際どいコースだが、しっかりと見逃して来た
篠田さんには巧く躱されていたが、チェンジアップの無い今の私では分が悪い
しかし、ここで逃げて塁に出せば代走が出て来る。この後も平山、海江田とチャンスに強い打者が並び、捕手が津嘉山では得点圏に走者を背負う事になりかねない
それに……逃げるのはカッコよくない

2球目、インコースにカットボール。見逃してストライクだが、これもどっしりと構えている。やりづらいことこの上ない。狙い球はチェンジアップであろうか
3球目はアウトローのボールからストライクへ入るツーシーム
セットから足を踏み出し着地した瞬間、ウッドの動きが目に留まる
タイミングが、完全に合わされている

(――打たれる)

それを理解したのは、ボールが指を離れるのと同時だった。白線を踏むほどに踏み込み、美しいレベルスイングで差し出されたバットにボールが吸い込まれてゆく
弾き返された白球は、右中間へと真っ直ぐ伸びていき――

ほとんど真後ろに飛び込んだ関坂のグラブに収まった

シフトでかなりセンター寄りに守っていたところへ打球が飛んでくれた。
完璧に読まれていた。捉えられていた。通常の守備位置なら、右中間を破るツーベースヒットになっていたはずだ

「今日は、ツイてるわね」

思わず口から零れた

ツーアウトで左の平山。流れを掴むためにも、ここは3人で終わらせたい
初球、チェンジアップを投じる。何時もより落ち始めるのが早い。見逃されボールとなる
チェンジアップのコントロールが定まらないのは、どこかが狂っているのだろう。握りか、腕の振りか
しかし、どこがおかしいのかが、解らない。もどかしい。もどかしいが仕方が無い。仕方が無い、のだが……

(解っていても、歯痒いわね……)

気持ちを切り替える。どうしようも無いのだ。嘆く暇があれば、今切れるカードでどう戦うかを考えた方が良い
2球目、インコースへのフォーシーム。肘の下を通す様に投げ込む。平山は大きく仰け反り、ボール。2-0。……睨まれた
3球目、アウトコースにチェンジアップ。これが、真ん中高めへの半速球となる。落ちない、打ち頃の球だ
しかし、インコースが効いている。腰の引けた力のないスイングから放たれた打球は、フラフラと高く舞い上がり
セカンドベース後方、汐井が掴みスリーアウト。結果的には完璧な仕事と言えるだろう

「チェンジアップが決まらないのは……腕の振り、かしら」


試合は延長戦の末7-2で四国の勝利となった

おまけ
四国のオーダー
右 山之内
二 藤本
一 鬼田
指 ウッド
左 平山
三 海江田
遊 底乃緒
捕 曾地
中 乾


バッテリーの会話 あるいは、彼女の投球哲学(多田岡数水)
+ ...
  • 電光石火
  • チェンジ・オブ・ペース
  • 61センチの使い方


  • 電光石火
  • あるいは、彼女のマウンド心理

私は、マウンドでじっとしているのが苦手だ。重圧に押しつぶされそうになるから。
さっさと仕事を済ませてマウンドから降りたいし、実際そのように振る舞っている。
若月くんや光さんにも、返球を素早く行うようにしてもらっている。
この性格のおかげで、クイックは上手くなった。早く投げたいのだ。速くではない。いや速い球も投げたいけど。


伊藤「でもさ、ボーク取られるのはやっぱダメだと思うんだわ」
多田岡「今季はたったの2つだけですよ。成績も悪くないんだしそんなに言わなくても」
伊藤「いや、取られちゃダメだから。失点に繋がってないからまだいいけれど」
多田岡「分かってますよ、ちゃんと意識しておきます」
伊藤(意識しててもいざってときに舞い上がるからなあ、コイツ……)

  • チェンジ・オブ・ペース
  • あるいは、彼女の変化球事情

私の投球の軸はスライダーとストレートで、決め球はジャイロボール。カッコイイ響きだけど、つまり縦スラ。
イーファス・ピッチも使うけれど、アレは小宮山悟さんのシェイクのようなサービスボールに近い。
ランナー無しなら配球に組み込めるけれど、基本は2つのスライダーとフォーシームで組み立てている。
シュートは、まともにコントロール出来なかった。とてもじゃないが実戦では使えない。危険球退場はゴメンだ。
チェンジアップは腕の振りが変わってしまう欠点が治せなかった。球速差と落差も小さく使い物にならない。
カーブは上手く抜けず、コントロールも定まらず。結局縦スラに落ち着いた。
シンカー? 千尋さんに教えてもらったけど、全く指先の感覚がわからなかった。私には無理。
球速も遅いし、ズバズバ投げ込んで3択を迫るのが私のスタイル。これでいいのだ。そういうことにしておく。

伊藤「つまりはリード次第ってわけだな」
多田岡「そういうことです。しっかりして下さいよ」
伊藤「……色々あるんだよ」
多田岡「それは、わかりますけど……私はアナタが一番良いんです、頼みますよ。ホントに」

  • 61センチの使い方
  • あるいは、彼女の投球理論

まだです


ある日の凛堂と巴(國美巴、朽葉凛堂)
+ ...
よう。私だ。
私だ私。分かるだろ、朽葉凛堂だ。
突然だが、私には可愛い可愛い後輩がいる。出身校が同じなんだ。まさしく後輩だ。妹みたいだな。
まあ少し話を聞いていけ。少し前の話だ。
ある日の試合前。東京ドーム、ホームで迎える中日ドラゴンズ戦。ロッカーの前で國美が佇んでいたんだ。で、私はそれをじっと観察していたわけだ。
國美はその試合の先発投手を任されていた。珍しく緊張でもしているのか思ったんだが。

「何してんだー國美」
「あ、先輩」

國美は私を先輩と呼ぶ。出身校が同じだからな。それで私が先輩だからな。うむうむ、誇らしい。

「どした」
「いえ、今日、母の誕生日なんですけど」
「おーおめでとう。そんで?」
「……プレゼント、買うの忘れてて。試合後で間に合うかなって」
「プレゼント?ははーんあげてんだ」
「一応毎年」

あ、可愛い。お母さん大好きっ子かコイツ可愛いなこいつ。頭思いっきりわしわしなでなでしてやろうか。

「……今日が当番日だって聞いて。それで頭いっぱいで」
「買うの忘れたんだな。仕方ねぇなそりゃ」
「ナイトゲームだし……試合、終わったらお店、閉まっちゃいますよね」

そう言うと首を傾げて、うーんと考え始める。

「ガッハッハ、可愛い後輩よ、んな難しく考える事ねェよ」
「?」
「簡単だ、折角の当番日。お前のウイニングボールを誕生日プレゼントにしちまえば良い」
「……」

二カッと微笑むとぱちぱちとまばたきする國美の尻を引っ叩く。

「つう訳だ、試合に集中しろ!余計な事考えて腑抜けたボール投げたら今の倍強く尻を蹴とばしてやる!」
「あ、は、はい、お尻は蹴らないでください」
「蹴られたくなかったら気合い入れて投げろい」

ロッカールームから國美を追い立て、うむうむと頷く。

「さて、と。言っちまった手前だ」

赤バットを持ち、ソイツでポンと自分の肩を2,3度叩き。

「可愛い後輩とその母ちゃんの為に、一丁かっ飛ばしてやろうか」

気合十分、ロッカールームを出る。


山崎和音は主役では無い(山崎和音)
+ ...
 昔から影が薄かった。
 目立つ事が嫌だったんじゃない。むしろいつだって、主役になりたいという欲望は胸の奥で渦を巻いていた。だけど自分以上に主役になるべき人間は身の回りにはいくらでもいて、そんな人達を見つめていくうちにだんだんと自分の至らないところにばかり目が行って、自然とそういう人達から距離を置いてしまう、そういう性分だった。
 ネガティブというより、捻くれ者という方が正しいだろうか。

 中学時代に所属していた部活は陸上部だった。取り得と言えば、他の人より多少足が速いくらいだったから。だけどそこでも、昔から陸上一筋だった奴、天才と囃し立てられる奴、そういう「主役向き」の人達に囲まれる。それが嫌だった。
 私は、中学を卒業してすぐ陸上を諦めた。

 高校に入ってすぐ一人の教師に声をかけられた。野球部の監督をしていると言う。聞いてみれば、中学時代の私の脚に惚れ込んで、ぜひ野球部に入部してほしいという話だった。

「嫌です」
「どうして?」

 教師は首を傾げてそう聞いてきた。

「嫌だからです」
「その理由を聞いているんだよ」
「どうせ、いるんでしょうから」

 他の人に声を聴かれるのが嫌だから、小声でまくし立てる。

「足が速い奴、凄い剛速球とか、凄い変化球とか投げる奴、将来のプロ候補、イケメンキャッチャーとか、恐ろしく守備が上手い奴とか」

「そういう「主役っぽい人」達」

 しばらく教師はきょとんとした表情を浮かべていた。でも、すぐに朗らかな表情を浮かべて私に言う。

「目立ちたいの?」
「違います。そういう人達に囲まれたくないんです。自分が嫌になるから」
「君は、自分がそういう人達みたいにはなれないって思うんだね」
「なれないんです。思うというか」

 この教師がなぜそこまで食い下がるのか分からない。自分はとっとと、平均的な目立たない暮らしに戻りたい。

「じゃあ、そうだね」

 もう半ば上の空になりかけていた時、教師が私の額に指を当てた。

「僕は、君が一番の主役になれると思ってる」
「……はい?」
「君が主役さ。なりたくないの?」
「……でも、私ですよ」
「君だからだ。君じゃ無いとなれない」

 私じゃ無いと。私じゃ無いとなれない?主役に?私が?

「主役になりたくないか?」

 私は主役にはなれない人間の筈。

「君ならなれる」

 主役に。

「なりたいです」
「なれる」
「主役に」
「なれる。グラウンドを君が支配するんだ」

 私が、主役に、なれる?


 足が速い事だけが、取り得だった。高校から始めた野球で、打撃なんか上達する筈が無い。だけどその教師は教えてくれた。野球の「主役のあり方」は、数多い。
 時間は現在に戻る。札幌ドームの外野守備につきながら、グラブの感触をいつもの様に確かめる。相手は四番バッター。当然、観客が注目するのは彼。今はまだ、私は彼という主役を引き立てる舞台のエキストラ。少し冷めた目で彼の動きを見つめる。
 四番バッターがバットを振り抜く。打球は高く高く左中間へ舞い上がる。その軌道に観客はヒットを確信して歓声を挙げる。だけど私は知らん顔。ボールがバットに当たった瞬間にはもう走り始めている。向かいからはレフトの守備についている選手も走ってきている。知らない、知らない、今の私にそんな事は関係無い。打球には普通に走ってギリギリ追いつかないくらいだろう。私はそのギリギリを、打球に飛びつく事でカバーする。

 転倒し思わず目を瞑る。しかしすぐに立ち上がり、グラブを見る。収まっている、白球。

 ワッと、歓声。

 私は主役になれない。野球という大きな舞台の主役には。だけど。
 主役だった筈の打者から、ヒットになる筈だった打球を、奪い盗る、瞬間。
 観客の視線が、打者から、私に移り変わる瞬間。
 この、歓声の、瞬間。

 今だけは、私が主役。
 この時間が、譲れない、たった一つの私の舞台。


ジャイアンツ女っ気無い三人衆、飲み会へ(國美巴、朽葉凛堂、安成礼恩)
+ ...
「あ、あのっ」
「うん?」

 夕方、都会の喧騒の中にある公園。そこのベンチに座る人物に、話しかける女性の姿。座っている方の人物は半袖のシャツにハーフパンツ、野球帽を目深に被りサングラスをかけている。

「僕に何か用ですか?」
「あの、えっと、安成選手、じゃないですか?巨人の」
「……」

 座った人物は話しかけてきた女性を少し手招きすると、顔を近づけてサングラスをずらしてみせる。

「当たり。よく分かりましたね」
「私、ファンなんです!」
「ありがとうございます。それで、ごめんなさい、今日オフであまり大騒ぎは……」
「あ、すいません」
「いえいえ。それで、ご用件は」

 柔和な笑顔で安成が聞くと、女性はメモ帳とペンを取り出し差し出した。

「サイン、お願いできますか」
「お安い御用ですよ」

 それらを受け取るとさらさらとサインを書き込む。途中女性の名前を聞いて、それもまた書き込んだ。

「よー待たせー」
「遅れました」

 安成が女性にメモ帳とペンを返そうとした時、新たな人影が二つ増える。明らかに高身長な一人は低い声で挨拶をし、もう一人は明るい様子で声をかけてすぐ安成と向かい合っている女性に気付いた。

「ファン?」
「どうもそうらしいですよ」
「わ、わ、朽葉選手、國美選手、わぁ」
「おー知っててくれてるとはありがたいねえ。サインしてやろう」
「ありがとうございます!お願いします!」

 朽葉が荒っぽい字でサインをした後、それを國美に渡す。國美もまた小さくサインをして、今度は女性にメモ帳とペンを返した。

「ありがとうございました、すいません、ごゆっくり!」
「お気をつけて」
「大事にしろよー」

 走り去る女性に手を振る三人組。女性の姿が公園から消えるまで見送ると、安成が立ち上がる。

「それじゃあ、飲み行きましょうか」

――――――――

「ぶはああぁぁぁああ……!」

 ここは三人の行きつけの飲み屋。予約していた個室でビールを一気に呷り、朽葉が大きく息を吐く。

「だからよ國美、お前は体力つけた方が良い!」
「……そう思います」
「6回投げ切るだけで精一杯じゃよ、よっぽど投球内容が安定してるとかじゃなきゃあローテには入れないぞ?」
「まあまあ凛堂さん、説教臭い事は無しにしましょうよ」

 朽葉を宥める様に安成が口を挟む。

「巴ちゃん何か食べる?取ってあげる」
「あ、ありがとうございます……唐揚げ……」
「あー、説教くせぇか、悪かった國美」
「いえ、大丈夫です……事実ですし……」

 がつっと焼き鳥を頬張るとまたビールを呷る。安成から皿を受け取った國美が唐揚げを齧り、烏龍茶を一口。

「まああれだ、お前の投球って打たせて取るのが主流だろ」
「はい、そうです」
「お前あれだぞ、悪いクセな、ちょっと打たれ始めると一人でマウンドでわたわたし始めちまうだろ」
「……そうですか?」
「ああ、あるかもですね確かに。巴ちゃん時々そういう事あるかも」
「あるんだよ、ある。外野からでもわっかりやすいくらい焦る。お前さ、打たせて取る投球なら、もうちょいチームメイトに頼っちまえよ」

 國美は相変わらずリアクションが薄かったが、僅かに視線を伏せた。それが少しへこんでいる時だと知っている安成と朽葉は二人で「言い過ぎてしまったかも」と言いたげに顔を見合わせる。

「あ、あー、でも、序盤の投球はすげぇ安定してるよな國美。やっぱ極度に遅い球ってのは逆に武器になるもんだな」

 朽葉はとっさにフォローを入れた。國美の視線が少しだけ上向く。と、同時に安成がちびちびと酒を飲み始めた。それがちょっとテンションが下がった時の仕草だと知っている朽葉と國美は二人で顔を見合わせる。

「序盤に失点する事多くてすいません……」
「お、お前はその代わり後半すっげーじゃん気にする事無いって!!」
「……そうですよ、私より数倍タフですし、凄く三振、奪いますし」

 テーブルに置いたコップに口をつけてちびちび酒を飲みながら、安成は少し上目遣いで朽葉を見る。

「そういえば忘れてませんよ凛堂さん」
「な、何」
「この間、僕が登板した日。ラインぎりぎりの打球に無理に飛びついてボール後ろに逸らした事」
「ぐがっ」

 散弾銃を食らった様に顔を歪める朽葉。

「だ、だって、飛びついたら間に合いそうに見えてっ」
「言い訳ですかー、らしくないですねー」
「だーっ!すまーんっ!!あれは本当に我ながら馬鹿なプレイだったと思うっ!!」

 ばーんと床に両手をつき、朽葉、まさかの土下座である。これにはさすがに焦った安成と國美。

「あ、い、いえ、ですけどその代わりにその後すぐホームラン打ってくれましたし!」
「……先輩は、凄く雰囲気、明るくしてくれますし。助かって、ます」
「世辞は良い!ぬあーこうなったら!!」

 顔を上げると朽葉はどんと胸を叩いた。

「今日は!お互いの至らぬ点を!もう遠慮せず容赦せず!ばんっばん言い合う飲み会にするぞ!」
「ははぁ、成程、それは良いかもしれませんね」
「……分かりました……」
「そうと決まれば酒が足りねえな、追加注文!國美お前も烏龍茶ばっかり飲んでないで少し酔え!酔っちまったほうが遠慮が無くなる!」
「おつまみも追加しましょう。焼き鳥と、唐揚げと、あ、巴ちゃん、一口ハンバーグだって」
「……お願いします……」

 こうしてただの飲み会は、日々の反省飲み会へと姿を変えていく。


朽葉凛堂の持論(朽葉凛堂)
+ ...
例えば。
投手が投げた球速130キロにも満たないボールを、一流の打者が空振る時がある。
例えば。
コースギリギリに決まる150キロのストレートを、外野まで飛ばして見せる打者がいる。
というか、そんな事は日常茶飯事なのだ、野球では。

だから面白いのだ。
私は野球の、そういう所に惚れたのだ。

打席に立って、バットを握って振っている。
その時点でルーキーだろうが期待の若手だろうがベテランだろうが中堅だろうがスタープレイヤーだろうが皆同じ一人の打者に変わる。
投手も同じ、マウンドに立った時点で相手は一人の投手。歳なんて関係無い。
後はもう一対一だ。投手対打者だ。

ところで野球選手の凄さってのは何処で決まるんだろうか。

160キロのボールを投げられる投手が凄いのか?場外弾を放てるパワーを持った野手が凄いのか?トリプルスリーしてれば凄いか、ノーヒットノーランしてれば凄いか?
答えはYES。そりゃそうだ、すげぇに決まってる。
一人のスターを追い求めるこんな社会、日夜メディアやマスコミが褒め称えるのはそういう奴らだ。全く羨ましい。

じゃあ、それ以外の選手は凄くないのか?

答えはNO。
打率が低くても、コーナーに決まる160キロを打ち返せばソイツは凄い打者だ。
防御率が悪くても、トリプルスリーの打者を打ち取ればソイツは凄い投手だ。
例えそれが偶然でもだ。

抑えた奴が凄いのさ。
打った奴が凄いのさ。
どんな状況でも。
野球選手に、『三流』なんて居ない。
居るのは一瞬、一瞬の間に現れる『凄い選手』だけだ。

私は、凄い選手になりたい。


やきう女子の休日(國美巴、朽葉凛堂、安成礼恩、槙野志乃、山崎和音)
+ ...
  • 國美巴の場合
「……」

 寮の一室にて。開封したダンボールをじっと見つめる國美巴。

「……」

 実家の家族から送られてきた物だが、彼女が眉を顰めるのはその中身が問題だ。

「化粧品……」

 化粧品である。
 國美巴は女性である。家族は当然結婚を願っている。が、どうだろう、現状彼女に近寄る男性は同じ野球選手のみ。その理由の一端を担っているのが彼女のその『女っ気の無さ』である。
 それを気にした家族は度々女性らしい衣服何かを送ってくるのだが、彼女は纏めて送り返す始末。せめてもの抵抗にと此度送ってきたのは化粧品であった。

「……安成さんにあげよう」

 家族の抵抗空しく、化粧品は球界のジュノン・ボーイの元に送り届けられる事になったらしい。そうと心に決めた彼女はダンボールを再びガムテープで閉じ始めるのであった。

  • 朽葉凛堂の場合
 屋内練習場。
 朽葉凛堂は黙々とバットを振っていた。
 野球選手である彼女を支えているのは『気合い』と『努力』である。彼女は決して才能に恵まれた女性では無かったが、足りない物はそうしてカバーする事で野球選手であり続けていた。

 ふと、彼女の動きが止まる。大きく息を吐き、壁際にあるテーピングテープを手にした。それを慣れた手つきで指に巻きつけていく。

 朽葉凛堂は怪我が少なくない選手だ。身体が弱いのではない。プレイスタイルの問題だ。バッティングも、守備も、走塁も、『力を抜く』という言葉を知らず何でもがむしゃらにやってしまう。そうでなければ一流選手には届かないと彼女自身が認識しているからだ。
 テーピングした指をぼんやりと眺める。掌は人一倍マメだらけだ。

「……さ、て」

 バットを再び握る。

「もう1000回振るか」

  • 安成礼恩の場合
 今この時、安成礼恩は己の存亡を賭けた戦いに身を投じていた。
 自室にてスリッパを構え、よくよく目を凝らす。
 時が止まったかのような静寂が彼女と部屋を包む。

 息が荒い。緊張からだ。もしかしたら先発登板のマウンドよりも緊張しているかもしれない。
 ふと、その視界の端に黒い影が映る。ばっと反射的にそちらを見れば、小さな黒い影が物陰への逃走を開始していた。

 まぁ要するにGさんである。

「おんどりゃああああああああああああああ!!!」

 普段の彼女なら決して出さないであろう奇声と共にスリッパをGさんに投擲する。彼女は投手である、しかもジャイアンツ一軍の(裏)ローテ投手である。女性の身、それも左腕でありながら最速140キロ台後半の速球を武器とする投手である。
 そんな彼女の左腕が放ったスリッパは勢いよく直線軌道を描く。流石のGさんも反応が追いつかず、哀れにもスリッパの裏で押しつぶされる形となった。

「あぁぁぁぁああぁぁあ」

 そして。

「見たくない……」

 それからしばらく、スリッパもGさんも処理する事が出来なくなった安成であった。

  • 槙野志乃の場合
 都内某所の喫茶店の奥の席に座り、槙野志乃は本を読んでいる。
 テーブルにはアイスコーヒー。ゆったりとした衣服に身を包み、普段は纏めている長髪を解き読書をする姿は、彼女の眼鏡越しでも分かる程鋭すぎる眼光さえなければ絵画の様な美しさを醸し出していた。
 何を読んでいるのだろうかと店員がちらりと覗いてみれば、見えるタイトルは『打撃論』。洒落っ気の欠片も無かった。

「打球にスピンをかける……打球をより遠くまで飛ばす……」

 打者としての彼女の悩みは、打球が飛ばない事である。所謂ノーパワー。ミート力は高く内野の頭を越す打球は多いが、外野深くまで打球が飛ぶという事はあまり無かった。

「ふむ……」

 続いてもう一冊本を取り出す。タイトルは『筋力トレーニング』。
 それを熱心に読み進めながらコーヒーを飲む。
 パッと見は色っぽいがよく観察してしまうと色気の欠片も無い彼女の休日はこうして過ぎていく。

  • 山崎和音の場合
 部屋のベッドの上で。

 寝ていた。


目標(早手美代)
+ ...
プロ野球では毎年どの球団も15人程度が戦力外になる。

戦力外、それは企業でいうクビ。

要するに「君はいらない」である。

そしてそれと大体同じ人数が、ドラフトやトレードで補充される。

そして枠は70。

確率論でいえばざっと14分の3
数字にして21.4%。

過酷。実に過酷なサバイバルレース。
5人に1人は死ぬのだ。

ならどう生き残る?

鍛えて強くなる? 才能に頼る? 仲間と協力する?

全て不正解。

鍛えて強くなるのは間違っちゃいない。だが鍛えて絶対強くなれるんなら皆やってる。
才能に頼るのも悪くない。でも自分の才能の乏しさに気がついたときどうする?
仲間と協力するのは論外。そもそも皆枠を争う敵だ。違うチームになることもある。基本仲間は居ない。徹底的に研究して利用しろ。

なら何が最適解なのか?
簡単だ。
強者を利用し、弱者を蹴落とすこと。実にシンプル。

強者は生きる術を知っている。媚びて学べ。それで駄目なら盗んでしまえ。
そして手に入れた知識や技術を自分のものにしろ。
弱者は自分から学ぼうとしてくる。絶対に弱みを見せるな。寄せ付けるのもだめだ。

私は少なくともこうやって生きてきた。
これからもきっとそうだろう。

中学、高校の華々しい活躍は努力に裏打ちされたもので間違いない。
徹底的にデータを集めて叩き込んだ。練習だって人よりずっと多くした。誰よりも模範的な高校生活を送った。
それはきっとみんな同じだ。プロなんて誰だってそうだろう。
そしてその中で本当に才能がある連中だけが10年、20年生き残る。

若手を指導するベテラン
配球について話し合うバッテリー
守備連携を確かめ合う野手

目の前に居る人間と自分、どちらが残るのかを考えたことは無いのだろうか。



私の『憧れ』が死んだ日、私はどんな形でもこの世界で勝ち残ってやると誓った。

何故って?

私には他人より優れた才能がある。
そう証明する為にはそれしかないと、『憧れ』は教えてくれたからだ。
                    私の『憧れ』
                           突然『憧れ』は『哀れみ』になり
                                  『哀れみ』は『失望』になった


スタート
+ ...
広瀬「活かせるなら瞬発力ですね」

福さん「内野安打を防ぐうえで奪取は大事な要素。人工芝では分かりにくいが」

広瀬「となると失策も増えたり」

福さん「失策よりも、如何に失点を防ぐかが大事だ。無失策でも内野安打多く許すのは印象が悪い」

広瀬「トライですかね?」

福さん「幸い、お前さんの派チャージの技術がある。捕球も上手くなってきた。応用して守備の良さを出そうじゃないか」

広瀬「はい」
チャージの速さはリーグ・球界でもトップクラス。その力を活かして遊撃復帰といつしかの夢へ向けて挑戦が始まった。

福さん「そうそう。今の感じ!」
段々、慣れてきたのだろうか、前で取れるようになってきたようだ。

福さん「後はランダムバウンドボール使ってみようか。遊びながらもできる優れもの。昔、これ使ってれんしゅうもしたなぁ」

続く

ウチは野球が好きやから(渡瀬佳穂)
+ ...
時刻は夜。 
夏真っ盛りの8月。連れ添って歩く大学生くらいの年頃のカップルが、夏祭りで路上に並んだ屋台の間をすり抜けて、あと少しで花火が打ち上げられる川原にやってきていた。
女の方、『渡瀬佳穂』は水色に花の柄が描かれた浴衣に身を包んでいる。右手首には水風船を二つぶら下げ、左手は男の右手と結ばれていた。
男の方は、白い半袖のシャツに、ジーンズを履いたラフな格好である。渡瀬も女性としては長身に見えたが、男は彼女よりもさらにもう二回りは大きな体躯を誇っていた。

「やぁ、間に合って良かったわぁ」

 渡瀬がふわりと声を発する。風鈴が鳴る様に涼やかな声は、彼女の愛らしい容姿もあってかすれ違う人々をハッと振り向かせた。しかし、そんな人々は彼女の隣に立つ男を見るや否やそそくさとその場から離れていく。

「こんな慌てんでも良かったやろうに。……ちょっとそこの屋台でタコ焼き買うて来てええか?ええ感じにベテランぽいおっさんがやっててなぁ」
「やーんダメやぁ。どうせなら良い場所で見たいやんか。何や下から見るかー横から見るかーて最近テレビでよくやっとるやん?」
「そりゃあアニメ映画のタイトルやろ……」

 タコ焼き購入に待ったをかけられた男は、正面から見ると熊の様な印象を憶える髭面の大男であった。何を隠そう、苗字も『熊田』である。人々が避けようとするのも無理は無い。しかし主導権はどうやら渡瀬の方にあるらしく、にこにこと朗らかな笑顔を浮かべた渡瀬に、どんどんと川原の方へと引っ張られていく。


 どうやら、土手の上の方にあるベンチに座って花火を見る事になった様子であった。熊田はやれやれといった様子でベンチに腰かけ、隣で彼の肩に体重を預ける渡瀬を見やる。

「……なぁ、タコ焼き……」
「もうちょっとで始まるから我慢やぁ」
「……酷い」
「後でぎょうさん買うたるさかい、我慢してぇな。今日は一緒に見たいんや」
「お金払うん俺やろ」

 熊田がタコ焼きにありつけるのは花火が終わってからになったらしい。

「なぁ、ちょっと話があるんやけどな?」
「何や、急に」
「ウチ、プロ野球選手になりたいんよ」

 唐突にきり出した渡瀬の言葉、一瞬の静寂が訪れる。

「そうか」
「うん」

 渡瀬の手が水風船を掴む。

「昔っから目指しててん、最近、野球調子ようなってな。……挑戦してみたいんや、ちゃぁんと」
「知っとるわ、お前、野球馬鹿やもんな」
「馬鹿って言わんといてぇ?ウチは野球が「好き」なんや」

 不満げに口を尖らせると、熊田を上目遣いに見る。熊田、不覚にも目を逸らす。

「……プロになったら、自由な時間が、ちょっと少なくなるんやないかと思ってな。せやから、今の内にあんさんと、目いっぱい好きな事やっておきたいんや」
「それで俺の事引きずりまわしとったんか」
「堪忍、堪忍や」

「……ええよ、ちょっと寂しゅうなるけど、関係が無うなる訳や無いしな」
「寂しい思たら、電話ならいつでもしてええよ?」
「はははは、お前の方から「会いたい会いたい」って電話してくる未来しか見えんわ」

 こつんこつんと、渡瀬の踵が熊田の爪先を蹴り始める。あまり効いていない様だが。

「俺が好きになったんは、好きな事やっとるお前の姿やからな」

 ぴたりと、蹴る動きが止まった。渡瀬がじっと熊田の顔を見つめる。

「何や?」
「……ううん?」

 にこりと、愛らしい笑顔を浮かべる。丁度その時、花火が打ち上がった。

「ウチ、やっぱり、あんさんの事大好きやわ」



「焼きそばもぎょうさん買うたるー!!」
「やから金払うのは結局俺やろうが」


戦い方を(國美巴)
+ ...
 高校二年生時の、夏。高校野球の地方大会、三回戦の記憶。

 球場の喧騒。
チームメイトの大きな声。
同点で迎える9回裏、相手の攻撃。

 その時、私はマウンドに立っていない。
控えの捕手を相手にして、肩を作っている。延長に突入したら登板する為だ。
黙々とボールを投げ続ける。

 球場の喧騒が一段と大きくなる。
チームメイト達の叫ぶ声が聞こえる。ふとグラウンドを見れば、9回を投げ続けたウチの先発投手がマウンド上に崩れ落ちていた。その向こう側、相手の打者がもみくちゃにされているのが微かにボケて見えた。
「終わった」
 今まで私のボールを受けていた捕手が呟いた小さな声がやけに耳に残る。二人、グラウンドを見つめる。チームメイトが戦っていたグラウンドだ。
でも、私は、そこに立っていない。

 ベンチ裏で三年生達が泣いている。普段は決して涙を見せる様な人じゃない寡黙な主将が、声を押し殺して泣いている。その背を叩く、主将の親友がいる。監督が静かな声で試合の総評を語っている。普段は怖い監督も、何処か穏やかな声だ。

 でも私は、きっと、そこには立っていないのだ。
肩を並べていても私はきっと、同じ場所には立っていないのだ。

「國美」
 掠れた声で私の名前が呼ばれる。三年生、今日の先発投手、敗戦投手。明るい性格で、チームのムードメイカー。皆からは苗字をもじった「カケさん」という渾名で呼ばれ親しまれている人だ。プロ候補という訳では無いが良い投手だ。
「来年、頼んだ」
 掠れた声。私よりも少し低い背丈の先輩が、腕を伸ばして私の肩を掴んだ。今まで経験した事の無い、とても弱弱しい掌だった。

「あまり悔しくない」
 帰りのバスの中、最後尾で。試合中私の投球練習を受けていた控え捕手が口を開いた。高校に入ってから出会った、信頼する事が出来る男だ。それ程、目立つ男では無い。
「……私も」
 釣られてか。私も小さく呟いた。
「なんでだろうな」
「……負けたのに」
 何で、悔しくないんだろう。
「来年があるからか」
 違う、しっくり来ない。
「……野球、そこまで好きじゃないとか」
「違う、そんな訳が無いだろ」
「……ごめん」
「……」
 チームメイト達の小さな寝息がするりと耳に入って来る。当然だ。彼らは疲れているのだ。
「……あ」
 分かった。
「いなかったからだ」
「あぁ、そうか……」
 戦い疲れているチームメイト達。彼らは寝ている。私達は起きている。試合に、彼らは出ていた。私達は出ていなかった。その、差。
「私達はいなかった」
 負けた瞬間、あのマウンドに。
 あの、ホームベースの前に。

 私達は、いなかった。

「……今更出て来るなよ」
 隣の座席で、友の頬を水滴が伝っていた。
「俺、どうせなら一緒に泣きたかったよ、國美」
「……うん」
 悔しくなかった事が、一番悔しかった。

「来年」
「ん?」
「頼むって言われた」
 数日後。部室で友に言う。
「カケさんに。……来年、頼むって言われた」
「あぁ」
「休まない。休んでる暇無い」
「……分かった、投球練習な」
 校庭の端に作られた投球練習用のマウンドに立つ。いつも通り、軽いキャッチボールから。少し肩が温まってきた所で、座ってもらう。
「……タク」
「?」
「ちょっと、考えてきた。私は、球速が遅い」
「何だよ、知ってるよ」
「それを身長で、角度で、ちょっとだけ、誤魔化してるだけ」
 『タク』が、少し怪訝な表情を見せる。

「考えてきた。少し、面白いかなって、戦い方」
「……戦い方ぁ?」
「うん、「来年」の為の」

 そう言って構える。……いつもよりも、脚を高く振り上げる。腕を大きく振り。

 リリースポイントは、直球よりも高い場所。ゆっくりと、手放す様に。


不器用ゆえに
+ ...
もうすっかり秋となったこの季節、
アスファルトも冷えた深夜の頃。
自分こと鍋島峰春は連れ添っている、焼津ねこが自宅のベランダで呆けているのを見つけ、声をかけた
鍋島「何をしてるんだ?ねこ」

焼津「ああ峰春、ちょっとね…」

訳を聞くと、
焼津はこの時期になると一人の野球仲間を思い出すとのことで、面白そうだから話してもらうことにした。
焼津「笑うんじゃないんだよ?」

鍋島「笑い話じゃなかったらな」

        • 焼津 中学時代

焼津「つまんないんだよ」
私は当時すこぶるヤンチャ者であった、野球に才を見出だされたのが始まりで、シニアでは一人ワンマンチームであるように振る舞っていた。
勿論そんな私にチームメイトが近寄ってきてくれるわけもなく、試合と練習以外ではいつも独りぼっち、と言うわけではなく、まあ物好きは居るもので。
焼津「…なんなの?」
鶴川「まあまあ、気にしないんだよ」
鶴川と言う部員だけは、いつも私に構ってきていた、彼は背番号2、とどのつまり捕手なので仕方なくバッテリーのよしみで居てくれてるもんだと当時ひねくれてた私は考えるばかり、
今でもひねくれてる?昔よりはましなんだよ。
鶴川は捕手にしては大柄と言うわけでもなく、むしろ背は低かった方だと記憶している。
しかし自慢の強肩を唸らせ、ランナーを刺すことに関しては他の誰よりも優れていたし、ノーコンだった私の球をまともに捕れる数少ない捕手。
打撃はめっぽう下手くそだったけど
いつもフルスイングで、全力だった。
焼津「鶴川はなんでいつも全力なの?」
鶴川「そうでもしないと、俺は覚えてもらえなかったんだよ!」
焼津「その、だよ。ってのは?」
鶴川「プロ野球選手ってなんか変な癖があるだろ?俺もそうしよっかなって」
焼津「プロに行きたいなら背を伸ばすことね」
鶴川「手厳しいんだよ、焼津」
そのうち鶴川を通じて私はチームに溶け込めるようになって、
最後の夏は団結して、なんと全国大会にまで上り詰める。
残念なことに三回戦で、今プロにいるとある野球女子相手に投げ合った末に敗北したけど、悔いは全然心にはなかった、
でも最後まで全力でやるってことを覚えたのは、ここでは出来ず。
それを私が感覚として掴むには、大学までかかることになるのだけれど、割愛。
それからシニアの部員はいろんな高校からのスカウトが来るようになった、
しかし
各自がそれぞれの高校へと道を進めていく中で、何故か鶴川は野球をやめてしまった。
他の部員から話を聞くと、名門のセレクションに落ちたっきり「もうやらない」と言って聞かなくなり、自主練もやらなくなったらしい。
私は鶴川を問い詰めた、あんなにも癖まで作っておいてと。
焼津「どうなのよ?ねえ!鶴川!!」
鶴川「心が折れたんだよ…焼津
むしろスッキリしたって位に、高校ですら通じないんだな自分はって
そんなのプロになんかなれっこないやって」
私は心底情けなく思った、高ぶる感情を地面に押さえつけるので精一杯になるほど。
この私をリードしてきた男を、
鶴川を合格させなかった高校はなんて目がないんだろうと。
鶴川への言いたいことは全くなかった、
野球を辞めるのは残念だけど、鶴川をこれ以上野球にとどめるのも無理なんだろうと察していたから。
そんな葛藤は向こうにも見えていたようで、鶴川は自分へ怒ってると震えてたと多分思う
思いの丈はたくさんあれど
口に出していたのは

焼津「じゃあお前の語尾ちょうだい」

鶴川「へ?」

何故こう言ったのか、今でも理由はよくわからない、
ただ敵討ちでもしたかったのだろうか。

焼津「お前のせっかく作った癖、私がプロで見せてやるから!その代わりお前はだよ使うなよ!」
横暴だって?若いから仕方ないと勘弁してくれ。
鶴川もビックリしてたけどOKしてくれたから。

鶴川「じゃあ俺の語尾よろしくだ…よろしくな」

焼津「任せるんだよ!」

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鍋島「お前は昔からそんなんだったのな」
正直、少し重い話になるとか、初恋の話になるとか思ってたから、ある意味よかったんだけど。

焼津「そんな話をしたのが、ちょうど今の季節だったんだよ」
鍋島「なーるほどなあー」

ここまで聞いてきての感想として真っ先に脳内に浮かび上がったのは
「焼津は気持ちを伝えるのが下手」
これに尽きる。
鶴川に本当なら野球を続けるようひたすら説得したかった、けどそれを心で押さえ付けて
「鶴川のプロへ行きたかった気持ちだけでも持っていく」事にしたんだろう。

鍋島「…意外と不器用だよなお前は」

焼津「なに考えてるか知らないけど余計なお世話なんだよ」

鍋島「それで?鶴川くんは今なにやってるの?」

焼津「今は公務員って言ってたんだよ、野球は最近、草野球をするくらいって」

鍋島「よかったな、野球をまたやってて」

焼津「!」

焼津と鶴川がどんなバッテリーだったかは知らない、だが焼津にとってはかけがえの無い選手って事はわかった。
今、焼津が一瞬泣きそうな顔になっていたから。

鍋島「またバッテリー組めるといいな」

焼津「そうね、また会えたら150ぶん投げるよ…さてさて、話し疲れたから私もう寝るんだよ」

鍋島「はいはい、じゃあそうしましょっか」



鶴川「え?オフになったら神宮まで来い?なんで?
球を受けろ?そんな無茶な!!」

終わり



  • 確認。 -- 三代目 (2017-07-20 00:00:17)
  • 感謝の極み -- ◆kSGRtLCpjQ (2017-07-20 00:01:39)
  • ああ~朽葉さんイケメンなんじゃ~ 巨人魂を感じる -- ◆aLFogijtq. (2017-07-20 00:47:48)
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最終更新:2019年09月26日 23:22