相互作用二元論

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  • 相互作用二元論
    相互作用二元論、または単に相互作用説といわれるものは、心身問題、特に心的因果の問題において、実体二元論を前提にして、現象的意識やクオリアといった心的なものが、脳という物理的なものと相互作用すると考える立場である。 歴史上この考えを最初に主張したのは、ルネ・デカルトであり、著書Meditationsにおいて相互作用二元論の考えを明確にした。彼においては心的現象が物理現象に作用するとする根拠は極めて明快で、「自分の意思で手が動く」というようなものであった。 20世紀以後においては、物理領域の因果的閉包性が主張されているため、また心的なものと物理的な脳との相互作用のメカニズムが解き難いという問題があるため、相互作用二元論を擁護する論者は非常に少ない。しかし有名な論者としてカール・ポパー、ジョン・エックルスなどがおり、物理学的には量子脳理論が脳と心の因果作用の可能性を示唆している...
  • 実体二元論
    ...、実体二元論の一種の相互作用二元論では、心的なものと物質的なものは相互作用すると考える。 実体二元論、特に相互作用二元論は心と身体の因果関係を説明するのが難しい。物質は物理法則のみに従って運動する、という現代科学の基本的な前提と整合的に理解することが難しく、今日ではこの理論を支持する論者は極めて少ない。しかし近年に実体二元論を唱えた人物としては、20世紀のオーストラリアの神経生理学者ジョン・エックルズ、科学哲学者のカール・ポパー、哲学者のリチャード・スウィバーンがいる。エックルズはしばしば、最後の二元論者として扱われる。 実体二元論の利点と問題 実体二元論の利点は、「自己」が説明しやすいということである。一般的に性質二元論では、さまざまに変化している精神現象を担う主体としての魂のようなものを存在していない。このためさまざまな体験が、なぜ「私」という同一主体に帰属してい...
  • 心身並行説
    ...ぼしあっているという相互作用二元論、そして心的なものは物的なものに完全に付随して生まれているという随伴現象説がある。 スピノザの心身並行説は、現代の心の哲学においては心的現象と物理的現象とを同じ存在の二つの側面とする「二面説(二重側面説)」として議論の対象になっている。 参考文献 小林道夫『科学の世界と心の哲学』中公新書 2009年 参考サイト http //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E8%BA%AB%E4%B8%A6%E8%A1%8C%E8%AA%AC http //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%93%B2%E5%AD%A6
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    ...実体二元論 | ├相互作用二元論 | ├予定調和説 | └機会原因論 ├性質二元論 | ├心身並行説 | ├自然主義的二元論 | └トロープ説 ├随伴現象説 └新神秘主義  └認知的閉鎖 ■一元論 ├物理主義 | ├行動主義 | ├心脳同一説 | ├機能主義 | ├表象主義 | ├非法則一元論 | └消去主義的唯物論 ├観念論 |└唯心論 ├現象主義 | └重ね描き ├中立一元論 └汎神論・汎心論 ■思考実験 ├中国語の部屋 ├中国人民 ├逆転クオリア ├水槽の脳 ├スワンプマン ├テセウスの船 ├哲学的ゾンビ ├コウモリの視点 ├カルテジアン劇場 └マリーの部屋 ■心の哲学の問題 ├現象的意識 |├現象 |├表象 |├クオリア |└還元・創発・汎経験説 ├自己 |├意識の統一性 ...
  • 二元論
    概説 二元論と宗教 二元論擁護論 概説 心の哲学における二元論(dualism)とは、心と身体を別の存在として考える立場のことである。心身二元論ともいう。多元論(pluralism)の一種といえる。対立する立場は一元論である。 二元論の考えは紀元前から見られ、例えばプラトンは人間の精神というものは身体と同一ではありえないと主張している(霊肉二元論)。そして古代インドのサーンキヤ学派やヨーガ学派などにも同様の考えが見られる。 歴史上初めて心身二元論を今日まで続いているような形で定式化した人物は17世紀の哲学者ルネ・デカルトである。彼は空間を占める身体は物質的なものであり、精神は非空間的であるゆえ異なる実体だとした。これが実体二元論(Substance dualism)である。そして機械論的な存在である物質的肉体と、自由意志をもつ精神(魂)を対置し、両者は相互作用すると...
  • 心的因果
    ...互に作用しあうとする相互作用二元論を主張した。 現代の脳科学では、心的現象は脳の作用から生じると考えるが、物理領域の因果的閉包性の原理を前提に、その脳から生じた心的現象が、逆に脳に作用するということを認めることができない。従って一部の哲学者は、心的なものは脳の作用にただ随伴して生じるのみであるとする随伴現象説を主張する。 しかし随伴現象説は直感に反しているよう思われる。一般の人が前提にしている素朴心理学的な立場では、心的因果は当たり前の現象である。誰しも歩きたいと心で思ったら体は歩くのであり、歩き始めてから歩きたいと思うのではないからだ。 もし意識現象が物理的なものではないとするなら、意識が体を動かすことを説明することは困難である。従って物理主義の立場からは意識現象を物理現象に還元する心脳同一説が主張される。 ジョン・サールは心的因果について、つじつま...
  • ドナルド・デイヴィッドソン
    ...で相関しているとする相互作用二元論については「法則論的二元論」と呼んでいる。 デイヴィッドソンは心的なものが物理的に依存している状態を「付随性(スーパーヴィーニエンス)」と呼ぶ。心的状態は物理的状態に付随するが、物理的状態に還元可能ではないとする。 出来事 デイヴィッドソンの心の哲学と行為論においては、「出来事」の概念が中心的な役割を果たす。これはバートランド・ラッセルの哲学における「出来事」と類似の概念である。デイヴィッドソンにとって存在するのは「出来事」のみであり、その出来事が物理的側面に着目して記述されると物理的出来事となり、心的側面に着目して記述されると心的出来事になるのである。従ってある一つの出来事が同時に物理的出来事でもあり心的出来事であることも可能なのである。 「心的出来事」というものは単純に心的な性質のみから成立しているのではなく、脳の生理学過...
  • 心の哲学全般
    ...実体二元論 | ├相互作用二元論 | ├予定調和説 | └機会原因論 ├性質二元論 | ├心身並行説 | ├自然主義的二元論 | └トロープ説 ├随伴現象説 └新神秘主義  └認知的閉鎖 ■一元論 ├物理主義 | ├行動主義 | ├心脳同一説 | ├機能主義 | ├表象主義 | ├非法則一元論 | └消去主義的唯物論 ├観念論 |└唯心論 ├現象主義 | └重ね描き ├中立一元論 └汎神論・汎心論 一元論対二元論の概念図(英Wikipediaより引用) 図の Cartesian Duality はデカルトの実体二元論を意味する。Physicalism は物理主義的一元論(物的一元論とも呼ばれる)、Idealism は観念論的一元論(心的一元論とも呼ばれる)、Neutral Monism は中立一元論の意味である。な...
  • 非法則一元論
    非法則一元論とは、心の哲学における物理主義的な立場のひとつ。ドナルド・デイヴィッドソンにより主張された。「非法則的」とは「法則論的」の逆の意味であり、心的出来事に法則が当てはまらないとすることで「非法則的」であるが、心的出来事が物理現象(脳の状態)と同一であるとすることで「一元論」である。 非法則一元論は、物理主義でありながら、心的なものを物質的なものに還元できないと考える。このようなタイプの物理主義を「非還元的物理主義」という。心的性質を物理的性質と同等のものとみなすため、非還元的物理主義は物理主義的一元論を自称していても性質二元論の一種とみなされることもある。 デイヴィッドソンは、心身の関係には以下の三つの原理があるとする。 (1)因果的相互作用の原理――心身の(限定的な)相互作用 (2)因果性の法則論的性格――出来事の原因と結果の厳密な法則性 (3)心的な...
  • 性質二元論
    概説 類似の概念 概説 性質二元論(英:Property Dualism)とは、心身問題に関する形而上学的な理論のひとつで、この世界に存在する実体(physical substance)は一種類だが、それは心的な性質(mental property)と物理的な性質(physical property)という二つの性質を持っているという考え。中立一元論と類似の概念である。なお Property Dualism は特性二元論、、特徴二元論、属性二元論などとも訳される。 同じ二元論に分類される実体二元論は、物理的実体とは別に、心的実体を置く。それに対し性質二元論は、クオリアなどの心的現象と脳の物理的現象はある一つの実体の二側面であると考える。したがって性質二元論は、存在論的には一元論を前提にしている。歴史的に初めてこの考えを主張したのはスピノザである。 性質二元論の構図 ...
  • 自然主義的二元論
    概説 自然主義的二元論(英 Naturalistic dualism)とは、デイヴィッド・チャーマーズが意識のハードプロブレム、すなわち物質としての脳からどのようにして現象的意識やクオリアなどが生まれるのか、という問題に対して取る自分の立場を呼ぶ名称であり、その問題の解決のためには物理学の理論の存在論的拡張が必要だという主張のことである。 自然主義とは、自然が存在するものの全てであり、心的現象を含む一切は自然科学の方法で説明できるとする哲学的立場のことである。 チャーマーズは意識が物理理論に論理的に付随しないことを哲学的ゾンビの思考実験などで論じ、それを理由に、物理特性以外にさらにこの世界を形作っているものがあるとして、以下のように唯物論を批判する。 1、我々の世界には意識体験がある。 2、物理的には我々の世界と同一でありながら、意識体験が無い世界が論理的に存在...
  • 知覚因果説
    知覚因果説とは、客観的に実在している物質などの対象を原因とし、人の感覚器官がそれら対象の情報を受け取り、脳がその情報を処理した結果として知覚が生じる、とする説である。知覚を外界の「写し」と考えるので「カメラ・モデル」ともいわれる。表象主義が採用している知覚理論である。現象主義では知覚因果を否定する。 かつて知覚因果説は実体二元論と唯物論(物理主義)の立場から主張されていた。しかし現代のほとんどの心の哲学者は、性質二元論の立場でも科学的実在論を前提としているので、知覚因果説を採用していることになる。 知覚因果説では、知覚というものを認識主体と認識対象の相互作用として考える。この場合の認識主体とは自我ではなく、感覚器官と、その器官から受け取った情報を処理する脳という身体全体を指す。なおイマヌエル・カントのように物自体に加えて自我を想定する場合は、知覚というものを認識主体、認識対...
  • 因果的閉包性
    物理的領域の因果的閉包性(英 Causal closure of physics)とは、「どんな物理現象も物理現象のほかには一切の原因を持たない」とする原理のこと。物理的閉鎖(英 physical closure)、物理的な閉鎖(英 closed under physics)などとも呼ばれる。 心の哲学においては心的因果の問題、つまり現象的意識やクオリアが物理的な身体や脳に、いかに作用するかという議論において、二元論への批判として提示される概念であり、クオリアなどを持ち出さなくても、脳細胞に起こっている現象を解明すれば人間の行動は神経科学的に説明できるという物理主義的な立場である。 物理的なものが本当に因果的に閉じているのかという点については、少なからぬ学者・科学者から大いに疑問視されている。例えばカール・ポパーは「宇宙というのは一部には因果的であり、一部には確率的であり、...
  • ジョージ・バークリー
    概説 経験主義から観念論へ 神と魂 概説 ジョージ・バークリー(George Berkeley, 1685年3月12日 - 1753年1月14日)はアイルランドの哲学者、聖職者である。英国経験論の代表的人物であり、現象主義の方法により物質の実在性を否定し、「存在することは知覚されることである(ラテン語"Esse is percipi"、エッセ・イス・ペルキピ、英語“To be is to be perceived”)」という基本原則の観念論を提唱した。 バークリーの思考法はオッカムの剃刀に類似したものである。オッカムは、現象を説明するために真に必要な最小限の原因のみを認め、不要な原因は放棄すべきだとし、「存在は必要もなく増やしてはならない」という原則を主張した。バークリーはこの思考法によって、「物質」なるものは観念の存在と生成に「不要」とみなし、またニュ...
  • ヘーゲル
    概説 心の哲学についてのヘーゲルの思想 概説 ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel、1770年8月27日 - 1831年11月14日)は、ドイツの哲学者。ドイツ観念論哲学の完成者といわれる思想家である。 デカルト的二元論を克服するためにシェリングから「世界精神」の概念を受け継ぎ、心的なものと物理的なものが精神という新たな綜合において存在しているという独自の「絶対的観念論」を提唱した。 ヘーゲル哲学を批判的に継承・発展させた人物としては、セーレン・キェルケゴール、カール・マルクスなどがいる。ポストモダン思想においては、マルクス主義国家における全体主義的傾向は、理性によって人間を含む世界の全体を把握できるとするヘーゲル思想に由来している、という見方がされている。 心の哲学についてのヘーゲルの思想...
  • 現象判断のパラドックス
    現象判断のパラドックス(英:Paradox of phenomenal judgement)とは、心の哲学において議論される意識についてのパラドックスである。現象報告のパラドックスとも呼ばれる。「現象」とは意識の主観的側面である現象的意識やクオリアのことである。デイヴィッド・チャーマーズが意識のハードプロブレムについて論じた文脈で言及したパラドックスであり、「現象的意識が脳の物理状態に対して何の影響も及ぼさないなら、なぜ私達は現象的意識やクオリアについて判断でき、また語れているのか?」という問題である。 このパラドックスは意識というものを、機能的意識と現象的意識という二つの概念(意識の二面性)に分離することから生じるものである。二元論の立場では、現象的意識は物理的性質には還元できないものとするが、同時に物理的なものが因果的に閉じていること(物理領域の因果的閉包性)を認めるならば、現...
  • 中立一元論
    中立一元論(英:Neutral monism)とは、心身問題についての考え方のひとつで、心的だとか物理的だとかいうものは、ある一つの実体、または出来事の、二つの性質のことだとする理論である。性質二元論はほぼ同じ立場である。 中立一元論は物質的なものと心的なものが実在するとする実体二元論と対立する。また存在論的には一元論であるが、物理的なものだけが存在するとする物理主義や、心的なものだけが存在するという唯心論と対立しつつ、その両者の中間的位置を取る。バートランド・ラッセル、ウィリアム・ジェイムズ、ピーター・ストローソンがこの立場である。デイヴィッド・チャーマーズの自然主義的二元論は中立一元論の一種である。スピノザは汎神論的な一元論者であるが、心身問題に関しては中立一元論といえる。 中立一元論は、心的なものについての説明が困難な物理主義の欠点と、物理的なものの実在性と対立してい...
  • 機会原因論
    機会原因論(Occasionalism)はフランスの哲学者ニコラ・ド・マルブランシュ(Nicolas de Malebranche、1638年8月6日-1715年10月13日)によって唱えられた神学的な説で、物理現象のもつ因果関係、そして心的な現象が物理現象に作用する因果関係について、すべて本物の因果関係ではなく、真の原因は神であるとする考え方。 偶因論ともいう。 デカルト流の合理主義哲学を引き継ぎ、心的な存在と物質的な存在を二種類の異なる存在として認めながらも、そうした対象の変化を実際に引き起こしているのは神であるとし、デカルトの心身二元論が直面した心身の因果関係の問題を解決しようと試みた。そして心と身体との相互作用の原因を解明しようとしたデカルトに対し、心身の結合の原因は神であるゆえに、人間には理解不可能であるとした。 マルブランシュはアウグスティヌス主義者であり、その...
  • 観念論
    概説観念論に対する批判 各種の観念論超越論的観念論 ドイツ観念論 イギリスの観念論 主観的観念論と客観的観念論 概説 観念論(idealism)という語は実に多義的であるが、通俗的な意味においては、観念的なものを物質的なものに優先する立場を観念論といい、唯物論に対立する用語として使われる。なお「観念論者(idealist)」の語を最初に用いたのはライプニッツである。 しかし哲学用語としての観念論は、歴史的に以下のような二つの対極的な立場で使われている。 (1)人間が直接経験できないものが実在し、それがわれわれの認識を成り立たせているとする思弁的な立場。プラトンのイデア主義に起源をもつ。新プラトン主義のプロティノスや大陸合理論のスピノザやライプニッツを経て、イマヌエル・カントの超越論的観念論を近代の転換点とする。超越論的観念論はフィヒテやシェリングなどを経由し、ヘーゲ...
  • 廣松渉
    認識論 心身問題 廣松渉(ひろまつ わたる、1933年8月11日 - 1994年5月22日)は日本の哲学者。東京大学名誉教授。 高校進学と同時に日本共産党に入党。東京学芸大学に入学するが、中退して東京大学に再入学する。当初はエルンスト・マッハに対する関心が強かったが、指導教官の勧めなどがあってカント研究に専念。東京大学大学院に進学し、1965年に博士後期課程を単位取得退学している。共産党との関係では、1955年の六全協を受け復党するも、翌1956年に出版した共著書『日本の学生運動』が問題とされ離党した。1958年12月に共産党と敵対する共産主義者同盟(ブント)が結成されて以降、理論面において長く支援し続けた。 認識論 廣松は主観・客観図式による伝統的な認識論を批判する。主観・客観とされているいずれの側も二重になっており、全体として世界の存在構造は四肢的だと指摘し、...
  • 一元論
    概説 一元論の種類 概説 一元論(英 monism)とは形而上学において、世界には唯一の、または一種類の実体だけが存在するという考え方である。 一元論という語は、心身問題において主張されていた様々な説を分類するため十八世紀にヴォルフ(Wolff)によって作られた。その後適用範囲が拡大され、形而上学だけでなく認識論や倫理学の分野でも用いられている。 現代の心の哲学においては、心的なものだけが実在であるとする観念論的な一元論、物理的なものだけが実在であるとする物理主義的な一元論、そして心的なものと物理的なものはある種の実体の属性であるとする中立一元論の、三つの立場がある。いずれも心と体が存在論的に異なるものだという主張を認めない考え方であり、物理的なものと心的なものという二種類の実体があると説く実体二元論や、たくさんの実体があると説く多元論(pluralism)と区別...
  • 還元・創発・汎経験説
    概説 還元説 創発説デイヴィッド・チャーマーズによる解説 汎経験説 諸説への批判 概説 クオリアというものが一体どこから、どのようにして生じているのかは全くの謎である。現代の科学においても、脳の神経細胞の作用に対応して存在していることだけが事実として認められている。言い換えると脳科学が明らかにしたのは、心的現象と脳の作用に因果的な隣接関係が見出せるということのみであり、脳の作用は心的現象を生じさせる十分条件であると論証できないどころか、必要条件の一つであるとも論証できないのである。多数の哲学者や科学者たちを取材したスーザン・ブラックモアは、学者たちの間では旧来の「脳が意識を生み出す」という表現から、「脳と意識は相関する」という表現に変えるのが流行しているという。 歴史的には心的現象は「魂」の作用であるとする二元論的な立場と、心的現象は物質の運動に還元されるとする原子論的な立...
  • ジョン・サール
    概説 心の哲学におけるサールの見解 意味論的外在主義に対する批判 概説 ジョン・サール(John Rogers Searle 1932年7月31日- )は言語哲学および心の哲学を専門とする哲学者。カリフォルニア大学バークレー校教授。ニクソン大統領時代には大学問題大統領特別顧問としても活動した。 人工知能批判で知られ、チューリングテストに対する反論として中国語の部屋という思考実験を提案した。また、言語表現が間接的に果たす遂行的機能(間接発話行為)の研究を行い、ジョン・L・オースティンの後継者と称された。 2000年にジャン・ニコ賞を受賞。 心の哲学におけるサールの見解 サールは心の哲学における自分の立場を「生物学的自然主義(biological naturalizm)」と呼んでいる。これは意識が自然現象のひとつであることを強調するものである。たとえば胃が胃液を...
  • 自己
    概説 還元主義と非還元主義 概説 自己(英:Self)とは、意識される自分自身を言う。「私」に近い概念である。その自己を起点とする意識作用が自我である。自己と自我は混同されて用いられることも多いが、自己と違い自我とは物事を対象化する機能である。 自己は、時間を経ても持続的に存在しているように感じられる。しかし、昨日の自分と今日の自分は同一であるのかと懐疑することができる。この問題は人格の同一性というテーマで考究されている。 還元主義と非還元主義 哲学においては、自己について対極的な二つの考え方があり、デレク・パーフィットは双方の立場を以下のように「還元主義」と「非還元主義」と呼び分けた。(ただし、パーフィットがいう還元主義は、心的な現象は物理現象に還元できるという還元主義とは意味が異なるので注意が必要である) 1、非還元主義 自己がそれ自体で存在するという...
  • 心身問題
    心身問題とは、哲学において歴史的に最も重要な課題の一つで、人間の心と体がどう関係し合っているのかという問題である。現代の哲学では心の哲学における中心的なテーマであり、科学の領域では心脳問題として研究の対象となっている。 哲学における心身問題の議論は紀元前に遡る。西洋哲学ではプラトンが「霊肉二元論」を主張し、それに対しアリストテレスは、心とは身体の特別な性質であるという一元論的な主張をした。そして17世紀の哲学者ルネ・デカルトが、『情念論』(1649年)にて実体二元論を主張したことが大きな転換点となり、デカルトの二元論に対する応答として、心身問題についての様々な立場の原型が近代においてほぼ案出されることになる。 その後19世紀末から後20世紀前半は、科学技術と神経生理学の発展によって、心と身体の関係は科学によって解明されるという物理主義の立場が支配的となり、心身問題についての...
  • 随伴現象説
    概説 利点と問題点 概説 随伴現象説(ずいはんげんしょうせつ、英:Epiphenomenalism)とは、物質的な脳と現象的意識やクオリアといった心的なものとの因果関係(心的因果)についての仮説で、心的なものは物質的な脳の作用に還元できないが、脳の作用に付随して生じるだけの現象にすぎず、物質的な脳に対して何の作用ももたらさない、とするものである。物理領域の因果的閉包性を前提にして主張される。 T.H.ハクスリーは随伴現象説のセオリーを「警笛と機関車」の例えで説明している。機関車は警笛を鳴らすことができるが、警笛は機関車を動かすことはできない。「警笛と機関車」を「物質と意識」に置き換えればわかりやすい。 心的なものの状態は脳の物理的な状態によって決まるが、心的なものは脳の物理的な状態に対して何の影響も及ぼさない。 これが随伴現象説の主張である。 随伴現...
  • クオリア
    概説 意識とクオリアの違い 歴史と類義語 クオリアについての論争 還元主義的物理主義と二元論 外在主義と内在主義 クオリアに関する思考実験 クオリアの全一性 概説 クオリア(英:複数形 Qualia、単数形 Quale クワーレ、またはクアリ)とは、客観的には観察できない意識の主観的な性質のこと。日本語では感覚質と訳されることもある。もとはラテン語で「質感」を表す単語であるが、1990年代の半ばから意識の不思議さを象徴する言葉として科学者や哲学者の間で広く使われるようになった。「現象」「表象」「感覚与件」は類似の概念である。 クオリアという用語は厳密に定義されておらず、論者によって用いられ方が異なる。ブレンターノやフッサールは志向性が意識の本質だとし、心的状態は全て志向的だと考えた。この"ブレンターノ・テーゼ"に従ってクオリアも志向的であるとする論者がい...
  • ルネ・デカルト
    概説 心身二元論 「我思う、ゆえに我あり」についての解釈と批判 概説 ルネ・デカルト(仏 Rene Descartes, 1596年3月31日 - 1650年2月11日)は、フランス生まれの哲学者であり、数学者でもある。近代哲学の父とも称される。1637年の著作『方法序説』によって、真理を探究するための方法としての懐疑主義を透徹し、精神に現れた全ての事象が疑いうるものだと仮定しても、その疑っている何かが存在することは否定できないとし、「我思う、ゆえに我あり(コギト・エルゴ・スム、Cogito ergo sum)」という根本的な原理を導き出す。デカルトの方法は、もっぱら数学・幾何学の研究によって培われた明晰・判明さに依拠し、その上に哲学体系を構築しようとするものであった。それゆえ彼の哲学体系は人文学系の学問を含まない。 Cogito ergo sumはフランス語で書かれた...
  • スピノザ
    概説 心身関係論 自我と自由意志 概説 バールーフ・デ・スピノザ(Baruch De Spinoza, ラテン語名ベネディクトゥス・デ・スピノザ Benedictus De Spinoza, 1632年11月24日 - 1677年2月21日)はオランダの哲学者、神学者。デカルト、ライプニッツと並ぶ合理主義哲学者として知られ、その哲学体系は「神即自然 (deus sive natura) 」といわれる汎神論的な一元論である。 一元的汎神論や能産的自然という思想は後の哲学者に強い影響を与えた。近代ではヘーゲルがスピノザ実体概念を自分の絶対的な主体へ発展させている。またスピノザの思想は無神論ではなく、むしろ神のみが存在すると主張する無世界論(Akosmismus)であると評している。 スピノザの形而上学の中核は「実体」概念であり、それはアリストテレスからスコラ学者を経てデ...
  • 現象主義
    概説 前史 方法論論理実証主義 批判と補足 概説 現象主義(英 Phenomenalism)とは、われわれの認識の対象は〈現象〉の範囲に限られるとし、現象外部の存在については不可知である、とする哲学上の方法論である。現象論ともいう。実在論と対極の思考法である。経験主義的な方法を徹底したものであり、英国経験論を代表するジョージ・バークリーに始まり、デイヴィッド・ヒュームにおいてひとつの哲学的立場として完成した。実在論が意識から超越した実在を認めるのに対し、現象主義は意識内在主義の立場を取り、世界および自我を「知覚現象の束」として説明する。近代における代表的な論者はエルンスト・マッハであり、マッハの思想はアインシュタインなどの科学者や、フッサールやウィーン学団の哲学者、論理実証主義者たちに影響を与えた。日本では大森荘蔵が現象主義の方法論を透徹し、〈立ち現われ一元論〉を主張した。 ...
  • 実体
    概説 実体概念の誕生と変遷エレア派 デモクリトス プラトン アリストテレス スピノザ ライプニッツ ヘーゲル 仏教 (管理者がWikipediaの文を加筆修正) 概説 実体とは、哲学用語で真に実在するものの意。性質や様態のように何かに属していたり、何かによって構成されているようなものではなく、「真に在るもの」を指していう。その様々な特性が、属性と呼ばれる。 ギリシア哲学におけるアルケー、またはウーシアとその同義語としてのヒュポスタシスに由来し、「本質」および「実在」とは語源的にも哲学的にも深い関連を有する。 実体概念の誕生と変遷 エレア派 実体の概念はエレア派の存在についての思考に負うところが大きい。エレア派は物事を考える上で誰しも前提にせざるを得ない同一律、矛盾律を厳密に突き詰めれば、生成変化は有り得ないとと考えた。 パルメニデスはいう「事物は在...
  • カテゴリー錯誤
    カテゴリー錯誤(カテゴリー・ミステイク,英:category mistake, category error)とは、ある対象に固有の属性を、その属性を持つことのできないものに帰すという誤りである。ギルバート・ライルが著書『心の概念』(1949年)で、心身問題解決の鍵として提起したものである。 例えばケンブリッジ市のハーバードを訪れ、さまざまな学部や実験室などの各施設、そして教員や生徒を見たある人物が、最後に「それで、肝心のハーバード大学はどこなんです?」と聞くとする。その人は自分が見てきたものの他に「大学」そのものがあると思い込んでいる。しかしその人は実感していないものの、既にハーバード大学を見知っていることになる。大学という用語はそれぞれの学部や各施設、構成員を指示する言葉だからである。その人の思い込みこそがカテゴリー錯誤である。大学という言葉は学部や教員という言葉とは同じカテゴ...
  • デイヴィッド・チャーマーズ
    概説 意味の一次内包と二次内包 構造的コヒーレンスの原則 構成不変の原則 情報の二相説 汎経験説 補足 概説 デイビッド・ジョン・チャーマーズ (David John Chalmers、1966年4月20日 - )はオーストラリアの哲学者。1982年、高校生のとき数学オリンピックで銅メダルを獲得する。インディアナ大学で哲学・認知科学のPh.Dを取得。2006年現在オーストラリア国立大学の哲学教授であり、同校の意識研究センターのディレクターを務めている。心の哲学において意識のハードプロブレムをはじめ多くの問題提起をし、この分野における指導的な人物の一人となっている。 チャーマーズはクオリアと呼ばれる内面的な心的体験を、実体(英 entity)的に捉え、質量やエネルギーなどと並ぶ基礎的な物理量のひとつとして扱い、その振る舞いを記述する新しい物理学を構築すべきだと主張する。そして...
  • 心脳同一説
    概説 タイプ同一説 トークン同一説 同一説への批判 概説 同一説(英:Identity theory)、または心脳同一説とは、心身問題に関する立場の一つで、「心の状態やプロセスとは、脳の状態やプロセスそのもののことだ」という考え方のことである。心的なものの存在を物理的なものの存在に還元して説明しようとする還元主義でもある。英語圏では「Mind is Brain」と、be動詞を強調することによって心と脳の同一性を表現する。心の哲学においては、行動主義の失敗を反省し、物理主義の一種として二元論一般と対立する文脈で語られる。 心脳同一説は性質二元論や中立一元論の考えに似ているよう思えるが、大きな違いがある。性質二元論や中立一元論では、心的状態と脳状態は同一の実体の二つの側面であり、たとえるならコインの表裏の関係である。しかし心脳同一説では、「雲とは水粒である」「稲妻は電荷の運動で...
  • ライプニッツ
    概説 オプティミズム(最善観) モナド(Monades)モナドとモナドとの関係 自我と魂 概説 ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz, 1646年7月1日(グレゴリオ暦)/6月21日(ユリウス暦) - 1716年11月14日)はドイツ・ライプツィヒ生まれの哲学者・数学者。「モナドロジー(単子論)」を提唱した。心の哲学においてライプニッツのモナド論は「予定調和説」として位置づけられる。 ライプニッツの思想は、哲学、形而上学の範囲にとどまらず、論理学、記号学、心理学、数学、自然科学などの極めて広い領域に広がる。また同時に、それらを個々の学問として研究するだけでなく、「普遍学」として体系づけることを構想していた。ライプニッツは通常、デカルトにはじまる大陸合理論に位置づけられるが、ジョン・ロックの経験論にも学んでいる。精神と...
  • 現象的意識の非論理性
    1 「変化」という矛盾 2 心の哲学における「変化」の説明 3 実在論の無意味 4 物理法則の内在性 5 心脳問題 6 現象主義的心脳同一説 7 時間・因果の非実在 8 無時間論の可能性 9 補足 1 「変化」という矛盾 目を閉じると闇になる。私はその闇に美女でも戦車でも銀河系でも思い浮かべることができる。そして次にはその美女も戦車も銀河系も消すことができる。これは魔法や奇跡としか形容しようのない不思議なことである。 意識に現れる現象は次々に変化する。これは一般人には当たり前のことと思われている。しかしその変化なるものは紀元前にパルメニデスが指摘したように、論理を逸脱した不思議なものである。変化とは「ある」ものが「ない」ものになることであり、「ない」ものが「ある」ものになることである。「無からは何も生じない」というのは世界の基本原理である。逆に言えば存在していた何かが無にな...
  • 汎心論
    概説 原意識 組み合わせ問題 概説 汎心論(英:Panpsychism)とは、哲学・宗教において、世界のあらゆるものが心的な性質を持つとする考え方。 汎心論と呼ばれる思想は多様であるが、大きく分けて次の三種類のものがある。 1、原始信仰としてのアニミズム的世界観。およびそれに類するもの。 2、世界にあるものは心だけであると考える唯心論。 3、心の哲学の分野において、創発説や還元主義に対立するものとして語られる汎経験説(Panexperientialism)。 心の哲学における汎経験説とは、あらゆる物質に意識、あるいは意識の元となる性質(原意識)があるとする中立一元論的な考え方であり、バートランド・ラッセルが1927年の『物質の解析』で主張した。ラッセルの考えは物理学者のアーサー・エディントンにも支持され、エディントンは1928年の『物理的世界』で「...
  • 大森荘蔵
    二元論の否定 普遍概念と無限集合 重ね描き 立ち現れ一元論 実在論批判 自我と他我 時間論 無主体論と無時間論 大森荘蔵(おおもり しょうぞう、1921年8月1日 - 1997年2月17日)は日本の哲学者。独自の現象主義的な思考方法によって、独我論的な「立ち現れ」一元論を主張した。中島義道は大森哲学を「独我論的現象一元論」と定義している(*1)。 1944年東京帝国大学理学部物理学科を卒業。その後1949年東京大学文学部哲学科を卒業する。戦後アメリカのスタンフォード大学、ハーバード大学に留学し、分析哲学の影響を受ける。帰国後東京大学教養学部助手を経て、さらに留学後、東京大学教養学部教授(科学史・科学哲学科)に就任。現在第一線で活躍中の多くの日本の哲学者たちを育て、影響を与えることとなった。 大森の弟子たちによると、「哲学とは、額に汗して考え抜くことである」という信念...
  • 唯心論
    概説 仏教の唯識論との違い 概説 唯心論(spiritualism; idealism)とは観念論の一種で、物質的なものは実在ではないと考え、心的なものだけが実在であるとする哲学の立場。その反対が唯物論である。類似の思想的立場に現象主義があるが、現象主義は経験主義から出発し、実在や神など人が経験できないものは不可知であるとするのが大きな違いである。 歴史的には三世紀頃、新プラトン主義の哲学者プロティノスが唯心論的な形而上学を残している。プロティノスの思想はプラトンのイデア論を受け継ぎながら、その二元論を克服しようとしたものである。 プラトンの『パルメニデス』に説かれた「一なるもの」(to hen)を重視し、これを神と同一視した。 彼によると、唯一にして無限の宇宙的意識である「一者」が存在し、万物(霊魂、物質)は「一者」から流出したヌース(理性)の働きによるものである(流出説...
  • 意識のハードプロブレム
    意識のハードプロブレム(英:Hard problem of consciousness.) とは、物理的な脳からどのようにしてクオリアなどの心的現象が生まれるのか、またその心的なものは物理的な脳とどのような因果関係(心的因果)があるのかという問題である。1994年、オーストラリアの哲学者デイヴィッド・チャーマーズによって、これからの科学・哲学の課題として提起された。対置されるのは意識のイージープロブレム(Easy Problem of Consciousness)である。 意識のハードプロブレムは20世紀後半の神経科学の発展によって、意識に関する大きな問題はもう残されていないと考えていた神経科学者や認知科学者に対する批判として提示された。当時の研究者が解決したと考えていたのは意識のイージープロブレム――脳の神経細胞がどのように情報を処理するかという問題であり、その1.5kgの灰色の...
  • 哲学的ゾンビ
    概説 想像可能性論法 2つの哲学的ゾンビ 意識の定義――機能的意識と現象的意識 ゾンビ論法的思考実験の歴史 物理主義からの批判 補足 概説 哲学的ゾンビ(英:Philosophical Zombie) とは、デイヴィッド・チャーマーズによって提起された心の哲学における思考実験である。外面的には普通の人間と全く同じように振る舞うが、内面的な経験(現象的意識、クオリア)を全く持っていない人間と定義される。ホラー映画に出てくるゾンビと区別するために、哲学的ゾンビ(または現象ゾンビ)と呼ばれる。おもに性質二元論(または中立一元論)の立場から物理主義とその範疇にある行動主義や機能主義の立場を批判する際に用いられる。 哲学的ゾンビは、フランク・ジャクソンによるマリーの部屋の思考実験の発展型である。チャーマーズ自身も、マリーの部屋の「知識論証」は「ゾンビ論証」とペアになったときに最も力を...
  • 実践理性の方向
    1 実践理性の方向 2 実在論の可能性 3 心脳問題と他我問題 4 無世界論と実在論 5 死と実践理性の彷徨 1 実践理性の方向 その昔、自宅のテレビで映画『2001年宇宙の旅』を見た。映画にモノリスが登場したとき、私は大いなる哲学的驚愕に打ち震えた。宇宙には人知を遥かに超越した何かが確かにあって、モノリスがその何かを象徴していることは、青年だった私にも理解できた。映画を見終えても、私はしばらくテレビの前で呆然としていた。映画を通じて宇宙の神秘を垣間見たという感慨を堪能していたのだ。 ところがそれから何十年も経ち、今DVDで『2001年宇宙の旅』を見直しても、私は大した感慨を得ることができない。 それは今の私が哲学をやっているからである。宇宙にモノリスがあろうとアリスが迷い込んだ不思議の国があろうと、存在するものは単に存在するだけで、「不思議」とは人の心にのみあるの...
  • バートランド・ラッセル
    概説 心の哲学におけるラッセルの見解 自我論 概説 バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル(Bertrand Arthur William Russell,OM,FRS 1872年5月18日 - 1970年2月2日)はイギリス生まれの論理学者、数学者、哲学者。 哲学者としては新ヘーゲル主義から経験主義に転向し、初期の論理実証主義に大きな影響を与える。無神論者であった。 ラッセルはウィトゲンシュタインの才能を早くに見抜き、親交を結んで互いに影響を与え合った。しかし後期のウィトゲンシュタインを始めとする日常言語学派には批判的であり、言語の分析を哲学の終点とみなさず、あくまで言語が指示する対象に拘り、独自に形而上学を探究した。 ラッセルは分析哲学の創始者の一人でもあり、その哲学は生涯に渡って変化を続けたものの、哲学的手法は終始一貫して分析的・論理的であった。...
  • ギルバート・ライル
    ギルバート・ライル(Gilbert Ryle、1900年8月19日 - 1976年10月6日)はイギリスの哲学者。ウィトゲンシュタインの言語観に想を得たイギリスの日常言語学派の代表的人物とされている。自身の思想の一部を「行動主義」と表現した。しかし唯物論者ではないことは強調している。1949年の著書『心の概念』におけるデカルト批判は、現代の英語圏の心の哲学の幕開けといわれる。 ライルは、心身二元論は日常言語の誤用によって生み出された幻想であり、カテゴリー錯誤であると断じた。心が独立した存在であるとか、心は身体の中にありながら身体を支配しているといった考え方は、生物学の発達以前の直写主義がそのまま持ち越されたものにすぎず、退けられるべきであるという。 たとえばスポーツでいう「チーム意識」とは、投げたり、打ったり、守ったりという技術的な概念とは全く異なるカテゴリーに属する概念で...
  • トロープ説
    概説 心の哲学におけるトロープ説 概説 トロープ(Trope)とは現代の分析形而上学における用語で、個物の個別的性質のことである。個別的属性とも呼ばれる。 たとえば赤い郵便ポストの前に赤い車が停まっているとする。その場合「赤」という普遍的性質が、郵便ポストと車に個別化して存在しているものが「赤」のトロープである。 個物とトロープの関係は「全体」と「部分」の関係の一種であり、トロープは全体の構成要素である。ただし個物なしでは存在できない「依存的存在者」である点が、通常の全体と部分の関係と異なる。丸いボールの「丸」のトロープの場合、個物であるボールが消えると同時に「丸」のトロープも消える。 普遍とトロープの関係は、「タイプ」と「トークン」の関係に似ている。しかしトークンとは普遍的な性質の実例であるのに対し、トロープとは普遍的な性質がある場所と時間において個別化し...
  • 意識の境界問題
    概説 意識の統一性 中心と周辺 組み合わせ問題 きめの問題 解決へのアプローチ 概説 意識の境界問題(英:Boundary Problem of Consciousness)とは、人間の意識が宇宙の構造のあるレベル、つまり「脳」という単位において、統一的に、かつ境界をもって存在しているのはなぜなのかという問題。心の哲学において意識のハードプロブレムと関わる問題のひとつとして議論される。2004年にアメリカの哲学者グレッグ・ローゼンバーグによって提起された。 個人が体験するのはこの世界にある意識体験のごく一部である。例えば隣にいる他人が酷い虫歯の痛みに苦しめられていたとしても、自分がその痛みを感じるということはないし、また地球の裏側で誰かが幸福の絶頂を噛み締めていたとしても、自分がその喜びを感じるということはない。つまり意識体験は境界を持って個別化されている。 意識は...
  • 説明のギャップ
    表象説 説明のギャップ(英:explanatory gap)とは、主に神経科学や心の哲学の分野で使われる言葉で、脳に関する客観的で物理的な記述と、意識の主観的な性質(現象的意識やクオリア)に関する記述との、つながりの欠如のこと。アメリカの哲学者ジョセフ・レヴァイン(Joseph Levine)が、1983年の論文 "Materialism and qualia The explanatory gap" の中で使用した言葉。 例えば「透明な青い海」を見ている時の神経状態を記述したする。しかしその記述には「透明な青い海」を見た時の心的現象が描かれていない。物理的記述と心的記述には大きなギャップがある。フランク・ジャクソンはマリーの部屋という思考実験で、このギャップを浮き彫りにすることにより、物理主義はクオリアの問題を取りこぼしていると主張した。逆にギルバー...
  • 現象的意識
    現象的意識とは、意識の性質のうち、客観化できない主観的な内容のことである。心の哲学においては、客観化できる意識の機能的な側面と対比させて、現象的な側面を指す場合によく使われる。 クオリアという用語は現象的意識とほぼ同じ意味で用いられることがある。たとえば表象主義では、意識の「現象的側面(phenomenal aspect of consciousness)」がクオリアと呼ばれる。 現象的意識という用語はネド・ブロックが案出した。ブロックは「現象的意識(phenomenal consciousness)」と「アクセス意識(access consciousness)」を区別した(Block 1995)。 ブロックは現象的意識の本質を、トマス・ネーゲルが「コウモリであるとはどういうことか」という論文で述べた語句を引用して説明する。つまり「生物が意識的な心的状態をもつのは、...
  • ピーター・ストローソン
    ピーター・フレデリック・ストローソン(Peter Frederick Strawson, 1919年11月23日 - 2006年2月13日)は、日常言語学派後期のリーダー的哲学者。日常言語の論理的特徴について非形式的な哲学分析を行った。また、カント的な方法でユニークな形而上学も構築した。主著は『個体と主語』である。 ストローソンによれば、われわれが「心的」や「物理的」という概念を使用できるのは、「人格(person)」という根本的概念を使用できるからである。自己と他者の概念も人格の概念に依存している。それが心的なものと物理的なものの区別に繋がるのである。すなわちデカルトの推論とは全く異なり、主観性と客観性の問題は心身問題に先立つと考えたのである。 では一体、われわれはどうして「自己」という概念を持ちうるのか。ストローソンは経験には多種多様なものがあり、「自己」は経験のうちの...
  • 還元主義
    概説 還元の種類 概説 心の哲学における還元主義(Reductionism)とは、心的なものの存在は物理的なものの存在に還元できるという唯物論的な考え方であり、心脳同一説及びトークン同一説を前提とした機能主義や表象主義がその立場である。 還元主義な方法では現象的意識やクオリアは説明できず、心身問題は解決できないとする立場が二元論や中立一元論である。なお唯物論であっても消去主義はクオリアを消去しようとする立場なので還元主義とはいえない(ただし後述する「定義的還元」に該当する可能性がある)。また心理学的な行動主義やブラックボックス機能主義は、クオリアの存在論的身分を棚上げするので還元主義には該当しない。 スティーブン・ホーストは自然科学における還元の限界が心の哲学の議論にも適用できるのではないかと主張している。デイヴィッド・チャーマーズは『意識する心』で、意識が物理的な...
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