中尾浩治(なかお・こうじ) テルモ 代表取締役会長
朝日新聞「リーダーたちの本棚」Vol.46掲載

1947年広島県生まれ。70年慶應義塾大学法学部卒。同年テルモ入社。95年取締役、社長室長。97年経営企画室長。02年取締役常務執行役員。06年米・テルモメディカル社会長兼CEO。07年取締役専務執行役員。10年取締役副社長執行役員。11年5月から現職。

読書の妙味は仕事と同じ 自分にない価値観との出会い

「共同幻想論」
エッセー・随筆
吉本氏は全共闘世代の教祖的な存在でしたが、学生運動に熱心でなかった私が興味を持ったのは、彼の思想というよりは、「共同幻想」という耳慣れない言葉でした。
深遠な内容を読み解けたとは今も思っていませんが、「概念」を提示することの意義に気づかされたと同時に、さすがは詩人という独特の言葉回しに魅了されました。

「仕事(ワーキング)!」
ビジネス・経済、労働問題
1972年に米国で出版され、話題を呼びました。大学教授、石工、経営者、売春婦、理髪店など、様々な職業の人々が、自分の仕事や仕事にまつわる人間関係について語ったインタビュー集です。
ちょうど刊行時に米国に駐在していた私は、、本書を通してあの国の社会構造や米国人の仕事観を知りました。口語体の臨場感ある文章で、英語の原書でしたが、一気に読んだのを覚えています。

「エンデュアランス号漂流」
ノンフィクション、
イギリス人探検家・アーネスト・シャクルトンを隊長とする28人の隊員が南極大陸横断に挑戦し、「エンデュアランス号」の座礁後、過酷な漂流生活を経て17か月後に全員生還を果たした実話です。
この本に対する多くの評価は、「シャクルトンに見るリーダーシップ論」だともいわれましたが、私が注目したのは、「欧米人に見るアーカイブの価値観」とでもいいましょうか。生きるか死ぬかという状況下で、何人もの隊員が日記をつけ、写真を撮り、絵を描き、旅の記録を撮り続けた事実に感心しました。

「介護もアート」
暮らし・健康・子育て、介護
パフォーマンスアーティストの折元立身さんがアルツハイマーの母親・男代さんを介護しながら創作活動を続け、介護生活そのものがアートになっている日々を伝えています。
巻頭に折元さんの作品写真が載っているのですが、彼が制作した巨大な靴を履いて立つ男代さんの堂々たる姿に目が釘付けになりました。折元さんの芸術にかける熱意や親子愛から生まれたユニークな作品群に大変感銘を受けました。

「督促OL 修行日記」
ビジネス・経済
新卒で信販会社に就職し、督促を行うコールセンターに配属された著者が、ストレスの多い職場で独自のメソッドを開発し、トップクラスの回収成績を挙げるまでの軌跡をつづります。心も体もボロボロになりながら、周囲の人を観察してささいなことでも吸収できることを探し、日々新しい工夫をしながら前向きに課題解決にあたっていく。そんな著者の姿勢には、見習うことがたくさんあります。
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最終更新:2013年04月14日 22:21